
ショートショート|積読美術館 『貸した本』 『文章+マンガ』
⇒ スキ頂けると励みになります!

『貸した本』
神輿を下ろせば、夏がまだ肩で息をしている。「読んだか?」
「読んでない」
「じゃあ返せ」
「やだ」
汗の落ちる胸元で、千社札が揺れた。アキラの晒しから、しおり、の挟まらない一冊がのぞく。
…これ、絶対返さない。祭りが終わったら、雷門まで来い。
返さない、と言った。けど、次のを貸す、とも言った。
眼鏡の奥で、テルは言葉を探すのをやめた。担いだあとの火照りのせいだと、そういうことにしておく。
「テル、銭湯行こうぜ」
浅草の夜が、提灯の色に灯りはじめる。
差し出されたのは、『こころ』だった。
「今度はオレが貸す番な。これ、面白いぞ」
……面白い、ときたか。
テルは受け取った文庫を、湯気の向こうで眺めた。親友を出し抜いて、裏切って、その罪を最後まで抱えたまま死ぬ男の話だ。どこをどう読んだら、面白いになるんだか。
アキラ、お前、ほんとに読んだのか?
問いただすのは、湯に浸かってからでいい。
のぼせた顔で「Kが可哀想でさ」なんて言い出したら——まあ、それはそれで、こいつらしい。しおり、の挟まらない本が、また一冊、増えていく。
⇒次は、マンガ編です。
⇒ スキ頂けると励みになります!



そして、夕暮れになり、テルが雷門に到着…
アキラを、見つけると…

#毎週ショートショートnote
#積読美術館 #ショートショート #マンガ #積読美術館 #貸した本
#AIマンガ #AIイラスト
⇒ 優斗 & 文哉 バージョンこちら
⇒ マコ & シーラ バージョンはこちら