
短編小説 : 「古本屋」へ行こう | シロクマ文芸部
「『古本屋』へ行かない?」
「行こうね」
また、カップルの声が聞こえた。
二人はそこへ向かって歩き出したようだ。
いつもの女、違う男。
指の一本さえ動かすのが億劫だ。動かせるのは思考だけ。また、一人の男が夢魔の犠牲になるのだろう。
俺の隣では、サラリーマン風の男が地面に臥している。俺もああなるのかと思って、それはそれでいいと思ってしまう。ダメだ、しっかりしろ、俺。
老夫婦が「今度は『古本屋』だ」と叫んだ。OLの二人は「『古本屋』DID AGAIN」と笑っている。切り裂きジャックかよ。
いつもの台詞が男をしゃべる。
「楽しみだね、noteのお題企画かなにかかな?」
かつての俺のセリフが聞こえた。聞き覚えのない声だった。だから俺たち「COLTS」だけを狙ったものではないと分かる。だが、無差別にあらゆる男性を襲っているとも考えにくい。大丈夫か? 俺は思考できているか?
「ナイトメア」の仕業という線はないのか?
いや、「北のフィリー」かもしれない。
夢魔、しかも悪意のない、自分が被害者だと信じ込んでいるタイプ。こんな厄介なものを仕掛けられる組織ということだろう? 内からどうしようもないのだから、組織を叩くしか方法はない。夢の世界で彼女に抵抗する手段がないのだから。
いや、ある、思いついた
noteのお題企画そのものをつぶす
いったい、どうやって。
***
僕たちは「古本屋」に着いたのだ。
(おい、聞こえるか)
どこか郷愁を誘うドアを開けると、外より少しだけあたたかい空気が流れ込んできた。 凛々しい女性スタッフが気持ちのいい笑顔で迎えてくれた。
(おまえは眠っている)
「オステリア『古本屋』へようこそ! 本日のランチは、既視感アワビと再生バジルのペペロンチーノです」
「それ、二つください」
(待て、注文するな、食べるな。おまえは夢魔に襲われているんだ! 眠りの継続を、夢を欲望するな!)
レストラン『古本屋』のペペロンチーノは、ほっぺたが落ちるほど美味しかった。僕の心が誰かに読まれている気さえする。
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