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肥満論:レプチン過多と適量化、「身体の声」を聴く

    レプチンはすべての人が体内で発生させるホルモン物質で、いわば体が脳に「もう食べなくても良い!満腹だ!」ということを伝える手紙である。

    普通に考えれば、この物質が多ければその人は痩せており、少なければ太っているということになるだろう。しかし肥満している人々のレプチンの量を測定してみると、通常よりも多いのが事実なのだ。むしろレプチン過多であることが肥満の原因であるということが判って来た。すなわち──

    (1)食べ過ぎが続き、体に脂肪がどんどん蓄積されて行くと、脂肪細胞は「もういらない」とさらに多くのレプチンを出す。
    (2)レプチンがたくさん出て来ると、なぜか視床下部は反応しない。
    (3)視床下部が反応しないので、脂肪細胞はレプチンを出し続け、血液中にはレプチンがどんどん蓄積されて行く。
    (4)それでも相変わらず、視床下部が食欲を抑制せず何も命令しないので、ブレーキが効かず、どんどん食べてしまう。
    (5)脂肪細胞は仕方なく、やって来る中性脂肪を引き取る。その結果、どんどん太って行く。

    (2)の段階のように、レプチンが過多になると視床下部が受け付けなくなるのは、喩えるならば、輪ゴムで一まとめにされた年賀状の束が郵便受の口からは入らないように、「食欲停止」というレプチンの過剰情報を視床下部が処理し切れなくなるからなのだ(「レプチン抵抗性」と言われる)。 実は、摂食障害の過食症に陥るのも、概して、この生理学的理由による可能性が大なのではないか…。

    このように無意識的・自動的に働くはずの視床下部に情報が伝わらなくなった時、肥満を抑止したいならば、大脳によって意識的にレプチンの量を減らす努力をして、一通ずつ視床下部に手紙が届くようにする必要があるとして、『ためしてガッテン』では「レプチン効果復活大作戦」と称して次の2つの指針を示していた。

    (1)食事は腹八分目にする。
    (2)毎日少しでも体を動かす。

    (1)食事の意識的コントロールと(2)意識的に運動するという特別に変わったことを提案しているわけではない(本稿では「睡眠不足の回避」も加えたい)。要するに、これが「ダイエットの基本」だと言える。この基本を踏まえて番組では次のような思い付きを列記していた。

    1)痩せた時の自分を想像する。
    2)体重の変化をこまめに記録する。
    3)小さいサイズの服を買う。
    4)鏡を頻繁に見る。
    5)好きな人にほめてもらう。
    6)痩せると宣言する。

    番組で選び出された1)皮下脂肪型肥満の女性と 2)内臓脂肪型の肥満の男性も意識的な食事と運動を心がけた結果、3週間後には次のように数値が減っていた。

     1)内臓脂肪20%減 皮下脂肪5%減 レプチン28.4ng/ml→15.1ng/ml
     2)内臓脂肪10%減 PAI-1 186ng/ml→27ng/ml

    さて最後にまとめとして、肥満を防ぎ痩せたいのであれば、次のような過程を踏むべきだと番組は指摘していた。

    レプチン過多
    ↓
    太る
    ↓
    意識的に痩せる
    ↓
    レプチン適量化
    ↓
    自然に痩せる

    なお、レプチン適量化のためには、大脳(理性)を働かせて、意識的に生活をコントロールし、痩せようと番組では示唆していたが、しかし、頭でっかちになって、痩身することが第一と考えてしまい、色々な‘ダイエット’法を生半可に試みて、かえって身体の素直な生理的反応を混乱させ、いわゆる摂食障害に陥ってしまわないように、注意しなければならない。

    何らかの個人的問題を、過食という一種の代償行為によって必死で解決しようとする、いわゆる過食症から自ら立ち直った体験を踏まえて、「身体の声」に耳を傾けよう、と説くジェニーン・ロスの次の言葉は、示唆的だ。これまで具体的に説明して来た身体や脳の生理的現象を踏まえて、傾聴してほしい。

    「身体は空腹になり、食べ物を与えられれば満たされます。これについては種も仕掛けもありません。自分が感じる感覚を入念にふるいにかけ、悲しみや孤独から区別して、空腹を感じるようになるまでにはしばらく時間がかかるかもしれませんが、しかし、これは、あなたが自分の空腹を認めることに慣れていないからであって、あなたの身体がそれを感じていないからではありませんし、たとえあなたが自分の空腹を認めてもいいと自分を許しているとしても、それであなたの空腹がどこまでも貪欲で飽くことを知らなくなるわけでもないのです。

    いつ食べたらいいのか、教えてくれる人は誰もいません。これはあなたの身体が教えてくれることなのです。いつ食べたらいいのかを教えることのできる人など、もともとどこにもいないのです。つまりあなたの胃の状態をよく知っている人などいないのです。いつ食べたらいいのか自分に教えてくれる自分自身の身体の声に耳を傾けていさえすれば、『もう充分だよ』という、身体の声も聞き取れるようになるのです。」
    ──ジェニーン・ロス『食べ過ぎることの意味 :過食症からの解放』

    「もう充分だよ」という、身体の声こそ、すなわち、今まで説明して来た「レプチン効果」のことだということは、ここの読者であれば、もうお分かりだろう。

    でも、その「身体の声」が容易に聴き取れないから悩んでいるという「声」がまさに聴こえて来そうだけれども、その人々のためにも、稿を改めて「お米主食ダイエットのすすめ」を執筆予定である。

    (つづく)

    ⇒肥満論:序文
    ⇒肥満論:痩せるメカニズム──レプチン効果
    ⇒肥満論:肥満の内と外──パイの量
    ⇒肥満論:グレリン──食欲増進ホルモンと睡眠
    ⇒肥満論:お米主食ダイエットのすすめ
    ⇒肥満論:お米主食ダイエット・ポジコメ追加再録
    ⇒肥満論:スローフードとしての粗食
    ⇒肥満論:お米主食ダイエット〜米単品はドカ食いの元、冷や飯の効用
    ⇒肥満論:カロリー一元論の落し穴
    ⇒肥満論:ダイエット・ハイと別腹の罠;拒食症と過食症
    ⇒肥満論:インチキダイエット通販で儲ける方法
    ⇒肥満論:痩せるなら、死んでもいい!?──危険な‘やせ薬’・再録

     
     
    小比塚アンデン:ソフィアシューレ主催、『あ論』主幹。no-test、no-nukest、now-here man。旭川東高・上智大哲学科卒、法政大大学院で社会学修士号取得。英語指導の経歴:高校教師・進学塾学務主任・(昔、業者テストを手掛けていた会社の)通信教育テキスト執筆 。

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