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Photo bynodakaori

【療育探偵11】「動けない」からの大逆転|最後の運動会で息子が掲げた家族の優勝カップ

    「一部の方は本番前に練習を観ていただけるので、
     お越しになりませんか?」

    年長の運動会を前に、
    園の担任から案内がありました。

    事前に息子の頑張りを見られるお得感もありつつ、
    これは幼稚園側の温かい配慮。


    本番はみんなと同じように動けないかもしれない、
    今のうちに見ておいてね、ということか……


    年少・年中の運動会の記憶が蘇り素直に喜べない、期待と不安が混ざった心境でした。




    1. 年少の運動会

    子どもたちがわちゃわちゃ入り乱れて
    かわいい踊りを見られたりするのかな。

    入園式から少し経ってそんな想像をして、
    親として初めて迎える幼稚園の運動会。


    当時を振り返ってみて、
    息子が躍動する動画はほとんどありませんでした。


    輪になって踊る演目。

    息子は輪から外れ、まるで傍観者のように、
    踊る周囲のお友達を見渡す。

    見て楽しんでいるわけでもない、
    不服の顔で立ち続けている。


    私は動画を止めました。
    息子が動かないこと、
    この記録が残ることが嫌だったのかもしれません。


    踊らないまま終わる。

    運動会が終わって息子は不満そうな顔。

    まぁ、最初はこんなもんかなという気持ちと、
    想像していた園生活とは何かが違う運動会でした。


    ​次は、きっと…


    そう自分を納得させ、息子を労うのでした。




    2. 年中の運動会

    輪になり踊り、移動しては踊る。
    ルール通りに動き、
    みんなで作品を作る演目に変わってきた。

    赤色、青色。キラキラのボンボンを手に踊る。

    元気に踊る子の親御さんは、まさに
    キラキラ輝くの我が子を動画に残せたのでしょう。


    赤色のボンボンを手に配置に座る。
    傍らには補助の先生。

    息子はうつむいたまま。

    演目の曲が始まる前、故意にボンボンを落とし、
    不服モード。

    曲が始まっても座ったまま動かない。

    配置変更のため動かないわけにはいかず、
    補助の先生が手を引き、立たせ、手を動かし、
    リードされながらなんとか踊る。

    その光景が息子の不服の意思の強さを際立たせる。


    またか……


    確かにここで息子が過ごした時間を記録しようと
    動画を撮る。

    今はむなしい、けれど今しか記録できない。

    そんな想いでなんとか動画に残せました。


    次の演目は棒引き対決。

    フィールドの中央に数本の棒が配置され、
    フィールドの端から棒を取りに走り、
    自陣に多くの棒を引き込んだら勝ち。

    息子の傍らには補助の先生。


    動いた!

    棒をめがけて走り出す。それだけで嬉しかった。


    補助の先生が次はあの棒だと指し示し、
    棒を引き合う子どもたちの中へ走り込む。


    息子の意思を見られたことが本当に嬉しかった。


    試合が終わり自陣に戻る途中、
    ママパパを見つけ、笑顔で自陣に戻ってくると、
    そのままフィールドを抜けママに抱きつく。


    マイペースな息子がやっぱり愛おしい。

    最後には親も笑わせてくれたのでした。


    ​しかし、
    この時の私はまだ知る由もありませんでした。


    1年後、年長の運動会でとんでもない「奇跡」を
    目の当たりにすることを。




    3. 年長の運動会

    これまでの運動会が嘘のよう。

    最後の運動会の演目は3つ。

    ダンス、マーチング(身体表現)、クラス対抗リレー


    ・ダンス

    鳴子を使ったダンス。

    演目が始まる前、
    最初のポーズをとるよう全体指示が聞こえると、

    鳴子を足元に置き、仁王立ちのポーズ。

    曲が始まると、
    決められたタイミングでしゃがみ鳴子を手に。
    鳴子を鳴らしながら、息子が踊りだす。


    手を伸ばす、足を伸ばす。
    くるっと回る、半身になる。
    前へ、後ろへ。
    男の子だけしゃがむ、男の子だけ踊る。


    テンポが少し遅れる、先走る、
    そんなの御愛嬌と言える程度のことで、
    周りのお友達と同じように踊れている。


    周りのお友達に少しちょっかい出したり、
    自分だけ大きく前に出て、ママに近づいてみたり、
    決まった流れのなか自分のワクワクを織り交ぜる。


    笑顔で踊っている息子の姿は、
    こんなにも嬉しいものだったのか。



    ・マーチング(身体表現)

    お友達みんなで、列になり、掛け声をかけながら
    定められたコースを行進。

    渋滞して先に進まなくても、列から外れず待機。
    急に進みだしたら、急いで間合いを詰める。


    パパを見つけて手を振る余裕。


    マーチングから陣形を変えて、身体表現。

    座ってから両手両足を上げる飛行機。
    上向きに寝転んで足を高く上げるスカイツリー。
    うつ伏せで足の甲をつかみ顔を上げるシャチホコ。


    ころころバランスを崩しながらも
    体勢を保とうとがんばっている。

    日差しが強く、寝転び上を向く際に、
    帽子を深くかぶると眩しくないことに気づき、
    お友達に共有する優しさを見せてくれる。


    がんばる息子の姿に胸を打たれる。



    ・クラス対抗リレー

    運動会最後の演目。クラス対抗リレー。

    事前の走順のくじ引きで
    息子は「アンカー」のポジションに決まりました。

    リレーの練習が始まったころの息子

    ​園の先生からのコメント

    運動会のリレーの走順決めのくじ引きでアンカーになりました。アンカーで走る際、後ろから追いかけられるゾンビゲームと思い、銃で撃ったりする素振りをして全力で走ることが難しいです。

    詳細は10話参照


    さあ、本番。息子は赤チーム。
    みんなフィールドに並び、
    1走目の子がスタートラインに立つ。

    よ~い どん!

    バトンパスが重なるにつれ、
    差がついてくる。赤チームは1位。独走かな。


    これならアンカーも安心。


    息子はアンカーで一番後ろで待機。
    バックストレートが目の前にある。
    立ち上がっては、目の前を走り抜けるお友達を
    懸命に応援している様子。


    2位の青チーム、
    速い子があっという間に差を詰める。
    速い子が連続して青チームが独走の1位に。


    ここまで離れたらアンカーも逆に安心かな。


    順番待ちの列が進み、
    息子はフィールドの中央あたり。
    待ちくたびれたのか砂いじり中。
    前の子から「進んだよ」と言われている様子。


    残り10人。
    独走していた青チームがバトンを落とし、
    さらに焦りからか転倒が重なる。

    その隙にバトンを繋いだ赤チームが
    ついに1位に躍り出る。

    青チームも猛追。
    互いにバトンミスを繰り返す展開のなか、
    1コーナー分のリードを保ったまま、
    いよいよ息子の出番が近づく。


    出番が近づき、息子は立ち上がって
    ソワソワしている様子。


    息子の前の子が走り出す。
    2位の青チームの子が速い。
    差がどんどん縮まり最終コーナーで並びかける。

    ーーっと、青チームの子の靴が脱げて失速!
    再び1コーナー分のリードとなって、
    息子にバトンが渡る。


    息子はどちらかといえば運動が苦手。
    追いかける青チームの子の方が速そうだ。
    最終コーナーを抜けて息子の後ろに着かれる。


    「ギャーー!」


    ゾンビに追われているかのような楽しそうな笑顔。

    ママパパの目の前で、笑っちゃう。


    「ギャーー!」
    っと、1位でゴールテープを切る息子。


    ハラハラ、ドキドキ。笑わせてくれる。


    整列し直して、「優勝、赤チーム!」

    「イェー!」

    両手を挙げて飛び跳ねる息子が最前列にいる。


    「優勝チームにトロフィーが贈られます。
     代表のお友達、前に出ましょう!」


    担任の先生に背中を押され、前に進む息子。


    「よくがんばりました。
     優勝おめでとうございます!」


    息子にトロフィーが手渡される。
    担任の先生に促され、両手でまっすぐに、
    精一杯高くトロフィーを掲げる息子。


    目が潤んでしまう。


    運動会の帰り道。
    肩には、リレーのアンカー番号が書かれたシール。

    アンカー番号を誇らしげに
    パパに見せてくる息子をパシャリ。





    4. 今ならわかる

    ①年少の息子

    なんでやるの? ぼくやりたくない。
    なんでみんなやるの? パパ? これやるの?
    わかんない。

    不思議がいっぱいだったんだよね。



    ②年中の息子

    ボンボンの色が気に入らないよね。
    だって青が好きなんだもん。

    「青がいい」

    まだ言えなかったんだよね。

    配置で色が決まって、隣には、
    大好きな青色のボンボンを持つ子がいるんだもん。

    うらやましいよね、赤色なんて捨てたくなるよ。
    そんな気持ちで踊れないよね。


    棒引きはわかりやすかったね。
    周りのみんなが一つの棒を引っ張っている。

    視覚から理解することが得意だから、
    クラスのお友達と一緒に駆け回って、
    一緒に引っ張ることができたね。



    ③年長の息子

    ・ダンス

    療育で「パズル→紐通し→型はめ」と、
    順番通りにこなす練習を重ね、
    園で「お支度→着替え→着席」という一斉指示を
    自力でこなせるようになった。
    視覚から情報を理解し続けた。

    きっと振り付けの順番が全部わからなくても、

    本番で、先生の掛け声を聞き、
    先生やお友達の踊りを見てまねて、
    テンポが遅れても踊れたんだよね。

    できることをがんばる。
    わからなくなったら助けてもらう。
    みんなそう、大人になっても。


    ・マーチング(身体表現)

    ダンスに比べたら余裕かな。

    お友達から「前進んだよ」と言われてるような姿、
    お友達に向けた優しさ、
    大人無しでコミュニケーションが取れている姿に
    安心したよ。

    お友達にちょっかいかけたり、砂遊びしながらも
    やるときにしっかりやれる。

    ワクワクとルールのバランスは大切。
    大人になっても。


    ・クラス対抗リレー

    やっぱり、最後までゾンビゲームだったね笑

    「ゾンビ(青チーム)から逃げ切って、
     安全地帯(ゴールテープ)に飛び込む」という、

    これ以上ない、
    ワクワクのシチュエーションがあったからこそ、
    1位で駆け抜けることができたんだよね。


    ​スポットライトの中心で、
    小さな体で精一杯高く掲げたトロフィー。


    ​それは「不思議だらけの社会」を、
    息子なりに一生懸命サバイブしてきた、
    努力の結晶のようでした。


    ​また、私にとっても
    特別な意味を持って見えていました。

    ​診断名に泣いたあの日から、
    私たち親にとっても息子から見える世界は
    「不思議だらけの世界」でした。


    どうして言葉が出ないのか、
    どうしたら言葉が出るのか、五里霧中のなかで、
    親の物差しを捨て、息子の個性を偵察し、
    園、療育、家族でサバイブしてきた園生活。


    ​息子が両手に掲げたトロフィーは、
    息子の成長を称えるものであると同時に、
    これまでチームで少しずつ暗闇を照らしてきた、
    「息子と私たちの努力」を称えてくれた、
    家族の優勝カップのように見えたのです。


    ​だからこそ、スポットライトの真ん中で、
    誇らしげにトロフィーを掲げる息子の姿を見て、
    私の目は潤んでしまったのだと思います。




    ​私の言葉が、
     日々、大切な人を支えるため
      不安と闘っている誰かの、
       足下を照らす小さな灯火になりますように。


    ​emcOmi_in_progress


    ​✔あわせて読んでいただきたい、私たちの軌跡
    ​▼ この記事の伏線となった息子の「ゾンビの世界」


    ​▼ 親の物差しを捨て、息子の個性を偵察し始めた頃

    ​
    ▼最終章の第2幕。発表会編。息子が最強の「ヒーロー」になるまでの長編ドキュメンタリー。


    ▼ 療育探偵シリーズをまとめて振り返る

    ​
    ▼ 診断名に泣いたパパの原点シリーズの目次



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    ​家族を守る防波堤。発達凸凹長男、癇癪次男、鬱と依存を抱える妻。戦場からの帰還を目指し、育児の悩みを偵察する【探偵】、負の感情と戦う【兵士】となる。親の物差しを捨て【愛を仕組みに、日常を自伝に】家族の世界を彩る。いつか大人になった息子たちが誇れる足跡を残す。固定記事・マガジンへ⇩

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