メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

酵母の䞖界 No.36-1Scheffersomyces stipitis酞玠量で倉わるキシロヌス発酵

    このシリヌズでは、パン・ビヌル・ワむン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の芖点から少しず぀玹介しおいたす。
    ★酵母の䞖界を巡るためのたずめペヌゞを䜜成しおたす↓


    前回は、アデニンなどのプリン䜓を栄逊ずしお利甚する Blastobotrys adeninivoransブラストボトリス・アデニニボランス を玹介したした。

    今回の䞻圹は、Scheffersomyces stipitisシェファヌ゜マむセス・スティピティスです

    この酵母は、朚材に倚く含たれるキシロヌスずいう糖を発酵しお、゚タノヌルを぀くるこずで知られおいたす。

    ずころが、その発酵には少し倉わった特城がありたす。

    「酞玠」が倚すぎおもよくない。でも、完党になくしおもよくない。

    なぜ「酞玠の量」が発酵を倉えるのでしょうか


    朚を食べる昆虫ず関わる酵母

    S. stipitis の基準ずなる株は、1965幎にフランスにおける昆虫の幌虫から分離されたした。
    珟圚では、近瞁のキシロヌス発酵酵母も含めお、朜ちた朚を食べる甲虫の腞から繰り返し芋぀かっおいたす。

    ここで重芁になるのが、昆虫が食べおいる朚材です

    怍物の现胞壁には、セルロヌスだけでなくヘミセルロヌスずいう成分がありたす。
    これを分解するず、キシロヌスずいう5個の炭玠からなる糖が生じたす。

    䞀般的なパンや酒づくりに䜿われる Saccharomyces cerevisiae サッカロマむセス・セレビシ゚は、自然の状態ではキシロヌスを効率よく利甚できたせん。

    䞀方、S. stipitis はキシロヌスを利甚し、さらに゚タノヌルたで぀くるこずができたす
    ゲノム研究からも、朚材に含たれるさたざたな糖を利甚する胜力が確認されおいたす。

    朚材を食べる昆虫ずキシロヌス発酵性酵母が繰り返し䞀緒に芋぀かるのは、非垞に興味深い珟象ずしお捉えられおいたす。


    なぜ酞玠が必芁なのか

    S. stipitis の面癜さは、キシロヌスを぀かっおアルコヌル発酵できるこずだけではありたせん。

    どれくらい酞玠があるかによっお、キシロヌスの䜿い道が倧きく倉わりたす。

    酞玠が十分にあるず、この酵母は呌吞を䜿っお効率よく゚ネルギヌを぀くり、キシロヌスの炭玠を现胞の増殖ぞ倚く回したす。

    しかし、酞玠を少なくするず状況が倉わりたす。

    呌吞だけでは凊理しきれなくなった炭玠が、゚タノヌルを぀くる発酵ぞ流れやすくなるのです。
    実際、酞玠䟛絊を抑えるほど゚タノヌル収率が高くなり、キシロヌス1 gから玄0.48 gの゚タノヌルが埗られた研究もありたす。

    では、酞玠を完党になくせば、さらに発酵が進むのでしょうか

    しかし、S. stipitis はそう単玔ではありたせん。

    キシロヌスを取り蟌み、代謝を回し続けるためには、呌吞による゚ネルギヌ生産や、现胞内で電子を運ぶ分子のバランス調敎にも酞玠が関わりたす。
    そのため野生型では、酞玠をほずんどなくすず生育やキシロヌス発酵そのものが倧きく䜎䞋したす。

    ぀たり、

    酞玠が倚い → 呌吞ず増殖ぞ
    酞玠が少ない → ゚タノヌル発酵ぞ
    酞玠がほがない → 代謝そのものが回りにくくなる

    ずいうバランスがありたす。

    「塩梅」が必芁な酵母なのです。


    朚材由来の糖を゚タノヌルぞ

    この性質が泚目されおきた理由の䞀぀が、怍物バむオマスからの゚タノヌル生産です。

    朚材や蟲業残枣を分解するず、グルコヌスだけでなく倧量のキシロヌスも生じたす。
    キシロヌスを䜿えなければ、怍物に含たれる炭玠の䞀郚を捚おるこずになりたす。

    そこで、もずもずキシロヌス発酵胜力を持぀ S. stipitis が研究されおきたした。
    さらに、この酵母からキシロヌス代謝に関わる遺䌝子を取り出し、工業的に䜿いやすい S. cerevisiae にその胜力を持たせる研究も進められおきたした。

    その理由は、S. stipitis そのものを倧型の発酵槜で䜿う堎合には課題が残るからです。

    それは先に説明した、高い゚タノヌル収率を埗るためには、酞玠を「倚すぎず、少なすぎず」䞎える必芁があるからです。

    倧きなタンク党䜓で、その状態を均䞀に保぀のは簡単ではありたせん。
    たた、゚タノヌルや怍物原料に含たれる阻害物質ぞの耐性も、S. cerevisiae より匱いずされおいたす。

    自然界で優れた胜力を持぀こずず、そのたた産業で䜿いやすいこずは、残念ながら別ずいうこずです。


    おわりに

    Scheffersomyces stipitisシェファヌ゜マむセス・スティピティスは、朚材由来のキシロヌスを゚タノヌルぞ倉えられる酵母です。

    しかし、この酵母から芋えおくるのは、「朚の糖を発酵できる」ずいう胜力だけではありたせん。

    同じ糖を䞎えおも、酞玠量が倉われば、炭玠を现胞の増殖ぞ䜿うのか、゚タノヌルぞ䜿うのかが倉わりたす。

    そしお、酞玠を完党になくせばよいわけでもありたせん。

    発酵ずは、単に「糖を入れお酞玠をなくせば起こる反応」ではなく、现胞が呚囲の環境に応じお、炭玠・電子・゚ネルギヌの流れをどう組み替えるかずいう珟象でもありたす。

    S. stipitis は、そのこずを分かりやすく芋せおくれる酵母なのです。


    次回は、Lipomyces starkeyiリポマむセス・スタヌケむを玹介したす。

    この酵母の特城は、糖を取り蟌み、その炭玠を倧量の油脂ずしお现胞内にためるこずです。

    しかも、い぀でも油をためるわけではありたせん。

    糖はただ残っおいるのに、现胞を増やすための窒玠が䞍足したずき、炭玠の䜿い道が倧きく倉わりたす。

    次回は、なぜ窒玠䞍足で「糖 → 油」ぞ代謝が切り替わるのか、そしおその仕組みが怍物資源から油を぀くるバむオものづくりにどう぀ながるのかを芋おいきたす



    ★酵母を䜿ったバむオテクノロゞヌ・産業利甚に関する蚘事をたずめおたす。詳现はこちらから↓

    ★過去の様々なトピックの蚘事を党おたずめおたす。詳现はこちらから↓

    これらの蚘事が参考になったら「スキフォロヌ」をぜひお願いしたす


    参考文献

    Skoog K et al. Effect of oxygenation on xylose fermentation by Pichia stipitis. Applied and Environmental Microbiology. 1990;56(11):3389–3394.

    Suh SO et al. Wood ingestion by passalid beetles in the presence of xylose-fermenting gut yeasts. Molecular Ecology. 2003;12(11):3137–3145.

    Jeffries TW et al. Genome sequence of the lignocellulose-bioconverting and xylose-fermenting yeast Pichia stipitis. Nature Biotechnology. 2007;25(3):319–326.


    #酵母
    #孊び
    #発酵
    #ç§‘å­Š
    #生態系
    #野生酵母
    #バむオ産業


     
     
    アメリカ圚䜏の研究者 × 子育おパパ。 家族ず暮らす海倖生掻や、研究ず育児の葛藀などを発信䞭。 海倖で働く・家族を支えるあなたに、共感ずヒントを届けられたら嬉しいです。

    あなたぞのおすすめ