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ヒトデナシの蚀い分

    「ヒトっお倧袈裟だよな。九月の第二週の初め、い぀もよりちょっず気枩が䞋がったず思ったら、ダりンゞャケットだの、りヌルのコヌトなんか着蟌んじゃっお。でもおかしいじゃない 十二月にこの気枩になったら汗をだらだら垂らしお、暑ぅヌい、死んじゃヌうなんお蚀っお、コンビニやらスヌパヌやらのアむスを根こそぎ抹消しちゃうんだから。」

    「䜕それ。あんたもヒトでしょ。たるで自分はニンゲンじゃないみたいに。」

    「だっお、君が蚀ったんだろう ヒトデナシっお。」

    僕は今、キャンパスのちょうど真ん䞭、倧銀杏の䞋のベンチに座っおいる。
    倧暹をぐるりず囲うこのベンチ。
    普段、この時間は満垭で座れた詊しがない。
    でも、今日は貞切り。
    みんな、足早に過ぎおいく。
    たるでここに、ベンチがあるこずに気づかないみたいに。
      もしくはすっかり忘れおしたったように、ず。

    「九月の第二週の初め  」
    これはあたりにも説明的だった。
    ノヌトに二重線を匕く。

    悎かじかむ手に、息をふきかけた。
    握り蟌んでいた䞇幎筆のボディが癜く曇る。
    そしお、雲がはけるようにしお元に戻っおいった。

    足もずに芖線を萜ずす。
    青いたたの葉が萜ちおいた。
    拟い䞊げお、空にかざす。
    葉は蒌々ずしげり、光を拒むように重なり合っおいる。
    圱は萜ちおこない。

    もしくは光は圱を䜜れぬほどに匱い  かな。
    銀杏の葉をペヌゞに挟み、ノヌトを閉じた。

    もう、ラベンダヌ色のコヌトは芋圓たらなかった。

    「ムック」
    「ああ、テリアさん  」
    䜕回呌ばせんの、ず圌は僕の肩を小突いた。
    小突かれた僕の身䜓は倧きく揺れる。
    「いい加枛、慣れろっお。あず、さん、いらない。」
    「  ず蚀われたしおも。」
    「もうすぐ半幎蚘念だろ 俺ら。」

    なんの蚘念か、そこは僕の理解の範疇にないけれど、それは高校を卒業しおから半幎経ったこずを意味しおいる。
    僕はテリアさんに肩を組たれたたた、人の流れを眺めおいた。
    ひずり、たたひずりず黒いブレザヌを着せおみたけれど、みんな五秒ず持たずに元の服に戻っおしたう。

    「なあ ムック。」
    「僕は赀くもないですし、頭にプロペラも぀いおいないでしょう」
    「それを蚀ったら俺だっお、ワンコじゃないぞヌ」

    たるで人の話など聎いおいない。
    ワン、ワン、ず犬の真䌌をしお、けらけら笑っおいる。

    圌は自由だ。
    䞀芋、自由だ。
    でも僕は、圌のこずをきっず知らない。
    わかっおいない。

    「ああ  それ、返しおください。」
    いや、わかったずころで、なにになる
    「あずでなんかおごるから」
    僕は黙っおいる。

    「これ、昭月しょうげ぀のアンパンっしょ ずっず食べおみたかったんだよねえ。」
    蚀っおくれれば買っおきたすよ、今床から。
    ずいう僕の提案はあえなく华䞋された。
    「パシッおるみたいじゃん。」
    だっお俺の方が先茩だし、ずテリアさんは蚀い足した。
    たかだか䞀歳、それに孊幎は䞀緒だ。
    「人生の先茩だぞ。」
    圌は誇らしげだ。
    それこそ圌が焌きそばパン買っおこい、ず蚀い出したら僕も断るかもしれないけれど、アンパンだ。
    アンパンなら、構わない。
    こんなこず蚀ったら、ムック、お前、絶劙に叀いよなあ  っお笑うだろう。
    圌は構わずもくもくずパンを頬匵っおいる。

    「そんな顔すんなよヌ。枛るもんじゃあるたいし  」
      あるたいし、っおあれ、ず圌は銖をかしげた。
    「枛っおんじゃん」
    残りひずくちになったアンパンを僕の口にねじ蟌んで、たじごめん、ずひたすらに繰り返しおいる。
    自分の胞をがこがこ殎りながら。
    気づけば僕は飲み物を差し出しおいた。
    「飲みかけで悪いけど  」
    助かる、ずストロヌに口を぀けた途端に圌はたた笑い出した。
    「いや、埅っお。」
    埅っおも䜕も、僕はずっずここにいた。
    テリアさんのくるよりもずっずずっず早くから。
    「牛乳ずアンパンっお  」
    叀いよ、い぀のデカ刑事だよ、ず笑うけれど、テリアさんだっお蚀い方が叀いじゃないか。

    「ムック、次䜕号通」
    「䞃です。」
    「䞃ぁ 珍しくない 䞃っおマニアックな授業しかなくない っおいうか俺、䞃号通の授業ないわ。」
    逆に僕は必修以倖、ほずんど䞃だ。

    唐突に立ち䞊がったテリアさんは、「そうだ」ず蚀った。
    僕は぀い、笑っおしたった。
    「なんだよムック。そういうこずで笑っおいいのはうら若き乙女だけだからな」
    远撃はやめおよ、ず心で叫んだ。

    僕はたたノヌトを開く。

    ──唐突に立ち䞊がった圌は、「そうだ」ず蚀った。
    ──「そうだ」ず蚀い、圌は立ち䞊がった。唐突に。

    「さっきから䜕曞いおんの」
    テリアさんは僕のノヌトを芗き蟌む。
    「䞇幎筆 いいなあ  俺も買おっかな。」
    「え」
    「いや、いいじゃん、なんか。ザ・䜜家 みたいでさ。」
    あれ、今ノヌト芋おたせんでしたっけ  
    やっぱり、圌は自由  
    蚀葉の意味が僕の䞭で厩れおいく。
    砎片かけらをあ぀める暇もなく、圌の蚀葉は流れおいく。

      
    テリアさんは顎に指を眮いお眉間にしわを寄せた。
    額が䞇幎筆に近づくほどに、眉間のしわは深くなっおいく。

    「ではなく」
    ムック、なのに
    あたかも迷宮入りしそうな事件を前に焊じれる、探偵めいたデカ刑事みたいにぜ぀りず呟く。

    「  リョり。リョりのです。」

    あヌ、そうだった、そうだった
    ムクドリのムクで「怋リョり」

    「忘れおたんですか  たた。」
    「うん、忘れおた」
    だっおお前、ムックじゃん
    ず瓊瀫ず化した論理の䞊で笑っおいる。

    隠さないんですね、そういうの。
    若干の嫌みを蟌めおみたけれど、圌にはなんら効いおいない。

    「いやあ、名は䜓たいを衚すっお蚀うじゃん。あれっお俺のための蚀葉っおいうか  」
    オヌダヌ・メむド、ずテリアさんは胞を匵る。

    ──照屋テルダ 盎・スナオ

    そうかも知れない。
    圌はたっすぐだ。
    ねじ曲げたりしない。
    スナオだ。

    昌䌑みの終わりを告げる鐘が鳎る。

    じゃ、ず圌は北ぞ぀た先を向けた。
    「食いたいもん、決めずいお。」

    ただ僕は立ち䞊がれずにいる。

    ただ、僕も圌もいささかのんきすぎるのかも知れない。
    党力疟走する無数の残り銙に煜られながら僕は東ぞ歩いおいく。

    ゞャムパンが食べたいなあ。

    だめか。
    浮かんだ蚀葉に二重線を匕く。

    たあ、いっか。
    僕が生きるのは、物語䞭じゃないんだから。

    円環しない僕の代わりに、時蚈の針が回っおいた。


    ムックの正䜓、わかりたしたか

    ↑
    #井䞊ず癜石 シリヌズ、井䞊の倱恋線、完結したした。

    ↑
    井䞊の倱恋線の䞀話目。

    ↑
    䞀床も䌚ったこずのない隣のクラスの女の子にやっず䌚える話。

    ↑
    高校二幎の癜石が長厎で感化されお曞いた䜜文。

    ↑
    倏を懐かしむ方ぞ。

    ↑
    倧正の文孊青幎、䞊原朔也の自䌝。

    ↑
    ゆきお様・解説
    わからないものをわからないたたにしおおく勇気。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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