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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.43「雛県粟の少幎ず誘惑」

    ──釣鐘぀りがねの銖を瞛りお蒌耪める
    お空の顔は泡くっおおろう
    その手滑りお淡雪降らし
    君の瞌は玅く腫れぬか

    俺は今、遠回りの道、雚のあずの鉄柵おすりの雫を掎み空を芋䞊げおいる。
    薄青の空に舞う粉の劂き玻璃の虹ぞず指先を浞さんず背䌞せいのびをしたずころだ。

    「兄あんちゃん、あのきらきらずれるかい」

    声のする方を向くず、䞃぀ほどの少幎が黝い瞳を茝かせおいる。
    圌は季節にそぐわぬ薄い綿のシャツを着お、赀い県粟けしの花の束ねたのを握りしめおいた。

    俺は二床、䞉床皋跳ねおみたがどうにも届かない。
    息だけはあの淡き虹たで鞠のように飛んでいくのに。

    「そこ、乗っおみおおくれよ。そしたらきっず届くさ」

    少幎は俺の着物の袖を匕っ匵り䞊県うわめにねだる。
    圌もたた鉄柵に手をかけおいる。
    県粟の花茎くきは指ず鉄の間で朰されおいた。

    陜の光が鋭くなっお、玻璃の虹はいよいよ空の青に色を奪われそうだ。

    「兄あんちゃん、怖いのかい」

    黝い瞳の茝きは䞋瞌ぞず溢れ萜ちる。

    「そしたら、これ埡守り  」

    少幎は俺の衿元に䞀本の赀い花を挿した。

    「少し、埅っおろ。」
    俺は䞋駄を脱いで、巊の足を鉄柵に乗せた。
    金属の冷えが蹠あしうらから脊怎を貫くように疟走はしる。
    悊楜にも䌌た身慄いに、぀い高揚した。
    袎の裟は雫を吞い䞊げ色を濃くしおいる。
    虹は薄く、色を枛らし、もう間も無く䞀色ひずいろずなろうずしおいる。
    気が急せいた。
    右の足で地を蹎り䞊げた瞬間──

    県粟が䞀本、はらはらず萜ちおいく。
    暪髪は目尻の偎で揺れおいる。
    頭ず膝ずが点ず点で結び぀く。
    厩れた均衡の䞭で俺は笑っおいた。

    「じきにずれるぞ」
    そう叫んだずころで銖が絞たった。
    気づけば背埌うしろ倒しで空を芋䞊げおいる。
    薄青の空にただただ癜雲が䌞びるばかりであった。

    「危なかった  」
    耳朶みみのはにかかる髪を安堵に䌌た䜎い声が揺らす。
    背には人の枩ぬくみを感じる。

    「ああ   虹は」
    「虹」
    俺は胞にかかる黒い袖の腕を掎む。
    それを拒むかのようにその指は俺の肩を抌さえ぀けた。

    鉄柵を掎んでいた少幎が芋圓たらない。

    「男の子   䞃぀ほどの  」
    「はい」
    「赀い花  そうだ。雛県粟だ 雛県粟の束を持った少幎は」

    ふふ  ず品良く笑うのが聎こえた。

    ふいに俺の身䜓を締め付けおいた腕がゆるむ。
    どうやら俺はこの男の背に身䜓を凭もたせかけおいたらしい。
    背を抜かれ、胞を青空に預ける圢になる。

    ふいに空の青は圱の先ぞず消えた。
    銖元に䜓枩を持぀颚を感じる。

    「君たちの孊校では𠹭囉仿謚コロロホルムの吞い方を  」
    もうすでに甘く蕩ずろかす臭気に毒されおしたったような声だ。

    「いや  たさか。癜檀の間違い  ですよね」
    その声はむンクの滲むが劂くゆったりず離れおいく。

    「そうですよね   朔さくさん。」

    慈しむかのように髪を撫でるその男の瞳は光を持たない。
    ひたすらに黝く、俺の網膜にその色を泚ぎ蟌んでいる。

    圌は俺の背を支え、その堎に座らせた。
    鉄柵越しに、ゎりゎりず音を立おお流れる泥の氎が芋える。
    「䞉日䞉晩ず降りたしたから  」
    「ああ  」
    泥の匂いず魚うおの朰れるような匂いが混ざり合い、錻に぀く。

    「さあ、行きたしょうか。」
    男はそう蚀うず、埮睡みかけた俺の身䜓を起こそうず肩を支えた。
    「あ。これ  」
    俺は転がっおいた孊生垜子に手を䌞ばす。
    そしお、膝に乗せた。
    「桜  」
    「そう、桜ですよ。」
    圌は俺の頭にそれを被せるず、顔の方に回り蟌んできお「よく、お䌌合いで。」ず埮笑んだ。
    その身を包む詰襟の黒よりも深い色の瞳で。

    ずり萜ちる孊垜の鍔で前が芋えない。
    男は俺の着物から袎から矜織たで、党おバサバサず払い敎えた。
    そしお蚀う。

    「うれしいな。火曜日の玄束、芚えおいおくださったのですね。」

    俺は䜕も答えられなかった。
    その実、今自分がなぜここにいるのかを党く心埗おいないからだ。

    歩を進めるたび黒く芆われる芖界。
    支えられた肩は軋み、疑わしい蚘憶は喉を絞め䞊げる。

    俺は䞉床、四床、鉄柵の橋を振り返る。
    やはり、雛県粟ひなげしの少幎の姿は芋圓たらなかった。


    茶屋の軒先で干柿が揺れおいる。

    「着きたしたよ。」

    芖界の䞊半分はたた真っ黒く染たっおいた。

    今、俺に芋えおいるのは䞀面の石蕗の濃黄ず草履の䞊で赀らむか现い十本の足趟だ。
    苔を螏むような感芚の倢遊に、心地の良い嘔気はきけを芚える。
    しかし、それは同時に「逃げろ」ずいう膵の叫びでもある。

    「二人、二人です。」
    その声は、いやに近くで聎こえた。

    俺の足は敷居に匕っかかりながらも、その䞀線を超えたのだった。 

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    創䜜倧賞2026
    オヌルカテゎリ郚門゚ントリヌ䞭。
    たずめマガゞンです。



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    行っおみたいな、倧正時代。
    でもこの時代を生き抜く勇気はない。

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    春だが
    倏かよ

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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