
【療育探偵:Epilogue】また今度の約束|手話とランドセルと写真
はじめまして、emcOmi_in_progress と申します。
このnoteでは、療育を通じて、
息子の「個性」を紐解き、
家族の平穏を取り戻すため「仕組み」で戦ってきた
探偵(父)の記録を綴っています。
前回、小学校支援級への進学を決めたお話で、
2年間にわたる療育、園生活の記録はお仕舞い。
今回の記事は【療育探偵シリーズ】のEpilogue。
息子の舞台が
幼稚園から小学校に移り変わる過程を綴り、
筆を置きたいと思います。
放課後等デイサービス選定プロジェクト
幼稚園では延長保育を利用していたため、
親の仕事終わりまで、
息子の居場所が確保されていました。
小学校の授業は意外と早く終わる。
まずは息子の新しい居場所を見つけないと、
親のスケジュールが成り立たない。
長期的にパパが目指すゴールは、
息子を社会の迷子にしないため、
息子の未来と社会をつなぐ糸を手繰り寄せること。
ゴールはまだまだ先。
小学校へ進学すると
療育の少人数制ゆえの手厚い支援から離れ、
多人数ゆえに支援が限られる環境に飛び込むことになります。
ここで園生活で身につけたSOSを発揮し、
息子自身でサバイブするための基礎体力、
つまり、生活に必要な読み書きや計算を
身につけていかなければなりません。
しかし、学校と親だけで学習を支え続けるには、
時間的にも体力的にも限界があります。
入学後の生活スケジュールを組み直し、かつ、
長期的に息子の学習環境を維持していくためには、
どうしても「プロの手」が必要でした。
だからこそ、先回りの環境設計。
家族の未来を見通し、早め早めに動いた
放課後等デイサービス選定プロジェクトから、
このEpilogueを書き進めたいと思います。
1. 息子の居場所探し
就学相談の日程は役所から案内が届きますが、
放課後等デイサービス探しは親が動かないと進みません。
かつて、療育に繋がりたくても
空き待ちの回答ばかりだった頃を思い出し、
年長の秋、支援級進学を決めた頃から放デイを探し始めました。
まず、放デイに求めることを整理。
■何かあった時にすぐにお迎えに行ける距離
放デイは送り迎えがある事業所が多いので、
普段、距離を気にすることはないが、
病気等を想定しすぐにお迎えに行ける範囲に限定
(今となっては面談もあって近場で良かった)
■会話を促してくれる環境
療育(児童発達支援)で対話力が伸びましたが、
初めて会う人に伝わるかはまだ心配。
言葉の発達を促せる職員がいるかも選定基準に
■学習支援
学習の時間があること
親の希望を学習に反映してくれること
小学校支援級への進学なら、
息子のペースで学習を進めてくれるはずですが、
生活に困らない程度に、
読み書き・計算の基礎を固めてあげたい
放課後等デイサービス選定のため、
私が動いたタイムラインがこちらです。
■ 放デイ選定タイムライン
✔年長・秋
・近場の放デイ探しと見学
✔年長・1月〜
・息子に新しい放デイ環境に慣れてもらう
年長・秋|近場の放デイ探しと見学
役所や、「LITALICO発達ナビ」で、
候補となる事業所を探し、連絡を入れました。「LITALICO発達ナビ」は
賃貸物件の内見希望を一括で送信するような感じでオススメです。
※紹介を依頼されたわけではありません。
LITALICO以外も探せますし、便利だったので掲載
冒頭の基準で事業所を探し、
都合がついた2ヶ所から見学。両方とも自転車圏内。
まず、一番近いところから見学。
新しく立ち上げた事業所。
この事業に対する思いや、職員も揃え始めている時期で、希望の資格を保有する人材もこれから採用することもできるとの話を聞く。
せっかく息子を連れてきたのに、他の職員は不在で、職員と息子のやり取りをみることはできず。
思いは分かった。
申し訳ないが息子を練習台にできない。
大事な息子を預ける場所だからしっかり判定する。
次の事業所。
こちらも最近できたところだが、児童発達支援、放デイで既に通っているお子さんもいる。
資格保有の職員も数名。言語発達面では、大学生の頃に専門で学んでいて、研修で勤務している職員がいた。
息子は連れていけなかったが、職員と子どもたちの様子は確認できた。
この事業者からの提案。
「今、児童発達支援で通っている子どもたちが
進学して継続利用する人数にもよるので、
小学校に進学して必ず月〜金通えるかは
何とも言えない。ただ、小学校になり、
お子様の環境がいきなり変わるより、
幼稚園からここに通って、
慣れている場所を作ってあげてもよいと思う。」
確実な答えは揃わないが、よい話。
4月の入学式の後の生活を想像。
息子にとって初めて小学校と放デイ。
初めての環境に2つ同時に放り込まれたら、
1日緊張で疲れてしまう。それなら、
「せめて放デイだけでも、
年長のうちに見慣れた場所に」
環境変化の時期を分散でき
良い「地慣らし」になると考えました。
この頃は、まだ年長の秋。
療育の先生にこの放デイの特徴を伝え、
息子に合いそうな場所であるか相談。
園児、小学生、一つの部屋で集団レッスン
みんなで運動できるスペースがある
学習と自由時間メリハリのあるスケジュール
言語発達トレーニングも受けられそう
「お話を聞く限り、合いそうだと思う」
療育の先生の所感が後押しとなり、
1月からこの放デイを利用することに決めました。
役所と園で手続きを進め、
息子の新しい居場所を整えます。
これまでの息子の成長をよく知る療育の先生に、
息子の特徴を放デイ職員に共有することを依頼、
また、放デイ職員には、
療育から了承を得ているので、
直接療育にコンタクトするよう頼みました。
こうして、幼稚園年長のうちから、
いつもの園生活の中に
「新しい居場所」に通う刺激を加えて、
地慣らしを進めていきました。
2. 息子からありがとう
時は卒園式を終え、
小学校の入学式を控えた春へと進みます。
卒園式の後、息子はよくYouTubeを見ながら、
ある歌の「手話」をしていました。
それは、発表会に向けて何度も練習したであろう
「ありがとうの歌」でした。
発表会で、言葉ではなく、
小さな手で懸命に紡いだ「ありがとう」の歌。
息子はその歌がお気に入りだったようです。
そんなある日のこと。
公園で思いきり遊んだ帰り道、
私たちは幼稚園の近くを通りかかりました。
ふと、家で何度も見た息子のあの手話が、
私の脳裏に蘇ります。
「先生に、ありがとう、言いに行く?」
「うん」
戦友に会いに、そのまま幼稚園に立ち寄る。
職員室の受付窓からひょっこり顔を出した戦友は、
再会を心から喜ぶような笑顔で、
「ひさしぶりー! どうしたのー?」
と、声をかけてくれました。
息子はモジモジした感じ。
「近くを通って、
息子からありがとうを伝えたかったみたいで」
息子は何も言わず、あの手話を始める。
気づいた戦友も
「ありがとうの歌」を歌ってくれる。
ワンフレーズが終わったところで満足した息子は
戦友に手遊びを仕掛ける。
こうやって日頃遊んでいたんだな……
パパは静かに二人の様子を眺めていました。
初めて親の立場で園生活を始めた頃、
息子は園への行き渋りが強く、
園で何か辛いことがあるんじゃないかと疑い、
園長先生を交えて話をした時が、
私と戦友がじっくり対話をした最初の機会です。
戦友はそれからずっと、
言葉が出ず、ジェスチャーでしか世界と繋がれなかった息子を支えてくれました。
ずっと息子を支えてくれた戦友に、
息子の小さな手が「ありがとう」を伝えていた。
言葉のいらない2人のやり取りを見つめ、
私も戦友への感謝の思いでいっぱいになりました。
しばらく遊んで満足したのか、
廊下の方を見に行ったり一人で遊び始めたので、
「もう満足みたいです、ありがとうございました。」
2人で戦友に手を振り、帰路につきました。
3. 入学式
小学校入学前、
小学校に支援級進学の希望を回答した時に、
事前に式場を確認できる機会をいただけることになりました。
「初めての場所で、
初めて会う先生や親御さんたちに囲まれて、
静かに過ごすことが求められる」
園の息子の様子を見ていると、
大丈夫そうだとは思いましたが、
息子が安心するにはよい機会と思い、
息子と一緒に体育館にセットされた会場を確認しました。
入学式当日。
式中は息子と過ごす時間は少なかったのですが、
式を通して落ち着いて参加できていました。
事前に会場は見ましたが、
何が起こるかよく分からなかったはず。
静かに前を見て座る息子の背中。
会場の「下見」に加え、園生活で築いた仕組みが
息子の安心に繋がっていたのだと思います。
「これなら、小学校でもやっていけそうだ」。
親として安心を感じた瞬間でした。
さぁ、この晴れ姿を誰に見せたいか。
もちろん、幼稚園でお世話になった戦友です。
ランドセル姿を見てもらいたくて、園へ。
ピカピカのランドセルを背負い
くしゃくしゃの顔で笑う息子と、
うれしそうな戦友のツーショットを、パシャリ。
4. ママとパパからありがとう
それから季節は巡る。
卒園式で戦友の退職予定を知ってから
半年以上が経った、小学1年生の冬。
年少の頃から息子と共に
ママも支え続けてくれた戦友。
お別れを前にママから何かお礼をと、
園の思い出を集めたアルバムと、
小さな花束をプレゼント。
私は仕事で不在でしたが、
ママも大変お世話になったので、
直接ありがとうを伝えられて良かった。
卒園式から1年が経とうとする頃。
もう戦友もいなくなるのか、
私からも何か贈れないかと考え、
卒園式、息子と「さようなら、また今度」と
交わした握手の写真を贈ろうと園へ向かいました。
すでに戦友はいませんでした。
遅かった。少しの寂しさを感じましたが、
悔いはありませんでした。
ただ戦友と息子の晴れ姿の写真を渡せればいい。
顔馴染みの先生に写真を預け、
戦友に届けてもらうようお願いをして、
そのまま園を後にしました。
直接手渡すことはできなくても、
戦友との日々は、息子を支える仕組みとして、
また、私たちの温かい思い出として
残り続けます。
写真のなかの弾けるような息子の笑顔が
「共に楽しく戦い抜いた証」として
戦友の自伝の1ページに彩りを添えられたなら、
これほど嬉しいことはありません。
人生が自伝だとしたら、
読み飛ばしていいページは無い。
戦友は、息子の人生の序章に、
これ以上ない最高の彩りを添えてくれました。
そしてここからは、小学校編のページを、
学校の先生方、放デイの皆さん、そして家族、
にぎやかに、彩り豊かに紡いでいくのです。
日々巡る、新しいページに何を描こうか?
「さようなら、また今度」
私の言葉が、
日々、大切な人を支えるため
不安と闘っている誰かの、
足下を照らす小さな灯火になりますように。
emcOmi_in_progress
療育探偵シリーズを読んでくださったママパパへ
「療育」という言葉のイメージに抵抗感を持たれている親御様もいるかもしれません。診断名に涙したあの日、私も同じように不安の渦中にいました。
2年間の療育を終え、今の息子の姿から確信を持って言えます。
療育は、子どもに「ラベル」を貼る場所ではなく、社会の中で自分らしく羽ばたくための武器や仕組みを一緒に整えてくれる「最強の味方」です。
親の物差しを少し横に置き、先回りで環境を整えていけば、子どもは驚くほどの成長を見せてくれます。そして、その成長が家族の宝物になります。
この記録が、育児に悩むママパパにとって、療育にネガティブなイメージを持たず、我が子の未来のため、療育に一歩早く、気軽に繋がろうと思えるようなきっかけになれたなら、幸いです。
✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
▼息子と「仕組み」で歩んだ2年間の全記録
▼ 療育探偵シリーズ最終話。Epilogueの背景。
これから就学相談に臨むすべてのママパパへ捧ぐ。
▼ 親の物差しを捨て、息子の個性を偵察し始めた頃
▼ 大変であっという間に過ぎ去ってしまう育児プロジェクトだからこそ、彩りを。
▼ 療育探偵シリーズのあとがき