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なぜ、ロランゾンの白は「ピュア」なのか?|メルキュレイ1級畑"レ・シャン・マルタン"の地質から探る

    2026年8月14日、メルキュレイ・プルミエ・クリュ(1級畑)「レ・シャン・マルタン(Les Champs Martin)」で、ブリュノ・ロランゾン(ロレンゾン)はシャルドネの収穫を行っていた。

    レ・シャン・マルタンは、メルキュレイ村にある一級畑(プルミエ・クリュ)の区画名(クリマ)。ブルゴーニュでは、こうした一つひとつの畑に名前があり、それぞれ異なるテロワールを持っている。

    標高300mを超える斜面で目を引いたのは、地表を覆う白い石。

    その白さはシャブリを思わせる。しかし、ブルゴーニュの「白い石灰岩」をすべて同じものとして捉えることはできない。

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    オックスフォーディアンとキンメリジャン—異なる「地質時代」

    メルキュレイではジュラ紀の地層が複雑に入り組み、ブルゴーニュワイン委員会(Comité des Vins de Bourgogne)はその主要な地質の一つとして、オックスフォーディアン(Oxfordien)の泥灰岩と泥灰質石灰岩を挙げている。

    一方、シャブリのテロワールを語る際に頻繁に登場するのが、キンメリジャン(Kimméridgien)。

    ともに後期ジュラ紀だが、形成された時代は異なる。

    オックスフォーディアン → キンメリジャン→チトニアン

    オックスフォーディアンはおよそ1億6100万〜1億5500万年前、その後にキンメリジャンが続く。

    したがって、「レ・シャン・マルタン」の白い石を見てシャブリを想起しても、その地質学的背景を同一視することはできない。

    そして、「オックスフォーディアンだからこのミネラル感になる」と味覚へ直接結びつけるのは、単純すぎる。

    重要なのは、その違いを認識したうえで、ブドウ樹がどのような地質と土壌の上で生育しているのかを見ること。

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    レ・シャン・マルタンの上部から見た風景

    レ・シャン・マルタン—石の多い斜面

    メルキュレイは、西から東へ流れるジルー川(Giroux)を谷底に、ブドウ畑がその両側の斜面に階段状に広がることから、「アンフィテアトル(円形劇場)」のような地形と表現される。さらに、この主谷に対してほぼ直角に4つの支谷が入り込み、斜面の向きや標高を複雑に変化させている。

    レ・シャン・マルタンは13.50ha。西から南西向きの斜面に位置し、約20%が白ワイン。上部には泥灰土(marls)が見られる。

    近接するレ・クロワショ(Les Croichots)も含め、この一帯では、わずかな距離の中でも斜面の向き、標高、表土の厚さ、石の量などが変化する。

    ロランゾンのワインを考える際に重要なのは、この細かな差異である。

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    ロランゾン所有のレ・シャン・マルタンの畑の上部に見える地層

    「リッチ」ではなく「ピュア」

    ブリュノ・ロランゾンが白ワインについて語った言葉が印象に残っている。

    「ムルソーのようなリッチさとは違う。私はピュアなワインを造りたい」

    ドメーヌが掲げる言葉も、

    「丹念な仕事、純粋さ、精緻さ」

    果実の密度はあっても重くしない。複雑さを持ちながら輪郭を失わない。

    同じ「レ・シャン・マルタン」からワインを造る生産者が複数いる以上、地質や土壌だけで「ロランゾンの味」を説明することはできない。

    畑が持つ条件に、栽培と収穫、醸造という人間の選択が加わって、初めてその生産者のワインになる。

    ブリュノが求める純粋性とは、土地の個性を強調するために何かを足すことではなく、土地と果実が持つ輪郭を、できる限り曇らせずワインへ移すこと。

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    ブドウ樹の足元には、白い石灰岩が地表を覆う。レ・シャン・マルタン上部のテロワールを目で実感できる

    「Pureté」をつくる、収穫後の72時間

    ブリュノが求める「Pureté」は、畑だけで完結するものではない。

    収穫期間中、ドメーヌには大型の冷蔵コンテナが設置される。収穫されたブドウはそこに運び込まれ、低温下で72時間置かれた後、圧搾へと進む。

    収穫時の果実、とりわけ2026年のような暑いヴィンテージでは、畑から運ばれてきたブドウ自体が熱を持っている。低温に置くことで果実の温度を下げ、酸化や微生物活動を抑えながら、より安定した状態で圧搾へ移ることができる。

    ここにも、ブリュノが求める「仕事、純粋さ、精緻さ(Travail, Pureté, Précision)」が表れている。

    畑で最適な瞬間を見極めて収穫する。そして収穫した瞬間から、果実をどう扱うかをコントロールする。

    ロランゾンの「Pureté」は、石灰質土壌だけから生まれるものではない。畑からカーヴまで続く、一つひとつの判断の積み重ねによってつくられている。

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    収穫期間中、ドメーヌには大型の冷蔵コンテナが設置される

    2026年—地上ではなく、地下を見る

    2026年の猛暑と乾燥は、もう一つの要素を浮かび上がらせた。

    「根」である。

    古樹と若木では、地下に形成してきた根系は必ずしも同じではない。もちろん根の深さは樹齢だけで決まらず、台木、土壌、岩盤の亀裂、水分条件、栽培方法などにも左右される。

    しかし表層が著しく乾燥する年には、ブドウ樹がどの深さから水を得られるのかという違いが、成熟過程により大きな意味を持つ。

    石灰質の岩盤。その上の土壌。そして、その内部へ時間をかけて発達してきた根。

    2026年は、普段は見えないこの地下の構造を考えさせるヴィンテージとなった。

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    メルキュレイのアペラシオン地図
    メルキュレイは、ジルー川(Giroux)を谷底に、円形劇場(アンフィテアトル)のような丘陵地形を形成している。

    最後は、人間が決める

    8月14日、メルキュレイ「レ・シャン・マルタン」の周囲では、まだ誰も収穫していなかった。

    それでもブリュノは収穫した。

    周囲がいつ始めるかではなく、分析値と自分の畑のブドウを見て決める。

    特に暑いヴィンテージでは、収穫日の数日の違いが、果実の成熟、酸、そしてワイン全体のバランスを左右する。

    地質、土壌気候(ヴィンテージ)、微小気候、樹と根。そして人間の判断。

    ロランゾンの白の「純粋さ」を、一つの要因だけで説明することはできない。

    しかし「レ・シャン・マルタン」の白い石の上に立ち、2026年の収穫を見ると、そのワインがどのように組み立てられていくのか、その一端が見えてくる。

    テロワールは、地質だけではワインにならない。

    その土地を読み、ヴィンテージを読み、どの瞬間にブドウを収穫するかを決める人間がいて、初めて一本のワインになる。

    レ・シャン・マルタンという畑の名前


    ちなみに「Les Champs Martin(レ・シャン・マルタン)」という名前も興味深い。

    「champ」はフランス語で「畑」を意味し、その名からは「Martin(マルタン)の畑」という由来を想像させる。ブルゴーニュには、こうして人の名前が土地の名前として残った例が少なくない。

    有名なChambertin(シャンベルタン)も、「Champ de Bertin(ベルタンの畑)」に由来するとされている。人は去っても、その名はクリマに刻まれ、何世紀にもわたってワインの名前として生き続ける。

    日本でのお取り扱いについて

    生産者への取材および現地での経験に基づきこの記事を制作しています。取扱情報を掲載する場合は、読者に正確な情報を提供することを目的としています。

    正規輸入元
    株式会社アルカン




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