
【療育探偵13】仕組みが日常に変わる|2年の療育で掴んだ「平穏」という宝物
はじめまして、emcOmi_in_progress と申します。
このページに立ち寄っていただき、ありがとうございます。
このnoteでは、療育を通じて、
息子の「個性」を紐解き、
家族の平穏を取り戻すため「仕組み」で戦ってきた
探偵(父)の記録を綴っています。
今回は、2年間にわたる療育の最終章、
全4幕の「第3幕」にあたるお話です。
療育(児童発達支援)からの卒業を控えた
最後の3ヶ月のレッスンや
訪問支援の記録を読み返すと、
事件やトラブル、劇的な成長もない、平穏が並んでいました。
レッスンで、先生と淀みなく会話ができている。
療育に出会う前(第1話)の私は、
「この先にどんな未来が待つのか……」
ブラックボックスに手を入れるような不安を感じていました。
ジェスチャーに頼り、何かを貸してほしい時は、
先生から「か」と最初の一文字の鍵をもらって、
ようやく「かして」と言葉をこぼしていた頃からは想像もつかない姿です(第2話)。
「何も気になるところがない」
これは、療育、園、息子、家族のチームで
少しずつ積み上げ、掴み取った、
かけがえのない「平穏」でした。
何気ない穏やかな記録こそ、
チームが2年間かけて積み上げた仕組みが、
息子の力として根付いた証だったのです。
療育最後の目標の達成プロセスとともに、
この2年の療育の「成果」の中身を紐解きます。
1. 1月〜3月の療育∶4つの目標の達成に向けて
療育最後の個別支援計画には
4つの目標が組み込まれていました。
■療育最後の目標
①自分の行動に対して「どうして◯◯なの?」と
聞かれて理由を答えられる
②行動の前に「◯◯してもいい?」と
先生やお友達に許可を求められる
③位置を表す言葉を使って話す
④目的語と述語を組み合わせて2文以上で話す
このプログラムに対し、
1月、2月、3月と月を追うごとに、
息子はより「穏やか」に深化していきました。
1月∶対話の基礎 「理由+要求」
1月、自分の気持ちを言葉で相手に伝える長男の姿。
かつては嫌なことがあると、
激しく首を振る等のジェスチャーで拒否を示していました。
それが年長の1月、
嫌な理由と、次の行動要求を加えた、
2文構成で会話していました(目標①・④)。
理由が伝わるから、
「じゃあ、これだけやったら終わろうか」と
お互いに丁度良い落とし所が見つかるのです。
やりたくない理由を言葉で伝える
「もうやめたいな、
ブロックやりたくなっちゃった」
「もう疲れた、水飲みにいきたい、
もう終わりにしよ」
「3つ多い、できない」
さらに、何かを始める前、部屋を出る前に許可を求めるノック(目標②)。
このノックが自然に出るようになっていました。
先生に許可を求める
「水飲みに行っていい?」
「先生、ちょっと暑いよ、水飲みに行きたいよ」
机に置いてあるおもちゃを見て
「これ誰か使ってる?」
また、「どうして?」に理由を返せることで、
大人から「今、こういう意図で動いているんだ」と理解してもらえ、
不本意なコミュニケーションの食い違いを減らせるはずです。
氷鬼の課題で鬼になる理由を聞かれ
「ぼくタッチいや」
爆弾と刀の工作、
先生から爆弾から作り始めた理由を聞かれ、
ワクワクを伝える
「床においてバーンてなる」
息子は周りの大人に
「こうしてほしい」と要望を伝え、
環境を調整する「自走力」も手に入れていました(目標③)。
「次は先生がサイコロふるよ」
「先生、ぼくのことおんぶしてゾンビやって」
先生の背中の上から
「先生、そっち行って、追いかけて」
ドッチボールで先生が線を越えているのを見て
「先生、もうちょっと後ろ」
2月∶苦手の自己分析とエラー修復
凸凹を抱えるお子様が、大人の物差しで言う「良くない行動」をとるタイミングは、
お子様にが「わからない」「できない」と感じた時ではないでしょうか?
息子が年少、年中の頃を思い出すと、
息子が、泣く・いじける反応をした時、
自分の気持ちが何なのかわからず、
うまく説明できない悔しさも多分に含んでいたように思います。
年長の2月になると、「自己表現」が深まりました。
「工作は難しい(理由) + 塗るのが苦手(自己分析) →だから絵本にする(選択)」決定を下す。
苦手を理解し代替案を選べる。
これは、小学校で周りに流され苦手な環境に追い込まれることの予防に繋がるスキルだと思います。
工作と絵本どっちがいい?と聞かれ
「工作は難しいから嫌だよ、塗るのが苦手」
自分の意図が伝わらない時は、誰でもイライラするものです。
年中の頃(第2話)なら、
先生に背を向けいじけてしまうような場面でも、
相手に伝わらなければ言い換える。
この頃の息子に言葉の重りは感じられません。
棚からおもちゃを取ってほしい時、最初は
「上のやつ」「隣」
先生にうまく伝わらないときは、感情を乱さずに
「ペンギンのやつ」と言い換える。
しっぽ取りゲーム、しっぽを取られたら先生に声をかけると新しいしっぽがもらえるルール。
新しいしっぽがほしくて、先生に
「取って」
すぐには取ってもらえず
どうして新しいしっぽがほしいの?と聞かれ、
ワンクッション入るもどかしさに感情的にならず
鬼役の先生を指さして
「取られちゃった」
療育の先生は、
小学校の授業に通じる場面を設定してくれました。
この頃に集団のルールの中で、
自分の発言権を得る経験を積むことができました。
また、遊びの提案や、ユーモアのある抗弁を
自然と出せるようになっていました。
絵本の場面、他児をまね、手を挙げながら
「話していい?」
自由時間に遊びのルールを提案
「先生、ゲームしよう、
◯✕、どこでも書いていいよ」
鬼の的あての遊びについて
「鬼は当たっちゃダメだよ」
自分が投げたボールが鬼にあたり、
先生からくすぐられている時に
「当たってないよ、触っただけだよ」と抗弁
3月∶変わった姿、変わらない優しさ
そして3月。
この頃、息子の対話力に磨きがかかり、
より自然な会話になっていました。
小学1年生になれば、
初めてのこと、緊張する場面が山ほどあります。
その時には自分の感情を説明できるんじゃないかと思えるような場面もありました。
次の課題は的あてと言われた時、
「中当てやりたくない」
理由を聞かれ、
「ドキドキするから」
療育に通い始めた頃、言葉に重りがあった息子が、
カマキリの持ち方、蝶の習性、
ゲームの勝敗条件まで説明できるようになるなんて
想像すらしていませんでした。
カマキリ、蝶の模型を指さし、
「取るときはここ(腹)持つよ」
「これ(蝶)お花大好きだよ」
アイスクラッシュの遊び方を説明
「回す、ここ叩く、こうしたらゲームオーバー」
「ぼくが先やるね、先にドーンてなったら負けね」
崩れたら負けなの?と聞かれ、
「そう」
言葉の成長も嬉しいことですが、
優しさが変わらないことも喜ばしいことでした。
工作の時間、
先生が他の子のサポートでノリに気がつかず、
うっかり手にノリがつきそうなことに気がつき
「先生、手、危ないよ」
療育最後のレッスン
卒業式の飾りを作る課題で、
先生に必要なアイテムを要求し、許可を得る。
自分の名前が書けない時に支援を求める。
卒業式の飾り付け
「先生テープ3個ください」
先生からテープをもらい
「貼っていい?」
自分の名前を先生に書いてもらいたい時
「先生、書いて」
できることをやり、できないことは助けてもらう。
これこそ療育2年間で息子が学んだ、
集団生活を「平穏」に過ごすための仕組みでした。
2. 訪問支援の記録∶幼稚園での「実戦」
訪問支援記録には、
息子がお友達とワクワクを掛け合わせている姿が記録され、療育で磨いてきた対話力が息子を支えていることがわかります。
1月∶「きれい」と「いいぞ」で繋がる
1月の記録には、
息子がルールに合わせつつ、
お友達と関ろうとする姿がありました。
制作活動では、
自分のワクワクに没頭するだけでなく、
ふとお友達の作品に目を向け、
「きれい」
自然にお友達の表現を認める。
ドッチボールの場面で、
仲間がボールを投げる姿を見て、
「いいぞ!」
お友達への関心が育まれている。
ドッチボールでの失敗。
自陣を飛び出してボールを追いかけてしまう。
先生から「こっち入るのはダメだよ」と
ルールを提示されると、しっかりと調整し、
ルールの中で楽しんでいたのです。
ドッチボールが終わると、先生に
「ボール取りに行きたかった」
心でくすぶっていた気持ちを
言葉にして聞いてもらう。
これが息子なりの、心にモヤモヤをためない
仕組みだったのかもしれません。
園の担任からのコメント
様々な制作に意欲的に取り組んでいる。
活動前に個別にやることを伝えているが、活動中は一人で工程通りに取り組むことが増えている。
難しいことは手伝うが以前より介入が減った。
外遊びの課題で口頭だけではルールを理解することが難しい様子もあるが、都度声かけることでルールに沿って行動しようとする様子が見られている。
ドッチボールの際、ボールが思い通りに取れず涙することがあったが、引きずることなく次の活動に参加できていた。
日ごろ交流のある他児と、ゾンビ等についてコミュニケーションをとって過ごしている。
2月∶「忘れちゃった」のSOSと卒園式の練習
防災頭巾を持って移動する際、手元に頭巾がないことに気づいた息子は、近くの先生に
「忘れちゃった」
先生と一緒に取りに戻る。
忘れること、できないことは問題ではありません。
困ったら自分からヘルプを出す。
小学校でも活きるSOSが、
園でしっかり発動していました。
2月になると、卒園式に向けて、
あの連続タスクの練習が始まります。
起立 ➔ 先生の前に歩く ➔ 右手左手の順で受け取る ➔ 左手に抱え ➔ 右手で先生と握手 ➔ 自席に戻る ➔ 着席。
息子の「見てまねるスタイル」が活きてきます。
先生の見本動作と声かけをトレースし、
一連の動作を実行できたのです。
園の担任からのコメント
一斉指示で行動できる事が増えている。複雑な指示は見本や視覚的情報があるとそれをヒントに行動できる。
時折身支度が思い通りにできない場面で涙を浮かべることがあるが、先生にヘルプを出すことができている。
他児とは鬼決め等、ルールに沿って遊ぶことができている。
3月∶完璧じゃないからこそ愛おしい
3月、卒園式の本格的な練習でも、
司会の先生の号令に合わせ、
「起立、礼、着席」をこなす。
長い話でも、静かに座って聞く。
もちろん、
すべてが完璧になったわけではありません。
グループごとに退場する練習では、
「周りを見てまねるスタイル」が強すぎるが故に、
他のグループの動きにつられて一緒に移動してしまう。
息子らしい御愛嬌もちょこんと顔を出していました。
それでも、最後の訪問支援記録には、
園の担任からオールグリーンが示されていました。
園の担任からのコメント
卒園式の練習は概ね指示に沿って取り組めており、介入(手出し)が必要な場面はあまり無かった。
就学後も園の生活のように、自分の気持ちを伝えて過ごしていってもらえたらと思っている。
第2話で始まった訪問支援。
療育が園と息子の架け橋となり環境を整える。
療育で観察した息子の個性に合わせ、
親が物差しを塗り替え、息子との関わりを見直す。
その積み重ねが実を結び、
担任の先生と息子が、園生活を
「穏やかに」楽しめるようになったのです。
3. 結びに
1月から3月の記録を並べたとき、
「特に新しい出来事や、驚く成長はない」
そう感じられたのは、
息子が自然に言葉を使って
ワクワクを周囲と掛け合わせる姿を
数ヶ月間、眺めてきたからだと思います。
トラブルが起きない。
気になるところがない。
この「平穏な日常」が、
この2年の療育の末に辿り着いた、
私たち親子のゴールでした。
療育では、
レッスンが終わると、先生からレッスン中の様子を
詳しく教えていただける時間がありました。
その間、子どもたちは自由に遊んでいます。
私はいつも、
先生がフィードバックに来てくれるまで、
自由に遊ぶ息子を眺め、
これが好きなのか
その発想はおもしろい
お友達とこんな関わりができるのか
家では見られない息子の個性を学んでいました。
療育最後のレッスンでも、息子はいつも通り、
楽しそうにレゴブロックで
自分のワクワクを表現していました。
今日がこの場所での「最後の自由時間」だと、
終わりを意識していたのは
きっとパパだけだったと思います。
2年にわたる『療育探偵』の偵察の日々が、
ゆっくりと幕を閉じていく。
いつも通り、
大好きなレゴブロックで遊ぶ息子の横顔を、
少しさみしい気持ちで、パシャリ。
物語はフィナーレへ。
次回、最終章 第4幕:卒園式
園の優しさと、
息子が園で紡いだ「戦友」との絆。
私の言葉が、
日々、大切な人を支えるため
不安と闘っている誰かの、
足下を照らす小さな灯火になりますように。
emcOmi_in_progress
✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
▼ 2年間にわたる療育(児童発達支援)の記録を纏めた【療育探偵シリーズ】の完結編。
これから就学相談に臨むママパパに捧げます。
▼ 園の発表会を「仕組み」をフル稼働させてやり切った、もう一つの集大成。
▼療育最後の「4つの目標」の背景
▼訪問支援の始まりと一文字の「鍵」
▼ 療育探偵シリーズをまとめて振り返る
▼療育の先生の皆様、ありがとうございます。