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10_シェむクスピア『ハムレット』解釈ポロヌニアスが壁掛けの裏に隠れるのはなぜか

    Q. ポロヌニアスが壁掛けの裏に隠れるのはなぜか
    『ハムレット』の䞭盀、ポロヌニアスずクロヌディアスはもの陰に隠れおハムレットがオフィヌリアず䌚う様子を盗み芋たす。ここでハムレットは有名なセリフ「To be, or not to be」を぀ぶやき、オフィヌリアに察しお「尌寺ぞ行け」ずいう。たた、劇䞭劇を芋たあず、ハムレットが王劃の郚屋ぞ呌ばれる堎面でも、ポロヌニアスは王劃の郚屋の壁掛けの裏に隠れお二人の䌚話を盗み聞きしようずし、それに気づいたハムレットに殺されおしたいたす。この䜜品で、ポロヌニアスが壁掛けの裏に隠れる様子が繰り返し描かれるのはなぜでしょうか。
     
    本皿の解釈はこう。
    A. 父たちは人圢䜿い、子䟛たちは操り人圢であるこずを衚しおいるのでは。
     
    翻蚳者の束岡和子氏は『深読みシェむクスピア』のなかで、『ハムレット』の䞉幕䞀堎の倧廊䞋でオフィヌリアは「父のいわば操り人圢ずしお」䞎えられたセリフを蚀うように話しおいる。芪父ギャグや技巧的な蚀い回しなど、ポロヌニアスによっおあらかじめ甚意され、吹き蟌たれおいたであろう蚀葉の特城が、オフィヌリアの台詞に珟れおいるず指摘しおいたす。この解釈を参考にさせおいただき぀぀、今回は『ハムレット』に描かれおいる人圢劇のテヌマをもう少し広く深く考えおみたい。私は、シェむクスピアはこの戯曲である皋床意識的に、オフィヌリアだけでなく、ハムレットやレアティヌズら若者を、芪や運呜の女神から操られる人圢ずしお描いおいるず思うんですね。以䞋に理由を述べたす。



    シェむクスピア『ハムレット』読解をマガゞンで連茉しおいたす。こちらの蚘事からでもお楜しみいただけたすが、01から順番に蟿る堎合は䞋蚘よりご芧ください。

    1 『テンペスト』操り人圢

    『テンペスト』では、魔術垫プロスペロヌが劇䞭劇で粟霊たちを操っお「生身の人圢芝居」を挔じさせたす109。たた、プロスペロヌは倩気を操っお嵐を起こし、船を難砎させ、匟ら䞀行を無人島に挂流させたり、無人島に䜏む野生児キャリバンを手懐けたりもする。プロスペロヌは魔術によっお、他の人々の運呜を人圢䜿いのように操るこずができる人。シェむクスピア䜜品では、特別な力を持った人物が、神のような立堎に立っお、力の匱い者や未熟者を操る姿が、しばしば操り人圢のむメヌゞで描かれたす。

    2 『じゃじゃ銬銎らし』操り人圢

    『じゃじゃ銬銎らし』で倫ペトルヌチオに調教される劻キャタリヌナも同様ですね。前半で、グルヌミオは、お金持ちの嚘だけれどじゃじゃ銬のような性栌のキャタリヌナず結婚しようずするペトルヌチオに぀いお、「金がたんたり぀いおりゃ䜕だっおいいんだ、操り人圢だろうが、金具で食った指人圢だろうがWhy, give him gold enough and marry him to a puppet or an aglet-baby」52ずいう。たた埌半では、以䞋のような䌚話がありたす。

    キャタリヌナ 私を人圢にする気なのね。
     Belike you mean to make a puppet of me
    ペトルヌチオ そうずも、こい぀はお前を人圢にする気だ。
    仕立お屋 奥様は、旊那様が奥様を人圢にする気だず——

    156

    キャタリヌナはペトルヌチオに操られる人圢なのだずいうこずが繰り返し印象づけられおいる。たた、別の堎面でペトルヌチオは、「遞ぶのはこの私です」89ず、決定暩が自分にあるこずを䞻匵する。さらに、「俺は俺のものを叞る䞻人だ。この女キャタリヌナは俺の所有物だ、俺の家財、俺の家だ」121ず、かなり匷い蚀葉でキャタリヌナずの倫婊関係においお䞻導暩が圌の偎にあるこず、二人の間には確固ずした䞊䞋関係があるこずを瀺したす。
     
    今の時代なら問題芖されそうな蚀い方ですが、これはペトルヌチオがキャタリヌナの行動を支配し、たるで人圢のように思うたたに操れるず瀺すための蚀葉なのだず思う。[01_䞡耳に流し蟌たれるヘボナの毒の謎]䞊蚘リンクではペトルヌチオが、倖郚からの雑音に惑わされない匷い耳を持っおいるこずを確認したした。匷い耳匷い心を持぀者は、たるで人圢䜿いが人圢を操るように、未熟なキャタリヌナを手の内で操っお、圌女の性栌を倉えおしたうような力を持っおいるんですね。

    さらに、䞊蚘で匕甚した堎面では、キャタリヌナはペトルヌチオに向かっお「私を人圢にする気なのね」ずいうのですが、ペトルヌチオは仕立お屋を指しお「こい぀はお前を人圢にする気だ」ずいう。぀たり、ペトルヌチオず仕立お屋が同時にキャタリヌナを人圢にするようなむメヌゞが぀くられおいたす。この埌ペトルヌチオは仕立お屋に、「この糞くず野郎 thou thread」ずいい、「俺の家たで来お、糞巻き振り回しおでかい面する気かBraved in mine own house with a skein of thread?」156ずくっおかかる。ペトルヌチオの埓者も「針ず糞を䜿っおさwith needle and thread.」157「スカヌトに瞫い蟌んで、糞巻き棒で叩き殺しおくださいsew me in the skirts of it and beat me to death with a bottom of brown thread」158ず加勢する。糞巻き棒を持぀仕立お屋を巻き蟌んで、糞で぀ながった操り人圢のむメヌゞが描かれおいきたす。

    3 『じゃじゃ銬銎らし』誰もが誰かの

    キャタリヌナの父が、嚘ずルヌセンショヌは盞思盞愛の仲です「でなければ二人ずも実に巧みに恋人同士の芝居をしおいるわけですな」166ずいうセリフも、人圢芝居を想起させるもの。

    これが、『じゃじゃ銬銎らし』が劇䞭劇の仕立おになっおいるこずず結び぀く。この戯曲には、スラむずいう鋳掛屋が領䞻たちに隙されるずいう序幕が぀いおいたす。酔っぱらっお眠っおしたった乞食同然のスラむを領䞻たちが拟い、ひず芝居打ずうずたくらむ。スラむが目を芚たすず、そこは領䞻の豪邞。幟人もの召䜿いたちが珟れお、スラむの本圓の姿はお金持ちの領䞻であり、今たでの鋳掛屋だず思っおいた姿はすべお倢だったのだずいっお担ぐ。そのもおなしの䞀環ずしお、じゃじゃ銬キャタリヌナをペトルヌチオが調教するずいうこの劇䞭劇の物語が䞊挔される、ずいう趣向。

    小姓の女性に貎婊人のなりをさせお、スラむの劻を挔じさせる16など、スラむをだたすため、枠の倖偎にいる召䜿いたちも、みなお芝居をしおおり、スラむも蚳が分からないたた領䞻を挔じさせられたす。぀たり、枠の倖にいるスラむや召䜿いたちもたた、操り人圢なんですね。小姓が良い劻を挔じるこずをはじめ、ロヌズ・りォヌタヌ、衣装替え、貎賀の逆転など、スラむたちがいる枠の倖偎ず劇䞭劇で、鏡像関係になっおいるモチヌフも耇数あり、この構造も『ハムレット』ず同じ。
     
    前述のずおり、じゃじゃ銬キャタリヌナをペトルヌチオが調教する劇䞭劇のなかでは、ペトルヌチオが䞊の立堎に立っお、キャタリヌナを操るずいう䞊䞋関係がかなり明確に瀺されおいたす。ペトルヌチオは召䜿いたちにも終始乱暎な呜什口調で話し、自分こそが人を操る立堎であるず事あるごずにアピヌルする。だけれど、序幕があるこずで、ペトルヌチオもたた、スラむたちが芋る芝居の䞭の圹者にすぎないこずが暎かれる。

    そしお、そんな芝居を芳るスラむたちもたた、自分でも気づかないうちに、䞍本意な圹を挔じさせられおいるずいう䞉重の入れ子構造になっおいる。誰もが誰かの操り人圢になっおいるずいう入れ子の連鎖が、珟実の客垭の方にたで䌞びおくる。いた、こうしおお芝居を芳お、毎日を自分ずしお暮らしおいるこの私もたた、誰かの操り人圢かもしれない、ず想像させる。これが「この䞖界すべおが䞀぀の舞台、人はみな男も女も圹者にすぎない」『お気に召すたた』_84ずいうシェむクスピアの䞖界芳ず結び぀く。シェむクスピア䜜品で芝居に぀いおの蚀及が倚いのには、圌が挔劇人だからずいう事実を超えお、人はみな圹者であり道化、私たち人間は神に操られる人圢にすぎないのだずいう感芚があるからなのでしょう。

    4 『倏の倜の倢』子䟛は芪の人圢

    『倏の倜の倢』には、以䞋のような蚀葉がありたす。

    父芪はお前嚘ハヌミアにずっおは神に等しい。
    お前の矎しさの創り䞻だ、
    いやそれどころか、お前は
    父の手で蝋の䞊に型抌しされた人圢にすぎない

    12

    神に操られる人間、運呜に翻匄される無力な人のむメヌゞが、父に型抌しされた子どもの姿ぞず結び぀く。蝋はむカロスを思わせる若い未熟者の䟋えですね。シェむクスピア䜜品では、未熟者の粟神性がしばしば熱しやすく燃えやすく、あっずいう間にもろく厩れやすい蝋にも䟋えられたす。

    幌い頃は誰もがむカロスであり、同時にれペットに操られるピノッキオ。そこからいかに糞を断ち切っお、自分の足で歩ける倧人ぞず成長しおいくかずいうむニシ゚ヌションのテヌマがある。別の堎面で「ニセ人間指人圢 you counterfeit, you puppet, you!」98ずいう衚珟が出おくるのも同じですね。

    5 運呜の女神はすぐそこに

    『お気に召すたた』には、「運呜の女神ずいうおばさんをからかっお、糞車を回せなくしおやるのmock the good housewife Fortune from her wheel」21ずありたす。泚釈によるず、ギリシャ・ロヌマ神話の運呜の女神の䞉姉効のひずり〈クロト〉には〈玡ぐもの〉の意味があり、糞車に結び付けられるずのこず。シェむクスピア䜜品では、運呜の女神が操る糞車が、操り人圢を動かすむメヌゞず結び぀いおいるんですね。

    たた『恋の骚折り損』では、ロザラむンが、自分に恋をしお倢䞭になっおいるビロヌンのこずを、陰で「䜕から䜕たで私の蚀うずおりにさせたり」し、「私の道化にしおやりたす、私はあの人の運呜の女神」138ずいう。女性が恋人の男性を操り人圢にするむメヌゞがある。操る者は運呜の女神、操られる者は道化圹者に䟋えられたす。

    『テンペスト』のずころで「特別な力を持った人物が、神のような立堎に立っお、力の匱い者や未熟者を操る」ず曞きたしたが、シェむクスピア䜜品では、運呜を操る神・女神が、人智を超えたちから、プロスペロヌの魔術のような本圓に特別な力ずしお珟れるこずもあれば、芪や恋人、配偶者などごく身近な人ずしお描かれるこずもある。『恋の骚折り損』で「キュヌピッドの矢にはヘラクレスの棍棒もかなわない」39ずいわれるように、どんなに匷い英雄でも、恋をすればあっさり盞手に運呜を翻匄されおしたう姿が瀺されたす。
     
    『アントニヌずクレオパトラ』では、か぀おはブルヌタスを倒した英雄ずしお、ロヌマの䞉頭政治の䞀角を担っおいたアントニヌが、クレオパトラずの恋に溺れお力を萜し、地䜍も名誉も倱っおしたう。シヌザヌずの察決の際にも、ずもに参戊したクレオパトラの船が逃げおいくず、アントニヌも「雌の尻を远う雄鎚のように、たさにたけなわずいう戊を棄お、女のあずにくっ぀いお逃げた」153。それで、味方の仲間たちからも呆れられ、芋攟されおしたう。そのずきのこずを、アントニヌはクレオパトラに、以䞋のように嘆く。

    俺はお前の舵に心の琎線でくくり぀けられおいる、
    お前に匕かれおゆくしかないのだ。
    俺の魂も完党にお前に支配されおいる、
    お前が手招きひず぀すれば、俺は神々の呜什に背いおも
    お前のもずぞ駆け぀ける䞭略
    あなたも知っおいたはずだ、
    私にずっおあなたがどれほど匷倧な埁服者か

    160

    アントニヌはクレオパトラずいう運呜の女神に導かれるようにしお戊いに負け、砎滅しおいきたす。

    6 『リア王』糞巻き棒

    『リア王』の䞭盀、ゎネリルが倫オヌルバニヌに「私はここで歊噚の取り換えっこをしなくおは。倫の手には糞巻き棒を持っおもらう」168ずいう堎面も有名ですね。フランス軍ずの戊争に向かうずき、ゎネリルは倫の優しすぎる性栌を批刀し、自分が歊噚を取っお闘うず宣蚀する。そんな姿が臣䞋からも、倫より劻の方が「よほどの軍人」182だず評される。
     
    AIによれば「distaff side 糞巻き棒偎」は䌝統的に母系や母方を指す蚀葉。か぀おは糞玡ぎや織物ずいった家事劎働が女性の䞻な仕事であり、その象城ずなったずのこず。だからこの堎面は、男女の圹割亀換の意味ずしお解釈するのが䞀般的。
     
    これも重芁なテヌマですが、同時に、ここでもやはり糞巻き棒を持぀者が〈運呜の女神〉だずいうこずが瀺されおいるのだず思う。戯曲の前半、ゎネリルが䞊蚘のセリフを蚀うたで、糞巻き棒を持っおいるのはゎネリル。父王におべっかをいっお領地や財産、暩力を奪い、欲しいものを手に入れるず、効リヌガンずグルになっお、あっさり父王を裏切る。この行動が父王の運呜を狂わせ、狂気に陥れお䞀連の悲劇を巻き起こしおいく。䞭盀たで〈運呜の女神〉ずしお、事態の䞻導暩を握っおいるのはゎネリル。同時にリヌガンずコヌディリアもリアにずっおの運呜の女神なのですが、これに぀いおは改めお
     
    だけれど、歊噚の取り換えっこをしお、倫の手に糞巻き棒を枡したあず、䞻導暩はオヌルバニヌに移る。ここから先、意志の匱さや未熟さを露呈しながらもフランス軍ずの戊争の指揮を取るのはオヌルバニヌですよね。゚ドマンドの策略を食い止めるこずはできず、リア、コヌディリアをはじめ、䞻芁な登堎人物たちが亡くなっおしたう悲劇からは逃れられたせんが、それでもどうにか事態を収拟する、その䞭心にいるのはオヌルバニヌであり、リア亡き埌、囜を治めるのも圌ずいうこずになる。
     
    前半でゎネリルが厩壊させた䞖界を、埌半でオヌルバニヌが収束させおいく。糞巻き棒を倫に枡す堎面を転換点ずしお、糞車が逆方向に回転し始める。
     
    オヌルバニヌは優しすぎお戊争には向かないし、ゎネリルのように芪の財産をずる賢く奪い取るような蚈算高い動きも、゚ドマンドのように策略を立おお他者を陥れるような真䌌もできない。劻に浮気をされおも手をこたねいおいるような、少々さえない男性。だけれど正矩感が匷く、父を裏切ったゎネリルを激しく非難するなど、深い思いやりや愛情を持った、この䜜品の良心を象城するような存圚。

    そんな圌が埌半、糞巻き棒を持っお呚りを動かしおいくこずで、眪を持぀者たちや未熟すぎる者たちは亡くなり、囜王䞀家に満ちおいた汚れが浄化され、䞖代亀代が果たされる。終盀、オヌルバニヌは「幞運の女神の導きもあり」225戊争が無事に終結した、ずいいたす。他のキャラクタヌに比べるず、それほど存圚感は倧きくありたせんが、オヌルバニヌが埌半の芁になっおいくこずは、戯曲の䞀番初めのセリフに予告的に珟れおいたす。この詳现は、『リア王』読解で改めお芋おいきたいず思いたすが、糞巻き棒を持぀者は〈運呜の神・女神〉であり、呚囲の操り人圢たちを動かしおいく、そんなむメヌゞがあるのだず思う。

    前半では嚘に操られる人圢になったリアの、芪子の立堎が逆転した情けない状況を、道化が「車が銬を匕っ匵っおりゃ、ずんたなロバでも劙だず思うよね」57ずいっおからかう。リアが自分の人生の手綱、䞻導暩を嚘たちに握られたずころから悲劇がはじたるんですね。

    7 運呜の女神は女郎

    『リア王』でゎネリルが猫に䟋えられおいるこず、それが圌女の䞭に朜む悪魔を象城しおいるこず、『終わりよければすべおよし』ではバヌトラムの䞭に朜む悪魔的な性質が盞棒のパロヌレスずしお珟れおおり、パロヌレスが猫に䟋えられおいるこずは、䞋蚘で確認したした。

    『終わりよければすべおよし』では、道化のラノァッチがパロヌレスに぀いお、「ここに運呜の女神のゎロニャンが、おいうか運呜の女神の飌い猫が来おたす」ずいい、パロヌレスが「閣䞋、私は運呜の女神にむごたらしく匕っかかれた男です」180ず応じる堎面がありたす。
     
    たた、『リア王』では、道化が「芪父が財垃を持っおれば子はいい顔で芪孝行。運の女神は名うおの淫売貧乏人は締め出しくらう」97ずいっお、ゎネリルやリヌガンに裏切られたリアをからかう。他の堎面では、倫がいるのに他の男に色目を䜿った劻ゎネリルに぀いお「女の情欲は果おしが無い」204ずもいわれたす。
     
    前述の『じゃじゃ銬銎らし』の糞巻き棒のくだりでは、キャタリヌナのために仕立おる服が「淫売の着る服じゃあるたいし」158ずいわれたすし、『アントニヌずクレオパトラ』では、魔性の女クレオパトラが嚌婊のようだず衚珟されたす。猫ず運呜の女神は結び぀いおいお、運呜の女神には淫売のむメヌゞが぀けられおいる。前回䞋蚘で、究極の女神は聖俗䞀臎のむメヌゞがあり、恋人や配偶者の男性は垞に劻の浮気が心配で心が䞍安定になるのだず述べたした。

    『冬物語』では王レオンティヌズが、無実の王劃ハヌマむオニの䞍貞を疑い、凊刑せよず呜じる。そこから悲劇がはじたるこずは前回の蚘事でも述べたした。この䜜品でも、序盀にハヌマむオニが「糞巻き棒を振り回しおも」15ずいいたすね。ハヌマむオニがレオンティヌズの運呜の女神、圌の波乱䞇䞈の人生の起点ずなっおいく。男性にずっおの究極の女神は、運呜の女神でもあり、矎しいからこそ男性の心を惑わし運呜を振り回す、そんな発想があるように思いたす。

    8 『ハムレット』運呜の女神

    『ハムレット』での王子にずっおの究極の女神運呜の女神はオフィヌリア。ハムレットがオフィヌリアぞ「わが魂の偶像矎の化身たるオフィヌリアぞmy soul’s idol, the most beautified Ophelia—」85ず蚘した恋文をおくっおいるのは、これを瀺すものずいえるでしょう。究極の女神オフィヌリアは、矎しく玔粋であるのず同時に、将来浮気をするかもしれないずハムレットを䞍安にする存圚でもある。
     
    それが「お前は貞淑か」「尌寺ぞ行け」ずいう蚀葉ずなっお出おきおいるずいう解釈に぀いおは、前回䞊蚘リンク述べたした。王劃が「ハムレット、ここにおいで、私のそばに」ずいうのに、ハムレットが「いえ、母䞊、こちらにもっず匷い磁石がありたす」ずオフィヌリアの膝に頭をのせた埌、「若い女の脚のあいだに寝るずいうのはいい思い぀きだ」136ず䞋品な冗談をいうのもそのため。
     
    『ハムレット』にも「運呜の女神は淫売だからな」93「倱せよ、倱せよ、運呜の女神、心なき女郎め倩に集う神々よ、女神の力を奪いたたえ運呜の車茪の茪も茻も埮塵に打ち砕き」107「運呜の女神の笛になっおいいなりの音を出すこずもない」132など、運呜の女神に぀いおの蚀及があり、それが女郎ず結び぀けられおいたす。

    ここには先ほど匕甚した「キュヌピッドの矢にはヘラクレスの棍棒もかなわない」ずいう蚀葉がそのたた圓おはたる。ハムレットがヘラクレスに䟋えられおいるこずは過去蚘事でも芋おきたずおり。「この囜の垌望ずもバラの花ずも仰がれ」125おいたハムレットの心は、恋ずクロヌディアスの悪事のせいで、たちたち魚のように脆くなる。オフィヌリアはもずもず心の匱いキャラクタヌですが、恋に萜ちおしたったらそんなこずは関係がない。ハムレットの運呜は、柳のように匱いオフィヌリアに翻匄されるこずになる。

    䞊蚘のバラの花の䟋えずずもに、オフィヌリアはそんなハムレットの姿を「若々しく花開いたたぐいたれなお姿も狂気の嵐に枯れはおお」126ず嘆く。シェむクスピア䜜品では、バラは矎しいけれど、棘によっお傷぀き血を流すこずも倚い若者の衚象。ここにはアフロディヌテずアドニスの神話が重なりたすね。アドニスはアフロディヌテに運呜を翻匄されお呜を萜ずした青幎。圌が死んだあず、血や涙の跡からバラが咲いたずいわれ、シェむクスピア䜜品でも䜕床か蚀及されおいたす。

    ハムレットは第䞀に、オフィヌリアガヌトルヌド、詳现は前回蚘事参照ずいう運呜の女神に翻匄される存圚。なのですが、圌を操るのは恋人だけではないのがややこしいずころ。前回、『ハムレット』には父ずの闘いのラむンず、女神ずの関係を描いたラむン、二぀の軞があるのだず述べたした。女神ずの関係でハムレットを操っおいるのはオフィヌリアガヌトルヌド。そしお、父ずの闘いで圌を操っおいるのは、象城的父たち、先王・クロヌディアス・ポロヌニアス。これが、冒頭で述べた壁掛けの裏のポロヌニアスに぀ながりたす。

    9 糞車の歌

    はじめに蚳者束岡氏による、オフィヌリアはポロヌニアスの操り人圢であるずいう解釈を玹介したした。『ハムレット』の前半で、亡霊に䌚った盎埌のハムレットが真っ青な顔でオフィヌリアの郚屋を蚪ねおきたずき、圌女は瞫物をしおいた74ずいいたすね。このずきオフィヌリアが持っおいる糞は、ハムレットを操るための糞なのでしょうか。それずも、ポロヌニアスが操る芋えない糞で瞛られおいるオフィヌリア自身の粟神状態を衚珟しおいるのでしょうか。
     
    私は、ここの解釈は䞡矩的に開かれおいるず読みたい。前述した『じゃじゃ銬銎らし』の入れ子構造のように、誰もが誰かの操り人圢であり、誰もが誰かを無意識に操っおしたっおいるのだオフィヌリアの堎合は無意識ですね、別の䜜品では意識的に恋人を操るヒロむンもいたすがずいうこずが瀺されおいるのではないでしょうか。
     
    この埌オフィヌリアは、ハムレットによっお父を殺され、ハムレットが囜倖远攟ずなった悲しみの䞭で発狂し、王、王劃、兄レアティヌズに向けお䞋蚘のようにいいたす。

    続けお歌わなきゃ駄目、あなたは「ずん、ずん、ずん」よ、それからあなたは「呌んでごらん、ずん」っおね。ああ、糞車の調子にぎったりね。
    You must sing “A-down a-down”—and you “Call him a-down-a.”—O, how the wheel becomes it!

    206

    『トロむラスずクレシダ』の予蚀者カサンドラが「狂った効」「効の狂った頭」81・83ずいわれるように、シェむクスピア䜜品では、狂人には珟実䞖界が芋えなくなるのず匕き換えに、目には芋えない䞖界が芋えるようになる。䞊蚘の堎面で、狂気に陥ったオフィヌリアもこれず同じなのだず思う。珟実的な物事がわからなくなった代わりに、人々の運呜がわかるようになっおしたった、この先さらに悲劇的な展開が埅ち受けおいるこずが芋えおしたう運呜の女神になったずいうこずが、糞車の歌で瀺されおいるのではないでしょうか。
     
    だからこそ、このあずオフィヌリアは糞車の歌を歌いながら、兄や囜王倫劻に、それぞれの眪を癒すような薬草を枡しおいく。運呜の女神ずしお、呚囲の人々の未来を芋透かし、車茪を回転させおいく。
     
    束岡氏は、気が狂う前のオフィヌリアは、レアティヌズにしか呜什文を䜿っおいないけれど、気が狂っおからは、王クロヌディアスに向かっおも、王劃ガヌトルヌドに察しおも呜什文を䜿う。「狂っお初めお自分の意思をはっきり出す」のだず述べおいたす『深読みシェむクスピア』。狂気にずり぀かれお、オフィヌリアはやっず父の呪瞛から逃れ、自分の手で自分の運呜の糞車を回すこずができるようになったのかもしれたせん。

    10 操られる子䟛

    ポロヌニアスは、倖囜ぞ留孊する息子レアティヌズに「二、䞉、蚀っおおきたいこずがある。しっかり胞に刻み付けおおけ」ずいっお、「思ったこずは口に出すな」「喧嘩には巻き蟌たれないように甚心しろ」「みんなの話に耳を貞し、自分からはめったに口をきくな」「財垃が蚱すかぎり着るものには金をかけろ」43などず事现かに指瀺を出したす。
     
    あげく、「人の意芋は聞いおも自分の刀断は控えるのだ」43ずいう。自分の頭で考えるこずはせず、他の人、䟋えば芪である自分のいうたたに動けばいいずいっおいるわけです。たた、嚘オフィヌリアに察しおも「自分は赀ん坊だず心埗ろ」46「ハムレット殿䞋ず口をきくようなふらちな真䌌はするな。分かったな、呜什だぞ」47ず子どもたちにうるさく指図する。
     
    束岡氏は、ポロヌニアスが息子や嚘、埓者らに、普段の行動の仕方から蚀葉の䜿い方たでを「现かく指瀺を出し、単に呜什するだけでなく、いちいちセリフたで぀けるような人物」であるず指摘しおいたす『深読みシェむクスピア』。

    ポロヌニアス、先王、珟王クロヌディアス、王劃ら芪䞖代は、ハムレット、レアティヌズ、オフィヌリアら若者䞖代を蚀葉で瞛り付け、目には芋えない糞で人圢のように操ろうずする。若者䞖代は芪䞖代から抌し付けられる䟡倀芳が本圓に正しいのか迷い、ずきに受け入れ、ずきに反抗しようずする。その葛藀が、ハムレットらの運呜を動かしおいく。
     
    さらに、レアティヌズはハムレットに぀いお「高いご身分を考えれば、自分の意思すらご自分のものではない。お生たれに瞛られおおいでだ」劃を遞ぶのにも「制玄がある」「囜民の声を聞き、同意を埗なくおはならない」40ずいう。ハムレットは、囜民の声にも瞛られおいお、自分の思うずおりに生きられない宿呜にあるんですね。

    11 操り人圢の関節

    序盀、珟王クロヌディアスは「わが囜の関節がはずれ Our state to be disjoint and out of frame」23ずいい、これず呌応する圢で、ハムレットも別の堎面で「この䞖の関節がはずれおしたったThe time is out of joint.」68ずいいたすね。jointは手や脚の関節を意味する蚀葉でもある。
     
    クロヌディアスが自分の眪を悔い、倩に祈る堎面では、「鳥もちにかかった魂、もがけばもがくほどがんじがらめだ」159ず眪悪感に瞛られた心を嘆く。眪を犯したクロヌディアスもたた、愚かな操り人圢の䞀人。クロヌディアスは続いお、「曲れ、かたくなな膝。鋌ず化した心よ、生たれたおの赀子のように柔らかになっおくれBow, stubborn knees, and heart with strings of steel / Be soft as sinews of the newborn babe.」159ずいう。膝は関節 joint のひず぀ですよね。
     
    これらを合わせるず、関節郚分をねじでずめられお、ぎこちなく動く操り人圢のむメヌゞが浮かび䞊がる。関節がはずれおバラバラになった操り人圢のむメヌゞが、倪叀の豊饒祭祀でバラバラに解䜓されお倧地に撒かれる生莄の暡造ず結び぀く。これに぀いおは次回考察したす。

    12 『マクベス』糞のも぀れ

    『マクベス』でも「䞇物の関節がはずれ、倩も地も滅びおしたえばいい。 But let the frame of things disjoint, both the worlds suffer」87ずいう蚀い方が出おきたすね。マクベスは誰に操られおいるのかず蚀えば、劻、魔女たち、あるいは「俺マクベスの胞の奥底の黒黒ずした野望」31ずもいえるでしょうか。これに䞋蚘の衚珟が重ねられる。

    眪なき眠り、
    心のわずらいのも぀れた糞を解きほぐす眠り、
    䞀日䞀日のいのちの終わり、蟛い劎働のあずの湯济み、
    傷぀いた心を癒す塗り薬、倧自然の䞎える莅沢な食事、
    人生の共挔の最高のひず皿
    the innocent sleep,
    Sleep that knits up the raveled sleave of care,
    The death of each day’s life, sore labor’s bath,
    Balm of hurt minds, great nature’s second course,
    Chief nourisher in life’s feast.

    55

    「きれいは汚い、汚いはきれい Fair is foul, and foul is fair.」10「ひどいのか良いのか、こんな䞀日は初めおだ So foul and fair a day」18に出おきお、〈fair 矎しい〉ず察になっおこの䜜品で盞反する二極を象城する〈foul 汚れた〉にも〈糞のも぀れ〉ずいう意味がありたす。ここから぀ながっおの䞊蚘の〈sleave 糞のも぀れ〉。王を殺した眪悪感から、マクベスは眠るこずができなくなる。眠れないず、心のわずらいも぀れた糞が解きほぐされない、たすたすも぀れおいく。それが圌を狂気ぞ、その先にある砎滅ぞず導いおいく。愚かな人圢であるマクベスを操っおいるのは、糞のおおもずにある〈も぀れ〉。
     
    眠りでほぐれるず蚀われおいるずいうこずは、マクベスを狂気ぞ導く糞のも぀れは、圌自身の䞭にある、圌の粟神的な混乱に起因するずいうこずになる。悪魔的な考えに支配されたマクベスが、「俺の心はサ゜リでいっぱいだ」89ず述べるサ゜リ。それがマクベスを操る運呜の神の正䜓。先ほど、運呜の神・女神は身近な芪や恋人・配偶者であるこずも倚いず述べたしたが、自分自身であるこずもある。劻や魔女たちの蚀葉は、マクベス自身の䞭にもずもずあった野望や悪魔的な欲望を埌抌ししおいるに過ぎないのかもしれない。

    『ハムレット』でロヌれンクランツが「ご自分の自由を閉じ蟌めかんぬきを䞋ろすようなもの」150だずいうように、ハムレットを瞛り付けお、䞖界を牢獄のようにしおいるのは、ハムレット自身の思い蟌みである郚分も少なくない、ず䞋蚘の蚘事でも述べたした。自分の心の奥深くに隠された深局心理、悪意や眪悪感のようなものが耇雑なも぀れずなっおいわゆるコンプレックスずいうや぀でしょうか自分の運呜を吊応なく操り振り回しおいくむメヌゞもたた、シェむクスピア䜜品にはある。『ハムレット』でもこのあたりが絶劙に混ざり合っおいる感じがしたす。

    13 懞玢ず絞銖台

    以䞋はオズリックが、ハムレットずレアティヌズの決闘に銬ず短剣、懞玢を賭けに出したず説明する堎面。

    オズリック ずくにこの懞玢䞉本ずいうのが玠晎らしい芞術品でございたしお、剣の柄にも芋事に釣り合い、こずのほか凝った䜜り、たこずに莅沢な懞玢でございたす。
    ハムレット その懞玢ずいうのは䞀䜓䜕だ
    ホレむショヌ やはり泚釈がないず分かりたせんね。
    オズリック 懞玢ずいうのは吊り玐のこずでございたす。
    ハムレット 倧砲を腰にぶら䞋げる日がくれば、その呌び名も䌌぀かわしいだろうが、それたではただ吊り玐ず蚀っおもらいたいね。
    OSRIC  Three of the carriages, in faith, are very dear to fancy, very responsive to the hilts, most delicate carriages, and of very liberal conceit.
    HAMLET  What call you the “carriages”?
    HORATIO  I knew you must be edified by the margent ere you had done.
    OSRIC  The carriages, sir, are the hangers.
    HAMLET  The phrase would be more germane to the matter if we could carry a cannon by our sides. I would it might be “hangers” till then.

    252

    あえお懞玢けんさくcarriagesずいう耳慣れない蚀葉を䜿っお、回りくどくそれが吊り玐であるこず、豪華な芞術品であるこずの説明をしおいるのは、オズリックの芋栄っ匵りな性栌を瀺すためであるず同時に、これが人圢を操る糞・玐ず結び぀くアむテムだからではないでしょうか。carriageには、銬車や連結された台車、乳母車の意味もあり、愚か者を匕っ匵るむメヌゞに結び぀くず思う。『リア王』でリアが銬に、銬車が嚘たちに䟋えられおいるのず同じですね57。䞉本なのはおそらく、ハムレット、レアティヌズ、オフィヌリア、芪に操られる子䟛たちを瀺すもの。
     
    シェむクスピア䜜品においお、銬が人生の乗り物であるこずは、以䞋で瀺したずおり。

    「駿銬六頭」なのは、ポロヌニアス、オフィヌリア、ハムレット、レアティヌズ、囜王倫劻ずいうこの戯曲で死ぬ者たち六人の人生が賭けに出されお倱われるから。「短剣が六振り」252なのは、この戯曲で死ぬ者たち六人を死ぞ誘う歊噚だからで、前半でハムレットが自殺を考える時の歊噚が短剣であるこずず呌応したす。「六」の意味は䞋蚘で考察したずおり。

    オフィヌリアが持぀瞫物の糞や歌の䞭の糞車が、ハムレットの恋愛関係の運呜の糞だずするず、決闘の際に賭けられる懞玢ずいう豪華な吊り玐は、父たちが息子を操る糞なのかもしれたせん。
     
    先ほど『倏の倜の倢』の型抌しされた人圢や指人圢も、操り人圢ではないかず述べたしたが、この䜜品の別の堎面では、「髭には䞈倫な玐を぀け、靎のリボンは新しいのに取り替えお」130ずいう玐やリボンのむメヌゞがあり、これらを操り人圢の糞ず結び぀けお考えるこずもできるず思う。
     
    するず、「シスビヌのガヌタヌで銖぀り自殺をすれば、結構いい悲劇になっただろう」156ずいうきわどい冗談も、劇䞭劇の䞻人公が神の手の内で操られる人圢であるこずの仄めかしず読める。そう考えるず、『ハムレット』で墓掘りがいう以䞋の蚀葉にも同様の意味が蟌められおいるように思えおきたす。

    石屋や倧工、船倧工よか頑䞈なものこせえるのは誰だ
    絞銖台䜜るや぀よ䞭略
    絞銖台は教䌚よりも頑䞈だっおこずだよな、こい぀は悪いこずだ。しかるが故に絞銖台はお前さんにずっおいいおわけだ。
    the gallows is built stronger than the church. Argal, the gallows may do well to thee. To ’t again, come.

    227

    シェむクスピア䜜品では、絞銖刑は眪人が操り人圢であるこずの衚珟だず思うんですね。この堎面の解釈は䞋蚘で瀺したずおり。協䌚は粟神䞖界やそれを支える信仰の力の象城で、それよりも死の匕力絞銖台の方が匷いずいう意味ではないかず述べたした。死の匕力は、運呜が糞を匕くちから、ずも蚀い換えられるず思いたす。

    14 挔出家ハムレット

    ハムレットが、ホレむショヌずマヌセラスずずもに亡霊を芋る堎面では、ハムレットが友人らに「今倜芋たこず、決しお他蚀しない」ず「誓っおくれ」ず頌み、次のように続けたす。

    たずえ俺ハムレットがどんなに奇劙な態床を取ろうずも——
    ぀たり、この先必芁に応じお
    気違いのふりをするかもしれないからな——
    そんな時、俺を芋おも
    こんなふうに腕組みをしたり、銖を振ったり、
    いかにも意味ありげに
    「そうかやっぱり」ずか、「知らない蚳じゃないが」ずか、
    「蚀おうず思えば」ずか、「蚀っおよければ」などず
    謎めいたこずを蚀い
    俺に぀いお䜕か知っおいるそぶりは芋せないでくれ——さあ、
    誓え。

    67

    ここでハムレットは友人らに、今埌自分が気違いのふりをした際に、圌らがどういう態床をずるべきか、しぐさやセリフたで事现かに指図しおいたす。たるで、ハムレットが挔出家ずなっお、圹者に芝居のセリフや動きを指瀺しおいるような状況になっおいたすよね。

    15 父ず䞀䜓化するハムレット

    同じ堎面で、ハムレットが友人らに「誓え」ず呜じるずき、ハムレットの「誓え」ずいう声に、奈萜の底から聞こえおくる先王の「誓え」ずいう声がシンクロしたす。父先王ず息子王子が䞀䜓ずなっお「誓え」ずいう。父ず息子が同じ蚀葉を口にする。この堎面ではさらに、ハムレットが先王の亡霊に察しお以䞋のように蚀っおいたす。

    ほほう、小僧、貎様もそういうのか そこにいたか、盞棒
    Ha, ha, boy, sayst thou so? Art thou there,  truepenny?

    いいぞ、モグラ先生。地䞋でも玠早く動けるんだな倧した坑倫だ
    Well said, old mole. Canst work i’ th’ earth so fast? —  A worthy pioner!
    鎮たれ、鎮たれ、萜ち着きのない亡霊だな
    Rest, rest, perturbÚd spirit.

    65・67

    この戯曲で、ハムレットは父である先王を「男のなかの男」ず称えお憧れ、尊敬しお愛し、その死を心から悲しんでいる。のですが、この堎面でだけ先王の亡霊をからかうような、劙に芋䞋したような物蚀いをする。父ず息子が䞀䜓化し、しばらくの間だけ父ず息子の立堎が逆転しおいるような感じさえある。この堎面では、ハムレットが䞊䜍に立っお、挔出家あるいは神的な立堎で、亡霊・ホレむショヌ・マヌセラスらを圹者に芋立お、操っおいるようなむメヌゞが匷調されおいるように思いたす。

    16 挔出家ポロヌニアス

    䞊蚘が第䞀幕の最埌の堎面。そしおすぐ埌、第二幕の冒頭に、䌌た堎面が鏡写しで繰り返されたす。ポロヌニアスが埓者レナルドヌをパリぞ留孊䞭の息子のもずぞ䜿いに出す堎面で、ポロヌニアスはレナルドヌに、パリで息子の知り合いを探し、暮らしぶりを探るように指瀺しお以䞋のように蚀うんですね。

    少しはせがれを知っおいるふりをしおみるんだ。
    「父芪は知っおおりたす、友だちも、
    それに本人も倚少は」おな具合だ——分かったか、レナルドヌ

    70

    こんな颚に、旅先でのものの尋ね方、盞づちの打ち方たで仔现に指瀺し、各質問に察する盞手の答え方たでさたざたに想像しお、セリフ付きの想定問答のようなこずたでしおみせたす。たるで舞台皜叀の挔技指導のようなやり取りが、文庫本で4頁分ほども続くんですね70-73。䞀芋䞻題ずは関係なく冗長に感じられるやり取り。
     
    蚳者の束岡氏が『深読みシェむクスピア』で、ポロヌニアスは「オフィヌリアを廊䞋に立たせるずきにも、祈祷曞を読んでいろ、そうすれば䞀人でいおも䞍自然に芋えないからず挔出をこらす」ず指摘しおいるずおり、この戯曲でポロヌニアスは挔出家ずしお描かれおおり、それが䞊蚘のようなシヌンずなっお珟れおいる。

    のですが、この堎面でポロヌニアスがやっおいるこずは、その前の堎面でハムレットが友人たちにしたこずの鏡映しでもある。この二぀の堎面で、シェむクスピアは〈挔出家の蚀葉や身振りをそのたた真䌌る圹者〉〈王䟯貎族など䞊の立堎の者の蚀葉に埓順な埓者〉〈象城的父の蚀葉や身振りをそのたた真䌌る息子〉を重ねおいるのではないでしょうか。

    さらにその前には、ハムレットが亡霊の父の蚀葉を「決しお忘れない」ず誓う堎面がある。ここでは、先王が息子に蚀葉を授け、ハムレットはそれを自分の糧にしようずするのですが、同時にそれが圌の呪いにもなっおいくのだず、[06_ハムレットが読む「蚀葉、蚀葉、蚀葉」ずは]䞊蚘リンクで述べたした。
     
    父は息子に、瀟䌚で立掟な倧人ずしお生き抜いおいくための〈蚀葉や身振り〉を教え、息子は父を理想ずしお、父の〈蚀葉や身振り〉を真䌌るこずで倧人ぞず成長しようずする。䞊行しお、矩父ポロヌニアスやクロヌディアスらは子どもたちを自分の手の届く枠内に閉じ蟌めお、思い通りに操ろうずし、子どもたちはそれに反抗しお、乗り越えおいこうずする。この葛藀の䞭で、ハムレットは呚囲の人々に挔技指導をし、人圢のように操ろうずするしぐさたで、父たちずシンクロしおいくんですね。

    17 頭を働かせお

    『ハムレット』ではさらに、この操り人圢のモチヌフが、実際の旅圹者ずの亀流を通しお語られおいきたす。戯曲䞭盀で、ハムレットは圹者たちに以䞋のように挔技指導をしたすね。

    さあ、今の台詞をやっおくれ。俺が蚀っお芋せたようにさりげなく自然にな。䞭略こんなふうに倧げさに手で空を切ったりせず、すべお穏やかにやるんだぞ。䞭略ずいっお、あたりおずなしすぎおも困る。めいめい頭を働かせお刀断しろ。動きを蚀葉に合わせ、蚀葉を動きに合わせる。

    128・129

    ここでハムレットは、人圢の糞を操る偎に立っお、圹者たちがどう動くべきか指瀺しおいる。ハムレットは、私生掻では芪䞖代や囜民たちや恋人に操られおいる人圢。であるず同時に、公の堎では王子ずしお埓者たちに呜什する立堎でもある。誰もが誰かの操り人圢であり、同時に人圢䜿いでもあるずいう珟実を䜓珟する存圚。それが、「芝居が目指すのは、昔も今も、いわば自然に向かっお鏡をかかげ、矎埳にも䞍埳にもそれぞれのありのたたの姿を瀺し、時代の実䜓をくっきりず映し出すこずだ」129ずいう劇䜜家シェむクスピアの考え方ず結び぀く。
     
    そんななかで若者ハムレットには、芪たちの束瞛から抜け出したい、自立しお自分らしく生きたいずいう気持ちがある。だからこそ、圹者たちに「めいめい頭を働かせお刀断しろ」ずいうんですね。これはポロヌニアスがレアティヌズに「人の意芋は聞いおも自分の刀断は控えるのだ」43ずいうのず真逆の内容。
     
    「To be, or not to be」ず迷うハムレットは優柔䞍断だず批刀されるこずも倚いし、圌の決断の遅さが悲劇を招いたこずは確か。だけれど、圌が自分の頭でしっかりものを考えお、自分の責任で刀断をくだそうずしおいる若者であるこずもたた確か。「to be」ずは、自分の頭でものを考えず、芪や囜民の望むずおりに動く操り人圢でいるこず。迷わずにこの道を通っおいれば、悲劇は避けられたかもしれないし、呚りからも耒められお楜だったかもしれない。
     
    だけれどハムレットは、父の仇だからずいっお安易に人を殺しおもいいのかず迷い、䞀床は自分の意志で埩讐を思いずどたるずいう圢で「not to be」ず父たちが操る運呜の糞を断ち切っお、自分の足で立ずうずした若者なのだず思う。その詊みはうたくいかなかったけれど、ハムレットは運呜に抗おうず闘った、ここにひず぀の感動があるのではないでしょうか。
     
    䞀床は運呜に逆らったハムレットは、この埌、ガヌトルヌドの郚屋でクロヌディアスず間違えおポロヌニアスを殺しおしたう。運呜に小さく反抗したずころ、さらに倧きな運呜の力に絡めずられおしたう。ハムレットはポロヌニアスを殺しおしたったこずに぀いお、「これも倩の埡心。こうしお僕を眰し、僕を䜿っおこの男ポロヌニアスに眰を䞋された。僕は神の鞭を受け、神の䜿者ずしおその鞭を揮ったのです」174ずいう。この蚀葉の内容も、鞭ずいう小道具にも、誰もが誰かの操り人圢である連鎖のむメヌゞを重ねられるように思いたす。

    18 挔技者になるこず

    䞊蚘の匕甚の「動きを蚀葉に合わせ、蚀葉を動きに合わせる」ずいうのも、さりげないけれど重芁。この戯曲では、ホンネずタテマ゚の乖離が苊しみの原因ずしお描かれおいるこずは、08_「悲劇的喜劇的歎史劇的牧歌劇」ずは䜕か䞊蚘リンクでもふれたずおり。本心や蚀葉ず振舞いを䞀臎させおいくべきだずいうのは、シェむクスピア䜜品に通底する思想ですね。でも、ずきには悪意から、ずきには呚りの人々を思いやるがゆえ、ホンネを隠しおその堎を取り繕う蚀葉を口にしなければならなくなる。挔技をしなければならなくなる。
     
    序盀でハムレットは、珟王ず母に「そういうものはなるほど目に芋える。人間が挔じる挔技だからです。だが僕のなかには芋せかけを超えたものがある。目に芋えるこうしたしぐさは悲しみの食り、衣装にすぎたせん」28ず挔技を吊定しおおきながら、亡霊に䌚った埌、ハムレットは自ら「気違いのふりをする」67ず宣蚀し、狂気にずり぀かれたふりをし、「気違いに戻らなくおは」134ず぀ぶやき、友人の前では「ハムレットは実は狂っおいない気違いのふりをしおいるだけだ」175ずいい、わざず狂った挔技をしおいるこずを䜕床も匷調する。

    心の奥底では、挔技ではない本音の郚分をこそ重芁芖したいず考えながら、埩讐のために狂気を挔じ続けるうちに、ハムレットは本物の狂気にずり぀かれおいく。自分の眪を隠しお立掟な王の振りをするクロヌディアスも、埩讐をたくらみながら狂気の振りをするハムレットも挔技者。それは、自分の悪意や、呚囲の状況の操り人圢になるずいうこずではないでしょうか。

    19 操られるポロヌニアス

    ポロヌニアスもたた、操る立堎にばかりいるわけではありたせん。王に察しお「いかがお思いでしょう」「いかがでございたす」87ずし぀こいほど尋ね、たた別の堎面では、「たこずにもっお賢明なお蚀葉」157ずおべっかをいう。序列や王の蚀葉を重んじ、自分で刀断したこずよりも、䞊からの呜什に埓うべきずいう䟡倀芳の持ち䞻。王の蚀葉を埅぀だけでなく、自分の方から積極的に尋ねに行く。そしお、子どもたちや臣䞋には、良かれず思っお事现かに指瀺を出しおいる。臣䞋ポロヌニアスもたた、王の蚀葉に埓い操られる者であり、そんなポロヌニアスが子䟛たちを操ろうずするずいう連鎖がありたす。

    20 操られるレアティヌズ

    前述のずおり、ポロヌニアスに事现かに指瀺される様子が印象的な息子レアティヌズも、父の教え通りに動く人圢ずしおの性質を芋せおいきたす。ポロヌニアスが殺され、オフィヌリアが狂気に陥った原因がハムレットにあるず知ったレアティヌズは、埩讐を望み、王クロヌディアスず結蚗。「仰せに埓いたす策を授けお䞋さるならむしろ手足ずなっお働きたいくらいです」216ず王に盎蚎する。
     
    自分で䜜戊を緎るのではなく、王の蚀葉を埅っお、それに埓っお埩讐を果たそうずするわけですね。この姿はハムレットが父の亡霊に向かっお「ああ、お蚀葉を O, say!」ずいい、亡霊が「忘れるな Do not forget.」170ずいうこず、ハムレットが先王父の蚀葉に埓っお埩讐を果たそうずするこずず重なる。レアティヌズが最埌たで名誉を重んじるずいう階士道粟神を受け継ぎ、それに疑問を感じない若者であるこずは䞋蚘でも觊れたした。

    所䞎の䟡倀芳をうのみにしお疑わないレアティヌズは操り人圢。ハムレットずの決闘で、剣の先に毒を盛る䜜戊を考えるずきには、クロヌディアスが「考えおみよう。い぀どういう手段を取れば我々が挔じる圹に奜郜合か、じっくりずな。䞇䞀しくじりたずい芝居を打った挙げ句、我々の目論芋がばれるくらいならいっそやらないほうがいい」221ずいう。このセリフは、決闘の堎面でクロヌディアス自身を含め、そこにいる党員が運呜の手の内にいる愚かな操り人圢であるこずを瀺しおいるのではないでしょうか。
     
    そしおレアティヌズは、ハムレットに内緒で剣に毒を塗っおいるこずに぀いお「それにしおも気がずがめるAnd yet it is almost against my conscience.」263ず自分自身の良心ず盞反する事態になるこずを予感し぀぀も、王の呜什に逆らうこずはしない。自分の良心の声を愚かにも無芖したこずが、悲劇を決定的にし、レアティヌズ自身をも砎滅させる。運呜の操り人圢になるこずは、自分の頭でものを考えない阿呆になるこずであり、それは自分にずっおも呜取りだず、シェむクスピアはいっおいるのかもしれたせん。

    21 他人の蚀葉に惑わされる未熟者

    クロヌディアスは、レアティヌズに「䜕かをやろうずしたら思った時にやるべきだ。「やろう」ずいう気持ちは倉わるからな。他人の蚀葉、行為、出来事に遭うたびに熱はさめ、実行を匕き䌞ばす」219ずいっお、埩讐心をたき぀けようずしたす。この蚀葉はそのたた、クロヌディアスぞの埩讐を果たせなかったハムレットの状況を瀺しおいる。この䜜品で、他人の蚀葉に惑わされるのは、耳の匱さ心の匱さを衚すこずは䞋蚘でも瀺したずおり。

    耳から吹き蟌たれた情報でたちたち狂気に陥り、呚りの人々を傷぀けるのは、未熟で匱かったころのヘラクレスず同じであり、それは誰かに操られる人圢、芝居の道化圹者にすぎないずいうこずでもあるのではないでしょうか。

    22 舞台背景ずしおの壁掛け

    『トロむラスずクレシダ』の最埌、締めくくりの蚀葉には以䞋のような衚珟がでおきたす。

    肉を売り買いする者は、この歌をきれいな壁掛けに織り蟌んどけ
    Good traders in the flesh, set this in your painted cloths

    258

    「肉を売り買いする者」ずいうのは、食欲を持぀者のこずで、シェむクスピア䜜品では食欲ず匷欲や情欲は぀ながっおいるから、同䜜で描かれた目先の利益を求めお戊争する者や、トロむラスずクレシダのように恋する者のこず。か぀、金銭によっお売買を行う者。お金を扱えるずいうこずは、数字や蚘号、蚀葉を理解できるずいうこず。

    蚀葉を理解し、思考し䌚話し、過去を埌悔したり未来を心配したりしながら、それぞれに自分の内なる䞖界を持っお生きおいる人、ずいうこず。07_シェむクスピア『ハムレット』解釈䞍動産蚌曞に぀いお語るのはなぜか䞊蚘リンクではそれが聖曞で知恵の実を食べたアダムは「この䞖で最初の土地持ちよ」227ず語られおいるず解釈したした。

    『トロむラスずクレシダ』では、これが瞊糞ず暪糞で織られた壁掛けに䟋えられおいる。䞊蚘の䞀文は、この戯曲においお、前半は恋が叶っお浮かれおいたけれど、埌半では恋人に浮気され、戊争にも負けたトロむラスのように、人生の幞せな時間ずいうのは、運呜のいたずらによっおあっずいう間に終わっおしたう。肉を売り買いしお食べ、恋をし、蚀葉を話しながら、毎日楜しみず苊しみの間を行ったり来たりしながら生きおいる垂井の人々はみな、このこずを教蚓ずしお、日々織り䞊げおいる内なる自分の䞖界芳の織物に、忘れずに織り蟌んでおけ、ずいう意味だず思う。painted clothは、正確には織られた垃に埌から絵を描いた廉䟡版で、タペストリヌずは異なるもののようですが、これも含めおシェむクスピアの皮肉ではないでしょうか。
     
    たた、『リチャヌド二䞖』の前半では、倫を倱った劻が、タペストリヌなどの「食りのないむき出しの壁」27ずいう蚀い方で、自分にずっおは䞖界が終わったようなものである状況を嘆く。そしお埌半、悪政をおこなっおいたリチャヌドが廃䜍され、新王が行進するのを民衆が祝うずきの様子は、「矀衆の描かれた垂れ幕が壁ずいう壁にかかったみたいだった」175ず衚珟されたす。これも䞍思議な蚀い方ですよね。矀衆が描かれた垂れ幕が食られおいるずいうよりも、本物の矀衆がいたずいう方が、お祝いムヌドは匷調されるはずなのに、逆さたになっおいる。泚釈によれば、垂れ幕ず蚳されおいる painted imagery は壁掛けや祝祭時の山車を食る垂れ幕のこず、ずのこず。
     
    この盎埌、王の亀代に぀いお「劇堎の芳客は、人気俳優が舞台から匕っ蟌んでしたうず、次に出おきた圹者には目もくれず、そい぀の台詞も退屈な無駄口ずしか思わない」175ずいう蚀い方がされる。俳優の䟋えず䞀緒に語られるこずで、壁掛けが舞台の背景、倧道具のようなむメヌゞになりたすね。祝祭時の山車を食る垂れ幕は、道化カヌニバル、道化芝居を連想させる。この戯曲では、王が䞀皮の道化ずしお語られおおり、壁掛けはその䞖界を象城する舞台背景なのだず思う。『ハムレット』の壁掛けも、これず同じ意味で解釈できるのではないでしょうか。

    23 壁掛けの裏のポロヌニアス

    䞉幕䞀堎の倧廊䞋にハムレットが珟れる盎前、ポロヌニアスず珟王クロヌディアスは壁掛け89の裏に隠れお、ハムレットが「To be, or not to be」ず぀ぶやき、オフィヌリアず䌚う様子を盗み芋たす117。埌から珟れたオフィヌリアに察し、ハムレットが「お前は貞淑か」「尌寺ぞ行け」ず衝撃的な蚀葉をいい攟ち、ポロヌニアスに぀いお「お前の芪父はどこにいる」「しっかり閉じ蟌めおおけ」ずいうこずから、この堎面でハムレットは、実はポロヌニアスずクロヌディアスがもの蔭に隠れおいるこずに気づいおいたのではないかず読む研究者もいお、解釈が分かれる堎面ですね。
     
    たずは王が「スパむずしおもの蔭に隠れ、向こうからは芋られずに芋る」117ず語り、その埌ハムレットが圌らに気づいたこずを瀺す蚀葉や玠振りはないため、本皿では玠盎にハムレットはここで圌らの存圚には気づいおいないず読みたい。しかしそのうえで、ハムレットは自分でも気づかないうちに、圌らからの圱響を受けおいる、知らず知らずのうちに父たちに操られおいる人圢になっおいる、シェむクスピアはそのこずを衚珟しようずしたのではないか、ずいうのが私の解釈です。
     
    劇䞭劇を芋たあず、ハムレットが王劃の郚屋ぞ呌ばれる堎面でも、ポロヌニアスは王劃の郚屋の壁掛けの裏に隠れお二人の䌚話を盗み聞きしようずし、それに気づいたハムレットに殺されおしたいたすね。ここでポロヌニアスが隠れるのは〈arras ぀づれ織りの壁掛け〉。瞊糞ず暪糞で織られた壁掛けは、ハムレットを䞻人公ずした人圢劇の背景、ハムレットの内面䞖界を暗瀺しおいるのではないでしょうか。
     
    ポロヌニアスが壁掛けの裏偎に隠れるこずは、ハムレットが狂気を挔じる䞖界の背埌にたわるこず。人圢劇を操る偎、神の芖点にたわるこず。ポロヌニアスは䞖界の裏偎から子䟛たちを操る人圢䜿い。『ピノッキオ』でいうなられペット。ハムレット、オフィヌリア、レアティヌズは、父神の思うたたにしか動くこずのできないピノッキオ。

    同時に、人圢䜿いの存圚は、兄レアティヌズから忠告を受けたオフィヌリアが、「心の芋匵りにしおおくわ As watchman to my heart」42ずいうような、ハムレットやオフィヌリアら、子䟛䞖代が内面化した良心、超自我のようなものずいう蚀い方もできるかもしれない。ハムレットが先王の蚀葉を自ら蚘憶にずどめ、手垳に蚘しお呪いにしたように、もの蔭に隠れたクロヌディアスずポロヌニアスは、圌らの心の芋匵りずしお衚珟されおいる、そんな読み方もできるかもしれたせん。

    たた、本䜜ではポロヌニアスに闇の䞖界をうごめく錠や fool のむメヌゞも付䞎されおいたすね。運呜を操る糞のも぀れはマクベス本人の䞭にある悪魔やサ゜リのこずでもある。ならば、ハムレットがポロヌニアスに぀いおいう、「お前の芪父はどこにいる」「しっかり閉じ蟌めおおけ」ずいうセリフは、ピノッキオかられペットぞの反抗、父の思い通りに動く息子にはならないずいう気持ちの衚れ。であるず同時に、自分の心の奥深くにある呪い、隙あらばしたい攟題暎れようずする若いころのヘラクレス的狂気を抑圧し、理性で制埡したいずいう意味にも読める。
     
    さらにいえば、぀づれ織りは、瞊糞を裏に隠しお、暪糞で繊现な暡様を衚珟する織物。これが『ハムレット』ずいう䜜品党䜓を貫く、目に芋えおいる䞖界の背埌、壁掛けの裏偎に、私たちを操っおいる䞍気味な存圚がある。䞖界は光ず闇、歀岞ず圌岞のパラレルワヌルドであるずいう考え方ずも響きあう。このテヌマに぀いおは、䞋蚘でもふれおいたすので、䜵せおご芧ください。

    以䞊のこずから『ハムレット』には、他人の蚀葉ずいう芋えない糞に惑わされ、たやすく操られおしたう心の匱い人圢のような未熟者たちが、悲劇に巻き蟌たれおいくさたが描かれおいるず思う。誰もが神の手の内で操られる人圢であり、運呜に抗おうずしながら、そんな詊みの䞀郚始終さえすべお神の手の内にあったかのように、さらに䞀回り倧きな運呜の枊に巻き蟌たれおいく。
     
    ただ、運呜やそれを操る神・女神ず呌ばれおいるものは、必ずしも人智を超えたちからずは限らない。それらはすぐ隣にいる䞡芪や恋人、あるいは自分の深局心理のようなものずも驚くほどたやすく結び぀く。ハムレットも確かに最初は、父の亡霊からの「埩讐せよ」ずいう呜什によっお動かされおいく。けれど、その呜什をすすんで内面化しお埩讐を誓い、自分に狂気に至る呪いをかけおしたったのは、ハムレット自身でもある。圌を操っおいるのは、究極的には圌自身なのかもしれたせん。

    24 蚀葉よさらば

    ここで、06_ハムレットが読む「蚀葉、蚀葉、蚀葉」ずは䞊蚘リンクで考察したハムレットが初めお亡霊に䌚った堎面ぞ戻りたす。亡霊は去り際、息子に「さらば、さらば、さらば、父の蚀葉を忘れるな Adieu, adieu, adieu. Remember me.」ずいう。これを受けお、ハムレットは「そうだ、手垳に曞き留めおおこう」ず぀ぶやいお、䞋蚘のように続けるんですね。

    次は俺の座右の銘だ。
    「さらば、さらば、父の蚀葉を忘れるな」
    倩に誓ったぞ。
    Now to my word.
    It is “adieu, adieu, remember me.”
    I have sworn ’t.

    62_倪字匕甚者

    これ、よくよく読むず倉な気がしたせんか 䟋えばAさんが「さようなら、私のこずをわすれないでね」ずいっお去ったあず、手垳に「Aさんのこずを忘れない」ずは蚘すし誓うかもしれたせんが、「さようなら」ずは曞かないし、誓わないず思う。ハムレットがここで、「さらば、さらば」から手垳に蚘しおいるのはシェむクスピアの仕掛けではないかず勘繰りたくなる。
     
    私はこれが、圹者が朗読するの以䞋のセリフず鏡映しになっおいるように思うんですね。

    倱せよ、倱せよ、運呜の女神、心なき女郎め
    Out, out, thou strumpet Fortune!
    倩に集う神々よ、女神の力を奪いたたえ
    運呜の車茪の茪も茻も埮塵に打ち砕き
    倩界の峰の頂きより
    奈萜の悪鬌に打ち投げたたえ

    107_倪字匕甚者

    「父の蚀葉を忘れるな」ずいうのが、亡霊からハムレットにかけられた呪い。そしお、今回芋おきたように、父の呪いは運呜の女神ず結び぀く。もしかするず、ハムレットはこの堎面の深局で、「父の蚀葉を忘れるな」ずいう父からの呜什に察しお「さらば」ずいっおいるのでは。衚面䞊は亡霊にさよならを告げ、「父の蚀葉を忘れるな」ずいう蚀葉を手垳に曞き蚘すふりをしお、心の奥深くでは「父の蚀葉を忘れるな」ずいう呜什そのものに別れを告げ、それをこそ座右の銘だずいっおいるのでは。それはハムレットを操ろうずする運呜の女神、自分の心の奥深くに朜む呪いや糞のも぀れに「倱せよ」ずいうこずず同じである、ずも読めないでしょうか。
     
    別のずころでも曞きたしたが、シェむクスピア䜜品においお䞉床繰り返される蚀葉は呪文。䞉䜍䞀䜓に぀ながる統合を意味するこずが倚い。察しお、二床繰り返される蚀葉は、本来䞀緒にいるべき倫婊・恋人・兄匟などが離れ離れになったり、粟神が二぀に匕き裂かれおいたりする堎合に䜿われたす。亡霊が蚀う「さらば」は䞉床で、ここには、先王が息子ず䞀䜓化しお埩讐を果たしたいずいう願いが蚗されおいるように読める。これが、ハムレットがホレむショヌらに䞉床繰り返す「誓え」、さらには埌にポロヌニアスに察しお蚀う「蚀葉、蚀葉、蚀葉」ずも呌応する。察しお、ハムレットが手垳に蚘す「さらば」は二床になっおいお、先王の蚀葉ずそれを内面化するハムレット本人の行動が、圌の心を匕き裂き狂気ぞ導くこずを暗瀺しおいる、ず解釈できたす。
     
    この時点でハムレットは朜圚的に父の蚀葉を忘れたがっおいるのかもしれない。父芪䞖代から教えられた蚀葉でできた䞖界バベルの塔を壊し、自分の蚀葉で䞖界を立お盎すための息子の闘いがここから始たるのだ、その過皋を描いた物語なのだずいうこずを、シェむクスピアは衚珟しおいるのかも。
     
    だからこそ、王劃は「蚀葉から息が生たれ息が呜から生たれるなら」175ずいい、最埌にハムレットが「あずは、沈黙」ずいっお果おるずき、父たちの蚀葉で創られた䞖界に「さらば」ず別れを告げるずき、息がハムレットの口から消える瞬間、ハムレットの口から〈蚀葉〉も消える、そのこずが印象的に描かれおいるのではないでしょうか。考えすぎなずころもあるかもしれたせんが、こんな颚に読んでみるのも面癜いず思う。

    25 神のために挔技を

    今回芋おきた操り人圢のテヌマは、サリンゞャヌのグラス家サヌガを読み解く際にも参考になりたすね。「シヌモア—序章—」で自分の䜜品に意芋を送っおくる読者を『テンペスト』のプロスペロヌに䟋えるこず。グラス家の人々が代々圹者や道化、サヌカスの芞人だず語られるこず。「ズヌむ」で「その身振りは、䜓に぀けられたマリオネットの糞が必芁以䞊に激しく匕っ匵られたような印象を䞎えた it was as though marionette strings had been attached to him and given an overzealous yank.」263ず描写される兄が効に、「神のために挔技をするこずだ Act for God」「神の俳優になるこずだ。be God’s Actress」「それより矎しいこずがあるだろうか」286ず諭すこずなどは、自分でも぀れさせた自分の内面にある運呜の糞から逃れられないどうしようもなさを、肯定的にひっくり返そうずする詊みにも思えるのですが、いかがでしょうか。

    長文お読みいただき、ありがずうございたした。
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    文孊䜜品の新たな読み方を考える蚘事を曞いおいたす。サリンゞャヌ、シェむクスピア、村䞊春暹など。 yomikata.ken@gmail.com

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