
【イタリアのインクルーシブ教育④】「どう一緒に学ぶか」を問い続ける学校~相手を変えるのではなく関わり方を変える~
■最初に
こんにちは!サイボウズのもっちーです😊
イタリアの学校シリーズです。
前回は、何があれば学べるのか考えるお話しです。
今回は、相手を変えるのではなく関わり方を変えるお話しです。
▼以前の記事
①地域の学校で共に学ぶということ
②同じ場所にいる」から「共に学ぶ」へ
③「できない」ではなく「何があれば学べるのか」
■相手を変えるのではなく関わり方を変える
○「わからない」は誰の課題なのか
学校では、知的障害のある子どもたちが使う教材も見せていただきました。
そこにあったのは、市販の教科書ではありませんでした。
教員が一人ひとりの理解度に合わせて、写真やイラストを追加しながら作ったオリジナルの教材です。
授業で扱う内容だけでなく、その子が興味を持ちやすい写真やイラストを取り入れることもあるそうです。
先生方の考え方も印象的でした。
「子どもが分からないのは、子どもの責任ではなく教員の責任です」
という考え方があるそうです。
もちろん、すべての子どもが同じ方法で理解できるわけではありません。
だからこそ、「なぜ分からないのか」「どうすれば伝わるのか」を考えながら教材や教え方を工夫しているとのことでした。
日本では、つい「この子には難しいかもしれない」と考えてしまう場面もあります。
けれど、ここではまず教える側が方法を変えてみる。
そんな発想がありました。

○一人ひとりに合わせた関わり
子どもたちの行動面のサポートについても話を聞くことができました。
先生方は、一人ひとりのニーズや興味に耳を傾けながら関わっているそうです。
例えば、目標に向かって取り組むための「ご褒美」の仕組みもあります。
ただし、何を目標にするのか、どんなご褒美がうれしいのかは子ども自身が決めます。
実際には、
・休み時間を少し長くす
・好きな映画を見る
といったものがあるそうです。
反対に、ルールを守れなかった場合などには宿題が増えることもあるとのことでした。
みんなを同じやり方で指導するのではなく、「その子には何が合っているのか」を考え続けているそうです。
イタリアのインクルーシブ教育というと制度に注目しがちですが、
実際の現場ではこうした日々の細かな工夫の積み重ねによって支えられていることを感じました。

○信頼関係は「対等な関係」から生まれる
学校の先生方は、「お互いを尊重すること」や「対等な関係でいること」を大切にしているそうです。
実際に、その考え方が表れている場面もありました。
私たちが見学した教室の中には、本来であればその日にテストを実施する予定だったクラスがあったそうです。
ところが、生徒たちから
「もう少し準備する時間がほしい」
という声が上がり、テストは延期になったといいます。
もちろん、何でも生徒の希望が通るということではありませんが、
生徒が自分の考えを伝え、それを先生がきちんと受け止め、必要に応じて柔軟に対応していることを感じました。
先生が決め、生徒が従うという関係ではなく、
お互いを尊重しながら学校生活をつくっていました。

○一人ひとりと向き合うコミュニケーション
見学の中では、障害のある子どもたちが他の子どもたちと一緒に学ぶ様子もありました。
例えば朗読の時間も、一部の子どもだけを特別扱いするのではなく、
みんなと同じ活動の中で参加できるよう工夫されていました。
もちろん、障害があれば誰もが同じ支援でよいわけではなく、
一人ひとりの特性に合わせて関わり方を変えているそうです。
中には、人と目を合わせることが苦手な子どももいます。
大人と話すことそのものに強い抵抗を感じる子どももいます。
そんなある子どもに対して、先生は無理に会話を求めるのではなく、
文字を書くことでコミュニケーションを続けました。
言葉ではなく、紙に書いてやり取りを重ねていったのです。
すると学年最後の日、その子は先生の目を見て、
「ありがとう」
と伝えてくれたそうです。
支援の技術ではなく、信頼関係を育てる時間を大切にしています。
相手を変えようとするのではなく、相手に合った方法を探し続けているそうです。

○イタリアの「104」とは
視察の中で、何度か「104」という言葉を耳にしました。
これは、イタリアの障害者支援の基盤となっている「法律104号」のことです。
日本の障害者手帳と完全に同じではありませんが、
障害の状態を認定し、その人に必要な支援や配慮につなげるための仕組みとして使われています。
学校でも、この認定をもとに支援員の配置や学習上の配慮が検討されるそうです。
ただ、「104を持っているかどうか」で子どもを見るのではなく、
一人ひとりにどのような支援が必要なのかを考えることが重視されています。
認定はあくまで支援につなげるための入り口であり、
その子自身を決めるものではない。
そんな考え方が、学校全体にも根付いているといいます。
104認定を受けている子どものことを、他の子どもたちに説明するのかという質問には、
「伝えていない」という答えでした。
先生方は、障害について子どもたちへ一方的に説明したり、
理解を求めたりすることはしていないそうです。
それよりも、一緒に過ごす中で子どもたち自身が関係をつくり、
お互いを理解していくことを大切にしているといいます。
大人が先回りしてすべてを説明するのではなく、まずは子どもたち同士の関わりに任せてみる。
そんな考え方が根底にあるようでした。
■最後に
最後までありがとうございました。
伝わらないのは伝える人の問題という言葉は、障害者雇用に力を入れているところでもよく聞くお話ですが、実際にやろうとすると難しいですよね。
多様な人とちゃんと関わっていくことで、少しずつ見えてくる視点なのかもしれないなと、イタリアでのお話を聞きながら思いました。
簡単に伝わる方法をマニュアル化して、仕組み化して、一般化してしまおうと思うのは、ある意味では自然なことだと思います。
今回、先生方のお話を聞いていて印象に残ったのは、最初から正解を持っているわけではないということでした。
「わからない」「できない」で終わらせず、関わり続ける。
続けることで見えてくることなんだろうなと思いました。
次回は、子ども1人にたくさんの大人が関わるお話しです!
次回も見てもらえると嬉しいです😊