
【魔王軍ノベルス4】魔王様、音楽革命隊は、異世界を征服できるの?第4話
魔王軍AIラノベ版です。
( ※この記事はフィクションです。)
トトさんの「一行から始まる物語プロンプト」
を利用させていただいてます。

第四話 リンドベルの街は、魔王軍の音を聴く
最初の一音が、石造りの広場に落ちた。
低い。
けれど、ただ大きいだけではない。
床を這うような振動が、足元から身体へ伝わってくる。
ミキは目を閉じた。
リンドベルの街は、音が多い。
店先から聞こえる呼び込みの声。
工房で金属を叩く音。
馬車の車輪が石畳を削る音。
遠くでは、さっきまで演奏していた楽団の音も残っている。
だからこそ、ミキは急いでは音を重ねなかった。

ひとつ。
またひとつ。
街の音を聴きながら、ベースを鳴らしていく。
「……」
広場にいた人々が、少しずつ静かになった。
誰も「魔王軍だから」という理由で耳を塞いでいない。
ただ、聴いている。
ミキは目を開けた。
向かい側に立っていた男も、黙ってこちらを見ている。
「……変な弾き方だな」
男が言った。
「そう?」
「ああ。普通なら、もっと最初から派手にやる」
「それじゃ、この街の音が聴こえなくなるから」
男は黙った。
その表情から、わずかに警戒が消えた。
ミキは笑う。
「リンドベルって、音楽の街なんでしょ?」
「ああ」
「だったら、私たちだけの音を押しつけるんじゃなくて、ここの音と一緒にやりたい」
男が楽器を持ち直した。
「……言うじゃないか」
「だって、音楽革命隊だから」
「その名前、最初は笑ったんだけどな」
「ひどい!」
広場から小さな笑いが起こった。
ミキは振り返った。
「じゃあ、一緒にやる?」
「俺たちと?」
「うん」
男は少し考えた。
そして、楽器を構えた。
「いいだろう」
次の瞬間、別の音が入った。

ギター。
ミキのベースと絡み合う。
最初は互いに探るような演奏だった。
どちらも相手に合わせようとはしない。
だが、少しずつ変わっていく。
ミキが低音を置く。
男がその隙間へ音を入れる。
ミキがリズムを変える。
男も応える。
気がつけば、さっきまで対立していた二つの音は、ひとつの曲になっていた。
「……!」
観客から声が上がった。
子どもが手を叩く。
酒場の主人が笑う。
店先にいた職人たちまで、仕事の手を止めて広場へ出てくる。
ノアは少し離れた場所から、その様子を見ていた。
「……参謀」
「はい」
「音楽というのは、不思議だな」
「そうですね」
「敵対していた者同士が、数分後には一緒に演奏している」
「魔王様も参加されますか?」
「なぜそうなる」
ミーノ参謀は笑った。
「冗談です」
「……」
ノアは腕を組み直した。
しかし、その目は演奏から離れなかった。
やがて曲が終わった。
大きな拍手が起こる。
さっきまで二組に分かれていた演奏者たちも、自然に顔を見合わせて笑った。
ミキは息を整えながら、男に尋ねた。
「名前、聞いていい?」

「レオンだ」
「レオン。今日はありがとう」
「礼を言うのはこっちだ」
レオンは少し照れたように笑った。
「魔王軍が来るって聞いたときは、街を奪いに来たのかと思った」
「一応、征服しに来たよ」
「一応?」
「でも」
ミキは広場を見渡した。
「こういう征服なら、悪くないでしょ?」
レオンは笑った。
「……そうだな」
その日のライブは、それからさらに続いた。
音楽革命隊だけではなく、街の演奏者たちも加わった。
最初は数人だった。
やがて十人。
さらに、その倍。

誰かが太鼓を持ってきた。
誰かが笛を持ってきた。
酒場から椅子が運ばれ、商店の主人たちは店先に商品を並べ始めた。
音楽を聴くために集まった人々が、いつの間にか街全体を巻き込んでいく。
ミキはベースを弾きながら笑っていた。
これは、魔王軍だけのライブではない。
リンドベルのライブだった。
そして夕方。
最後の曲が終わる。
広場には、まだ人が残っていた。
レオンがミキの隣へ来る。
「また来るか?」
「もちろん」
「だったら、次はもっと大きな場所を用意する」
「ほんと?」
「ああ」
レオンは高台の先を指差した。
「この街には、古い石造りの大広場がある。祭りのときに使う場所だ」
「そこなら、もっとたくさん入る?」
「今日の倍は入る」
ミキの目が輝いた。
「やろう!」
少し離れたところで聞いていたノアが、ため息をついた。
「……また予定が増えたな」
ミーノ参謀が記録する。
「次回公演、リンドベル大広場」
「まだ帰ってもいないのに決めるのか」
「ミキ隊長が決めました」
「だろうな」
そのとき。
商店の主人が走ってきた。
「魔王軍さん!」
ミキが振り向く。
「はい?」
「これ!」
差し出されたのは、小さな袋だった。
「今日の売上だ」
「え?」
「演奏を聴きに来た客が、店にたくさん寄ってくれた。うちだけじゃない。他の店も同じだ」
主人は笑った。
「あんたらの音楽で街が賑わったんだ。だから、少しだけ渡したい」
ミキは袋を受け取った。
中には金貨が入っていた。
「……いいの?」
「ああ」
ミキはノアを見る。
ノアは少し考えた。
「受け取れ」
「魔王様?」
「征服の対価だ」
「ほんとに?」
「……まあ、今回はな」

ミーノ参謀が金貨を数える。
「五千二百魔貨あります」
「結構ある!」
ミキが驚く。
ノアは笑った。
「戦争より安上がりだな」
「魔王様、それ言っちゃう?」
「事実だ」

その夜。
音楽革命隊はリンドベルの宿に泊まった。
部屋の窓からは、夜の街が見える。
昼間の喧騒は消え、石造りの建物に小さな明かりが灯っている。
ミキは窓辺に座り、ベースを膝に乗せていた。
弦を一本だけ鳴らす。
ぽろん。
「……いい街だったな」
背後から声がした。
ノアだった。
「魔王様、寝ないの?」
「お前こそ」
「新しい曲を作ってる」
「今日の曲か?」
「うん」
ミキは少し考えた。
「今日、最初は勝負だったでしょ」
「ああ」
「でも、最後は一緒に演奏してた」
「そうだな」
「なんかさ」
ミキは窓の外を見る。
「征服って、相手から何かを奪うことだと思ってた」
「違うのか?」
「分からなくなった」
ノアは何も言わなかった。
「だって今日、私たちは何も奪ってない」
「……」
「なのに、帰る頃には街の人たちが笑ってた」
ミキはベースの弦を軽く撫でる。
「だったら」
小さく笑った。
「これも征服ってことにしていいんじゃない?」
ノアは窓の外を見た。

リンドベルの街。
魔王軍の旗が、風に揺れている。
だが、その旗の下には、今日一緒に演奏した人々がいる。
「……そうかもしれんな」
ノアが呟いた。
そのときだった。
部屋の扉が激しく叩かれた。
「魔王様!」
ミーノ参謀の声だ。
「どうした?」
「緊急報告です!」
ノアが扉を開ける。
ミーノ参謀が一枚の紙を差し出した。
「何者かが、こちらの遠征を妨害しようとしているようです」
「妨害?」
ミキの表情が変わった。
「誰?」
ミーノ参謀は首を横に振った。
「まだ分かりません」
紙には、短い文章だけが書かれていた。
――次の街では、音楽を鳴らすな。
ミキは、その一文を見つめた。
そして、ベースを握り直した。
「……なんで?」
誰も答えなかった。
だが、ミキには分かっていた。
次の遠征は、これまでとは違う。
初めて音楽を嫌う者が、こちらを待っている。
それでも。
ミキは笑った。
「だったら――」
ベースケースを閉じる。
「もっと大きな音を出そう」
――第四話・完

《続きを読みますか?》
次回、第5話をお待ち下さい‼️
#魔王軍万歳 🙌
「あとがき」
今回でリンドベル編は終了ですが、音楽革命隊の遠征は続きます。不穏分子も出てきそうですが、さてミキのベースの音は次々と世界を包み込んでいけるのでしょうか…
今回の挿入曲「リンドベル協奏曲」は、リンドベルの街の演奏者として、弦楽器隊や管楽器隊、オーケストラ、革命隊としてエレキギターや現代楽器まで次々と重なりながら交互に演奏していくというイメージで作成しました。混ざり合いながらも段々と一つになり、高揚していく心の熱さが表現できたでしょうか?
今回使用した小説作成プロンプトを配布している、トトさんの記事です。⬇️
トトさんの楽しいプロンプト集です。⬇️
第3話はこちら⬇️
第2話はこちら⬇️
第1話はこちら⬇️
