
【ゲームの企画】ゲーム企画の考え方・現代版 〜熱量で作り、認知を同時に設計する
本記事は、個人開発から中規模プロダクトを手がける方々に向けた内容です。潤沢な広告予算と巨大な販売網を持つ大規模タイトルや、著名なスタジオが取り組むプロジェクトには当てはまらない部分もあるかもしれません。
しかし、限られたリソースの中で「いかにして認知を獲得し、プレイヤーに届けるか」という視点において、少しでも参考になれば幸いです。
良いものを作れば売れるの終わり
「良いものを作れば売れる」という言葉は、かつては真実だったかもしれません。しかし、現在の市場環境においては、残念ながらそれだけでは通用しづらくなっています。
良いプロダクトであることは大前提として、それに加えて「認知を獲得すること」、そして「その分野において一定のクオリティを満たしていること」の両方が揃って、はじめてプレイヤーの手に届く時代へと変化しました。
ここまでは、多くの方が実感されていることでしょう。重要なのは、その次のステップをどう踏み出すかです。
企画設計の基本的なとっかかりに関してはこちらの記事にもまとめています
マーケティングは不要?
では、マーケティング主導のアプローチが完全に過去のものになったのかといえば、そうではありません。有料、無料を問わず、認知から購買までのフローを持続的に設計することは、いつ何時、どの分野でも一生不可欠な要素です。
重要度が低くなってきた点は、、大量のコストをマスメディアに投下して購買を誘発すること、ぐらいだと思っています。
しかし、「だからといってマーケティング主導で企画を立てればよい」というのも、また少し違います。
個人的な経験から申し上げると、マーケティング主導で企画を立ち上げた場合、本当に革新的な面白さを持つゲームは生まれにくい傾向があると感じています。もちろん、その手法が有効な市場やタイミングも存在しますが、現在のゲーム開発における最適解とは言えないのかもしれません。
マーケティング主導の企画設計が「有効な場合」と「そうでない場合」
ここで少し立ち止まって、マーケティング主導のアプローチが有効に機能する条件と、そうでない条件を整理しておきたいと思います。まず、マーケティング主導が比較的うまく機能しやすいのは、次のような状況です。
一つ目は、市場そのものが成長ドリブンの局面にある時です。
ユーザー数が右肩上がりで増えている市場では、既存の需要に乗るかたちで設計されたプロダクトでも一定の成果を上げやすく、マーケティングの投資対効果が出やすい環境が整っています。
二つ目は、ニッチな市場がすでに確立されていたり、集客フローが潤沢に使える状況です。
特定のジャンルやコミュニティが成熟していて、そこへのリーチ手段が明確に存在する場合、マーケティングの精度を高めることで効率的にユーザーを獲得できます。三つ目は、ローコスト・ミドルリターンが見込める構造の時です。開発コストを抑えつつ、既存の需要に対して確実に届けるという戦略においては、マーケティング主導の合理性は高まります。
マーケティング主導の企画アプローチが機能しにくいケース
一方で、マーケティング主導の企画アプローチが機能しにくい、あるいはリスクを伴いやすい状況もあります。インディゲームの世界やソーシャルゲーム界隈がその典型です。今やコンソールソフトもそうかもしれませんね。
インディゲームにおいては、そもそも広告予算を大きく確保できるケースが少なければ、マーケティングのレバレッジがプラットフォーム内でも効きづらい領域です。
◼️ソーシャルゲーム事業
また、ソーシャルゲーム市場では、ユーザー獲得単価(CPI)が年々上昇しているだけでなく、新陳代謝が著しく乏しい市場で、かつ収益性の低下もあり、マーケティング投資に見合うリターンを得ることが以前より難しくなっています。
もちろん、「小さなパイを確実に取りに行く」という戦略においては、マーケティング主導にも一定の合理性があります。
ターゲットを絞り込み、限られたユーザー層に対して精度高くアプローチすることで、小規模ながら安定した収益を確保するという考え方は否定されるものではありません。
ただし、その場合でもマーケティングコストが高くなりがちである点と、そのアプローチから本当に画期的な遊び体験が生まれるかというと、構造的に難しいという現実があります。
マーケティング基点の企画設計は、どうしても「既存の需要に応える」方向に引っ張られるため、誰も見たことのない体験を生み出す原動力にはなりにくいのです。
これはあくまで一つの視点に過ぎませんが、企画の考え方はここ数年で確実に一段階進化したと感じています。今回は、その"現代版"とも言えるアプローチについて整理してみたいと思います。
"現代版"企画設計のアプローチの順番
結論から申し上げると、「熱量を原動力として作りつつ、いかに認知を獲得するかを同時に設計すること」が、これまで以上に重要になっています。
熱量がプロダクトの核であり、認知がそれを羽ばたかせる翼です。どちらが欠けても、現在の市場で高く飛ぶことは困難です。
一昔前であれば、圧倒的なクオリティだけを追求して成功を収めることも不可能ではありませんでしたが、今は情報量が爆発的に増え、数多くのタイトルがリリースされる中で、簡単に埋もれてしまいます。作るのと同じくらい、認知されるための設計にもリソースを割かなければ、作品を届けることは難しいのです。
とはいえ企画の基本は、今も昔も変わらない
まず、時代が変わっても揺るがない部分からお話しします。
企画の土台となるのは、「熱量」と「コンセプトの徹底」です。自分自身が心の底から「これは面白い」と信じられるものを、一本の柱としてとことんまで尖らせる。あれもこれもと要素を詰め込むのではなく、「この体験ができる」という一点に特化することが重要です。
世の中の大きなヒット作を振り返ってみても、最初は特定の機能や体験に特化した形でスタートしたものが少なくありません。たった一つの強みで頭角を現し、そこから大きな成功へと繋がっていった事例は数多く存在します。総合力で勝負したのではなく、一点の徹底的な磨き込みによって勝利を掴んでいるのです。
この点は、AI技術がどれほど進化しようと、SNSのトレンドがどう変化しようと、決して揺らぐことはありません。「何を面白いと思うか」という熱量と、コンセプトを貫き通す意志。企画の芯は、常にここにあります。
変わったのは、「認知を同時に設計する」こと
では、何が変わったのでしょうか。
それは、「作った後に宣伝を考えるのでは、もう間に合わない」ということです。認知は、運任せで得られるものではありません。認知は「設計」するものであり、しかも「作ってから」ではなく「作りながら」仕込んでいく必要があります。 企画段階から認知の獲得戦略を織り込んでおくことで、初めて効果的なアプローチが可能になります。
ただし、ここで順番を間違えてはいけません。認知の設計は、決して企画の"出発点"ではありません。あくまで、熱量を持って生み出した核に対して、後から問いかける"チェック機能"として機能すべきものです。この順序を逆にしてしまうと、先ほど触れた「マーケティング主導のつまらなさ」に陥る危険性があります。
その上で、具体的にどのように認知を獲得していくか。私が普段から意識している要素をいくつかご紹介します。
認知の発信は、作り手自身がやった方がいい
ここで一つ、個人的な見解をお伝えしておきたいと思います。認知を取る仕事やSNSの発信戦略を考えることは当然として、その発信そのものは、できる限り作り手本人がやった方がいいと感じています。
理由はシンプルで、作り手自身が発信することで、考えたことをダイレクトに、スピーディーに言葉にできるからです。もちろん、全幅の信頼を置けるパートナーに任せるという選択肢もあります。ただ、現実にはそれが難しいケースがほとんどです。
SNSで法人アカウントがなかなか伸びにくいのも、同じ構造から来ていると思っています。発信しづらいという事情もありますが、それ以上に、全責任を背負いながら自分が言いたいことを自由に発信できる人が、結果として強い発信力を持つことが多い。熱量の薄い第三者が仕事として運用しているアカウントで、本当に伸びているものをあまり見たことがありません。
私自身、SNSの代理運用を請け負ったこともありますし、依頼されることも今でもあります。ただ、基本的には「あなた自身がやった方がいいので、そのお手伝いだけさせてください」とお伝えするようにしています。発信の熱量は、どんなテクニックよりも先に、読む人に伝わるものだと思っているからです。
見られる、語られる"仕掛け"を組み込む
現在の環境では、SNSを通じてある程度狙って認知を設計することが可能です。ネーミング、タイトル、略称、音楽やBGM、あるいは話題になりやすい要素など、人が思わず口にしたくなるような"引っかかり"を、企画の段階で仕込んでおきます。
ただし、ここには大きな落とし穴が存在します。「SNSでバズること」と「ゲームが売れること」は、全く別の現象です。 この点は、どれだけ注意してもし過ぎることはありません。単に話題になっただけのバズは、売上に繋がらないばかりか、プロダクトの中身が伴っていなければ、かえってネガティブな印象を与えかねません。
本当に購買に繋がる意味のあるバズは、一種類しかないと考えています。それは、「実際にゲームを購入し、遊んでくれた人が『これ、面白いよ』と言って広がるバズ」です。
これこそが、私たちが目指すべき正解です。作り手が意図的に仕掛けた話題ではなく、プレイヤーの実感から生まれた言葉の広がり。この本質を取り違えないことが、認知設計において最も重要なポイントです。
プレイヤーを「想像」する(狙いすぎない)
「誰に届けるか」を考えることは重要です。しかし、ターゲットを過度に意識しすぎると、企画自体が窮屈になり、面白みが失われてしまうことがあります。
そのため、ターゲットを"狙い撃ち"するのではなく、プレイヤーの姿を"想像するくらいが丁度良いバランスだと感じています。「このゲームを遊びたいと思うのは、どんな人だろうか」「プレイした後、どんな感想を抱いてくれるだろうか」。そんなプレイヤーの姿を思い浮かべながら、設計を進めていく。囲い込もうとするのではなく、想像力を働かせて寄り添う。この距離感が、魅力的なプロダクトを生み出す秘訣かもしれません。
拡散の"第一フェーズ"をどこに設定するか
現在、新しいゲームが見つけられる場所の中心は、圧倒的にSNSです。だからこそ、企画段階で深く考えておくべきことがあります。
「このゲームの、どのような情報が、SNSで拡散されるのか」そして、「その拡散の"第一フェーズ"をどこに設定するのか」。 この設計が、十分な認知を獲得できるかどうかを大きく左右します。
最初に「何を」「誰に」「どのように」見せるのか。その最初の一歩をどこに置くかを、企画の初期段階から想定しておく。リリースしてから慌てて広報活動を始めるのでは遅すぎます。認知獲得のプロセスは、最初の一手を打つ前から、すでに始まっているのです。
熱量が核、認知が翼
最後にまとめます。
現代のゲーム企画の基点において重要なのは「熱量がより重要な核であり、認知が翼である」ということです。どういうことかというと、よりやりたいことの思いが、結果として粘り強く取り組み続けられる源泉であり、熱量を外にも伝える勢いが高くなりやすいということかと感じています。
そもそもマーケティング基点からの企画開発ってどう考えても目的は売れるというゴールが設定されがちで、どうしても「仕事」的側面が強いなと思っています。もちろん、作るからには売れたい!と思う気持ちはあるかと思いますが、作りたい!が先にあるクリエイターの作品はやっぱり今のご時世でもあっというものを生み出している気がしています。
一方で、とはいえ、どれほど熱量を注いで面白いものを作っても、認知されなければ誰にも見つけてもらえません。
自分が本気で面白いと信じるものを、コンセプトを徹底して作り上げる。そしてそれと同時に、その作品がどのように見られ、語られ、どこで発見されるのかを緻密に設計する。「作ること」と「届けること」、その両方を同じ手でしっかりと握りしめる必要があります。
——結局のところ、本質はいつも同じ場所に行き着くのかもしれません。現代のゲーム企画もまた、「作る」と「売る」の間を絶えず往復する、終わりのないプロセスなのだと思います。
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