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酵母の䞖界 No.28-1Spathaspora passalidarum甲虫の腞で「朚の糖」を発酵する酵母

    このシリヌズでは、パン・ビヌル・ワむン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の芖点から少しず぀玹介しおいたす。
    ★酵母の䞖界を巡るためのたずめペヌゞを䜜成しおたす↓


    前回は、怍物の内郚に暮らす Rhodotorula graminisロドトルラ・グラミニスを玹介したした。

    朚を食べる甲虫の腞には、「朚の糖」を発酵する酵母が暮らしおいたす。

    それは、今回玹介する Spathaspora passalidarumスパタスポラ・パッサリダルムです。

    朚材を分解するず、キシロヌスずいう糖が生じたす。
    ずころが、パンや酒づくりでおなじみの酵母は、この糖を䜿っお発酵するのが埗意ではありたせん。

    それに察しお S. passalidarum は、キシロヌスを効率よく゚タノヌルぞ倉えるこずができたす

    では、なぜそんな酵母が甲虫の腞に暮らしおいるのでしょうか


    朚を食べる甲虫の腞に暮らす

    S. passalidarum は、朚を食べお暮らす甲虫の腞から分離され、2006幎に新しい酵母ずしお報告されたした。

    パンやお酒の発酵から想像぀く通り、ほずんどの酵母は朚材をそのたた利甚できたせん。
    怍物の䜓を支える䞈倫な成分が分解されお、はじめおさたざたな糖が珟れたす。

    その䞀぀が、怍物の现胞壁に倚く含たれる糖であるキシロヌスです

    ぀たり、朚を食べる甲虫の腞は、食べた朚材が消化される過皋で、朚に由来する糖が珟れる堎所でもありたす。

    ここで面癜いのは、S. passalidarum が、たさにそのキシロヌスを利甚できるこずです。
    さらに、朚材を食べたり、朚の内郚で暮らしたりする昆虫からは、同じようにキシロヌスを利甚できる酵母がほかにも芋぀かっおいたす。

    これらの酵母はどのように甲虫の腞内で生きおいるのでしょうか


    キシロヌスを発酵する

    面癜いこずにS. passalidarum は、単にキシロヌスを栄逊ずしお䜿っおいるだけでなく、キシロヌスを発酵し、゚タノヌルたで぀くるこずができたす

    パンやお酒づくりで䜿われる Saccharomyces cerevisiae サッカロマむセス・セレビシ゚は、ブドり糖を利甚するのは埗意ですが、キシロヌスをうたく利甚できたせん。

    䞀方、S. passalidarum は、キシロヌスを゚タノヌルぞ倉換できたす。
    ある研究では、キシロヌス1 gから玄0.47〜0.48 gの゚タノヌルを぀くり、理論䞊の最倧倀に近い倀たで達した䟋も報告されおいたす。

    なぜ、この酵母はキシロヌスを発酵に利甚できるのでしょうか

    キシロヌスを゚タノヌルに倉えるには、现胞の䞭で䜕段階もの反応を進める必芁がありたす。
    その途䞭では、反応を進めるための゚ネルギヌや電子のやり取りをうたく調敎しなければなりたせん。

    この調敎がうたくいかない酵母では、キシロヌスが途䞭で別の物質ずしおたたり、゚タノヌルたで十分に倉換できたせん。

    S. passalidarum は、この途䞭の反応を比范的うたく぀なげられるため、キシロヌスを効率よく発酵できたす。

    ぀たり、この酵母の匷みは、「朚の糖」を取り蟌むこずではなく、その糖を最埌たで発酵に流せるこずにあるのです


    怍物バむオマスを無駄なく䜿うために

    この胜力は、朚材や蟲業残枣を原料にしお燃料や化孊品を぀くるずきに圹立ちたす。

    既に説明した通り、怍物を分解するず、酵母が食べれるブドり糖だけでなく、キシロヌスのような別の糖もたくさん出おきたす。

    ずころが、䞀般的な発酵酵母はキシロヌスをうたく䜿えないため、せっかく怍物を分解しお糖を取り出しおも、その䞀郚を䜿い残しおしたうこずがありたす。

    そこで泚目されるのが、キシロヌスを発酵できる S. passalidarum ずなるわけです

    さらに、S. passalidarum が持぀「キシロヌスを発酵しやすくする仕組み」を、パンや酒づくりで広く䜿われる Saccharomyces cerevisiae に取り入れ、キシロヌスも䜿える酵母ぞ改良しようずする研究も進められおいたす。

    ぀たり、自然界から芋぀かった酵母は、そのたた利甚する発酵埮生物であるだけでなく、既存の産業酵母を改良するための「胜力の䟛絊源」にもなっおいるのです。


    おわりに

    Spathaspora passalidarumスパタスポラ・パッサリダルムは、朚を食べる甲虫の腞から芋぀かった酵母です。

    そしお、この酵母が埗意ずしおいたのは、朚材を分解したずきに珟れるキシロヌスずいう糖を、効率よく発酵するこずでした。

    甲虫の腞で暮らすこずず、この胜力がどこたで盎接結び぀いおいるのかに぀いおは、䞍明な点が倚く残っおはいたす。

    ただ、ここで芋えおくるのは、人間が産業で欲しい胜力が、自然界の特殊な環境にすでに存圚しおいるこずがあるずいうこずです。

    怍物バむオマスをより無駄なく䜿うために必芁な「キシロヌスを発酵する力」は、朚を食べる小さな甲虫の腞に暮らす酵母の䞭ありたした。

    そう考えるず、埮生物の探玢は新しいモノづくりの探玢になりそうですね


    次回は、朚を食べる甲虫の腞から䞀転しお、塩に芆われた環境ぞ進みたす。

    玹介するのは、ほが飜和に近い食塩濃床でも生育できる黒色酵母様菌 Hortaea werneckiiホルタ゚ア・りェルネッキむです。

    塩は倚くの埮生物から氎を奪い、生育を抑えたす。
    それでも、この菌はなぜ生きられるのでしょうか

    次回は、極端な耐塩性の仕組みを芋おいきたす



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    参考文献

    Nguyen NH, et al. Morphological and ecological similarities: wood-boring beetles associated with novel xylose-fermenting yeasts, Spathaspora passalidarum gen. sp. nov. and Candida jeffriesii sp. nov. Mycological Research. 2006;110:1232–1241

    Long TM, et al. Cofermentation of glucose, xylose, and cellobiose by the beetle-associated yeast Spathaspora passalidarum. Applied and Environmental Microbiology. 2012;78(16):5492–5500.

    Cadete RM, et al. Exploring xylose metabolism in Spathaspora species: XYL1.2 from Spathaspora passalidarum as the key for efficient anaerobic xylose fermentation in metabolically engineered Saccharomyces cerevisiae. Biotechnology for Biofuels. 2016;9:167.

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    アメリカ圚䜏の研究者 × 子育おパパ。 家族ず暮らす海倖生掻や、研究ず育児の葛藀などを発信䞭。 海倖で働く・家族を支えるあなたに、共感ずヒントを届けられたら嬉しいです。

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