
浅田次郎が愛する、母の実家の手打ち蕎麦|物語が生まれる御岳山・山香荘
※最初にちょっとだけお知らせです。
いつも「あの人の一皿、いただきます。」は隔週木曜日にお届けしているのですが。
今回、予約投稿の日付を間違えまして。金曜日になりました。🤣
曜日感覚を失ったわけではありません。
予約設定を間違えただけです。笑
次回から、また隔週木曜日に戻りますのでよろしくお願いします😌
食べることが大好きな私、あらゆうが、著名人が愛した一皿を実際に食べ、その人の人生や作品に、胃袋から近づいてみるシリーズ。
「あの人の一皿、いただきます。」六皿目です。
今回の「あの人」は、小説家の浅田次郎さん。
そして今回いただく一皿は──御岳山の宿坊「山香荘」の、手打ち蕎麦。
なのですが。
今回はいつもの「あの人の一皿」と、ちょっと違います。
一皿を食べに行ったはずが、その人の物語が生まれた“山”まで食べに行ったような回になりました。
行ってきました、御岳山!
実は少し前、こんな記事を書きました。
「こんにゃくって、誰が最初に食べようと思ったん?|イノシシも食べない芋を攻略した人類の執念」
この記事にも登場したのが、東京・青梅の御岳山です。
私、こんにゃくって、もともとそこまで好きじゃなかったんですよ。
ところが以前、御岳山で食べたこんにゃくが衝撃的においしくて。
以来、たまにわざわざ御岳まで買いに行くくらい好きになりました。
つまり今回も、「御岳山行きたいな〜」くらいの気持ちから始まったわけです。
そこから調べているうちに、「浅田次郎さんのお母さんの実家が、御岳山にある」という情報を発見。
え?
浅田次郎?
『鉄道員(ぽっぽや)』の?
しかも、その宿で今でも執筆したりする?
そして、お蕎麦が大好き?
……。
それ、「あの人の一皿」できるやん。
ということで、行ってきました。笑

山全体に、物語がありそうなんよ
御岳山駅から歩いていくと、空気が一気に変わります。
巨大な木。
細い山道。
宿坊が並ぶ集落。
そして武蔵御嶽神社。


武蔵御嶽神社には「おいぬさま」と呼ばれる大口真神も祀られていて、境内には狼の姿も。

いやもう。
浅田次郎さんが、この山を舞台に物語を書きたくなる気持ち、ちょっと分かる。
まだ一文字も読んでないのに、何か出てきそうなんですよ。笑
天狗とか。
狐とか。
昔ここにいた誰かとか。
普通に木の陰から出てきそう。
そして、山の中に現れる「山香荘」
しばらく歩くと、木々に囲まれた宿が見えてきます。
民芸のお宿・山香荘。

入口からして、もう好き。

しかも外には、「直木賞作家 浅田次郎氏 ゆかりの宿」の文字。
さらに、「館内ゆかりの品 展示中」「当館舞台の小説もお書きになりました」と書いてあります。

そう。山香荘は、浅田次郎さんのお母さまの実家。
御岳山商店組合の案内にも、浅田さんが現在もたびたび滞在し、この宿で多くの小説が生まれていると紹介されています。
つまり今回は、「昔、有名人がここへ来ました」という話じゃないんですよ。
浅田次郎という作家の人生そのものにつながっている場所。
これは強い。
ところで、浅田次郎ってどんな作家?
浅田次郎さんは1951年、東京生まれ。
1997年に『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞を受賞し、『壬生義士伝』『蒼穹の昴』『椿山課長の七日間』『母の待つ里』など、ものすごく幅広い作品を書いている作家です。
ジャンルは違っても、作品の底に流れているものを見ていくと、
義理。
人情。
家族。
別れ。
誇り。
誰かのために生きること。
みたいなものが、すごく強い!
不器用でも筋を通そうとする人。
世間から見れば報われていなくても、自分なりの誇りを持って生きる人。
そういう人間を描くのが、めちゃくちゃ上手い作家さんなんですよね。
そして御岳山と浅田文学の関係をもっと知りたい人には、『完本 神坐す山の物語』という、まさに今回の旅に直結する本があります。
御岳山の神官の家に伝わってきた不思議な話をもとにした物語で、2024年には未収録作や書き下ろしを加えた「完本」が刊行されています。
これ、先に読んでから御岳山へ行ってもいいし、御岳山へ行ってから読んでも絶対おもしろいやつ。
私は今回、後者になりました。
景色を知ってしまったので、たぶん本の中に山道が出てきた瞬間、脳内で勝手に御岳山が再生される。笑
で、浅田次郎さんは何を食べるのか
さて。
ようやく「あの人の一皿」です。笑
山香荘の方に聞いてみました。
「浅田先生って、こちらでは何がお好きなんですか?」
すると、「お蕎麦がお好きですよ」とのこと。
よっしゃ。
条件成立。🤣
ということで、今回いただいたのがこちら。

手打ち蕎麦のお膳です。
この蕎麦、スルッと入る
まず、お蕎麦。

細めで、ツルッとしていて、とにかく喉ごしがいい。
ズズッとすすった瞬間、「あ、これ好きなやつ」となりました。
ガツンと強烈に蕎麦が主張するというより、
スルッ。
なんですよ。
山を歩いてきた身体にちょうどいい。
重くない。
でもちゃんと満足する。
浅田次郎さんがここへ来て、この蕎麦を食べているのかと思うと、それだけでちょっと面白い。
何を書きながら食べたんだろう。
どの物語の途中だったんだろう。
……なんて考えながら食べるのが「あの人の一皿」の醍醐味です。
ただし今回、蕎麦の横にとんでもない伏兵がいる
それが、のしこん。

これ!!!
これなのよ!!!
私が以前の記事で大騒ぎしていた、御岳のこんにゃく。
青梅観光協会によると、「のしこん」は国産こんにゃく粉を使い、手で“のして”成型することからこの名前がついたそうです。
……なるほど。
理由は分かった。
でも私は一言言いたい。
名前、変えません?🤣
「のしこん」って聞くとさ。
なんとなく、こんにゃくをこう……
ペタン。
ペタン。
ぎゅーーーーー。
って平べったく“のして”、ギュッと固めたような食感を想像しません?
違うんよ。
真逆なんよ。
プルッ。
とろっ。
ふるっ。
いやもう、一般的な刺身こんにゃくの比じゃない。
もちろん普通の生こんにゃくも柔らかいんだけど、そのさらに先にいる。
こんにゃくなのに、「こんにゃくを食べている」というより、何か別のぷるぷるした食べ物を食べている感覚。
私はこれ、全人類に一回食べてみてほしい。笑
「こんにゃくって、こういう食感にもなるんだ!?」ってなるから。
脇役のつもりが、全員強い
さらに。
長芋。
これも普通の長芋じゃない。
細っっっ!!!
そうめん並です。
長芋って、ここまで細く切れるん!?
シャキッとしているのに、噛んでいくととろみが出てきて、これまた蕎麦と相性がいい。
山菜を炊いた小鉢もおいしい。
わさびもおいしい。
薬味もおいしい。
のしこんもおいしい。
蕎麦もおいしい。
全員スタメン。
しかも量が絶妙なんですよ。
多すぎない。
少なすぎない。
山を歩いたあとに、「あ〜〜食べた〜〜〜!」とちゃんと満足するのに、苦しくない。
こういう膳、好き。
しかも、お風呂まで入れる
そして山香荘。
ここで終わりません。
なんと、食事+ラジウム泉+ワンドリンクのセットがあります。
(記事では後にしたけど、実際は先にお湯をいただきました!♨️)
しかも飲み物、ビールもOK。
(私はお茶にしたけど、ツレはビール頼んでた。風呂上がりのビール最高かよ!!)

……。
え、追加料金なしで、いいんですか???😳
ソフトドリンクだけかと思うじゃん。
生ビールいけるんですよ。笑
さらに山香荘には、古代檜風呂と大理石風呂の2つのラジウム泉があります。日帰り入浴も可能です。

これ全部合わせて、2,000円ちょっと。
いや。太っ腹すぎん??🤣
山の上ですよ?
食事ですよ?
お蕎麦ですよ?
こんにゃくですよ?
お風呂ですよ?
ドリンクですよ?ビールでもいいんですよ?
大丈夫??笑
※私がお邪魔したのは2026年9月。2026年8月の直近訪問記録ではセット2,195円との記載があります。公式観光ページには1,995円表記も残っているため、料金改定の可能性があります。最新料金は山香荘へお問い合わせください。
館内も、ずっと見ていられる
山香荘は料理とお風呂だけじゃなくて、館内も面白い。

民芸品。
骨董品。
器。
古い家具。
壁いっぱいのカップ&ソーサー。
そして浅田次郎さんゆかりの展示。

どこを撮っても、「何これ?」がある。
こういう場所、大好物です。
しかも外には猫までいました。

完璧か。笑
浅田次郎を読んでみたくなった人へ
ここまで読んで、「浅田次郎、ちょっと読んでみようかな」と思った方へ。
今回調べながら、私ならこの3冊から入るかなと思いました。
御岳山へ行くなら『完本 神坐す山の物語』これはもう今回の記事とセット。
御岳山という場所そのものに興味を持った人は、まずこれ。
神官の家に伝わる、不思議で、少し怖くて、どこか懐かしい物語。
土地に残る記憶とか、昔話とか、怪異とか、「説明できないもの」が好きな人にはかなり刺さると思います。
御岳山へ行く前に読むと、「あ、この山のどこかで……」と思いながら歩ける。
行ったあとに読むと、「あの空気、知ってる」となる。
どっちも楽しそう。
▶︎『完本 神坐す山の物語』浅田次郎
山香荘の方がおすすめしてくれた『壬生義士伝』
そして私が、「浅田次郎さんなら、どれがおすすめですか?」と山香荘の方に聞いたところ。
返ってきたのが、『壬生義士伝』。
「壬生です」と。笑
新選組の吉村貫一郎という男を描いた長編で、貧しさの中でも家族のために生き、周囲からどう見られようが、自分の守るべきものを守ろうとする人物の物語です。文藝春秋も「浅田文学の金字塔」と紹介しています。
これ、「義って何?」
「家族のために生きるって何?」
「正しく生きるって、誰が決めるの?」
みたいなことを考えるのが好きな人、絶対好きだと思う!!
めちゃくちゃ熱いです…!
新選組が好きな人はもちろんですが、
不器用でも筋を通す人に弱い人。
誰かのために生きる人間の話に弱い人。
人間の“義理と情”で泣きたい人。
そんな人に。
▶︎『壬生義士伝(全2巻)』浅田次郎
「まず浅田次郎を一冊」なら『鉄道員(ぽっぽや)』
そして、「浅田次郎、一回も読んだことないんだけど?」という人なら、やっぱり代表作の『鉄道員(ぽっぽや)』。
第117回直木賞受賞作で、表題作を含む8編の短編集です。
仕事。
家族。
喪失。
人生の終わりに残るもの。
そういうものを、派手にではなく、じわっと人情で刺してくる。
仕事に誇りを持って生きてきた人。
大切な人との別れを経験したことがある人。
派手な物語より、人間の小さな感情に泣く人。
そんな人には、たぶんかなり刺さる。
じんわり、心に染み渡ってくる感じです!✨
▶︎『鉄道員(ぽっぽや)』浅田次郎
一皿を食べに行ったら、一人の人生だけじゃなく、一つの土地に近づいた
「あの人の一皿、いただきます。」は、著名人が愛したものを食べながら、その人の人生や作品に胃袋から近づいてみよう。
そんな企画です。
でも今回、ちょっと違いました。
浅田次郎さんが好きなお蕎麦を食べる。
それだけのつもりだった。
なのに、御岳山を歩いて。
巨大な木を見て。
神社へ行って。
狼を見て。
山香荘へ入って。
浅田さんが過ごした場所を見て。
お蕎麦を食べて。
こんにゃくに感動して。
そして、「この場所から、あの物語が生まれたんだ」と思う。
一皿からその人に近づくはずが、今回は一山まるごと、その人の物語に近づいたような気がしました。
こういう「あの人の一皿」も、いいですね。沁みた〜!✨
週末、御岳山へ行ってみては?
東京にいるのに山を登って、神社へ行って、宿坊でお蕎麦を食べて、ラジウム泉に入って、ビールまで飲める(笑)
そして帰りには、のしこんを買う。
いやこの過ごし方は、完璧では??🤣
東京から日帰りでも行けます。
週末、「ちょっとどこか行きたいな」と思ったら。
浅田次郎の物語が生まれた御岳山へ、遊びに行ってみてはいかがでしょうか。
そして山香荘へ行ったら、ぜひ。
お蕎麦とのしこん、食べてみてください。
特にのしこん。
あれは名前から想像する食感を完全に裏切ってきます。
……やっぱ名前変えた方がいいと思う。🤣
今回のお店
民芸のお宿 山香荘
※公式サイトは例のサーバー攻撃の関係か、見ることができなくなっていました。
東京都青梅市御岳山137
TEL:0428-78-8476
JR青梅線「御嶽駅」から西東京バス「ケーブル下」行き→終点下車。
御岳登山鉄道・滝本駅からケーブルカーで「御岳山駅」へ。そこから徒歩約20〜25分。
ランチ・日帰り入浴あり。
食事は手打ち蕎麦や釜飯など。
食事+ラジウム泉+ワンドリンクのセットあり。
2026年8月の訪問記録では2,195円。公式観光ページには1,995円表記も残っているため、料金・営業時間・食事内容は訪問前に電話で確認するのがおすすめです。
不定休のため、特に週末のお出かけ前には営業確認をどうぞ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!^^
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「あの人の一皿、いただきます。」は、隔週木曜日に更新しています。
次は、誰の一皿をいただこうかな。
また胃袋から、その人の人生を覗きに行ってきます。😆