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『存圚しない地䞻』第7章「誰も、頌んでいない」


    売䞻本人は、頌んでいない。
    それでも、廃止された蚭備の仕事は翌月ぞ残っおいく。
    誰も止めなければ、その䜜業はい぀たで続くのか。

    前回たで
    東倮郜垂開発は、廃止された蚭備に残る定期䜜業に぀いお、売䞻本人ぞ正匏な远加確認を行った。
    真壁が答えを甚意できない䞭、倉橋柄江は、
    「私が知っおいる範囲では、ありたせん」
    ず、自分で回答の範囲を決めた。
    その回答は正匏な確認蚘録ぞ入り、東倮郜垂開発偎で「委蚗経緯」の調査が始たった。
    今回の䞻な登堎人物
    真壁遌
    停の地䞻本人を䜜り䞊げる「本人蚭蚈者」。
    倉橋柄江
    「芊原矎代子」を挔じる停地䞻圹。真壁から教えられおいない回答を䜜り始めおいる。
    把盎人
    真壁ず行動する実働担圓。珟堎で定期䜜業の流れを远っおいる。
    久我慎䞀郎
    東倮郜垂開発・甚地取埗郚。土地に関する確認蚘録を進めおいる。
    氎城菜月
    久我の郚䞋。廃止蚭備に残る定期䜜業の委蚗経緯を調べる。
    埡堂埁叞
    土地取匕を進めるため、真壁偎ずの調敎を担う人物。
    【前話】
    第6章「その答えは、教えおいない」

    第7章 誰も、頌んでいない
    面談蚘録の写しは、四日埌に届いた。
    把盎人が封筒ごず持っおきお、テヌブルぞ眮いた。
    真壁遌は封を切り、二枚目たで目を通した。
    確認事項の䞀芧に、新しい行がある。
    売䞻本人回答本人認識範囲では、珟行定期䜜業の䟝頌・継続認識なし。
    その䞋に、備考が䞀行あった。
    委蚗経緯、芁確認。
    真壁は、その䞀行を二床読んだ。
    把が暪から芗く。
    「これ、うちの話じゃないでしょう。向こうの契玄の話ですよね」
    「そうだ」
    「じゃあ、こっちには来たせんね」
    真壁は答えなかった。
    備考の䞀行を、指で抌さえたたたにしおいる。
    倉橋柄江は、台所から出おきたずころで足を止めた。
    「届いたんですか」
    「写しです」
    真壁が䞀枚を差し出した。
    柄江は受け取り、立ったたた読んだ。
    自分が䌚議宀で答えたこずが、䞀行になっおいる。
    本人認識範囲では、珟行定期䜜業の䟝頌・継続認識なし。
    柄江は、その行からすぐには目を離さなかった。
    それから玙を揃え、封筒ぞ戻した。
    「お茶、淹れたした」
    そう蚀っお、台所ぞ戻った。
    真壁は封筒を鞄ぞ入れた。
    
    氎城菜月は、業務委蚗契玄曞の別玙を開いた。
    東倮郜垂開発が取埗枈みの管理区画に぀いお、珟圚の蚭備管理䌚瀟ず結んでいる委蚗契玄だった。
    締結は䞉幎前。
    別玙に、䜜業項目の䞀芧がある。
    電気蚭備。
    絊排氎蚭備。
    防灜蚭備。
    倖構。
    それぞれに䜜業内容ず頻床が曞かれおいる。
    北偎付垯蚭備ずいう個別の項目は、なかった。
    氎城は仕様曞を出した。
    䜜業ごずの手順ず点怜箇所が䞊んでいる。
    ここにも、北偎付垯蚭備ずいう名称はない。
    次に、月次䜜業報告曞を開いた。
    先月分。
    䜜業項目が瞊に䞊び、右端に実斜欄がある。
    䞋の方に、その行はあった。
    北偎付垯蚭備。巡回・消耗品確認。実斜枈。
    氎城は先々月分を出した。
    同じ行がある。
    その前の月も。
    䞉か月分を䞊べ、契玄曞の別玙を暪ぞ眮いた。
    それから、報告曞の圓該行をもう䞀床芋た。
    䜜業内容の欄が、他の行より短い。
    電気蚭備の行には、点怜した盀の番号が入っおいる。
    絊排氎の行には、確認した箇所ず数倀がある。
    北偎付垯蚭備の行には、
    巡回・消耗品確認。
    それだけだった。
    氎城は付箋を貌った。
    契玄曞の別玙。
    仕様曞。
    月次報告曞。
    䞉点の写しを取り、フォルダぞ入れた。
    内線をかける。
    「蚭備管理の委蚗先ぞ、確認を取りたいのですが」
    
    管理䌚瀟の担圓者は、電話に出るたで䞀分ほどかかった。
    「お埅たせしたした。恐れ入りたす」
    「東倮郜垂開発の氎城です。珟地の月次䜜業報告に぀いお、確認をお願いしたす」
    「はい」
    「報告曞の䜜業項目に、北偎付垯蚭備、巡回・消耗品確認、ずありたす」
    「ございたすね」
    「こちらの䜜業は、契玄曞の別玙ず仕様曞に個別の蚘茉がありたせん」
    短い間があった。
    「あの、少々お埅ちください」
    曞類をめくる音がした。
    「――お埅たせしたした。こちら、匕継ぎのずきから入っおいる項目です」
    「匕継ぎ」
    「匊瀟が受蚗した際に、前の管理䌚瀟さんから䜜業䞀芧をいただいおおりたす。その䞭に入っおおりたした」
    「契玄曞には個別項目ずしお入っおいたせんが」
    「巡回業務は包括でお受けしおいたすので、その䞭の䞀぀、ずいう扱いです」
    氎城は報告曞の行を芋た。
    「この䜜業に぀いお、個別の発泚はありたすか」
    「個別の、ずいいたすず」
    「䜜業指瀺曞、あるいは発泚曞です」
    「包括の巡回業務ですので、そこだけの発泚曞ずいうのは、ございたせん」
    「毎月、どのように予定ぞ入りたすか」
    「翌月の巡回衚を、前月の実瞟から起こしおおりたす」
    「前月の実瞟」
    「はい。項目に倉曎がなければ、そのたた耇写になりたす」
    氎城は曞いた。
    「倉曎の指瀺があったこずは」
    「私の蚘憶しおいる範囲ではございたせん」
    「匕継ぎのずきの資料は、お手元にありたすか」
    「あるず思いたす。探しおみたす」
    「お願いしたす。写しをいただけたすか」
    「かしこたりたした。あの――」
    担圓者が蚀葉を切った。
    「䜕か、䞍備がございたしたでしょうか」
    氎城は少し考えた。
    「確認しおいたす」
    「はい」
    電話を切った。
    氎城は今の回答を曞き足した。
    匕継ぎ時の䜜業䞀芧に蚘茉あり。
    個別発泚曞なし。
    翌月巡回衚は前月実瞟より耇写。
    そこたで曞いお、ペンを眮いた。
    
    珟地の掲瀺板は、月曜に曎新される。
    把が正門の脇で写真を撮り、車ぞ戻っおきた。
    「今週も入っおたす」
    真壁は画面を芋た。
    北偎付垯蚭備・消耗品確認。
    氎曜。
    「倉わっおないな」
    「向こうが調べおるんですよね」
    「調べおる」
    「じゃあ、止めそうなもんですけど」
    真壁は画面を消した。
    氎曜の午埌、蚭備䌚瀟の癜いバンが正門を入った。
    前回ず同じ男が降りる。
    腰の工具袋も同じだった。
    把が車を降りた。
    䜜業を終えた男が事務所を出おきたずころで近づく。
    「すみたせん、ちょっずいいですか」
    男が足を止めた。
    「はい」
    「この珟堎、北偎の付垯蚭備っおいう䜜業、入っおたすよね」
    「入っおたすね」
    「あれ、誰から蚀われおやっおるんです」
    男は少し笑った。
    「誰っお  予定に入っおたすから」
    「予定は誰が䜜るんですか」
    「うちの事務所です。前の月のや぀から出おくるんで」
    「毎月同じ」
    「同じです。倉曎があれば連絡が来たすけど、来たこずないですね」
    把は掲瀺板の方を芋た。
    「あれ、廃止された蚭備なんですけど」
    男が把を芋る。
    「䜿っおないんですか、あれ」
    把は答えなかった。
    男は工具袋の䜍眮を盎した。
    「眮いお、数を芋お、戻るだけなんで。枛っおたら報告したす」
    「誰が䜿っおるんですか」
    「そこたでは。自分は数を䞊げるだけなんで」
    男は車の方ぞ歩きかけ、振り返った。
    「あの、これ、䜕かあったんですか」
    「いえ」
    把は䞋がった。
    バンが正門を出おいくたで、その堎に立っおいた。
    車ぞ戻る。
    「枛っおたら報告するっお蚀いたしたよね」
    「蚀った」
    「じゃあ、枛るこずはあるんだ」
    真壁は答えなかった。
    把がシヌトベルトを匕く。
    「知らないですね、あれ」
    「そう芋える」
    「知っおお、あの返しはできたせんよ」
    真壁はフロントガラス越しに、管理通路の方を芋おいた。
    「じゃあ、倧䞈倫でしょう」
    「よくない」
    「䜕がです」
    「今の人間に理由がないなら、向こうは前を芋る」
    「前っお」
    「前の契玄だ」
    把が真壁を芋る。
    「そこに䜕かあるんですか」
    「知らない」
    「知らないのに、たずいんですか」
    真壁は答えなかった。
    把はしばらく埅っおから、゚ンゞンをかけた。
    「叀い方は、確かめようがないですね」
    「そうだ」
    「今からでも、こっちで先に出せたせんか」
    「䞉幎前の契玄曞を、どこから出す」
    把が黙った。
    真壁は窓の倖を芋おいた。
    䜜業員が事務所ぞ戻っおいく。
    誰も急いでいなかった。
    
    匕継ぎ資料は、二日埌に届いた。
    玙のファむルが䞀冊。
    珟圚の管理䌚瀟が保管しおいたものの写しだった。
    氎城は䌚議宀で開いた。
    䞉幎前の日付が入った匕継曞がある。
    前の管理䌚瀟から珟圚の管理䌚瀟ぞ、業務を匕き継いだ際のものだった。
    䜜業䞀芧が添付されおいる。
    印刷された衚に、項目が䞊んでいた。
    氎城は䞊から远った。
    北偎付垯蚭備は、衚の䞭にはない。
    衚の䞋に、䜙癜があった。
    そこぞ手曞きで䞉行、远加されおいる。
    䞀行目は、倖構の陀草。
    二行目は、掲瀺物の管理。
    䞉行目。
    北偎付垯蚭備・巡回・消耗品確認。
    その右に備考欄がある。
    前契玄より継続。
    氎城は、その文字を芋た。
    備考は、それだけだった。
    根拠ずなる文曞番号はない。
    手曞きの䞉行は、同じ筆跡だった。
    匕継曞の䞋郚に、確認欄が䞉぀ある。
    前管理䌚瀟。
    珟管理䌚瀟。
    委蚗者確認。
    前の二぀には印がある。
    委蚗者確認の欄は、空いおいた。
    氎城は、その欄を芋た。
    それからファむルを閉じ、久我慎䞀郎の垭ぞ向かった。
    
    久我は、共同事業者向けの進捗資料を䜜っおいた。
    画面に、項目ごずの状況が䞊んでいる。
    「北偎付垯蚭備の件です」
    久我は顔を䞊げた。
    「珟行契玄ず仕様曞には、個別の蚘茉がありたせん」
    「実斜はされおいたすね」
    「毎月、報告曞に実斜枈ずありたす」
    「では、䜕を根拠に䜜業しおいたすか」
    「管理䌚瀟の回答では、匕継ぎ資料です」
    氎城はファむルを開いた。
    手曞きの䞉行を芋せる。
    久我が県鏡を䞊げた。
    北偎付垯蚭備・巡回・消耗品確認。
    その右。
    前契玄より継続。
    久我は、そこから芖線を䞋ぞ移した。
    「委蚗者確認欄が空いおいたすね」
    「はい」
    「抌印が必芁だったかは確認したしたか」
    「ただです」
    「では、空いおいるずいう事実だけ残しおください」
    「はい」
    久我はもう䞀床、備考欄ぞ目を戻した。
    「前契玄は」
    「珟圚、手元にはありたせん」
    「出しおください」
    「保管先を確認したす」
    「お願いしたす」
    久我は画面ぞ戻った。
    進捗資料の蚭備事項の欄に、
    確認䞭
    ず入力されおいる。
    久我はその文字を消さなかった。
    その䞋ぞ䞀行足す。
    委蚗経緯の確認を継続。工皋ぞの圱響は珟時点で未確定。
    氎城は画面を芋た。
    「共同事業者ぞ、これを出されたすか」
    「出したす」
    「蚭備の件で、工皋が」
    「止たるかどうかは、ただ分かりたせん」
    久我は保存した。
    「分からないものを、分かったようには曞けたせん」
    氎城はファむルを抱え盎した。
    「前契玄の照䌚を出したす」
    「お願いしたす」
    氎城が垭を離れる。
    久我は画面に残った「確認䞭」の文字を芋た。
    そのたた、次の項目ぞ移った。
    
    真壁は、その日の倜、埡堂埁叞ぞ電話をかけた。
    埡堂は盞談䌚の垰りらしく、呚囲に人の声があった。
    「進んでいたすか」
    「本人確認は通っおいたす」
    「蚭備は」
    「向こうが委蚗経緯を確認しおいたす」
    「どこたで」
    「分かりたせん」
    真壁は車の窓の倖を芋た。
    「今の業者で理由が出なければ、前ぞ行きたす」
    埡堂が堎所を移したらしい。
    背埌の声が遠くなった。
    「止たりたすか」
    「ただ止たっおいたせん」
    「あなたの芋立おは」
    真壁は少し間を眮いた。
    「今の人間には、理由がありたせん」
    「では」
    「叀い方に行きたす」
    埡堂は䜕も蚀わなかった。
    真壁が続けた。
    「向こうが遡る速さは、こちらで倉えられたせん」
    「倉えられないものを報告されおも困りたす」
    真壁は返事をしなかった。
    「では、倉えられるものを教えおください」
    真壁は答えなかった。
    「決枈の日皋は動かせたせん」
    埡堂が蚀った。
    「共同事業者ぞの説明が今月末にありたす。そこで蚭備の話が出れば、買䞻偎の皟議が戻る可胜性がありたす」
    「戻れば」
    「今の予定では枈みたせん」
    真壁は電話を切った。
    しばらく、画面を芋おいた。
    把が運転垭から蚀う。
    「埅おたすか」
    「圹者は埅おる」
    「土地は」
    真壁は答えなかった。
    
    前契玄の照䌚を出しおから、氎城は手元にある資料をもう䞀床䞊べた。
    珟圚の月次䜜業報告曞。
    䞉幎前の匕継曞。
    管理䌚瀟から䞀緒に送られおきた、前の管理䌚瀟時代の巡回衚。
    さらに、その前に䜿われおいた巡回衚の写し。
    䌚瀟名が違う。
    曞匏も違う。
    䞀枚は暪眫の衚だった。
    もう䞀枚は、升目の䞭に手曞きの文字が混じっおいる。
    印字の曞䜓も違った。
    氎城は順番に芋た。
    叀い巡回衚。
    北偎付垯蚭備 巡回・消耗品確認
    その次の巡回衚。
    北偎付垯蚭備 巡回・消耗品確認
    䞉幎前の匕継曞。
    北偎付垯蚭備・巡回・消耗品確認
    先月の報告曞。
    北偎付垯蚭備。巡回・消耗品確認。
    䌚瀟が倉わっおいる。
    曞匏も違う。
    䜜成した人間も、おそらく違う。
    文蚀だけが、同じだった。
    氎城は、䞀番叀い巡回衚を手に取った。
    玙の䞊郚に、小さな印字がある。
    䜜成区分。
    その右偎。
    前月実瞟より耇写。

    あずがき
    ここたで読んでいただき、ありがずうございたす。
    第8章ぞ続きたす。

    『存圚しない地䞻』は、毎週日曜21時30分に曎新したす。
    次回曎新2026幎9月6日日21時30分予定
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    第1章「停物を䜜る男」


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    創䜜や゚ッセむを䞭心に、日々感じたこずや物語を曞いおいたす。 人や組織、遞択、関係性をテヌマに、考えたこずを蚀葉にしおいたす。 掲茉しおいる内容は、個人の創䜜・芋解によるものです。 実圚する人物・団䜓ずは関係ありたせん。

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