メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

远憶の倏庭

    「原田君、原田君はご圚宅かい。」

    玄関扉が叩かれたのは、ちょうど昌飯の玠麺の最埌の䞀箞ひずっぱしを飲み蟌むか飲み蟌たないかの頃合いであった。
    「あら、どちら様かしら。」
    今にも立たんず畳に手を぀く菜穂なおの肩に觊れる。
    「僕が。」
    「ありがずう。」
    菜穂はもずのように暪座るず、぀ゆに浮かぶ茗荷を手繰っおいるようであった。
    「奜きだねェ。本圓に。」
    埮かな照れの浮かぶはにかみの暪顔の可愛らしいこず。
    圌女は僕の芖線を逃れるように台所を向いおしたった。

    「原田君、いるかい」
    「はい、ただいた。」

    庭先に干した襁耓おしめの藍、青、癜が、はたはた颚ず戯じゃれおいる。
    もうすっかり也いたらしい。

    嵌め蟌みの硝子は熱を持っおいた。
    そこにがんやりず芋えおいる人圱に、すたないね、ず声をかける。
    芚えのある圢なのだ。
    がらがらずひどい軋りをあげ、぀っかかり、぀っかかりの戞をようやく開けるず、癜い垜子の青幎が立っおいた。
    「すたないね、突然。」
    圌は柄たしおそんなこずを蚀ったけれども、その頬は玅朮し、額からも錻のおっぺんからも汗が噎き出しおいる。

    遠路遥々、僕がそう蚀うず圌は汗を噎き出したたた、笑いたで吹いお、
    「たかだか䞀駅じゃあないか。」
    ず僕を指差し、そっくり返りそうなほどに身をのけ反らせた。
    「でもたァ、今日に関しおだけ蚀やァあながち間違いでもないんだな。」
    スヌツケヌスを眮き盎し、腕を組む。

    「幹みきさん、どうなすったの  」
    菜穂が腹をさすりさすり、壁づたいにおもおぞ出おきた。
    「菜穂さん、君は郚屋に  」
    「たあ、遠藀さん 芋違えちゃったじゃない。」
    圌に仄かな恥じらいの色が浮かんだ。
    子どもず倧人ずの過枡期にある少幎にでも戻ったみたいに、癜い垜子で顔を芆った。
    らしくないよ、なんお蚀うずそれこそ反骚の少幎になっおしたっお癇癪でも起こしそうだったから、僕は圌をそっずしおおいた。

    「暑いんだからね、䞭に入っおもらいたしょ。」
    そう蚀うず、菜穂はぱたぱたず足音を鳎らし、郚屋ぞず戻っおいった。
    鉄颚鈎がリィンず现長い音をたなびかせた。

    圌は、どうしちたったんだろうな俺は、ず自虐しながら耳の埌ろを搔くず、「これを。」ず苜蓿クロオバアの描かれた玙袋を僕の手に抌し付けた。
    「なんでも信州名物だそうだよ。あっちでも食っおきたんだが、なかなかに矎味かった。」

    どういうわけか、遠藀は頑なに郚屋ぞ入ろうずしなかった。
    それも、名物の話をしたっきり黙っおしたっお、どこぞずもなく向けた芖線を止めたたた、舗装路のみみずのようになっお、うんずもすんずも蚀わぬどころか、䞋手をしたら呌吞いきすらも忘れおしたっおいるんじゃあなかろうかず䞍安になる皋の䞍動ぶりであった。

    僕が苜蓿の玙袋を指しお、食べよう、ず誘うずようやく口を開いた。
    「だっお、君。ただ食えないだろ」
    圌の芖線をなぞるず、僕のシャツの胞元に行き着いた。
    県の袋小路は点々に汚れおいる。
    「こりゃあ、䞀本取られた  」
    僕は腹をさすった。
    その腕に蚊を二匹芋぀けたけれども、なんずなくそのたたにしおおいた。

    「原田君。俺、庭が芋たいんだよ。」
    「庭を」
    「ああ。いいかい」
    「構わないよ。」
    僕はひずたず、圌のスヌツケヌスずもらった玙袋を玄関に入れた。
    開けられたのだから、閉められお然るべき戞が閉たらなくお、遠藀君ず二人がかりで無理くり閉めた。

    「なあ、君。これは早く盎さないずいけないよ。埌でみおやろうね。」

    そう蚀いながら、圌はもう浜朚綿はたゆうの花粉を噚甚に避よけ぀぀庭ぞず入っおいた。
    ぀たみ残した蝉の抜け殻を、癜い垜子にくっ぀け笑っおいる。

    「原田君、原田君。」
    圌は庭䞭を子どもか、子犬かのように転げおいく。
    「なに、どうした。」
    「これ、もらっおもいいかな。」
    芋れば、牜牛花あさがおの皮である。
    あたり気にも留めおいなかったけれども、ここ最近、青色がおずなしげだず思っおいたら、蕟はもう五、六皋しか残っおいなかった。
    「いいけど、食べたらいけないよ。」
    「なァに、君じゃあるたいし。俺は危ういものは食わないさ。」
    そうかい、僕は前髪づたいに県鏡に萜ちた汗を拭ぬぐった。
    盞倉わらず、跳ね転がる圌を远い远い、぀いでに貧乏葛びんがうかずらの芜を摘んでは沓脱石く぀ぬぎいしの䞊ぞ攟るなどしおいた。

    枯れ俯いた向日葵は倧人の男の背すら超え、小排萜た凉傘パラ゜ルの劂く僕たちの䞊に日陰を䜜る。
    「これは、い぀頃になるかな。」
    「ん」
    「皮子たねだよ。」
    「なんだい。遠藀君、花屋でも始めるのか。」
    「たさか。でも──」

    そんな未来を想像したくもなるものだ。

    憂うれうこずなき青い空のもずでは、切実の極たった望みほど譫蚀うわごずのように聎こえおしたうものかもしれない。
    ただ䞀色に塗られた空に、氎を通した襁耓の色が濃淡を぀ける。
    途端に茪郭を持った空は、僕たちめがけお降っおくるようであった  

    頭を抱えた僕の䞊で、銖こうべを垂れた向日葵が揺れる。
    隣にいたはずの圌が、応然ず姿を消したものだから僕の背筋はひどく冷えた。
    「遠藀君。」
    呌べば、畑の方で手を振っおいる圌を芋぀けられた。
    僕は尻の土を払っお、圌を迎えに行く。

    圌は僕の背筋の枩床の倱われおいるこずなど知らずに、真昌間の陜を济び朗らかに笑う。
    赀茄子トマトの枝の照り茝くのによく䌌おいる。
    「食べおみるかい」
    二人しお、良さそうなものをひず぀、もいだ。
    「遠藀君、君はこの手の才がおありだね。」
    圌の遞んだ赀茄子はたんたるで、柄んだ赀色をしおいた。
    僕の方は、尻のあたりがただ青くっお憎たらしく苊いような酞っぱいような臭いを挂わせおいた。
    かじっおしたえば、それなりに矎味うたかったけれども。

    「君の腹ごなしに、ず思ったんだがな。」
    遠藀君は手の甲で唇を拭い぀぀、くっくっず笑った。
    「たあこい぀がいよいよ呌び氎になった。さあ、うちぞ入ろう。」

    僕は襁耓を党郚腕に匕っ掛け、瞁偎から畳の䞊ぞ攟った。
    そしお、圌に続いお玄関から郚屋ぞ入った。

    菜穂の泚いでくれた麊茶を飲んだ。
    䞉人しお、苜蓿の玙袋を囲んで。

    晩、寝぀く前に菜穂がぜ぀りず呟いた。
    「さっきの、あれ。なんず蚀いたしたっけ  」
    「あれ」
    「ほら、遠藀さんの  」
    「ああ  」
    苜蓿クロオバアの袋の──
    「なんず蚀ったかな  」
    「忘れちゃった。」

    その埌、圌女の声は呌吞だけになった。
    僕は蚊垳越しに月の照り返す瞁偎を眺めた。

    なんずいうこずはない。
    月圱に揺れる向日葵だの、明朝開くのは誰かず密やかに話し合う牜牛花あさがおだのが眠れぬ僕を孀独ひずりにしなかった。

    倏の倜は短い。
    されど、僕の倜はただ長そうであった。


    習䜜です。
    単に思い぀いただけです。

    ↑
    ヒモから業務を請負う話。

    ↑
    本が読みづらいずいう話。

    ↑
    空蝉文庫架空から出版されおいる劄想。

    ↑
    こっちが䞀章。

    ↑
    志賀、志田、斯波

    ↑
    詩人酒堎、連茉䞭です。

    ↑
    井䞊ず癜石、Regenbogenのラむブ線完結。

    ↑
    すみたせん、曞くのやめたわけじゃないんです。
    話が話だけに集䞭力がいるのでね。

    ↑
    【゚ッセむ】
    それを蚀うなら豆腐です。

    ↑
    ゆきお様・解説
    「遠藀君」の存圚を考えるのがどうもミ゜。
    あずは倏を象城する花々、野菜。
    どう捉えおいくか。

    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

    あなたぞのおすすめ