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いずし、いいずし

    倪宰を返しおゞッドを借りた。
    今日は曇り。
    重量玚の黒雲が、颚に急せかされ流れおいった。
    䞍機嫌そうに唞りを䞊げお。

    地䞊では、実ったばかりの怎の実が薄緑色の揺籠ごず墜萜し、車道ぞず転げおいった。
    その䞊をtトラックが走り抜けた。
    忙しそうに、煙を吹き䞊げお。

    僕は䜕を䞊げようか。
    音ねかな、腕かな、うだ぀かな。

    ごうっず颚が吹き抜けた。
    どこかに颱颚たいふうでも、きおいるのだろうか──

    「安野あんの君も、いい歳、、、だし、もっず䞊のポゞション──」

    出た、いい歳。
    そもそも、いい歳っお䞀䜓、䜕歳いく぀を指す蚀葉なのだろう。

    「俺も、もういい歳、、、だから  」
    同期の花村がベヌスを売り払ったのが、二十四歳の春。
    「来月から働くんだ、掟遣だけど。」
    䞋唇に血を滲たせるような笑顔が忘れられずにいる。

    「うちの母芪、いい歳しお恥ずかしいんだけど  」
    麻衣ちゃんの母芪が十代の男性アむドルを掚し始めたのが五十二歳の冬。
    きっかけは、圓該アむドルがたたたた圌女の掚しのパフォヌマンスのバックで螊っおいお、滑っお転んだからだそうだ。
    いわゆるヒゎペク、、、、っおや぀、アレをたんたずくすぐられちゃったみたい、ず圌女はため息を぀いた。

    「私、もういい歳、、、だから  」
    姉がツむンテヌルをやめたのが、十六歳の倏のこず。
    あれは僕のせいだ。
    「芞胜人ゲヌノヌゞンじゃあるたいし  いい歳しおむタいよ、その頭。」
    ほずんど売り蚀葉に買い蚀葉だった。
    アむドルグルヌプのオヌディション。
    最終遞考たで進んだ僕に姉は蚀った。
    「いい歳、、、しお、たあだ倢芋おるの」
    僕は十四歳だった。

    いい歳、ず蚀うには早くはないか。
    いや、いい歳、に早いも遅いもない。
    この堎合、呚りの子たちは十歳ずかそこいらで掻動を始めるのが垞だったから。

    結果
    蚀うたでもなく、䞍合栌。
    二床目の挑戊。
    打たれ匱い僕にしおはがんばった方だず思う。
    けど、あきらめた。

    いい歳、は範囲の広すぎるの解のよう。
    䞍等匏の解なんかより、いい歳、の解を教えおよ。
    ね、先生。
    ううん、文郚科孊倧臣サマ、、。

    もういい歳だから。
    早々に倢を諊めた僕は第四志望の倧孊に進孊した。
    浪人したら
    ず蚀われたけれど、別になにがなんでも第䞀志望に行きたいわけでもなかった。
    孊歎至䞊䞻矩のこの䞖の䞭で、履歎曞の芋栄えを少しでも良くしおくれる倧孊──それが第䞀志望校だったずいうだけで、孊問に察する熱量なんおこれっぜっちもなかったのだ。
    倚少、芋栄えは悪くなれど、もう䞀幎、それも孊校がない分䜙蚈にみっちり受隓勉匷をするなんおたっぎらごめんだ。

    気乗りしない倧孊生掻ず、幞犏なひずり暮らし。
    僕は、むしろ人はなんお欲深いのだろう。
    幞犏なんかあっずいう間に食べ飜きお「あヌあ、぀たんない。もっずいいこずないかしら。」なんお思い始める。
    ベッドに寝転んで、倩井を芋䞊げる。
    電気カバヌの䞭に入り蟌んだ矜虫の圱を眺めおいた。

    惰眠を貪る日々の合間に授業を受ける。
    本末転倒の孊生生掻。
    孊生時代の䞀番の孊びずいえば、類は友を呌ぶ、これは真実、それに尜きる。

    僕の呚りには、僕みたいな人間が集たった。
    僕が僕みたいな人間を匕き寄せお、それず同じかもっず匷い匕力で僕は僕みたいな人間に吞い寄せられた。
    倉わらなくおは、そんな思いはい぀でも腹の底にわだかたっおいたけれど、もがくのはどうにもダサい。
    だけど、銬鹿だず思われるのも嫌で、しょうもない芋栄を匵りたがる。

    いわゆる「恥の倚い人生」をマスキングするのに、手っ取り早く、金がかからないのが読曞だった。
    だからわりあい足繁あししげく図曞通ぞ通った。
    僕も、僕に䌌た人たちも。

    それこそ、ドスト゚フスキヌにフヌコヌ、カフカ、ゟラにヘッセにトルストむ  
    ずにかく難解そうなものを片っ端から手に取った。

    過去、教宀の隅で本を読むクラスメむトを散々にせせら笑っおいた奎らもこぞっお借りお、鞄ず自尊心ずをぱんぱんに膚らたせおいた。
    埡倚分に掩もれず、僕もその䞭のひずりだった。
    停物の聡明さで歊装しお。
    圌らのなかの䜕人が䜜者の意図を汲み取れおいたかは未知数なのだけれども。

    孊食に集たり、本を䞊べお論を競わせた。
    競わせる論すらない僕は、わかったような顔をしお、頷くでも、銖を暪に振るでもなく、ただぞらぞらず笑いながら、味噌ラヌメンの汁の䞭のずうもろこしをひず粒ひず粒぀たみ䞊げ、い぀たでもなくならないこずを願っおいた。

    さしづめ、ピ゚ロだ。
    わかったような顔をしお、誰かをこき䞋ろしお笑っお安心しお。

    あれ皋たでの苊痛は他にはない。
    ず、あの頃は思っおいた。
    今ずなっおはあの皋床、になっおしたったけれど。

    借り持っおは郚屋に積む。
    それだけで満足しおいた。
    衚玙にうっすら埃がかぶる。
    それがちょうど、返华期限の二週間。
    あの二週間っお、なかなか理にかなっおいたのだず最近になっお思う。
    ずはいえ、僕は借りるだけで読んだ詊しがない。
    ぱらぱらめくるけれど、党然そそられなくお読たずに攟眮した。
    でも、本がそこにあるだけでよかった。
    知的倧孊生。
    それを挔出する小道具ずしお。

    圌女が初めおアパヌトに遊びに来る。
    前日、僕は倧孊の図曞通ぞ。
    わかりやすく、ドスト゚フスキヌを  
    ず曞架を芋るも、ない。

    みんな、考えるこずは同じっおか。
    本に囲たれたたた僕は錻で笑った。
    ひんやりずした颚が流れた。
    埃臭い、也いた颚だった。

    「安野君っお、結構本読むんだね。」
    ほら、きた。
    いい仕事、しおくれるじゃん。
    「そんなこずないよ。眮いおあるだけ。」
    本圓に、眮いおあるだけ。
    「そう でももう半分は読んでるんでしょ」
    前に借りた人が、だろうず思う。
    詊し読みすらしおないもんね、僕は。

    「麻衣ちゃん、本奜きだっけ」
    「うヌん、嫌いじゃないけど。こういうのはむずかしそうで、぀い避けちゃうんだよね。」
    圌女はトランプをシャッフルするみたいにペヌゞをぱらぱらず萜ずした。
    「読みやすいのあったら教えお 私もいい歳、、、だし、こういう安野君が読むようなや぀ 読めた方がいいず思うんだ。」

    ここで、うん、ず蚀えなかったのは僕の䞭にただわずかに誠実さが残っおいたからだろうか。
    それずも、あの呪いの蚀葉に怖気付いたからだろうか。

    「でも、なな、じゃなくお、なな、よみたいな。」

    ぞ
    ずたぬけな声を出しおから、
    「ナナじゃなくお、読みたい」、
    ぀たりゟラじゃなくお矢沢あいがいい、ずいうこずだず理解した。

    僕は自分の䞍誠実を悔いた。
    「ないよ。」
    ええ、ず残念がられる前に日が萜ちおくれお助かった。

    サブカル文化にあおられお、ミニシアタヌで映画を芳持ったり、䞋北沢のラむブハりスで飲めもしないのにテキヌラショットをいく぀もあおっお、起きたら党然知らない女の子がずなりで眠っおいたり、時には道端で目を芚たしたりもしたけれど、䜕にせよ郚屋に垰ればドスト゚フスキヌが神劙な面持ちで埅ち構えおいたし、ヘルマン・ヘッセが䞞県鏡の奥で埮笑んでいた。
    それでも結局、読たないこずには倉わりなかったけれど。

    そしお、僕はたたドスト゚フスキヌを、いや、小難しい本を探しおいる。
    今床は挔出ではなく、向き合うために。

    次は、䜕を借りようか。
    本の背䞭を眺めおいた。
    文字が霞む。
    涙じゃない。
    哀しいかな、ドラむアむ。

    「あの  」
    「はい」
    声の感じからしお、同い幎くらいだろうか。
    暪目に緑色の゚プロンが芋えおいた。
    明らかに利甚者ではなさそうなシル゚ットに声を掛けたのだ。

    「いい歳、、、しお、恥ずかしいのですが  」
    いい歳、ず圌は埩唱した。

    最近、思うずころがあっお本を読むこずにしお。

    なるほど。

    でも、どこから手を぀けおいいのか芋圓も぀かなくお。
    「いやあ、いい歳しおお恥ずかしい  」
    僕は埌頭郚を掻いた。
    あ、たた蚀っおしたった  
    思わず口をおさえた。
    いい歳、いい歳っおそんな蚀葉で呪いをかけおいたのは僕自身じゃないか。

    「いい歳  」
    叞曞らしき男性は、ふふ、ず笑う。
    圌は脚立を降りお、「こちらぞ」ず僕の背を抌した。

    ──いい歳、、、しお、わからないこずがあるのはいいものです。
    わかったふりをしお、奜奇心を忘れおしたうよりもずっず。

    「䞀粒の麊もし死なずば  」
    十八歳の僕が理解できなかったもの。
    䞉十二歳になった今も、ただわからなかった。

    ゞッドを返しお、絵本を借りた。
    二匹のねずみがホットケヌキを焌く──

    「パパ、あしたも図曞通、来たい。」
    それを蚀うなら、図曞通、行きたい、だよ。
    「そうだね、明日も図曞通、来ようか。」

    どんぐりを袋にいっぱいひろったら、そろそろ家ぞ垰ろうか。

    「倏暹な぀き、明日の朝、䞀緒にホットケヌキ䜜ろうか。」
    「どうしお」
    「え  いや、どうしおっお  」
    「いいよヌ。」
    「絵本に䜜り方、茉っおるかな。」
    「なんで」
    「いや、なんでっお  」

    ママ、よろこぶかな

    きっず喜ぶよ、倧奜物だから。

    そうなの

    そうだよ。

    ママっおねずみさんなの

    え

    だっお、どんぐりが奜きなんでしょ

    「違うよ。ホットケヌキの話。」
    「なあんだ。」

    その晩、僕は息子にせがたれ、図曞通の本を読み聞かせるこずにした。
    麻衣ちゃんは、䜕で借りるの、その本持っおるのに、ず唇を尖らせおいた。

    「あれ」
    「パパ どうしたの」
    「なんでもないよ。」

    カステラ  だったんだ。
    ホットケヌキじゃなくお。
    いい歳、、、しお、今さら気づいた。

    颚が窓を叩いおいる。
    この音を、本たちも聎いおいるのだろうか。

    明日は颱颚、くるのだろうか。

    息子が寝たら、玄関前のどんぐりを避難させなくちゃ。
    考えおいる間に、僕は眠った。


    習䜜です。

    ↑
    䞻人公はこれの人。
    千葉雄倧さんを目の敵にしおいたこの人です。

    ↑
    これの登堎人物も密かに登堎したしたが、芋぀かりたしたか

    ↑
    圌のいる図曞通、䞊びに䞻人公が行った図曞通はこちらです。

    ↑
    こちらは別の図曞通です。

    ↑
    カラマヌゟフじゃない兄匟。

    ↑
    オクトヌノァヌの囜文孊科。

    ↑
    【屁ッセむ】
    屁ルマン・屁ッセ

    ↑
    ゆきお様・解説
    答えの出ない問題です。
    いい歳、ずは。
    ゆきお様ず䞀緒に、熟考だ

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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