
自分の人生なのに、意識の中心は「他人」だった。無意識に自分を黙らせる「セルフ・サイレンシング」とは
【 人間関係と心のしくみ|第2回 】
人と話しているとき、相手がどう思っているかばかり気になって、その場では自分がどうしたいのか分からない。そんなことはありませんか。
相手の表情や言い方を確かめながら、嫌だと思っても言わずに合わせる。あとで一人になってから、「本当は嫌だったのかもしれない」と気づくこともあります。
関係を保つために、自分の気持ちや考えを抑えてしまうことは、心理学で「セルフ・サイレンシング」と呼ばれます。
この記事では、なぜ相手の反応が自分の気持ちより先に気になるのか、そしてその場で本音が分からなかった自分をどう理解すればよいのかを考えていきます。
私自身、人と接している間は、相手がどう思うかを考えることで頭がいっぱいでした。
・人といる間、意識はどこに向いている?
「相手は不機嫌ではないか」「この言い方で大丈夫だろうか」。そんなことを考えている間、自分の疲れや違和感に気づく余裕がなくなることがあります。
相手と離れて初めて、「あのときは断りたかった」「悲しかった」と分かる。これは、自分に気持ちがなかったという意味ではありません。その場では相手の反応を確かめることを優先していた、と考えることもできます。
職場や付き合う人が変わっても、また相手に合わせ、あとで苦しくなることがあるなら、相手だけでなく、自分が関係の中でどう反応しているかにも目を向けてみます。
・頭で考えるより先に、反応していることがある
私たちは、人と関わるたびに、すべてを一から考えて行動しているわけではありません。
相手の表情が少し曇ったとき。
声が少し強くなったとき。
自分の意見を伝えようとしたとき。
頭で「どうしよう」と考えるより先に、笑ってごまかしたり、謝ったり、自分の気持ちを引っ込めたりすることがあります。
それは、これまでの経験の中で身についた、自分を守るための反応かもしれません。
たとえば子どもの頃、自分の意見を言うと怒られたり、否定されたりした経験が重なると、相手の反応を先に確かめるようになることがあります。
本音を言うより、相手に合わせた方が安全だった。
自分の気持ちを表すより、にこやかにしていた方が関係を保てた。
その頃には必要だった反応が、大人になった今も、意識しないところで先に働いていることがあります。
・無意識は、あなたを困らせるためにあるのではない
「無意識に同じことを繰り返している」と聞くと、自分の中に、自分では制御できない悪いものがあるように感じるかもしれません。
けれど、無意識の反応は、あなたを困らせるために身についたものではありません。
傷つかないようにするため。
怒られないようにするため。
その場を安全にやり過ごすため。
大切な人との関係を失わないため。
かつての自分を守るために必要だった反応が、今も同じように働いているだけなのかもしれません。
だから、
「また相手に合わせてしまった」
「どうして私は、いつもこうなんだろう」
と責めるだけでは、その反応が生まれた理由は見えにくいままです。
必要なのは、無意識を敵にすることではなく、なぜその反応が必要だったのかを理解することです。
・私も、自分の本音が分からなくなっていました
厳しい両親のもとで、怒られないように顔色をうかがい、自分の意見を出さないようにしているうちに、何を言えば怒られないかは考えられても、自分が本当は何を感じているのかが分からなくなっていました。
大人になってからも、本当は嫌だったのに、その場では笑って合わせてしまう。
あとになって苦しさを感じても、相手の言動より先に、自分の受け取り方や伝え方に原因を探していました。
長い間、それが自分の性格なのだと思っていました。
でも、自分に起きている反応を少しずつ見つめていくと、本音がなかったわけではないことが分かってきました。
本音を感じるより先に、相手に合わせて自分を守る反応が働いていたのです。
・「何を感じたか」を、あとから確かめてもいい
その場ですぐに本音が分からなくても、大丈夫です。
まずは、人と会ったあとに疲れていたり、胸が重かったり、会話を何度も思い返したりしている自分に気づいてみてください。
そして、
「私は、あのとき本当はどう感じていたのだろう」
「嫌だったのに、笑っていなかっただろうか」
「相手にどう思われるかではなく、私はどうしたかったのだろう」
と、自分に問いかけてみます。
すぐに答えが出なくても構いません。
「嫌だったのかもしれない」
「本当は断りたかったのかもしれない」
その小さな感覚を否定せず、いったん受け止めることが、自分の本音を取り戻す始まりになります。
・繰り返しに気づくことは、自分を責めることではない
似た人間関係を繰り返していることに気づくと、また自分に原因を集めたくなるかもしれません。
でも、繰り返しに気づくことは、
「やっぱり自分のせいなのかもしれない」
と結論づけることではありません。
これまで無意識に起きていた反応を、初めて自分で見つけられるようになったということです。気づくことができれば、次からは必ず変えられる、という単純な話ではありません。
それでも、気づかないまま同じ反応を続けることと、
「今、私はまた自分の気持ちより相手を先に見ているかもしれない」
と分かることには、大きな違いがあります。
自分を責めるためではなく、自分を理解するために、繰り返している反応を見つめてみる。
そこから、これまでとは違う関わり方を選ぶ準備が始まります。
次回は、相手に合わせることを急にやめたり、無理にはっきり言おうとしたりするのではなく、自分の気持ちを大切にしながら、これまでと違う関わり方を選ぶ最初の一歩について書きたいと思います。
セラピールーム・ツインスター
河本京実
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河本 京実(セラピールーム・ツインスター)
大学で心理学を学び、心理とスピリチュアルの両面からサポートしています。
リーブス認定ヒーラー/認定創造療法カウンセラー/認定スーパーバイザー