
We’ll soon arrive at…【シロクマ文芸部|お題「月を見る」】
「月を見るのは初めてですか?」
窓側に座っていた男が言った。
私は通路側の席に座っていた。
車窓から大きな月が見えた瞬間に、思わず身を乗り出して窓の外を覗き込んだ。
私は目の前の月をじっと見つめたままで言った。
「はい。この辺、初めて来たので」
「そうですか。場所、代わりましょうか?」
言われて気づいた。
私はとなりにいる初対面の男に、体をくっつけながら月を見ていた。
慌ててすぐに離れた。
みるみる顔が火照っていった。
私は座席に座り直して、下を向いた。
「すみません」
代わって欲しかったけど、はい、とは言えなかった。
月が気になって、今度は顔だけを窓の外に向けた。
やはり、綺麗だ。
この電車の終着駅でもある月は、私の旅の終着駅でもあった。
同じように外を見つめていた男の顔が、窓に反射して見えた。
男は私に気づいたのか、
窓の外を見つめたままで微笑んでいた。
小牧さん、いつもお題をありがとうございます。
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