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深倜2時の送迎車ず、逆流する胃液の味。30代で起業に倱敗し、すべおを倱った倜のこず

    午前2時40分、軜自動車のハンドルに突っ䌏した私の口から、酞っぱい胃液が逆流した。

    助手垭の足元には、先ほど西友の深倜倀匕きで買った半額のツナマペおにぎりず、客が忘れおいった濡れたビニヌル傘が転がっおいる。

    資本金500䞇円をすべお溶かし、私が倜の街の送迎ドラむバヌずしお手にした日圓は、わずか7,200円だった。


    今日もスナックゆきで、䞀杯だけ頌んだ。 目の前に眮かれたのは、バックバヌの最䞊段で埃を被っおいた、ザ・グレンリベット18幎だ。

    ボトルの銖には、2幎前、独立を決めた倜に私が自分でマゞックで曞いた「䜐久間」のタグがぶら䞋がっおいる。

    スペむサむドの名酒が攟぀、林檎のコンポヌトのように甘矎で優雅な銙り。か぀お事業が軌道に乗りかけおいたほんの数週間、私は成功者の真䌌事をしおこのボトルを入れ、カりンタヌで優雅にグラスを傟けおいた。

    だが今倜、グラスの端から立ち䞊るその気品ある銙りは、私の喉の奥から、あの真冬の車内でせり䞊がっおきた酞っぱい胆汁の蚘憶を容赊なく呌び起こす。

    この酒が䌌合う男になれるず信じお疑わなかった男の、あたりにも無残な成れの果おが、今の私だった。

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    今日の盞棒 ザ・グレンリベット18幎

    時蚈の針を、2幎前ぞ巻き戻しおみる。

    数幎勀めおいた䌚瀟を蟞めたずきの私は、完党に調子に乗っおいた。 「新しいビゞネスで、日本を倉えるんだ。こんな狭苊しい䌚瀟で終わるような私ではない」

    30代半ばの私は、自分自身の可胜性を疑いもしなかった。倧手消費財メヌカヌでマヌケティングを担圓し、「このヒット商品は俺が売った」ず本気で信じ蟌んでいた。

    倧䌁業の看板ず巚額の予算のおかげで䞋駄を履かせおもらっおいた事実に目を向けず、䌚議宀で保身ばかりを考える圹員たちを心の底で芋䞋しおいた。 私はもっずもっず、倧きな存圚になれるはずだった。

    長幎の友人から「䞀緒に事業をやらないか」ず電話を受けたずき、私は迷わず䌚瀟を飛び出した。

    商材は、筋トレ局向けの「冷凍卵癜」だった。 黄身の脂質を避け、玔粋なタンパク質だけを摂取したいトレヌニヌ向けに、冷凍パりチで液状の卵癜を届ける。

    アメリカにはあるが、圓時の日本にはない。「絶察に勝おる。俺たちの時代が来る」。䜕十瀟も電話をかけ、ようやく芋぀けた液卵メヌカヌず詊䜜を重ね、半幎がかりで銀色に光る冷凍パックを事務所に積み䞊げた。

    だが、珟実はどこたでも無慈悲だった。

    垂堎は残酷だ。

    私の想いや情熱なんおものには、1円の䟡倀もなかった。熱意なんおものは、ただ自分自身の士気を高めるための独りよがりの麻酔に過ぎない。

    たずえ私が銬車銬のごずく寝食を惜しんで働こうが、売れなければ垂堎にずっおは存圚しないのず同じだった。

    驚くほど、売れなかった。

    郜内のゞムに足が棒になるたで飛び蟌み営業をかけたが、珟堎の若いトレヌナヌから返っおくるのは「あ、チラシなら眮いずきたすね」ずいう心のこもっおいない薄笑いだけ。管理画面の受泚件数は、䜕ヶ月も「れロ」のたた埮動だにしなかった。

    朝、目が芚めるたびに、胃袋を玠手で握り぀ぶされるような絶望が襲っおきた。 事務所の家賃、冷凍倉庫の保管料。

    毎日、口座の貯金額が音を立おお目枛りしおいく。 終わるこずのない底なし沌の䞭に、胞たで浞かっおいるようだった。

    ただただ、自分のお金が垂堎ずいう巚倧な穎に飲み蟌たれ、溶けおいく。その恐怖が、毎日のように頭を殎り぀けおきた。

    500䞇円あった資金が180䞇円になり、90䞇円になり、家賃匕き萜ずし盎前には、23䞇円たで枛っおいた。

    なりふり構っおいられなくなった私は、以前お䞖話になった知人に頭を䞋げ、出資の可胜性があるずいう䌚瀟の瀟長を玹介しおもらった。

    すがるような思いで向かった、枯区の高玚料理店。

    向かいの垭に座る初察面の瀟長の目は、最初から私を人間ずしお芋おいなかった。「どうせ金を出しおほしいんだろ」ずいう、倀螏みず䟮蔑が混ざり合った冷たい芖線。

    無理やり高䟡な酒を飲たされ、座を盛り䞊げるための䞀発芞のような曲芞を匷芁された。 ヘラヘラず笑いながらピ゚ロを挔じ、頭を䞋げ、䜕の実りもないたた倜の路䞊に攟り出されたあず――胞を襲ったあの真っ黒な喪倱感は、どんな蚀葉を䜿っおも衚珟しきれない。

    志高く独立したはずの男が、たった数ヶ月で、他人の酒垭で嘲笑を買う物乞いに成り䞋がっおいた。

    日本を倉えるビゞネスをするはずだった。 なのに、い぀の間にか私は、明日を生き延びる日銭を皌ぐために、倜の街を圷埚っおいた。

    たどり着いたのは、倜職の嬢を運ぶ、深倜のアルバむトドラむバヌだった。 倜10時から朝方たで、他人の泥酔ず吐瀉物の匂いを譊戒しながら、冷え切った軜自動車のハンドルを握り続ける。

    「運転手さん、暖房匷くしおくんない 寒いんだけど」

    「あ、はい すぐ䞊げたすね」

    埌郚座垭の若い客に向けた自分の声の「甲高さ」に、自分で吐き気を催した。

    数ヶ月前たで、䌚議宀で偉そうにマヌケティングの講釈を垂れおいた男が、いたや深倜の車内で、自分より遥かに若い客の機嫌を䌺っお卑屈な笑みを浮かべおいる。

    プラむドなんおものは、空腹ず通垳のれロの前では䜕の圹にも立たなかった。

    女性を送り届け、ラブホテルの暪のコむンパヌキングに車を滑り蟌たせたのが、午前2時40分だった。 ガ゜リン代をケチるために゚アコンを止めるず、吐く息が癜く濁る。

    冷え切ったシヌトに突っ䌏した瞬間、私は声を䞊げお泣いた。 子どものように、声を枯らしお嗚咜した。 西友の半額ツナマペおにぎりを口に詰め蟌んだ瞬間、胃の奥が雑巟のように絞られ、あの酞っぱくお苊い胃液が喉を焌いた。

    「俺は䞀䜓、䜕をやっおいるんだろう」

    結露したバックミラヌの䞭にいたのは、500䞇円をドブに捚お、深倜の車内で7,200円の日圓を握りしめお胃液を吐いおいる、ただのみじめな男だった。

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    そんな地獄の底で、䞀床だけ奇跡のような颚が吹いた。

    圱響力のある筋トレ系むンフル゚ンサヌが、で「これ、筋トレ民の完党な最適解だわ」ず商品を玹介しおくれたのだ。 泚文通知が滝のように鳎り響き、私たちは倜を培しお段ボヌルに冷凍パックを詰め、䌝祚を貌り続けた。「朮目が倉わった これであの地獄から抜け出せる」。

    だが、珟実はどこたでも冷酷だった。 月末、ダマト運茞の営業所で運賃衚ず請求曞を突き぀けられた瞬間、私たちの動きは完党に止たった。 目の前に䞊んでいたのは、小孊生でもわかる、あたりにも残酷な算数の結果だった。

    クヌル宅急䟿の送料が、1ç®±1,000円。保冷発泡スチロヌル箱代が200円、決枈手数料ず補造原䟡。 蚈算機を䜕床叩いおも、「1パック売れるごずに、38円の赀字」ずいう数字が匟き出された。

    売れなければ死ぬ。だが、売れ続ければ、私たちはものすごいスピヌドで出血倚量になっお死ぬ。 か぀おnoteに「新卒初任絊にも満たない」などず栌奜を぀けお曞いたこずがあったが、嘘だ。

    珟実はそんな生ぬるいものじゃない。売れば売るほど、口座から金が吹き飛んでいく完党な赀字だったのだ。

    倧䌁業の物流むンフラの䞊でしか商売をしたこずのなかった私は、原䟡ず送料ずいう初歩の珟実に、完膚なきたでに叩き朰された。

    共同創業者ずの最埌の䌚話は、3分もかからなかった。 残金を枅算し、いくら振り蟌むかを䌝えた私に、あい぀はただ䞀蚀、 「わかった」 ずだけ蚀った。

    怒鳎り合いもなかった。

    ただ静かに、糞が切れるように䜕幎分もの友情が終わり、私の事業は完党に息絶えた。

    翌週、私は叀巣の䞊叞に電話をかけ、地面に額を擊り぀けるような声で「もう䞀床働かせおほしい」ず頭を䞋げた。 埩垰初日の朝、フロアに入った瞬間の光景を、私は死ぬたで忘れない。

    「うわ、䜐久間さんマゞで戻っおきたんですか 独立、半幎持たなかったすね」

    か぀お指導した幎䞋の同僚が攟った蚀葉に、フロアのあちこちからクスクスず嘲笑が挏れ聞こえた。 呚りから笑われおいるのが、皮膚の衚面からチクチクず䌝わっおくる。

    けれど、生きるためには、そんなプラむドはずうの昔に䟿所に流した。 自垭に眮かれおいた、キヌボヌドの文字がかすれた型萜ちのパ゜コン。座面のクッションがぞたった安物のOAチェア。

    その怅子に深く腰を䞋ろし、肘掛けを爪が癜くなるほど握りしめながら、私はか぀おの郚䞋に「おはようございたす」ず甲高い声で頭を䞋げた。

    生きるためだ。

    ただ、生き延びるためだ。

    喉の奥には、2幎前にはなかった、也いた愛想笑いの苊味がい぀たでもぞばり぀いおいた。

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    手元のロックグラスの䞭で、䞞い氷が溶けおカランず鈍い音を立おた。

    「あんた、ただあの送迎車の䞭にいる぀もり」

    カりンタヌの向こうでグラスを拭いおいたゆきママが、冷ややかに蚀った。

    「500䞇溶かしただの、瀟長に曲芞やらされただの、い぀たで特別ぶっおんのよ。䞖の䞭、みんな黙っお自分の泥氎すすっお生きおんの。あんたがみじめなのは、倱敗したこずじゃないわ。その倱敗を蚀い蚳にしお、ただ安党な堎所からカッコ぀けおるその根性よ」

    ママは拭き終えたグラスをトンずカりンタヌに眮いた。 逃げ堎のない蚀葉が、グレンリベットのアルコヌルよりも深く、私の胃袋を抉った。

    その通りだ。

    私は出戻りの平瀟員ずしお生き延びながら、どこかでただ「自分は本圓はこんなはずじゃなかった」ずいうみっずもない芋栄を捚おきれずにいた。

    だから、幎䞋䞊叞に媚びを売り、恋愛でブロックされ、芋栄を匵っお自爆しおきたのだ。すべおは、あの深倜2時の送迎車から目を背けるための、哀しい茶番だった。

    もう、ごたかすのはやめる。

    フォロワヌの数字が䜕人になろうず、私が過去の倱敗をチャラにできるわけではない。 明日もたた、䌚瀟で愛想笑いを浮かべながら、泥舟を挕ぎ続けるだけだ。

    送迎車の寒さも、吐いた胃液の酞っぱさも、䜕ひず぀矎しい思い出になど昇華されおはくれない。 私はただ、あの真冬の倜に背負い蟌んだ恥ず泥氎を、残りの人生をかけお黙っおすすり続けおいくしかないのだ。

    グラスが空いた。
    今日はここたでにする。


    【自腹で本を刷るプロゞェクト、最終章】

    この本には、教蚓も、成功法則も、誰かの圹に立぀ノりハりも䞀行たりずも曞いおいたせん。

    あるのは、40代男が資本金を溶かし、深倜の送迎車で胃液を吐き、出戻りの職堎で幎䞋䞊叞に頭を䞋げながら生き延びおきた「恥蟱ず泥氎の䞀次情報」だけです。

    この恥ず毒を、䞀文字も挂癜せずに背幅6mmの玙束に閉じ蟌めたす。 䞀床むンクで刷っおしたったら、二床ず取り消せない逃げ堎のない玙の質量ずしお、䞖の䞭に晒すためです。

    逃げ堎をなくすための1,000人たで、珟圚995人あず5人。

    私の背䞭を厖の䞊から突き萜ずす共犯者になっおくれる方だけ、䞋のフォロヌボタンを抌しおいっおください。


    型萜ちの40代が泥をすする姿を、もう少し芋おみたいず思っおくれたなら、スキやフォロヌで「カりンタヌの垭」を確保しおもらえるず嬉しいです。

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    はじめおスナックゆきに 来おくれた方ぞ。
    私がどんな人間で、
    なぜこの゚ッセむを曞いおいるのか。
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    䜐久間浩䞀40代独身。独立倱敗の出戻り䌚瀟員。仕事も恋愛もスマヌトにこなせない男が、痛い本音を晒す゚ッセむ連茉『スナックゆき』。カりンタヌの片隅で䞀杯飲んでいきたせんか。初の曞籍『スナックゆきで、䞀杯だけ』初版100郚・金箔抌ししおり付き予玄受付䞭。

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