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佐々木楓菜作詞作曲史④「消えたくなるほど君が好きだ」【ラフ×ラフ楽曲紹介[5曲目]】

    ラフ×ラフ(以下本文中は「ラフラフ」表記で統一)の1stアルバム「わたしファンファーレ」に収録されている23曲(できれば9 revengeを含めた24曲)を、次の新曲が出るまで、できれば3月9日の3rdアニバーサリーライブまでに全曲紹介を目指す【ラフ×ラフ楽曲紹介】。

    5曲目となる今回は、前回までに引き続きメンバーのふーちゃん(佐々木楓菜)が作詞作曲した曲を時系列順に紹介していく「佐々木楓菜作詞作曲史」の4曲目として「消えたくなるほど君が好きだ」を取り上げる。過去の楽曲紹介記事はこちらのマガジンから読むことができます。

    今回で「佐々木楓菜作詞作曲史」は一旦ゴールになります。ご支援いただいたふーなぐみおよびラフり隊の皆様、誠にありがとうございました。
    そして何より、こんなに語りたくなるくらい素敵な曲を1年で4曲も作ってくれたふーちゃんに本当に感謝します。ありがとう、ふーちゃん!

    ※【ラフ×ラフ楽曲紹介】はまだあと18(19)曲残っています。


    【2026/1/17 追記】
    1/16のSHOWROOM配信でふーちゃんが「消えたくなるほど君が好きだ」の歌詞や歌割りについて解説してくれました。この記事の解釈違いが多々あることは承知の上で、「私が感じた『消え好き』の感想」として、あえて大幅な変更をせずそのまま残したいと思います(解釈・考察ではなく、事実ベースの部分のみ一部修正)。
    それにしても、ふーちゃんの自身の曲に対する想いと熱量、それとは対照な歌割りなどへの冷静で客観的な視点を併せ持つ姿は、プレイヤーとしてのアイドルの域を超えて、完全にクリエイター・プロデューサーの領域であると同時に、「ラフラフのTO中のTO」であることを認識させられました。(※TO:トップオタ)


    「消えたくなるほど君が好きだ」楽曲紹介

    消えたくなるほど君が好きだ | ラフ×ラフ
    作詞・作曲:佐々木楓菜
    編曲:遠藤ナオキ


    【触れずにはいられなくなるコード進行】

    これまでの楽曲紹介は経緯・背景→考察の流れが進めてきたが、今回はいきなり譜面とともにコードの話をしていく。

    この曲のリリース版を聞いた時の最初の印象は、「おしゃんなコード使うなぁ」だった。アルバムに収録された新曲4曲ともに言えるが、これまでのラフラフの曲全般に感じたポップさより、洗練された印象が強い曲が多い。
    中でも今回紹介する「消えたくなるほど君が好きだ」は、他の曲とかなり毛色が違う。ギターやドラムはバンド的な雰囲気を出しながら、シティポップ的なおしゃれで都会的な印象を強く受けた。

    以下、専門用語が多数出てくるが、細かい説明はあまりしていないので、意味がわからなくて興味を失いそうな方は、次のセクション(【多層的な構造を感じる曲】)まで飛ばしてください。


    曲の中で特徴的なパートとして1B、1C、3Dを取り上げていく。
    1Bは、せつなさとおしゃれ感が行ったり来たりする、「心の揺らぎ」を表したようなコード進行になっている。

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    冒頭のD♭→Cm7→Fmはこの曲のキーであるFmにおける王道かつメロウな解決の流れである。
    次にダイアトニック上のGm7(♭5)ではなくあえて5度を半音上げたGm7に移り、暗いマイナーキー特有の重苦しさが抜けて洗練された透明感を演出している。
    ドミナントコードのCからFmに戻ろうとする流れを裏切ったE♭mで突然曲の景色が変わり、E♭m→A♭は2回し目のD♭(キーFmにおけるVI)へ戻るためのセカンダリー・ドミナント(いわゆるii-V)であり、次の周回へ滑らかにループする役割を果たしている。

    歌詞で言うと「目と目が合うだけで心がギュッてなるよ」のGm7~A♭のコードは、切なくて苦しいだけではなく、青春の清涼感ともやもやを混ぜ込んだような響きになっている。
    1B後半も面白いのだが、きりが無いので1Cに進む。

    サビにあたる1Cは、ドラマチックなコード進行でこの曲の切なさを高めてくれている。

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    サビの冒頭のコードはDm→D♭→Cmと都会的だけど哀愁が漂う半音下降のクリシェで、滑らかであると同時にCmに向かうドミナントであるG7ではなくトライトーン(増4度)のD♭(ジャズなどで言う「裏コード」)を使うことで、浮遊感とおしゃれさを演出している。

    Cm→Fm→B♭m7→E♭はルート音が4度上(または5度下)に進み続ける定石通りの強進行になっている。本来であればそのままA♭で解決したいところを、E♭mという裏切りとマイナーコードの響きが切なさを強調している。2回し目(ずっと願ってるよ~)はE♭mを挟まずそのままA♭に着地しているし、落ちサビ(自分が嫌になる)もまた違う解決になっている。
    E♭mの切なさと、歌詞の「知っている(けど口には出せない)」の切なさが重なって印象的な響きになっており、ここがサビの「聞かせどころ」と言っていい。
    最後のA♭で終止感を作りながら、2回し目冒頭のDmに半音で滑り込む。DmとA♭もいわゆる「裏コード」の関係にあり、ループの接続を非常に強力なものにしている。

    3D、俗に言うCメロは、歌詞も相まってとても印象的なパートになっている。

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    3D前半のセクションはバラードを思わせる流れになっている。冒頭のD♭→D♭m→CmはFmキーのVIにあたるD♭をマイナーコードにして悲しげな印象にしながら、各コードの第3音にF→F♭(E)→E♭と半音階のクリシェが内包されて聴き手の感情を強く揺さぶる美しいラインになっている。
    B♭m7→C→Fmはマイナーキーの王道のiv→V→iで進行して感情の高まりを表し、A♭で少し明るく安らぎを感じさせる着地を見せ、歌詞の「カレンダーで一目でわかったらいいのにな」の切なさがこみ上げつつ霧散していく感じに沿っている。

    一方で後半は切なさを溜めてから一気に解放し、最後の最後で引き戻すという劇的な展開で、「サビ前の盛り上がり」を完成度高く演出している。
    B♭m→Cm→D♭→CmはFmキーのダイアトニックコードを上って下りてしており、この後の劇的な展開のためのタメと、揺れ動く感情を表している。
    そしてB♭m7→B♭でマイナーからメジャーで雰囲気が転換するが、ただ明るいだけでないドリアン・モード(少し神秘的で明るい響き)は高まった感情が決して明るいだけのものではないことを示唆している。そこからE♭で転調したかのような明るい解決を見せたかと思えば、最後にFmキーのドミナントであるCへ。E♭のルート音とCの第3音のEが半音でぶつかりながら状況を一気に現実へと引き戻す。

    この曲最大のヤマ場といっていい「お願い 気付かないで」という歌詞の持つ複雑さを、マイナー→メジャー→転調を思わせる展開→現実に引き戻すドミナントコードという流れで演出している。

    これまでの曲であまりコード進行について触れてこなかったのは、専門性が高すぎて万人受けしないだろうと考えていたからだ。それでも「これまでの曲と比べておしゃれすぎる」と感じた理由を一旦言語化しておきたくて、今回あえてコード進行について触れた。それくらいこの曲は印象的なコードが使われているということでもある。

    【2025/5/4追記】
    コード解説について、詳細に解説した「新説」を作成していますので、そちらも是非ご覧ください。


    【多層的な構造を感じる曲】

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    「一期八会」の曲作りの中で、「お父さんの車でずっと音楽を聴いていた」という話が出て、遠藤さんも「古いJポップはいい曲が多いから」とコメントしていた。
    この曲にはそうした音楽的経験に加えて現代的な要素や切なさを増幅させるアレンジなどが積み重なっているように感じている。

    一番下じきになっているのはバラードやシティポップではないかと感じている。リズミカルでテンポも速く展開も多いので、バラードの雰囲気は感じにくいかもしれないが、何よりまずこの曲は失恋ソングである。テンポやリズム感など、上に積み重なっている要素を丁寧に降ろしていくと、一番下からバラードの雰囲気が出てくる。上記で解説した3Dのバラード感を感じるコード進行もそれを際立たせているように感じる。またおしゃれなコード進行からはシティポップの雰囲気も漂ってくる。

    お父さんのプレイリストの中身はわからないが、私自身メンバーよりもお父さんの方に年が近いはずなので、曲の雰囲気も踏まえてバラードであればこのあたりを聞いていたのではないかと推測する。
    (個人的には古内東子の「誰より好きなのに」が好きです。「ユニコーンとBRAHMANと古内東子って、お前何歳で何の曲聞いてきたんだよ」という突っ込みへの回答は別記事の方で)。

    • 中西保志「最後の雨」

    • 小野正利「You’re the Only…」

    • 古内東子「誰より好きなのに」

    • DEEN「このまま君だけを奪い去りたい」

    • 久保田利伸「Missing」

    • 幹栚庡広 「Get Along Together -愛を贈りたいから-」

    • 德永英明「レイニーブルー」

    また、年代は少し上がるが、シティポップだとオメガトライブの「君は1000%」みたいな匂いも少しある気がする(さすがにリアルタイム世代ではないです)。

    バラード的な要素を意識的に入れているというより、原体験として残っているものが無意識に出てきている感じかもしれない。そのニュアンスを遠藤さんが汲み取った結果、冒頭で解説したようなコードアレンジに繋がっているのではないかと推測する。

    二層目にあるのは現代的な言葉の詰め込みだ。バラードの印象を覆うように、ふーちゃんの曲の特徴の1つでもある八分音符での「言葉の敷き詰め」が随所で使われていて、歌詞を生かしたリズムが曲の躍動感に繋がっている。
    邦楽全体の傾向として年々歌詞の文字数が増えており、4~5分の曲に入れ込もうとするとどうしても歌詞が詰め詰めになりやすくなるが、この曲の場合「敷き詰め」は要所のアクセントとして機能している。
    例えば3Dの前半(月の満ち欠けのように~)は長音と単音で緩急をつけながら全体としてはややゆったり流れているが、後半(好きバレすらできない私の~)は「君きゅん」の記事でも紹介した「同じ音による八分音符の連打」で、場面の転換と加速感をはっきり表している。

    さらにその上から女子が共感する切ない歌詞+切なさを増幅させるアレンジが重なり、最後に全体を清涼感のあるアイドルロックでパッケージングしている、そんな多層的な構造を感じた。

    ちなみに、この曲の歌詞の切なさのキモは3Dの「お願い 気付かないで」だと感じている。ここまでの曲の流れから絶対に「気付いてほしい」となりそうなところが、盛り上がりの頂点で絞りだされた「気付かないで」は、ちょっと鳥肌ものである。単純に気付いてほしくないわけじゃない複雑さから、本来そんな大きな声で言うことじゃない(大声で言ったら気付くだろう)「気付かないで」という言葉をピークに持ってくるあたり、トップ画像にもあるコロコロ変わる女の子の気持ちの究極のような言葉のチョイスだと思う。


    【歌割りとプロデュース力】

    前回の「一期八会」の記事を公開した際に、記事のコメントやXで何人かの方と「ふーちゃんの曲の歌割り」についてやり取りをしたが、ふーちゃんの曲の歌割りは他の曲と違うと感じることが多い。その中でもこの曲は特にそれが際立っているように感じている。

    歌割りを視覚的に確認できる映像は、現時点ではファンクラブの動画とリリイベをYouTubeなどにアップしてくださっている有志の方の動画のみとなる。撮可(撮影可能)で撮っているので共有することに問題はないのだが、このnoteはこれからラフラフを知る人も対象と考えているので、クオリティも含めて映像はできるだけ公式メインで取り扱いたいと考えており、見たい方はお手数ですが検索してみてください(公式ダンプラ早期アップ希望)。

    まず低音域が多いBパートだが、遠藤さんも「ラフラフは全般的にC(ド)から下が出しずらそう」と言っていた。Bの最初は下のA(ラ)まであり、低音域が得意なりょーか(夏目涼風)が1Bの歌いだしになるのは適材適所だが、そこに途中から高音域が得意なゆいゆい(高梨結)が合流してくる(C以下の音が無くなってからではあるが)。2Bは音域は広いが高音域が得意なはるるん(永松波留)が歌い出しで、低音域が得意なありさ(齋藤有紗)が合流してくる歌割りになっている。

    また、Cパート、サビの歌割りといわゆるセンターポジションの回し方も面白い。

    • 1C…1回し目:ゆいゆい、2回し目:はるるん

    • 2C…1回し目:ありさ、2回し目:めーな(日比野芽奈)

    • 落ちサビ…1回し目:ふーちゃん、2回し目:みくちゃん(藤崎未来)→ゆいゆい

    • ラスサビ(歌唱はユニゾン)…1回し目:ゆいゆい、2回し目:はるるん(1Cと同じ)

    音域の特性だけで言えば真逆な印象も受ける歌割やポジションもあるが、これは「あえての挑戦」だと感じる。他の曲ではあまり割り当てられないパートやポジションにメンバーを当てんでいるのは、この曲だけでなくグループとしてのバランスやチャレンジの場にしているのではないだろうか。

    また「一期八会」の解説で「『この曲は〇〇メインの曲』という印象を持つ場合も結構ある」と書いたが、この曲のメインはありさだと感じている。前述の通りありさが得意な音域が低いこともあり、音域が高くなりがちなサビなどに割り振られることがこれまで少なかったように感じる。しかしこの曲では1B最後の「君を前にしたら絶対言えないけど」や上記の2Cのサビ1回し目、そして何より3Dの「お願い 気付かないで」など、高音を含むパートを複数割り当てられているし、そのどれもが曲の雰囲気を決めるような印象的なフレーズやメロディーになっている。

    これについては声質の特徴がかなり影響していると考えている。声には高低だけでなく力強かったり、繊細だったり、色っぽかったり、無機質だったり、色々な特徴がある。曲や場面によってどんな特徴も武器になりうるし、使い分けることで表現の幅も広がる。
    りょーかの場合声に力強さがあって、せつなさや繊細さを感じさせるこの曲のイメージとちょっと違うと感じる。高音域が得意なふーちゃんやはるるんが歌うと、楽に出せてしまうので劇的なフレーズが少しあっさりしてしまうかもしれない。みくちゃんだと可愛くなりすぎるし、めーなだと学生っぽさも感じる曲の世界観に対して声がちょっと大人っぽすぎる。ゆいゆいの高音はちょっと緊張感がある感じになりそう。ありさの少しこもった声質で音を下から取る感じが、切なさとドラマチックな雰囲気によく合っていると思う。

    いずれも個人的な感覚でしかなく、あくまでこの曲についてだけの感想であることを念のため申し添えておく。パフォーマーのポテンシャルを論評できるような身分ではないことは承知の上で、「スキル」ではなく「特徴」を言語化するように心がけてはいるが、そのように受け取らない人もいると思うので。

    自分の作った曲だからといって、歌割やポジションの全てをふーちゃんが決めているとまでは思わないが(追記:自身が作詞作曲した曲の歌割りはほぼ決めているらしい)、グループとしての表現力を広げる意味でも様々な試みがあっていいと思うし、ファンも「どのポジションでも見てるよ」と言いながら推しが良いポジションに来るとやはりうれしい。48や坂道のように「選抜」があるような大所帯でなくても、メンバーもファンも立ち位置一つ・歌割り一つで一喜一憂するのがアイドルの世界だし、そこから生まれるストーリーもある。

    ラフラフの運営陣はバラエティには強いが、こうしたアイドルの文化・文脈への手当がやや弱いと感じる時がある。自身もアイドル好きで、クリエイターとしても意見を出す機会のあるふーちゃんのプロデュース力にも期待したい。
    あまりあれこれ期待を押し付けるのもよくないかもしれないが、「ふーちゃんの曲以降、歌割やポジションが良い意味で変わってきた」という声も少なくなく、これからもラフラフに良い影響を与えていってほしいと願う。


    【恋愛曲とラフラフについての一考察】

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    「バーもな」は動画で見るとふーちゃんの話がほぼ入ってこなくなるので、ここでは画像だけ

    ここまででも十分長い記事だが、ここからさらに長話は続く。本当はラフラフの記事とは別にアイドル論として書こうとしていた内容を含む長文になるので、お時間のある方だけお付き合いいただきたい。

    この曲の発端の1つがYouTube企画「Barもなみん」でふーちゃんから出た「女の子がカラオケで歌いたくなる曲を作りたい」という言葉だった。
    別のタイミングで、佐久間Pから「おじさんが女の子の気持ちを書くより、本当の女の子が書いたほうが共感してもらいやすいから」ということで曲作りの依頼(指示?)があったとも話しており、このあたりの出来事が前後していたのだと思う。

    女子が共感する恋愛ソングということで、動画内ではイコノイジョイ(=LOVE、≠ME、≒JOY)のプロデューサーで作詞も手がける指原莉乃の詞の話になった。

    私自身「アイドル20年史」とか書いてイコラブの話題にも触れていながら、話題になっている曲以外でイコノイジョイの曲をあまり聴いてきていなかったため、この機会に何曲か聴いてみた。ふーちゃんもイコラブ好きを公言しているので、「消え好き(この曲の略称)」がどうしてこういうコードになったかを探るヒントになるかと思ったのだが、結論から言うとその点は全然違っていた。

    ただ、全く違う発見として、「やっぱり指原は秋元康の直弟子なんだな」と感じた。

    (こういう時期からAKBヲタだったので、未だに指原莉乃でもさっしーでもなく「指原」なんです。レコ大作詞賞も受賞された大先生なんだけど、どこまでいっても私の中では指原自身の一人称だった「指原」なんです)。

    言葉選びももちろん秀逸なのだが、曲に詞を乗せる時の言葉のリズムに余白がちゃんとある。言葉を詰め込んでくる現代的な雰囲気ではなく、言葉を厳選して届けている感じがやや懐古的な雰囲気すら感じる。もちろん言葉そのものは現代的だし決して古くささは感じないのだが、曲への落とし込み形が秋元康的だなと感じた。

    話を元に戻すと、そこから改めて分析した結果として先ほどのバラードやシティポップの文脈に辿り着いたわけだが、無意味にイコノイジョイの話をしたわけではない。

    深掘りしたいポイントは「恋愛曲とラフラフ」についてだ。
    イコノイジョイや48・坂道グループ、ハロプロなどは「恋愛曲を歌うアイドル」のイメージがある。
    一方でASOBISYSTEMやWACKなどは「恋愛曲をあまり歌わないアイドル」だろう。いわゆる「地下アイドル」は、恋愛曲を歌わないグループの割合が多いように感じる(私が聞いてるグループに偏りがあるのかもしれないが)。

    ラフラフも「恋愛曲をあまり歌わないアイドル」に該当する。明確に恋愛を歌ったのはこの曲以前には「ラズベリーサイダー」と「恋って線香花火みたい~ニセ取材に本気で答えた恋の歌(略称:恋花)」しかない。恋花は恋愛感についての偽アンケートへのメンバーの回答を歌詞にするという企画要素のほうが強い曲なので、純粋な恋愛曲は実質「ラズベリーサイダー」だけだったといっていいかもしれない。
    尚、「考える時間をください」「君がNo.1」「ドラマみたいに言わなきゃ」も歌詞だけ追えば恋愛ソングなのだが、誰もそう受け取っていないし、作詞の土屋さんの意図もパフォーマンスしているメンバーの意識もそこにはあまり無いだろうというのは、「聞けば」というより「見れば」わかる。

    本来、アイドルと恋愛曲の相性は非常に良い。ファンにとってはアイドルとの疑似恋愛的な体験をより強くするし、メンバーである10代~20代の女の子にとっては共感を持って歌えるテーマである「青春」「恋愛」「卒業」はアイドルソングの王道テーマと言ってもいい。
    【多層的な構造を感じる曲】の中で、「この曲の下敷きはバラード」と言ったが、恋愛曲と同じく、ラフラフのスローテンポのバラードは「Re:myself」しか無い。王道バラードのテーマといえば前述のバラード曲リストのように恋愛、特に失恋である。

    いわゆる「しっとりじっくり聞かせる曲」があまり無いのは、「笑顔や笑いを届ける」というグループコンセプトとの相性の問題もあるかもしれない。
    しかし「ちょっと闇落ち」や今回のアルバムの新曲「On Your Mark」のようなハードな路線が可能なら、=LOVE「あの子コンプレックス」や、≠ME「モブノデレラ」のような曲もあってもよいのではないかと思った。しかし強烈すぎる悲恋やネガティブさは、表現する側の技量やメンタリティも試される(ちなみに私のメンタルは「モブノデレラ」を聞くたびに泣きそうになるくらい激弱です)。
    「消え好き」を含めて、ラフラフの曲中の恋愛の描写やネガティブな表現はあくまで「ちょっと(闇落ち)」だったり「小さな(恋)」のスケールにとどまっている。オーディションからデビュー1年目あたりのYouTubeを追えば、視聴者ですら「この子たちに重い曲を歌わせたら潰れそう」と思うくらい、メンバー全員ネガティブで自信のない感じだったので、グループの運営・育成上仕方のない面もあったかもしれない。

    ラフハの中でめーなも「この3年間、曲の雰囲気とか大喜利をやるとか、ずっと同じことをやっている」と指摘していたが、正直その感は否めなかった。

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    このトークの結論は「大喜利は引き続きがんばる」だったんだが

    今回のアルバムの新曲4曲は、いずれもその雰囲気を打破しようとしていると感じる。エモさやかっこよさ、都会的な雰囲気の恋愛曲など、「AKO=明るくかわいくおもしろく」だけじゃないラフラフを見せようとしている。

    パフォーマンスとは、歌唱力やダンスだけでなく「表現力」も伴う。これまでの記事で、徐々にソロパートが増えたり曲の難易度が上がっているのを「パフォーマンスが向上してきたから」と表現してきたが、恋愛曲、特にバラードを歌いこなすにはかなりの表現力が必要になる。
    恋愛曲を避けるアイドルが増えたのは、価値観の多様化により特に若者が恋愛以外に価値を置く比重が増したこともあるかもしれないが、女性アイドルの表現力の引き出しとして「恋愛」を入れにくい空気も影響していると考えている。これはAKB48が確立してしまった「アイドル=恋愛禁止」の掟も関係していると思う。暗黙の了解だった「恋愛禁止」がルールとして明示され一般化したのは恐らくAKBがきっかけだろう。
    しかし先述のイコノイジョイを見ると、「恋愛」の引き出しを自在に使えることで表現の幅が圧倒的に多いことを見せつけられてしまう。
    余談だが、そのAKBで恋愛禁止のルールによって文春砲を食らった指原が、今では女子の心を掴む恋愛曲のスペシャリストみたいになっているのは、なんとも趣深い。

    アルバム「わたしファンファーレ」で新たな一面を見せ始めたラフラフも、今後のパフォーマンスの幅をより大きくする意味でも、メンタルがやられるくらいの大人な大失恋曲を一曲ぶちこんでみても面白いかもしれない。ただ、次の新曲はアルバム曲からの振り戻しで滅茶苦茶ポップでキャッチーになるかもしれないし、それもまたラフラフらしいとも思う。
    あと、もしその手の曲をやるのであれば、作詞作曲はさすがにふーちゃんではないと思う。「消え好き」の歌詞を読めばわかるが、想い人が「背の低い折り畳み傘と一緒に消えていった」のを見て、泣いたり嫉妬したりするのではなく一人で失恋ソングを聞いてしまうような、繊細で控え目な女子の恋愛観を描けるのがふーちゃんの良さであり、「道に倒れて誰かの名を呼び続けたことがありますか」(中島みゆき「わかれうた」)みたいなハードなヤツは、得意な人に任せておけばよい。
    「背の低い~」については、相手が誰か直接的に言いきらない遠回しで詩的な表現になっており、この曲の詞の中で特に印象的で好きなフレーズの1つである。

    また、歌割やポジションのバリエーションも、前述のセンターのローテーションのように「色々なメンバーにスポットを当てる」のと真逆で「あえて一人に思いっきりスポットを当てる」というのもあっていいと思う。ラフラフのセンターははるるんとされているが、強烈にフォーカスされているのは「パッパッ」のMVくらいだと感じている(実際にはりょーかとのダブルセンター曲のイメージだし)。パフォーマンスでも女優的な憑依を魅せることが多いはるるんが、「泣き」の表現で思いっきり失恋曲を歌い上げるのも見てみたい。

    最後の方はただの願望になってしまったが、要は「ラフラフには恋愛曲も歌いこなせる表現力の引き出しの多いアイドルになってもらいたい」ということである。グループコンセプトを大切にしながらでも、表現できる幅はいくらでもあると思う。「消えたくなるほど君が好きだ」は、その振り幅を広げる端緒になる曲になるかもしれない。


    「消えたくなるほど君が好きだ」も収録された1stアルバム「わたしファンファーレ」。
    これからラフラフを知りたい人には過去楽曲も含め全23曲(2枚組)収録のTYPE-Bがおすすめです。


     
     
    約13年現場から離れていた、古(いにしえ)のドルヲタ。地方在住で在宅応援中心だが、2025 ラフ×ラフ 全国ライブハウスツアーで久々に現場参戦して再覚醒。いちオタクの私見なので、お手柔らかに。 Amazonアソシエイトに参加しています。

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