
【読切】或る郊外の図書館にて
「どうされました? そんな浮かない顔をして。」
今日もいつものとおり、オルゴールの音が聴え始めた。
ぴっぴっと忙しなく鳴る機械音のうしろで、その旋律はのんびりと流れていく。
人気のアニメ映画の主題歌だと、いつだったか誰かに聞いたような気がしている。
「僕は今日帰りにかぼちゃを買うつもりなんですけど。よかったらどうですか、ご一緒に。」
おととしの夏ごろ……だっただろうか。
鈴の音に似た音に混じって、この旋律を感じた覚えがある。
でも──
「ええ、そこのスーパーです。今日は、焼き鳥が安いんですよ。それもね、三十本入り。」
思い返せばその前の年も。
前の前の年も……
もっともっともっと前の年も……
感じた覚えがある。
あの旋律を、ニンゲンの声と楽器の音として感じるときはほとんど必ず、からだがふにゃふにゃになりそう……ともすれば、なっていたように思う。
だからやっぱり、夏なのだ。
「多い……? 食べきれなければ串から外して冷凍してしまえばいいんです。」
この旋律、なんなのだろう。
ぎゅうぎゅうと身を寄せ合って聴く時は。
はたまた身体を拭かれながら、聴く時は。
またあるときは、痛む疵になんらかぺたぺた貼られながら聴くときは。
決まってこのオルゴールなのに、一人ないし独りで聴くときは……
「次の日、炊き立てごはんに……いえ、冷凍だっていいですけど、ごはんに乗せて食べれば立派な一食分になるでしょう? ちょっと手間をかけて卵で閉じれば親子丼ですしね。」
オルゴールじゃないし、ぴっぴっの音も、このヒトの声もしないんだ。
「ああ、洗い物……洗い物は増えますね。フライパンとか、お鍋とか。」
このヒトの声が近いとき、それはたいてい、しばらくオルゴールの旋律を聴けなくなる合図。
「まあまあ……今日は金曜日ですから。」
このヒトの声がスキという言葉の形になったときは特に。
かわりに、新しい旋律を覚えるチャンスでもある。
「たまにはいいんじゃないですか? あ、ビール? おスキなんですか?」
今のスキ、は違う。
さっき、お帰りなさいのぴっ、をしてもらったばかりだから。
「今日はヱビスの黒がお買い得だそうです。」
あ……
曲名は?
「それはいい。僕はお恥ずかしながら……からっきしだめで。」
──間も無く閉館のお時間です。
僕は明日もここにいますから。
お探しの本があれば、なんなりと。
紙とインクの匂いに挟まれ、眠りの世界へ落ちていく。
今日はおとといより、ゆったりしている。
そのせいか、ちょっぴり、寒い。
……寝つけない?
となりの新入りにほんの少しだけ、肩を貸してやろうかな。
明日は旋律聴けるかな。
どうだろな……
【習作】です。
完全読切り。
連載でもないし、続けるつもりもない。
元気な人も、元気じゃない人も。
町の図書館、気が向いたら行ってみてください。
本と、司書さんたちがいてくれます。
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#井上と白石
一気読みできるマガジン作りました。
アホからシリアス(?)までいろいろあります。
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案の定、だめだった「殴り殴られ詩人酒場」。
創作大賞2026は「滅」でした。
人気アイドル風に言ってみました。
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これも案の定だめ。
だめだったから連載が止まっているわけじゃないんです。
今、書くべきものがあったからなんです。
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戦争関連小説三選
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なぜかよく読んでいただいております。
ありがとうございます。
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大正時代の十二歳の人の日記。
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【エッセイ】
まあ、目を開けて見る夢も悪くないよね。
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ゆきお様・解説
真実の語り手は誰か?
真相やいかに。
我のみぞ知る。
我の味噌汁。