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『存圚しない地䞻』最終章「名前は、ある」

    土地には、名前がある。

    曞類にも、名前がある。

    けれど、その名前が蚘されおいるこずず、

    その人が売るず決めたこずは、

    同じではなかった。

    決枈予定日が近づく。

    停物の本人を䜜った男は、

    最埌に䜕を遞ぶのか。


    前回たで

    北偎付垯蚭備の管理履歎を远ううちに、東倮郜垂開発は、旧斜蚭に由来する第䞉者の利甚や管理行為が、珟圚の売買察象地で継続しおいないかずいう問題に行き着いた。

    本人同垭の远加確認で、倉橋柄江は真壁を芋ずに答えた。

    「確認できたせん」

    それは、第䞉者の利甚があるずいう蚌明でも、ないずいう蚌明でもなかった。

    久我ず氎城は、売䞻本人の認識ず土地の珟況を分けお蚘録した。

    珟況確認、未了。

    䞀方、六幎前の写真に写る人物も、北偎通甚口で「売らない」ず蚀った人物も、本人性は確認されおいない。

    決枈予定日は、ただ倉わっおいなかった。

    今回の䞻な登堎人物

    真壁遌
    停の地䞻本人を䜜り䞊げる「本人蚭蚈者」。取匕の決枈が迫る䞭、最埌の刀断を迫られおいる。

    倉橋柄江
    「芊原矎代子」を挔じおきた元舞台女優。本人確認では、真壁に頌らず自分の認識で回答した。

    把盎人
    真壁ず行動する実働担圓。六幎前の写真の出所を远っおいる。

    久我慎䞀郎
    東倮郜垂開発の甚地取埗担圓。未確認事項を残したたた、決枈刀断を進める。

    氎城菜月
    久我の郚䞋。土地の管理・䜿甚関係ず本人確認の蚘録を敎理しおいる。

    埡堂埁叞
    土地取匕の調敎圹。買䞻偎からの確認事項や決枈に関する連絡を真壁ぞ䌝える。

    地䞋の若い女
    旧ポンプ宀にいた女性。名前も、そこで暮らす事情も、ただ明らかになっおいない。

    【前話】

    第14章「ないず、蚀えたすか」



    最終章 名前は、ある

    決枈予定日の前日。

    氎城菜月は、確認事項の䞀芧を印刷した。

    売䞻本人ぞの远加確認。

    回答枈み。

    旧斜蚭に由来する第䞉者の利甚・管理行為。

    珟況確認、未了。

    久我慎䞀郎は資料を芋た。

    「远加で確認できたこずは」

    「ありたせん」

    「決枈担圓ぞ報告しおください」

    「予定日は明日です」

    「分かっおいたす」

    久我は資料を眮いた。

    「確認できおいないこずも、刀断材料です」

    

    しばらくしお、決枈担圓から回答が届いた。

    珟況確認未了。

    珟時点で、決枈実行承認は行わない。

    氎城が報告するず、久我は蚀った。

    「期日の倉曎を申し入れおください」

    「売䞻偎の同意は」

    「暩限を確認したうえで進めたす」

    氎城は埡堂埁叞ぞの連絡文を開いた。

    送信前に、もう䞀床読み返した。

    

    「買䞻から、決枈期日倉曎の申入れです」

    埡堂の声は、い぀もず倉わらなかった。

    真壁遌は窓の倖を芋た。

    「い぀たでだ」

    「新しい期日は未定です」

    「珟況が確認できれば進むのか」

    「再調敎の䜙地はありたす。ただし、売䞻偎の同意が必芁です」

    「たた本人を出すのか」

    「確認方法は調敎したす」

    真壁は机の䞊の玙を芋た。

    北偎通甚口。

    本人性、未確認。

    「明日の朝たでに方針をください」

    「分かった」

    電話が切れた。

    

    その倜、柄江から電話があった。

    「明日、たた眲名するんですか」

    「延期の話が出おいる」

    「そのあずも、私が必芁ですか」

    真壁は答えなかった。

    「私は、もう芊原矎代子の名前を曞きたせん」

    「分かった」

    「前に答えたこずは、倉えたせん」

    「確認できない、か」

    「はい」

    柄江は少し黙った。

    「それに、私は芊原矎代子ではありたせん」

    真壁は窓の倖を芋た。

    「知っおいる」

    「そうですね」

    電話が切れた。

    

    翌朝。

    把盎人が封筒を持っおきた。

    「六幎前の写真です」

    「照䌚は」

    「ただ返事が来おいたせん」

    「続けろ」

    把は封筒を鞄に戻した。

    「決枈、延期できるんですよね」

    「盞手はそうしたいらしい」

    「だったら、ただ可胜性はありたす」

    真壁は二枚の玙を机に䞊べた。

    柄江の回答蚘録。

    北偎通甚口の接觊蚘録。

    「把」

    「はい」

    「この二枚、どっちも本人の蚌明にはならない」

    「そうですね」

    「なのに、俺たちは本人を甚意した」

    把は答えなかった。

    真壁は埡堂ぞ電話をかけた。

    

    「延期の同意は取れない」

    埡堂は黙った。

    「珟況が確認できれば、取匕を続ける䜙地はありたす」

    「知っおいる」

    「売䞻本人の確認をやり盎せば」

    「やり盎せない」

    「真壁さん」

    「柄江は、芊原矎代子じゃない」

    埡堂の声が止たった。

    「これたで本人ずしお出しおいた女は、俺が甚意した」

    「それは、どういう意味ですか」

    「蚀ったずおりだ」

    沈黙が続いた。

    「その話は、私の刀断だけで扱えたせん」

    「分かっおいる」

    「買䞻偎ぞ䌝える必芁がありたす。蚘録も残りたす」

    「残せ」

    真壁は机に眮いた二枚の玙を芋た。

    「もう䞀぀ある」

    「䜕ですか」

    「旧ポンプ宀で、人に䌚った」

    埡堂は答えなかった。

    「誰ですか」

    「若い女だ。名前は知らない」

    「い぀ですか」

    「珟地を確認したずきだ。把も䞀緒だった」

    「旧ポンプ宀は、廃止されおいるはずでは」

    「図面では、そうなっおいる」

    「今の売買察象地に含たれる堎所ですか」

    「そこたでは確認できおいない」

    「その人は、䜕をしおいたんですか」

    「蚭備を盎しおいた。電気も氎も䜿われおいた」

    埡堂はしばらく黙った。

    「なぜ、それを今たで」

    真壁は答えなかった。

    埡堂が続けた。

    「その情報も、確認が必芁です」

    「分かっおいる」

    「買䞻偎ぞ䌝えたす」

    「頌む」

    少し間があった。

    埡堂が蚀った。

    「契玄の扱いも、費甚の問題も、これでは枈みたせん」

    「ああ」

    「成功時の取り分は」

    「いらない」

    「準備費甚に぀いおも敎理が必芁です」

    「俺に請求しおくれ。内容は確認する」

    埡堂は䞀床、息を吐いた。

    「正匏に報告したす」

    「頌む」

    電話が切れた。

    把が真壁を芋た。

    「蚀っちゃいたしたね」

    「ああ」

    「地䞋のこずたで」

    「芋たこずは、芋たこずだ」

    「これから、どうなるんですか」

    「分からない」

    真壁は机の匕き出しを開けた。

    䞭に、芊原矎代子の眲名芋本があった。

    「柄江を呌べ」

    「䜕お蚀いたす」

    「終わった、ず」

    

    東倮郜垂開発では、決枈予定時刻を過ぎおも実行承認は出なかった。

    氎城が久我の垭ぞ来た。

    「埡堂さんから、远加の報告です」

    久我は画面を芋た。

    そこには、これたで売䞻本人ずしお面談した人物に぀いお、本人ではないずの申告が蚘されおいた。

    「申告したのは」

    「売䞻偎の手配に関わっおいた人物です」

    「裏付けは」

    「これから確認したす」

    久我は頷いた。

    「では、本人性の蚘録を曎新しおください」

    「確認枈みにはできたせんね」

    「はい。これたでの確認も、そのたた有効ずは扱えたせん」

    氎城は蚘録を開いた。

    圓初決枈予定日。

    決枈実行なし。

    期日倉曎。

    合意未確認。

    売䞻本人の確認。

    なりすたしの申告あり。再確認が必芁。

    久我が蚀った。

    「ほかには」

    「旧ポンプ宀で人に䌚ったずいう申告もありたす」

    久我は顔を䞊げた。

    「誰が䌚ったんですか」

    「同じ申告者です。もう䞀人、同行者がいたそうです」

    「人物の身元は」

    「䞍明です」

    「堎所は」

    「旧ポンプ宀ず申告されおいたす。ただし、珟圚の売買察象地ずの䜍眮関係は確認できおいたせん」

    久我は、以前の珟況確認蚘録を開いた。

    旧斜蚭に由来する第䞉者の利甚・管理行為。

    珟況確認、未了。

    「本人の申告内容ずは分けおください」

    「はい」

    「珟地で人を確認したずいう申告があった。それ以䞊は、ただ分かっおいたせん」

    氎城は入力した。

    旧ポンプ宀における人物ずの接觊申告あり。

    申告内容の裏付けおよび珟圚の売買察象地ずの関係は未確認。

    「珟況確認は」

    「継続したす」

    久我は頷いた。

    氎城が聞いた。

    「契玄は」

    「担圓郚眲で察応を怜蚎したす」

    「北偎通甚口の人物は」

    「別に確認を続けたす」

    氎城は新しい項目を远加した。

    登蚘名矩人の暩利関係。

    本人の所圚および意思確認。

    久我は蚀った。

    「名前が蚘されおいるこずず、その人が売るず蚀ったこずは別です」

    氎城は頷いた。

    

    地䞋の郚屋では、若い女が手袋を掗っおいた。

    氎を切り、指先を揃える。

    也かしおいた䞀組を棚ぞ戻す。

    机の䞊には、以前から保管しおいた資料があった。

    女は䞀枚を取り出した。

    それから、残りを封筒ぞ戻した。

    少し考えお、取り出した䞀枚も戻した。

    今は、枡さない。

    誰に䜕を芋せるかは、自分で決める。

    女は封筒を棚の奥ぞ眮いた。

    地䞊で、決枈が行われなかったこずを、圌女はただ知らなかった。

    蛇口を閉める。

    棚には、ただ䜿えるものが残っおいた。

    

    柄江が来たのは午埌だった。

    い぀もず同じ鞄を持っおいた。

    「決枈は、どうなりたした」

    「実行されなかった」

    「そうですか」

    「俺たちがしおいたこずも、䌝えた」

    柄江は真壁を芋た。

    「私のこずも」

    「ああ」

    しばらく沈黙があった。

    「そうですか」

    真壁は䞀枚の玙を机に眮いた。

    芊原矎代子。

    緎習した眲名だった。

    「残しおいたんですね」

    「ああ」

    「これ、いただいおも」

    真壁は少し考えた。

    「蚘録は別に残っおいる」

    「分かっおいたす」

    柄江は玙を受け取った。

    財垃を開き、小さな玙を確かめる。

    倉橋柄江。

    それを戻しおから、眲名芋本を別に折った。

    「随分、緎習したしたね」

    「ああ」

    「本物は、あんなに緎習しないんでしょうね」

    真壁は䜕も蚀わなかった。

    柄江は立ち䞊がった。

    「お䞖話になりたした」

    「こちらこそ」

    玄関で靎を履く。

    真壁は扉を開けた。

    柄江は廊䞋ぞ出た。

    振り返らなかった。

    

    建物を出お、柄江は携垯電話を取り出した。

    連絡先を開く。

    嚘の名前があった。

    最初に真壁から報酬の䜿い道を聞かれたずき、䌚いに行く぀もりだず答えた。

    その報酬は、もう入らない。

    柄江は画面を芋぀めた。

    しばらくしお、短い文章を打った。

    久しぶり。柄江です。

    そこたで曞いお、手が止たった。

    名前を消そうずしお、やめた。

    送信した。

    返事は、ただ来なかった。

    柄江は携垯電話を鞄にしたい、歩き出した。

    

    倕方。

    氎城菜月は決枈関係の曞類を敎理しおいた。

    圓初の決枈予定日。

    決枈実行なし。

    期日倉曎。

    合意未確認。

    売䞻本人の確認。

    なりすたしの申告あり。

    氎城は蚘録を保存した。

    その隣には、確認を続ける事項が残っおいた。

    北偎通甚口で接觊した人物。

    本人性、未確認。

    六幎前の管理履歎。

    原資料の照䌚継続。

    旧斜蚭ず珟圚の売買察象地ずの関係。

    珟況確認、調敎䞭。

    旧ポンプ宀で接觊したずされる人物。

    申告内容の確認、未了。

    登蚘名矩人の所圚ず意思。

    確認未了。

    氎城はそれぞれを別の項目ずしお残した。

    どれも、同じ理由でたずめられるだけの根拠はなかった。

    最埌に、決枈で䜿甚する予定だった曞類を開いた。

    売䞻。

    芊原矎代子。

    その暪には、登蚘に蚘された䜏所がある。

    氎城は曞類を重ねた。

    久我が通りかかった。

    「終わりたしたか」

    「圓初の決枈予定日に぀いおは」

    「確認事項は」

    「残しおいたす」

    久我は頷いた。

    「お願いしたす」

    氎城は、最埌の曞類を䞀番䞋ぞ戻そうずした。

    途䞭で手を止めた。

    売䞻。

    芊原矎代子。

    名前は、そこにあった。

    その䞋の眲名欄には、

    誰の字もなかった。

    完


    あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたす。

    2026幎7月から続けおきた『存圚しない地䞻』は、党15章で完結ずなりたす。

    ここたで物語にお付き合いいただき、本圓にありがずうございたした。


    『存圚しない地䞻』を最初から読む

    第1章「停物を䜜る男」


    å…š15章をたずめお読む

    『存圚しない地䞻』専甚マガゞン

    #小説
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    #コンゲヌム
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    #存圚しない地䞻

     
     
    創䜜や゚ッセむを䞭心に、日々感じたこずや物語を曞いおいたす。 人や組織、遞択、関係性をテヌマに、考えたこずを蚀葉にしおいたす。 掲茉しおいる内容は、個人の創䜜・芋解によるものです。 実圚する人物・団䜓ずは関係ありたせん。

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