
「安い材料」は、悪い音なのか。キャビとスピーカーの木・MDF・磁石・繊維を、役割で読む
ギター機材の材料は、たいてい値段の序列で語られる。
バーチ合板は良い。MDFは安物。アルニコ磁石は高級で、セラミック磁石はその廉価な代用。コーンは紙が「本物」。だいたい、そういう物差しで並べられる。
だが、実際の設計を一つずつ見ていくと、材料はその物差しの上には乗っていない。
この記事では、キャビネットの木とMDF、スピーカーの磁石とコーンの繊維を、いくつかの実機を通して読み直す。結論を先に言えば、材料は「安い/高い」でも「本物/代用」でもなく、部位ごとの役割、品質でない音色選択、そして代用材の自立として働いている。
なお、以下で扱うのは、メーカーが公表している構成と、その設計意図である。「この材料だからこう鳴る」という単独の効果を、独立した測定で切り分けたわけではない。だから話は「材料が音を決める」ではなく、「材料が何のために選ばれているか」に絞る。
箱は、「一つの材料」でできていない
まず、キャビネットの材料を「一語」で評価できない例から。
Peavey Triple XXX 412は、Sheffieldのスピーカーを四発積んだ400Wのメタル向けキャビネットだ。材料を見ると、面白いことに気づく。
側板は1/2インチのポプラ合板。バッフル(スピーカーを取り付ける板)はバーチ合板。箱の部位ごとに、違う合板が使われている。
つまり、この箱は「バーチ製」でも「ポプラ製」でもない。振動の少なさが欲しいバッフルにはバーチ、外周の筐体にはポプラ、というふうに、部位の役割に合わせて材料が割り当てられている。
「何の木でできているか」という問いは、実は雑なのだ。箱は複数の材料の分業でできていて、どこにどの材料を置いたか、を見ないと意味がない。
MDFは、安物の代名詞なのか
次に、いちばん誤解されやすい材料、MDFへ。
MDFは、家具の裏板や安価な製品に使われるイメージが強い。だから「MDFのキャビ=コスト削減=安物」と読まれがちだ。
ところが、Koch KCC112というキャビネットは、そう単純ではない。
この箱は、11層のバーチ合板のシェルに、振動を抑えたMDFのバッフルを組み合わせている。Kochは、これを材料試験の結果として選び、低域の締まり、中域の色彩、高域の滑らかさを狙ったと説明する。
ここでもMDFは、箱全体を安く上げるための代用ではない。バッフルという特定の部位で、振動を抑えるという機能のために選ばれている。前の例と同じ構図だ。材料は、箱全体の等級ではなく、部位ごとの機能で選ばれている。
念のため付け加える。これはKochの設計意図であって、MDFバッフルとバーチバッフルを同一条件で鳴らし比べた測定ではない。ここで言えるのは、「MDFが安物だから使われた」という説明が、少なくともこの一台には当てはまらない、ということまでだ。
この先は、CSL公式サイトの全文で続けている。
木材を、音色として注文する
「代用品」は、代用で終わらない
紙は、紙でなければならないのか
材料を、価値の序列でなく、役割で読む
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