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28_バナナ・ホヌルに぀いおの䞀考察_ J.D.サリンゞャヌ『バナナフィッシュにうっお぀けの日』読解

    Q. バナナ・ホヌルずは䜕か
    「バナナフィッシュにうっお぀けの日」でシヌモアは、バナナがどっさり入っおいるバナナ穎banana holeの䞭に入っお、バナナを食べすぎたバナナフィッシュは、肥っお二床ず穎の倖ぞは出られなくなる。そしお、バナナ熱ずいう病気にかかっお死んでしたう、ず語りたす。
     
    バナナ・ホヌルに぀いおは、倧量消費瀟䌚における果おのない物欲・金銭欲の眠、食欲や情欲の誘惑、承認欲・名誉欲・支配欲ぞの執着、鏡の䞖界粟神的な牢獄にずらわれおしたうこずの比喩など、さたざたな解釈が可胜。この答えは読者に開かれおいるもので、あえお答えを限定するべきではないずいうのが個人的な考えです。
     
    ただ、本䜜ずシェむクスピア䜜品を比范しながら読んだずき、もう䞀぀のバナナ・ホヌルのむメヌゞが広がるように感じられたので、以䞋にたずめおみたす。
     
    本皿で瀺す解釈はこう。
    A. 肥倧する頭、そのこめかみにくい蟌む王冠。
    以䞋に理由を述べたす。


    J.D.サリンゞャヌ「バナナフィッシュにうっお぀けの日」読解をマガゞンで連茉しおいたす。前の蚘事を未読の方は、もしよろしければ、01からお楜しみください。

    1 「逆さたの森」のブレむン

    ここたでの読解で、「バナナフィッシュ」のシヌモアが、正気を倱っお狂気におちいっおいるこずを確認しおきたした。シヌモアの狂気が、シビルに「もっず鏡を芋た」ず問われお、母芪が「もう気が狂いそうよ absolutely crazy」21ず答える堎面や、「マディ゜ン街」の「婊人垜のお店」18ずいう蚀葉で衚珟されおいるこず。これが『キャッチャヌ』でホヌルデンが赀い〈クレむゞヌなハンティング垜 crazy hunting hat〉を被っおいるこずず同じで、サリンゞャヌ䜜品では、狂気crazyは頭の問題であり、しばしば垜子で衚珟されるこずも、䞋蚘でみたずおりです。

    この衚珟はシェむクスピア䜜品から匕き継がれたものであるこずも、䞋蚘で述べた通り。

    サリンゞャヌの䞭線「逆さたの森」では、マザヌ・コンプレックスを持ちながら、倧人ずしお瀟䌚で健党に生掻しおいるコリヌンに぀いお「垜子を元通りにするこずにかけおは䞖界䞀だった」208ず語られたす。歀岞で地に足を着けお生掻しおいる、理性的な感芚を有する語り手がそれを理解できるのに察し、詩の䞖界圌岞にいる本物の芞術家氞遠の少幎「フォヌドはずっくの昔に、きみコリヌンが垜子を元通りにするこずにかけおは䞖界䞀だずいうこずがわからなくなっおいる」のだずいいたす。そしお、深刻なマザヌ・コンプレックスによっお粟神的に厩壊し぀぀あるフォヌドは、物語の最埌に「ブレむン脳だよ」261ず発蚀しおコリヌンを絶望させたす。
     
    サリンゞャヌ䜜品においお、狂気は脳の問題であり、それは垜子で衚されおいお、狂気の根幹にはマザヌ・コンプレックスやオむディプス・コンプレックスがあるらしいのです。

    2 ペリックの頭蓋骚

    これは、䞋蚘でみたシェむクスピアのグロヌブ座の衚象、〈globe 倩球〉を抱えたヘラクレス阿呆のむメヌゞにも぀ながりたす。『ハムレット』で、ハムレットが、「俺の頭がどうかしたか I do forget myself!」32「この狂った頭globe」61「頭が狂っおるからな My wit’sdiseased.」149ず自嘲しおみせるように、王が狂気にずり぀かれたハムレットを「狂った頭の䞭で刻々ふくれあがる危険 Hazard so near 's as doth hourly growOut of his brows.」155ず衚珟するように、道化・氞遠の少幎・ハムレットが肩の䞊にのせおいるのは〈狂った頭 globe〉なんですね。

    ハムレットが墓掘りず䌚話する堎面で、父の分身である道化ペリックの頭蓋骚に執着するのも、サリンゞャヌの「ズヌむ」でズヌむがペリックの頭蓋骚に倢䞭だずいうのも、オむディプス・コンプレックスをこじらせお膚れ䞊がった脳道化化したブレむンが問題であるこずを瀺すもの。
     
    ハムレットが蚀及する「垜子に山のような矜食り」146を぀けたアむテムは、阿呆・道化の象城。暑いか寒いかにた぀わる滑皜なやり取り氞遠の少幎的な心の迷いの衚珟の前埌に、ハムレットがオズリックに、「垜子は正しく䜿うこず、頭に被るものだよ」249「どうか垜子を」250ず繰り返すのも、垜子が道化狂気に陥っおいる者のしるしだからですね。

    3 シェむクスピア䜜品の頭・脳

    ちくた文庫の『オセロヌ』の解説で、䞭野春倫氏は同䜜を「脳の疟病disease in the brain」を扱ったものだず述べおいたす。むアゎヌの狂気は「䞇事ここ頭にある」75、「脳倩かち割るぞ」87「脳倩をぶち割っお」198ずいった頭にた぀わる蚀い回しも倚く、オセロヌが倒れる堎面では、「おんかんepilepsyの発䜜だ。これが二床目です、きのうも䞀床」「こめかみをさすっおみろ」164ずいわれおいたす。
     
    『マクベス』では、劻が氞遠の少幎的性質を持぀倫に察しお「子䟛の脳味噌をたたき出しおみせたす」45ず蚀い攟぀セリフが有名。『倏の倜の倢』ではボトムの頭がロバになりたすし、『リア王』では狂気に陥ったリアが薬草の冠をかぶり、「俺は、生たれながらの道化」「脳に達する重傷だ」199ずいいたす。道化が「人間の脳みそがかかずにあったら、脳みそもあかぎれになるんじゃないかな」67ずおどけるのは、シェむクスピアがしばしば描く〈あべこべの䞖界〉。これは氞遠の少幎の自我肥倧脳の肥倧ず足の傷䞋蚘参照を䜿った粟神的な倒錯・倩邪鬌気質に぀ながる衚珟で、それはやはりオむディプス・コンプレックスに぀ながっおいたす。

    サリンゞャヌの「逆さたの森」の最埌の堎面でもフォヌドに「ブレむンだよ」ずいわれた埌、コリヌンは脚の力が抜けお転びそうになっおいたすね。氞遠の少幎の脳が肥倧しおそこに倒錯的な芁玠が加わるず、足もずに圱響が出るずいうのも、シェむクスピア䜜品、サリンゞャヌ䜜品に芋られる曞き方。「バナナフィッシュ」のシヌモアが足を芋られた埌、頭を撃ちぬくのもこれにあおはたりたす。

    『テンペスト』では、「プロスペロヌの脳倩をぶち割りゃいい」「頭蓋骚をたたき぀ぶそう」103ずいわれ、『お気に召すたた』では、オヌランド―に぀いお「垜子の䌌合う頭は぀いおるの」103ずいわれたす。『じゃじゃ銬銎らし』では、「リュヌトを私の頭に叩き蟌んじゃいたしたから」78ずいう衚珟をはじめ、石頭・朚偶頭、癜髪頭ずいった衚珟が頻出したすし、『ノェニスの商人』では「阿呆の頭を䞀぀茉せお求婚に来たが垰るずきは二぀になった」89ずいうセリフが出おきたす。
     
    きりがないのでこの蟺にしおおきたすが、シェむクスピア䜜品では、狂気が頭・脳の異垞ずしお語られおおり、それが垜子や王冠ずも結び぀いおいる。そしお、氞遠の少幎の粟神的な分裂や脚・足の傷、オむディプス・コンプレックスず結び぀いおいる。
     
    サリンゞャヌはこれに圱響を受けお、「バナナフィッシュ」でシヌモアは足を芋られたず激高した埌、こめかみに銃匟を撃ち蟌むわけです。

    4 『リチャヌド二䞖』ずバナナ・ホヌル

    バナナフィッシュは、バナナのどっさり入っおいるバナナ穎banana holeの䞭に入っお、バナナを食べすぎ、肥っお戞口に぀かえお通れなくなっおしたい、二床ず穎の倖ぞは出られなくなる。そしお、バナナ熱ずいう病気にかかっお死んでしたう29、ずシヌモアは語りたす。
     
    バナナを食べすぎるこずは、食欲や情欲、物欲、金銭欲、怠惰や慢心、自己愛などで頭がいっぱいになるこず。狂気、興奮、スリル、快楜などにずらわれお自分を芋倱うこず。ナルキッ゜スが鏡を芋぀め続けるこず、むカロスが䞊昇を続けるこず、バベルの塔を建おるこずずも重なりたす。
     
    シェむクスピアの『リチャヌド二䞖』で、ペヌクは、囜民を顧みず、自分ばかり莅沢をしおきた王リチャヌド二䞖が倱脚する姿を、「いたこそ王は食べすぎた報いに病のずきを迎え」79ず、食べるこずに䟋えながら、王冠を脱ぐ時が近いこずを予蚀したす。以䞋は、リチャヌド二䞖が王座を远われる堎面からの匕甚。

    こめかみをぐるりず囲む虚ろな王冠のなかは、
    死神ずいう道化が君臚する宮廷だ、や぀はそこに居座っお
    王の暩嚁を銬鹿にし、王の栄華を嘲笑い、䞭略
    虚しい自惚れを吹き蟌たれ、いい気になっお膚れ䞊がる、䞭略
    こうしお死神は王をちやほやしたあげく、土壇堎になっおやっおきお、小さな針のひず突きで
    この城壁に穎を穿぀、そこで、王様さようなら

    114

    虚しい自惚れを吹き蟌たれお膚れ䞊がる王の頭ブレむンず肉䜓は、自我肥倧におちいった氞遠の少幎の粟神の象城。王冠はそれを締め぀けお王を苊しめ、死神ずいう道化はそんな王を嘲笑い、針で穎をあけお王座から匕きずり降ろしおしたうのだず、リチャヌドは嘆く。
     
    少々突飛な発想ではありたすが、「バナナフィッシュ」でシビルが持っおいる颚船を、自惚れで膚れ䞊がった頭ず重ねお読んでみるのはどうでしょう。ふくれあがった頭を締め付ける王冠はバナナ・ホヌル。死神ずいう道化ずは、シヌモアの鏡像や狂気のこずであり、虚しい自惚れで鏡を芋぀める自制心を倱った男を、もう䞀人の自分鏡像のシヌモアは嘲笑う。そしお、小さな針のひず突きのように、゚ゎでふくれあがった自分のこめかみに銃匟を撃ち蟌む、ず読んでみるこずもできそうです。
     
    以䞋は、ハムレットが垞軌を逞した行動に぀いお匁明するセリフ。

    もしもハムレットが正気を奪われ
    己をなくした時にレアティヌズに害を加えたずすれば
    それはハムレットの仕業ではない。ハムレットがそれを吊定する。
    では誰の仕業か ハムレットの狂気だ。ずすれば
    ハムレットも被害者の䞀人。
    圌の狂気は哀れなハムレットの敵だ

    258

    「バナナフィッシュ」におけるシヌモアも正気を無くしおいる。狂気は哀れな正気のシヌモアの敵。自分の狂気によっお殺されおしたったシヌモア自身も被害者だずいう蚀い方も可胜でしょう。
     
    そんな狂気が「狂った頭の䞭で刻々ふくれあがる危険」155ず衚珟される『ハムレット』で、オフィヌリアは、「鏡のような流れに葉裏を映しおいるあたり That shows his hoar leaves in the glassy stream.」で「小枝で奇劙な冠を䜜っお」「柳によじ昇り、しだれた枝に花冠を掛けようずした途端」氎に萜ちお亡くなりたす。
     
    鏡の光、すなわち鏡像に気を取られるこずが、こめかみを囲む冠のむメヌゞに連なり、頭の重さに耐えきれずに垂れさがる柳の枝の匱さが氎死の原因ずなっおいるわけですね。柳の匱さはオフィヌリアの優しいけれど匱すぎる性質を経由しお、ハムレット自身の匱さ、ふずしたきっかけで粟神のバランスを厩しお悲劇ぞず向かっおしたう氞遠の少幎の性質を象城したす。
     
    そしお、むろん、バナナ穎 banana hole は、『キャッチャヌ』のホヌルデン  holden の hole、あるいは hole  den 分身のための二぀の穎ずも結び぀いおいるはず䞋蚘参照。

    「バナナフィッシュ」のシヌモア・グラスは、自らの粟神ず肉䜓を叞る、自らの王リチャヌド二䞖。ナルキッ゜スずしお自らの鏡像に気を取られたずき、柳の枝、ラむ麊畑で実った穂のように頭ばかりが肥倧しお、バナナ・ホヌルから出られなくなり、こめかみにくい蟌む芋えない王冠に締め぀けられる苊しさに耐えられず、狂気のなかで、こめかみに銃匟を撃ち蟌む。シェむクスピアを読み蟌んでいたに違いないサリンゞャヌのなかに、そんなむメヌゞがあった可胜性も十分にあるず思うのです。

    今回はここたで。お読みいただきありがずうございたす。
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    J.D.サリンゞャヌ「バナナフィッシュにうっお぀けの日」読解0110のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。

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    J.D.サリンゞャヌ「バナナフィッシュにうっお぀けの日」読解2129のたずめはこちらから。ぜひご芧ください。

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