
遺書 漫画家アシスタント物語 第2章 4
《 写真上:1975年頃、3畳の下宿の書棚には本とマンガ、上には炊飯器。》
まだ、「第1章〈1〉」をお読みでない方は、先に「第1章〈1〉」をお読みいただく事をお薦めいたします。
まとめてお読みになりたい方は、去年編集した、改編前のマガジン「第1章、第2章」をどうぞ!
〚 前回のあらすじ 〛
怪奇漫画の背景制作が怠惰に終わり、さが先生には迷惑をかけつづける。 三畳一間の薄暗い部屋の中、暗く沈み込んで自分の道を失いかける。
〈4〉 不真面目にスタート
さがみゆき先生の怪奇漫画の背景は、雑誌ではなく、単行本の仕事でした。先生から原稿を預かり、自分の下宿へ戻って背景画を描くのです。
下の写真がその単行本の表紙、背景と題字は私が描きました。 初めてのアシスタントの仕事です‥‥

怪奇漫画の背景は、どうしてもベタ( 黒いスミ )で暗闇を描く処理が多く、単調になります。しかし、未熟な技術をその暗闇がカバーしてくれる利点がありました。

ペン先を使って、コリコリと精密に線を描き合わせていくのは、素人ながら得意でした。
しかし、下の絵のように室内の調度品や床の処理となると、初心者の未熟さが露呈します‥‥

単行本の書き下ろしの場合、原稿の大きさが通常雑誌( タテ27㎝×ヨコ18㎝ )の約半分( タテ19㎝×ヨコ12㎝ )ですみます。
つまり単純に漫画背景の手間が半分になるわけです。
その気になれば一日で7~8ページ仕上げる事もできる計算ですが・・・・・なかなか進みませんでした。( 真面目に描けば、描くほど怪奇漫画は時間がかかります )

細かくは描くのですが、時間ばかりかかり、効果的な絵にはなっていません。 とくに草の処理は、目も当てられない有様です。
毎日5ページやらなければならない・・・・・でも今日は3ページしか仕上がらなかった・・・・・・・・( 自分の力量では限界いっぱいの仕事が続きました )
『 明日+2ページで計7ページやればいいさ・・・ 』
だが、次の日は4ページしか仕上がらない・・・
『 明日ガンバって計8ページやればいいさ・・・ 』
結局‥‥‥‥予定をかなりオーバーして仕事を終えた時には精神的にヘトヘトになっていました。
下の絵は、もう単行本のクライマックスのシーン。 この辺になると室内や小道具の処理なども少し慣れてきていました。

下の絵は、単行本のラストシーンですが‥‥ 有名な漫画家の背景画を参考にした( 真似した )のを覚えています。

いよいよ本格的にさがみゆき先生の背景画全般を・・・・・という時に、すっかりやる気を無くしていました。
今から考えると、自宅で漫画背景の仕事を自分のペースで自由にやるには、チョット若すぎたのかもしれません。
はじめのうちは、仕事場の雰囲気を理解したり作業の段取りを勉強したり・・・・先生や先輩アシスタントの指導を受けながら仕事をした方が良かったのかもしれません。
単行本の仕上がりの遅れにハラハラさせられたさが先生は、まったくいい迷惑だったと思います。
それなのに‥‥
ただの一度も怒られませんでした。 20枚、30枚と仕上がった原稿を届ける時も、いつも笑顔で向かえてくださり、その上、手料理をご馳走してくださった。
そのあげく‥‥‥‥突然仕事を辞めると言い出す始末・・・・
まったくデキの悪いアシスタントでホント申し訳なかったと思います。
19歳・・・・・・
朝もお昼も・・・・ 日のささない暗い3畳間で、ナメクジのようにのたうち、万年床の上で黙々と一人芝居のように他者と議論する。
結局、寝付かれずに夜明けを迎える。
昼過ぎになって汗びっしょりかいて目覚め‥‥
アシスタントを中途半端に放り出して・・・・
ダラリダラリと、楽して稼げる仕事を探し始める。
そんな仕事あるわけないのに・・・・・
漫画家アシスタント物語、血の教訓
『 今日中に必ず描かねばならない原稿は、机にかじりついてでも絶対今日中に描く事‥‥ それが出来るか、出来ないかで、自分の「 まんが道 」が大きく変わる‥‥ たった一日の、その瞬間の選択が将来を決めてしまう‥‥ 』
「 漫画家アシスタント物語 第2章 5」へつづく・・・・
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