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くりまんじゅうの「ハーッ…」に憧れながら、愚痴とため息しか吐けない40代男。

    今日もスナックゆきで、一杯だけ頼んだ。
    サントリーの角瓶作った、ハイボールだ。

    高級なシングルモルトのような、気取った能書きはいらない。
    炭酸がパチパチと弾け、レモンの酸味が喉を駆け抜ける。

    一日の労働を終えた喉に、ただ真っ直ぐに冷たさと刺激を流し込む。 「余計な言葉を持たない男」のための酒だと思う。

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    今日の相棒 角ハイボール


    ファンシーな愛くるしいキャラクターに、大人の生き方を説教された話を聞いてほしい。

    先週、仕事帰りにパルコの「ちいかわラーメン」に並んだ。 事前にスマホで予約を勝ち取り、定時ダッシュで駆けつけたのだ。

    だが、列に並んだ瞬間から冷や汗が止まらなかった。 周りは若い女性のグループや楽しそうなカップルばかり。くたびれたスーツ姿で、使い古したバックパックを抱えた40代男の一人客は、完全に異物だった。

    休日の映画館の暗闇でも、一人でスクリーンを見つめながら胸を熱くしていた。 物販コーナーのレジでは、姪っ子に頼まれたかのように無関心を装い、内心の気恥ずかしさを押し殺しながら「くりまんじゅう(フラダンス衣装)」のぬいぐるみを買った。 持っているのが恥ずかしくないように、すぐにカバンに押し込んで持ち帰った。

    家に戻り、テーブルの片隅にある小さなくりまんじゅうコレクションの中に、買ってきたぬいぐるみを並べた。 渋い顔で「ハーッ…」と至福の息を吐く、あの小さな生き物。

    楽しかった休日の余韻に浸りながら、私も真似をして缶ハイボールをプシュッと開け、喉に流し込んだ。 くりまんじゅうのように、格好良く「ハーッ…」と息を吐き出してみようとしたのだ。

    だが、私の口から漏れ出たのは、澄んだ至福の吐息なんかじゃなかった。


    明日からまた始まる月曜日の憂鬱や、出戻り社員として年下上司にペコペコ頭を下げる現実への嫌悪感が混ざった、ただの重たく濁った「ため息」だった。

    テーブルの上で、どこまでも純粋に一杯の酒を愛でている小さなぬいぐるみ。 それに引き換え、終わっていく休日に怯え、酒を「明日の現実逃避の麻酔」にして濁った息を吐いている、くたびれた40代の自分。


    その決定的な生き方の差を突きつけられた瞬間、胸の奥からドロリとした情けなさが込み上げてきて、一人で頭を抱えてしまった。


    私は、このくりまんじゅう先輩の足元にすら及んでいない。


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    くりまんじゅうは、過酷な労働(草むしり)を終えたあと、誰に愚痴を言うでもなく、自分の稼いだ金で買った美味い酒とツマミをただ純粋に楽しむ。 言葉は多く語らない。


    喉を通った瞬間に「ハーッ…」と、至福のため息をひとつ漏らすだけだ。


    そして、ちいかわやハチワレといった不器用な後輩たちが困っていれば、説教を垂れることもなく、かまぼこや柿ピーをぶっきらぼうに分けてやる。資格試験の勉強で行き詰まるシーサーがいれば、何も言わずに隣で親身になって教えてやる。

    自分の機嫌は自分で取り、誰にも媚びず、誰の足も引っ張らない。


    対して、40代の私はどうだ。


    酒を飲むたびに職場の愚痴をこぼし、「出世になんて興味がない」と斜に構えながら、先に出世していく同僚を陰で妬む。


    過去のわずかな起業経験を引っ張り出しては「最近の若いもんは根性が足りない」と管を巻き、後輩が一生懸命出してきた企画に対しては「そもそも目的は何? 根拠はあるの?」と正論のナイフで切り刻んでマウントを取る。


    失敗続きで実績もないくせに、他人を見下すプライドだけは一人前。 言葉ばかりを着飾って自分を大きく見せようとし、酒を「惨めな現実を見ないようにするためのアイマスク」にしている。


    これほどダサくて、みっともないおじさんが他にいるだろうか。


    「言葉を語らず、行動で背中を見せ、美味い酒を噛みしめる」 20代の頃に自分が思い描いていた「渋い大人の男」を完璧に体現していたのは、小難しいビジネス書を読み漁る私ではなく、あの二頭身のキャラクターだったのだ。

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    「あんたがやってるのは『大人の余裕』じゃないわよ。『老害の入り口』よ」

    氷を割りながら、ゆきママが笑った。

    「……否定できません。くりまんじゅう先輩を見てると、自分がどれだけ薄っぺらいか思い知らされます」

    「言葉で自分を武装しようとする男ほど、中身がスカスカなのよ。本当に腹が据わってる男はね、愚痴も言い訳も飲み込んで、ただ美味そうに一杯やるの。あんたみたいに酒の席で能書き垂れてるうちは、一生あのくりまんじゅうの爪の垢にも届かないわよ」

    ママの言葉が、ハイボールの炭酸とともに、乾いた喉を容赦なく刺激する。

    その通りだ。 私は自分の未熟さを隠すために、言葉で壁を作っていただけだった。

    御託を並べるのは、もうやめだ。

    すべての仕事を終えた夜に、余計な言い訳を一切吐かず、ただ美味い酒を喉に流し込んで「ハーッ…」と笑える本物の大人になるために。


    グラスが空いた。
    今日はここまでにする。



    【今夜の1杯】サントリー角瓶(ハイボール)

    余計な講釈を削ぎ落とした、労働のあとの一杯。 能書きばかり垂れてしまう夜、自分の小ささを洗い流すための酒。


    【今夜のカウンター席のあなたへ】

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    型落ちの40代が泥をすする姿を、もう少し見てみたいと思ってくれたなら、スキやフォローで「カウンターの席」を確保してもらえると嬉しいです。

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    はじめてスナックゆきに 来てくれた方へ。
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    佐久間浩一|40代独身。独立失敗の出戻り会社員。仕事も恋愛もスマートにこなせない男が、痛い本音を晒すエッセイ連載『スナックゆき』。カウンターの片隅で一杯飲んでいきませんか。初の書籍『スナックゆきで、一杯だけ』(初版100部・金箔押ししおり付き)予約受付中。

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