
続続続・ある平和なひとときの記録
「一緒に帰ろ♪」
ミユキに声をかけられ、
猫又旅男(ねこまたたびお)の胸は躍った。
タビオはこの春、猫柳第一中学校に入学し、幼なじみのミユキと同じクラスになったばかりだ。
3月までは又旅小学校で一緒だったふたり。
本来、タビオは猫柳第二中学校の学区だったのだが、両親に泣きついて頼み込み、念願の越境入学を果たした経緯がある。
そこまで想いを寄せるミユキから、直々に「一緒に帰ろう」と誘われたのだ。
浮足立つなという方が無理だった。
ミユキはクラスの人気者で、普段の下校時はいつも取り巻きの女子グループに囲まれている。
タビオは近寄ることすらできずにいたのだが——
「今日はちょっと、タビオくんに用があるの」
ミユキが取り巻きたちにそう筋を通すと、タビオは取り巻きたちの鋭利な視線で背中に火傷を負いながらも、ミユキと一緒に帰る幸せを味がなくなるまで噛みしめるのだった。
ミユキに連れられてやってきたのは、猫蛇裸視(ねこじゃらし)ショッピングモール内に最近オープンした話題の施設だった。
「『ニャムネタウン』、ずっと来てみたかったんだ」
ミユキがタビオの腕にキュッと抱きつく。
タビオの心臓は跳ね上がった。
入場口に立っていた女性店員に、ミユキが両手を合わせて「お願い」とねだると、女性はカウンターへ戻り、ふたり分の入場カードを持って帰ってきた。
「ありがとう、サクラさん!」
ミユキに続いてカードをゲートにかざすと、
「楽しんできてね。頑張って!」
とサクラさんの声が背中を押した。
ニャムネタウン、そこは保護猫の楽園だった。
(大きな猫カフェみたいなものかな?)
タビオがそう思ったのも束の間、いつの間にか横に立っていたサクラさんがニッコリと微笑みながら告げた。
「それではこれから、おふたりにはパーク内の清掃を行っていただきます」
(えっ……清掃……?)
「では、頑張って」
『頑張って』はそういう意味だったのか、とタビオは肩を落とした。
タウン内には二百匹以上の猫がおり、それぞれに専用トイレが用意されている。
タウン内を清掃し、すべての猫砂を交換する作業は、想像を絶する重労働だった。
「タビオくん、手にう◯ちついてるよ」
「えっ、ほんとだ!」
「ふふ、拭いてあげるからじっとしてて」
「う、うん……ありがと」
ミユキと一緒ならどんな作業も楽しかった。
サクラさんが言った『楽しんできてね』の深い意味に、タビオは心の中で密かに感謝していた。
清掃作業が終わると、ふたりは貰い立てのバイト代を手にタウンの売店へ向かった。
そして、少し奮発してかなり高価なお揃いのペンダントを購入した。
「今日はほんと楽しかっ——」
タビオの言葉を遮るように、ミユキがぽつりと言った。
「わたしね……転校することになったの。このペンダントを見て、わたしのこと忘れないでね」
あまりの感情の乱高下に、タビオは心が酔ってしまい、言葉が出なかった。
呆然と立ち尽くすタビオに、ミユキがすっと顔を寄せる。
柔らかくあたたかいミユキの唇が、そっとタビオの頬に触れた。
そんな甘く切なく、限りなく平和なふたりの周りには、いつの間にか野次馬根性を丸出しにした猫たちが何重もの猫垣を作っていた。
『ヒュー、ヒュー!』
冷やかし度78%、猫なで声の大歓声がタウン内に響き渡った。
(つづく、かも 🥵)
『平和で、やさしさに満ちあふれ、限りなくのどかな、ずっと能天気でいられる、そんな世界に住んでみたい、と思う』
・・・・・
「ある平和なひとときの記録」
を続続続まで記録してしまった。
作者は大阪生まれなので、
#なにやっとんねん
と事故(自己)突っ込みしときます🥵
・・・・・
#なんのはなしですか
【参考文献】