メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【山を歩いてきた道 03】富士山|その先に、もっと歩きたい山があった

    山歩きを始めたころ、いつか登ってみたいと思っていた山があった。

    富士山だ。

    静岡に住んでいると、富士山は日常の中にある。

    毎日のように目にする山だからこそ、一度は自分の足で登ってみたい。日本一高い山に登ることは、山歩きを始めた理由のひとつだった。

    浜石岳に通いながら、少しずつほかの山にも登るようになっていた。

    知らない山を調べ、標高を見て、自分でも登れそうか考える。

    いつかは標高2,000mの山へ。

    そんなふうに、少しずつ目標を広げていたころだった。


    富士山に登れなかった日

    初めて富士山に挑戦したのは、2013年7月のことだった。

    目指したのは富士宮ルート。

    山頂でご来光を見るつもりだったが、天気予報は曇りや雨、雷の可能性もあるというものだった。

    本当なら天気のよい日に改めたいところだったけれど、予定を合わせるのは簡単ではない。子どもたちのこともあり、気軽に日程を変更できるわけではなかった。

    結局、そのまま登ることにした。

    夜の山を歩き、寒さや雨、強い風にさらされながら登っていく。

    思っていた以上に厳しい状況だった。

    九合目まで進んだものの、天候は回復しない。残された時間や下山後の予定も考え、これ以上進むのはやめることにした。

    山頂には届かなかった。

    悔しさはあったけれど、あの状況で引き返したのは、今振り返っても必要な判断だったと思う。

    下山途中には雲海が広がり、雲の中とは違う景色を見ることもできた。

    そして、またいつか挑戦しようと思った。


    日本一高い山に登りたかった

    翌年の2014年7月、再び富士山へ向かった。

    前年の経験もあって、今度は夜間登山ではなく、日中に登ることにした。

    富士宮ルートから登り、山頂に立つ。

    ようやく、自分の足で日本一高い場所にたどり着くことができた。

    山頂からの景色や火口、雲海。

    登ってきたからこそ見られる景色があった。

    もちろん、達成感は大きかった。

    一方で、長い登りと下りは想像以上に疲れるものだった。

    「もう富士山は登らなくてもいいかな」

    そんなことを思うくらい、満足感と疲労が入り交じっていた。

    それでも、心のどこかでは、来年もまた登るのだろうかと考えていた。

    富士山に登ることは、山歩きを始めたころの大きな目標だった。

    その目標を達成したことで、ひとつ区切りがついたような気がした。


    山は、富士山だけではなかった

    富士山に登れば、ほかの山にも登れるようになる。

    当時は、そんなふうに考えていたところもあった。

    けれど、実際には山によって登りやすさも違えば、歩く楽しさも違う。

    急な登りが続く山もあれば、森の中を静かに歩く山もある。苦労して登った先に、思いがけない景色が待っていることもある。

    富士山を目標にしていたころから、少しずつほかの山にも足を運んでいた。

    初めての山では、道が分かりにくかったり、思っていた以上に時間がかかったりすることもあった。

    地図やコンパスを確認しながら歩き、山の中での振る舞いや、安全に歩くために必要なことも少しずつ覚えていった。

    山に登るたびに、知らなかったことが増えていく。

    そして、登った山の数が増えるにつれて、次に行ってみたい山も増えていった。

    富士山に登ることが最初の目標だったけれど、山歩きの楽しみは、それだけではなかったのだと思う。


    富士山は、登るだけでなく眺める山でもあった

    印象に残っている景色のひとつに、朝霧高原側の毛無山から眺めた富士山がある。

    霧や雲海の向こうに、富士山が大きくそびえていた。

    目の前に広がるその姿からは、高さやスケールの大きさが伝わってくる。

    富士山に登ったときとは、また違う感覚だった。

    自分が登っている山から、別の山を眺める。

    立つ場所が変われば、見える景色も変わる。

    そんな当たり前のことが、山を歩くうちに少しずつ面白くなっていった。

    富士山は、自分の足で登ってみたかった山。

    そして、遠くから眺めても美しい山だった。

    もしかしたら、登ることだけでなく、眺めることにも山の楽しみがあるのかもしれない。

    そう思うようになった。


    行ってみたい山が、少しずつ増えていく

    山を始めたころは、標高1,000mの山から、いつかは2,000mの山へ。

    そんなふうに、段階を踏んで登れる山を増やしていくことを考えていた。

    けれど、いろいろな山の記録を読むようになると、標高だけでは測れない魅力があることも知った。

    山ごとに違う景色があり、歩く道があり、その山でしか味わえない時間がある。

    誰かの山行記録を見ては、自分も行ってみたいと思う。

    そうして、少しずつ行きたい山が増えていった。

    このころはまだ、遠くの山を長い距離でつないで歩くようになるとは思っていなかった。

    ただ、知らない山へ行ってみたい。

    今まで見たことのない景色を見てみたい。

    その気持ちが、次の山へ向かうきっかけになっていた。

    富士山に登ることを目指して始まった山歩きは、いつしか、富士山だけではない山の世界へと広がっていった。

    そして、いろいろな山を歩くうちに、隣り合う山をつないで歩く楽しさにも気づいていく。

    その話は、また次の記事で。

    次は、また山の話を。


    前の記事

    ▶【山を歩いてきた道 02】浜石岳|毎週、同じ山に通っていた理由


    関連記事

    ▶ 最初はこんなに歩けなかった

    ▶ 【富士山】プリンスルート|大砂走とシャリバテが教えてくれた補給の大切さ

    ▶ 【静岡】初心者におすすめの山5選|富士山・駿河湾・浜名湖、景色で選ぶ低山ガイド

    山を歩く中で、
    少しずつ変わってきたことがあります。

    このマガジンでは、
    そんな山との付き合い方や、
    歩きながら考えてきたことを残しています。

    ▶ 「山と歩いてきた時間」

     
     
    静岡の山を中心に、稜線をつないで歩いています。 約10年かけて静岡百山を完登。 静かな山や深い山、山と向き合う時間が好きです。 ロングハイキングやトレイルランも楽しみながら、山で出会った景色や歩いてきた道を綴っています。

    あなたへのおすすめ