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本を読たなくおもいい垭で、もう䞀床『奜き』に出䌚いたした

    十䞀月䞊旬。
    王郜の朚々は、赀や橙にすっかり染たっおいた。

    朝の空気はもう冷たく、王立図曞通の倧きな窓には、時折、颚に飛ばされた萜ち葉が匵り぀いおいる。

    通内では数日前から暖炉に火が入っおいた。
    そんな図曞通を、ちびたぬきは今日も歩き回っおいた。

    「『奜きの、その先ぞ』の棚、いい感じだねえ」

    新しく䜜った棚を満足そうに眺めるちびたぬきの埌ろを、タツたぬきずセドリックが぀いお歩く。

    「お前、毎回来るたびに棚を増やしずらんか」
    「気のせいだよ」
    「気のせいではありたせんね」

    セドリックが即座に吊定した。
    そのずき、ちびたぬきの足が止たった。

    窓際に、䞀人の少女が座っおいた。
    孊院の制服を着た、茶色い髪の少女。
    机の䞊には䜕もない。
    本も、ノヌトも、筆蚘具も。
    ただ怅子に座っお、窓の倖をがんやり芋おいる。

    昚日もいた。
    䞀昚日もいた。
    けれど、本を読んでいるずころを芋たこずがない。

    ちびたぬきは少女のずころぞ行った。
    「本、探しおる」

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    少女は少しだけ肩を揺らした。
    「  別に」
    「そっか」
    「ここにいるだけだから」
    「うん」

    それだけ蚀っお、ちびたぬきは戻っおきた。
    セドリックが目を瞬く。
    「それだけですか」
    「うん」
    「䜕か本を玹介しお差し䞊げおは」
    「読みたいっお蚀っおないから」

    セドリックは少し困った顔をした。
    「しかし、ここは図曞通です」

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    「うん」
    「本を読むための堎所では」

    ちびたぬきは、しばらく考えた。
    そしお窓際の少女を振り返った。
    「本を読む前にさ」
    「はい」
    「ここにいおいいっお思えるこずが必芁な人もいるんじゃない」


    翌日。
    窓際に、小さな札が眮かれた。
    『読たなくおもいい垭』

    セドリックは、その文字を䞉床読み返した。
    「  図曞通で」
    「図曞通で」
    「本を」
    「読たなくおいい」

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    「それはもう、図曞通なのでしょうか」
    「わしも最初そう思うたわ」

    タツたぬきが怅子を運びながら笑った。

    「でもたあ、こい぀が蚀い出したら止たらんけえ」
    「タツたぬき、そこもう少し右」
    「ほらな」


    ずころが。
    『読たなくおもいい垭』には、少しず぀人が座るようになった。

    授業が終わっお疲れた孊生。
    䜕を読めばいいのか分からない若者。
    本棚の前たで来おも、そのたた垰っおしたっおいた人。
    誰も、無理に本を読む必芁はなかった。

    ただ座っおいる。
    窓の倖を芋る。
    暖炉の音を聞く。
    ずきどき、本棚を眺める。

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    するず䞍思議なこずに、ある日、䞀人が本を手に取った。
    別の日には、衚玙だけ眺めおいた人が数ペヌゞをめくった。

    セドリックは、それを䜕も蚀わず芋おいた。
    そしお、あの少女も毎日来おいた。

    名前はノア。
    王立孊院の生埒だった。

    ある倕方。
    ちびたぬきは、本棚の陰からノアの姿を芋぀けた。
    ノアは誰もいないこずを確かめおから、䞀冊の本を棚から抜き取った。

    叀びた児童曞だった。
    衚玙の角は䞞くなり、䜕床も読たれおきたこずが分かる。
    ノアはその本を胞に抱いた。

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    その瞬間、廊䞋から人の声がした。
    ノアは慌おお本を棚ぞ戻した。
    たるで、芋぀かっおはいけないものを隠すように。


    その倜。
    図曞通を出たずころで、タツたぬきが聞いた。

    「気づいずるじゃろ」
    「うん」

    「聞かんの」
    「聞かない」

    「なんで」
    ちびたぬきは、石畳に萜ちた赀い葉を䞀枚拟った。
    「奜きっお、自分で蚀えたずきのほうが倧事だから」


    数日埌。
    図曞通で、小さな催しが開かれた。

    『奜きな䞀冊を話す䌚』
    ただし、参加自由。

    話したくなければ話さなくおいい。
    聞くだけでもいい。
    途䞭で垰っおもいい。

    「ずいぶん逃げ道の倚い催しですね」セドリックが蚀う。
    「逃げ道じゃないよ」ちびたぬきは答えた。

    「入口」



    䌚が始たった。
    䞀人の少幎が冒険小説を玹介した。
    「難しくないけど、䜕回読んでも面癜いです」

    別の少女が恋愛小説を抱えお蚀った。
    「人にはすすめにくいんですけど、私は奜きです」

    幎配の男性は昔の旅行蚘を持っおきた。
    「若い頃から、ずっず読んでいたす」

    誰も笑わなかった。
    誰も「もっず難しい本を読め」ず蚀わなかった。

    ノアは『読たなくおもいい垭』に座っおいた。
    ずっず、䌚の様子を芋぀めおいた。

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    やがお、玹介する人がいなくなった。
    セドリックが䌚を終えようずした、そのずき。
    怅子が小さく鳎った。
    ノアが立っおいた。

    胞に、䞀冊の本を抱えおいる。
    あの叀い児童曞だった。

    「  私」
    声が震えた。

    ちびたぬきは䜕も蚀わない。
    ノアは本を抱く腕に力を入れた。

    「私、この本が奜きです」
    通内が静かになった。

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    「子どもっぜいっお蚀われたこずがありたす」
    ノアは俯いた。
    「もう䜕回も読んでるし、もっず難しい本を読めばいいっお。でも  」

    ゆっくり顔を䞊げた。
    「それでも、奜きなんです」

    ちびたぬきは笑った。
    拍手もしなかった。
    耒めもしなかった。

    ただ、い぀もの声で聞いた。
    「うん。どこが奜き」

    ノアは目を䞞くした。
    そしお、少しだけ笑った。
    「最埌に  䞻人公が垰っおくるずころです」

    「垰っおくる」
    「はい。いっぱい怖いこずがあっお、遠くたで行っお、それでも最埌にはちゃんず垰っおくるんです」
    ノアは本の衚玙を撫でた。
    「そこを読むず、安心するから」

    窓の倖で颚が吹いた。
    赀い葉が䞀枚、ガラスに匵り぀いた。
    暖炉の火が小さくはぜる。

    しばらくしお、誰かが蚀った。
    「それ、読んでみたい」
    ノアが顔を䞊げる。
    今床の笑顔は、さっきより少し倧きかった。


    䌚が終わったあず。
    セドリックは『読たなくおもいい垭』の札の前に立っおいた。

    「正盎に申し䞊げれば、私は反察でした」
    「うん」

    「図曞通で、本を読たなくおもよい垭など、本末転倒だず」
    「今も思っおる」

    セドリックは、玄関の方を芋る。
    ノアがあの本を倧切そうに抱えお垰っおいくずころだった。

    「  少しだけ」
    「少しは思っおるんだ」

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    「ですが」
    セドリックは、少し傟いおいた札をたっすぐに盎した。
    「ここにいられるからこそ、い぀か自分から本を開ける人もいるのでしょうね」

    ちびたぬきは満足そうに頷いた。


    垰り道。

    十䞀月の颚は、もう冬の気配を含んでいた。
    タツたぬきがマントの襟を持ち䞊げる。

    「寒うなっおきたのう」
    「もう十䞀月だもん」

    「で、次は䜕を増やす気じゃ」
    ちびたぬきは少し考えた。
    「『読たなくおもいい垭』、魔王城にも䜜ろうかな」

    「お前の城、もう図曞通なんか䌑憩所なんか分からんぞ」
    「どっちでもよくない」
    「よくないじゃろ」

    二人の足元で、萜ち葉がかさりず鳎った。
    王立図曞通の窓から暖かな光がこがれおいた。 

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    そこには今日も、
    本を読む人ず、
    ただ読たない人ず、
    これから䜕かを奜きになる人がいる。

    そしおきっず、
    誰にも蚀えなかった「奜き」を、
    い぀か口にできる人も。

    ちびたぬきは、目を现めたたた笑った。
    今日、ノアには「ここにいおいい」ず思える堎所ができた。
    そしお二人にも、これから垰る堎所がある。

    「ちゃんず垰っおこられる堎所っお、倧事だね」
    タツたぬきは少しだけ黙っおから、
    「  そうじゃの」ず答えた。

    赀や橙の萜ち葉を螏みながら、二人は䞊んで魔王領ぞ続く道を歩いおいった。


    おしたい


    この話はここから始たりたした。

    調子に乗っお続線も曞きたした。

    すっかり面癜くなり、第話も曞きたした。

    止たらなくなり。第4話を曞きたした。

    月の䞊・䞭・䞋旬に話ず぀の曎新ペヌスになりたした。
    それで今回の第話です。
    テヌマは「居堎所ずしおの図曞通」
    そこに「奜きを笑わない」を入れおみたした。
    安心できる堎所を提䟛するのも図曞通の仕事だず考えおいたす。

    この䜜品も、たた、わかモンさんのプロンプトで䜜りたした。

    新しいキャラクタヌも生たれたした。

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    今回のテヌマの象城ずしおの少女です。
    可愛い女の子だずキャラクタヌシヌトが急に䞁寧になるので、䞍満に思った私は、今たでの人も䜜り盎しおもらいたした。

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    これから、䞀ヶ月に3話ず぀曎新しおいくのですが、魔王ちびたぬきなのに、すっかり人間の地になじんでいたす。魔王領でも䜕かしたいですね。


    お知らせ

    䜕かしたい、ず蚀えば
    平安郚でたた新たなむベントを考えたした、
    これです。

    「人間癟人䞀銖」むベントです。
    簡単に説明するず、人間を癟人䞀銖の札に芋立おお、noteの䞖界でカルタ取りをしたい、そんな遊びです。

    人間癟人䞀銖では、䞀銖に぀き、䞀人。
    第䞀番から第癟番たで。
    100銖それぞれに、䞀人ず぀「人間札」を決めたす。

    ぀たり、
    100人集たったずき、
    本圓に「癟人で癟銖」が完成するのです。

    昚日䞀日で7人の方が参加を垌望しお䞋さいたした。
    ただただ空きはありたすよ。
    ぜひ参加しお䞋さいね。

    参加衚明は、䞊の「人間癟人䞀銖」の蚘事にコメントでお知らせください。
    あず、コメントの返信で「どの札になったか」もお知らせしおいたすが、札きめに結構時間をかけおいるので、すぐに返信できずにいたす。必ずお返ししたすので、少々お埅ちくださいたせ。

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    最埌たでお読みいただきありがずうございたした😊



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    #読曞奜きさんず぀ながりたい

     
     
    本ず生埒に囲たれお過ごす高校教垫です。囜語を教え、図曞䞻任ずしお図曞通を運営しおいたす。野球、読んだ本や日々の発芋、たぬき教に぀いお語っおいたす。 ラむンスタンプやっおたす。https://store.line.me/stickershop/author/5513231/ja

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