
ドメーヌ ジェラール・キヴィとは? ナポレオンが愛したジュヴレ・シャンベルタンで出会った、本当に伝えたいブルゴーニュワイン
ブルゴーニュには、世界中に名を広げようとする生産者もいれば、一つの村を静かに守り続ける生産者もいる。
私が惹かれるのは、いつも後者である。
自分が生まれ育ったテロワールを誰よりも愛し、そのアペラシオンを生涯かけて表現しようとする人々。
その覚悟は、畑仕事にも、ワインにも、そして一本一本に注がれる愛情にも表れる。
ドメーヌ・ジェラール・キヴィ(Domaine Gérard Quivy)は、そのような家族経営のドメーヌである。
栽培面積はわずか7ヘクタール。生産は、すべて自社畑からのみ。
ほぼジュヴレ・シャンベルタンだけに向き合い、この土地の個性を磨き続けてきた。
だからこそ私は、このドメーヌに強く惹かれた。
ジュヴレ・シャンベルタンは、本当に「高級ワイン」なのだろうか
「ジュヴレ・シャンベルタン」
そう聞くだけで、
「高価なワイン」
「自分には縁のない世界」
そんな印象を抱く方も多いのではないだろうか。
確かに、ブルゴーニュの中でも世界的な銘醸地であり、価格だけを見れば気軽に毎日飲めるワインではない。
しかし、私が20年以上ブルゴーニュで暮らして感じているのは、その価値は価格ではなく、「人」と「歴史」にあるということである。
そのことを最も感じさせてくれたドメーヌの一つが、ドメーヌ・ジェラール・キヴィだ。
ナポレオンが愛したジュヴレ・シャンベルタン
ブルゴーニュには数多くの銘醸地がある。
その中でもジュヴレ・シャンベルタンは、別格の存在として語られてきた。
村にはブルゴーニュ最多となる9つのグラン・クリュがあり、その中心にあるのがシャンベルタンである。
ナポレオン・ボナパルトが愛したワインとして知られ、その真偽には諸説あるものの、「王者シャンベルタン」というイメージは今日まで受け継がれている。
だからこそ、ジュヴレ・シャンベルタンには
「力強い」
「骨格がある」
「男性的」
という表現が長年使われてきた。

ブルゴーニュワインは、この20年で大きく変わった
私がブルゴーニュへ来た20数年前。
当時はボルドーワインの影響もあり、濃く、力強く、新樽の香りが豊かなワインが高く評価されていた。
新樽100%は珍しくなく、スティラージュ後に再び新樽へ移す「200%新樽熟成」を行う生産者もいた。
そしてグレートヴィンテージは10年に1度あるかどうか。
雨が多く、ブドウを十分に成熟させること自体が難しかったのである。
しかし現在は違う。
地球温暖化によってブドウは成熟しやすくなり、生産者は抽出方法や樽使いを見直した。
さらに料理も変わった。
クラシックなフランス料理だけではなく、素材を生かした軽やかな料理が増え、喫煙率の低下によって人々の味覚も変化した。
ワインには、力強さだけではなく、透明感や繊細さ、エレガンスが求められるようになったのである。
ドメーヌ ジェラール・キヴィが表現する現代のジュヴレ・シャンベルタン
その変化を象徴するようなワインが、ドメーヌ・ジェラール・キヴィであった。
確かにジュヴレ・シャンベルタンらしい芯の強さはある。
しかし印象に残るのは、それ以上に果実の透明感である。
滑らかな口当たり。
静かに続く余韻。
それぞれのテロワールをそのまま映し出すような美しいバランス。
「男性的」という一言では語り尽くせない、現代のエレガントなジュヴレ・シャンベルタンがそこにあった。
ドメーヌ・ジェラール・キヴィとはどんな生産者なのか
ジェラール・キヴィ氏は、ディジョン出身だが、生まれながらのヴィニュロンではない。
競争・消費者行政に携わる公務員として働き、その後はコート・ド・プロヴァンス生産者組合のディレクターを務めた。
1980年、妻クリスティーヌ氏の家系が受け継いできたドメーヌを継承し、ワイン造りの道へ進んだ。
現在は、この土地で育ったセドリック氏やヨハン氏とともに、ジュヴレ・シャンベルタンのテロワールを丁寧に表現するワインを造り続けている。

ヨハン氏は、「以前は全房発酵を話題にする人などほとんどいなかった。それが今では、誰もが全房の話をするようになった」と笑いながら語っていた。
日本のお客様にも、これから長く安定的に私たちのワインを楽しんでいただきたいと思っています。
私は長年、
「ぜひ日本のお客様に、キヴィのワインの魅力を伝えたい。」
とお願いし続けてきた。
しかし、その返事はいつも同じだった。
「輸出先は増やしません。」
品質を守るため、取引先をむやみに広げない。
それがジェラール氏の変わることのない信念であった。
それでも何年もドメーヌを訪ね、ワインについて語り合う中で、少しずつ信頼関係を築いてきた。
ある日、日本のお客様について話していたとき、ジェラール氏は穏やかにこう語った。
「日本のお客様にも、これから長く安定的に私たちのワインを楽しんでいただきたいと思っています。」
その言葉を聞いて、私は改めて感じた。
ジェラール氏が大切にしているのは、販路を広げることではない。
一本一本のワインを大切に届け、その先にある人とのご縁を長く育てていくこと。
だからこそ、彼のワインには、派手さではなく、長い時間をかけて育まれた誠実さが感じられるのだ。

ブルゴーニュ旅行なら、ドメーヌ・ジェラール・キヴィを訪ねてほしい
もしブルゴーニュ旅行を計画しているなら、私はドメーヌ・ジェラール・キヴィをぜひ訪問先の候補に加えていただきたい。
現在のブルゴーニュでは、世界中から訪問希望が集まることに加え、地球温暖化による不安定な収量もあり、小規模な家族経営ドメーヌが見学や試飲を受け入れる余裕は年々少なくなっている。
そのような中で、ドメーヌ・ジェラール・キヴィは、訪れる人を温かく迎え、自らのワインを丁寧に紹介してくれる貴重な存在である。
さらにドメーヌがあるのは、18世紀に建てられた歴史的な建物である。
石造りの邸宅と地下セラーには、1700年代から続くジュヴレ・シャンベルタンの歴史が今も息づいている。
ワインを飲むだけではなく、この土地の時間そのものを体験できる場所なのである。
ドメーヌ・ジェラール・キヴィのワインは、価格ではなく物語を味わう一本
ワインには価格がある。
しかし、本当の価値は価格だけでは決まらない。
一本のワインの向こうには、畑を守り続けた家族の歴史がある。
変わり続ける気候の中でも、ジュヴレ・シャンベルタンという土地を表現し続ける哲学がある。
だから私は、ドメーヌ・ジェラール・キヴィのワインを、「高級ワイン」としてではなく、一人の生産者と数百年の歴史に出会うための一本として味わっていただきたいと思っている。
日本でのお取り扱いについて
生産者への取材および現地での経験に基づきこの記事を制作しています。取扱情報を掲載する場合は、読者に正確な流通情報を提供することを目的としています。
正規輸入元
株式会社アルカン