
組織の目的があって仕組みがある #242
人は、一人で成せることに限りがあります。
だからこそ、より大きなことを成すために、目的を共有する人たちと組織をつくります。
企業も同じです。
組織には、さまざまな考えを持つ人が集まります。価値観も違えば、得意なことも違う。仕事に対する向き合い方も、それぞれです。
私は、その多様性こそが組織の強みになり得ると思っています。
ただ、多様であることだけでは、組織として力を発揮することはできません。
大切なのは、その多様な人たちが「何のために一緒にいるのか」を共有していることです。
企業であれば、それは根幹にある経営理念なのだと思います。
■ 仕組みが先に立ってしまった組織の姿
企業では、組織を整えるために、さまざまな仕組みがつくられます。
評価制度を導入する。会議のルールを決める。業務をマニュアル化する。報告方法を統一する。
どれも、組織をより良くするために必要なものです。
ところが、仕組みをつくれば、組織が良くなるとは限りません。
むしろ、仕組みだけが先に走ることで、組織がぎこちなくなることがあります。
経営側からすれば、「公平にするため」、「効率を上げるため」、「成果を正しく評価するため」という合理的な理由があります。
一方で、現場からすれば、「監視されるようになった」、「今までの仕事を否定された」、「仕事が増えただけ」などと受け取られることもあります。
同じ仕組みであっても、その背景にある「何のために」が共有されているかどうかで、受け止め方は大きく変わります。
■ 狭義的な評価制度の失敗
過去にそのことを経験しました。
当時の経営者が成果主義の人事評価制度を営業部門にのみ導入したことがあります。
しかし、その制度は2年ほどで廃止することになりました。
原因は一つではありません。
さまざまな要因が重なっていました。
その中でも、最も大きかったと考えているのが、現場を十分に知らない経営側からのトップダウン施策だったことです。
評価制度の仕組みは、個人の成果を明確にし、それを論理的に評価につなげるものでした。
一見すると、分かりやすい仕組みです。
しかし、実際の仕事は、数字だけでは測れません。
誰かの仕事を支えることもあれば、営業部門をまたいで協力してもらうこともあります。
すぐには成果にならなくても、将来につながる仕事もあります。
目立たないけれど、組織を支えている仕事もあります。
そうした実態を十分に捉えないまま、狭義的に営業個人の成果のみを短期的、定量的に評価することに偏ってしまいました。
結果として、営業部門内だけではなく、全社的に社員たちから不信感を招くことになりました。
「この評価で、本当に自分たちの仕事を見ているのか」
そんな疑問を生んでしまったのだと思います。
■ 制度は、人を動かすためのものではない
現在の評価制度は、会社全体の目指す方向を起点に、部署の役割、そして一人ひとりの仕事へとつなげています。
会社の目指すことと自分の仕事がどうつながり、何を期待されているのかを明確にすることが前提です。
そこが明確になって初めて、評価に意味が生まれると捉えています。
制度は人を動かすためのものではありません。
目的を共有したうえで、それぞれが担う役割と仕事を評価につなげるものであると考えています。
評価制度とは、単に個人を評価するためではなく、会社の目的と一人ひとりの仕事をつなぐための仕組み、つまり手段なのだと考えています。
■ 多様性を活かすために、共通の目的が必要になる
組織には、さまざまな人がいます。
考え方も違えば、得意なことも違う。
だからといって、全員を同じ考え方にする必要はありません。
むしろ、違うからこそ生まれるものがあります。
ただ、違う人たちが同じ組織で力を合わせるためには、「ここだけは共有する」というものが必要です。
それが、経営理念なのだと思います。
目的は共有する。
しかし、そこに至る方法まで、すべて同じである必要はありません。
私は、この余白が多様性を活かすことにつながるのだと思っています。
組織に必要なのは、全員を同じ方向に向かせることではありません。
同じ目的に向かって、それぞれの強みを発揮できる状態をつくることです。
■ 制度が組織をつくるのではない
制度は、組織の目的そのものではなく、その目的を実現するための手段です。
経営理念が「何のために存在するのか」を示すものなら、制度は、その目的に向かって組織がどう動くのかを形にするものです。
だからこそ制度をつくるときは、「どうすれば人を動かせるか」ではなく、「何のために必要なのか」「会社の目指す方向とどうつながるのか」を考える。
そして、現場の声を聞き、実際に機能しているかを確かめながら、必要に応じて変えていく。
制度があるから、良い組織になるわけではありません。
大切なのは、何のために組織が存在するのかを共有し、その目的に向かって、それぞれの力を活かせる環境をつくることです。
人は、一人では成せることに限りがあります。
だからこそ組織をつくり、違う人たちが互いの力を活かしながら、一人では成し得ないことを成し遂げる。
制度は、そのための手段です。
だからこそ、仕組みをつくるときほど、「何のために、この組織があるのか」という原点に立ち返ることが大切なのだと思っています。