
バックテスト+55%「完成した」と思ったEAが、たった一つの確認で消滅した話
にかけです。
今日から、僕が2年間で捨てた9本のEAを1本ずつ解剖していくシリーズを始めます。
「人の失敗談なんて読んで意味あるの?」と思うかもしれません。ありますとても。なぜならEA開発の失敗はパターンが決まっていて、ほぼ全員が同じ順番で踏むからです。これから自動売買を始める人は、僕の屍を踏み台にしてショートカットしてください。
第1回は、いちばん授業料が高かった8号機です。
「ついに完成した」と思った日
8号機は、ドル円の1時間足で動くトレンドフォロー型のEAでした。完成までに7本の失敗作があったので、設計にはそれなりに自信がありました。
2020年から2024年の5年間でバックテストした結果がこれです。
利益: +55%
プロフィットファクター: 1.32
( 右肩上がりの資産曲線)
プロフィットファクター(PF)というのは「総利益÷総損失」のことで、1.0を超えれば勝ち越し、1.3あれば実運用を検討できるライン、と言われる指標です。
5年間ずっと右肩上がりの資産曲線。PF1.32。文句なしです。「7本の失敗はこのためにあったんだ」と本気で思いました。リアル口座に入れる直前までいきました。
たった一つの確認作業
でも、入れる前に一つだけやったことがあります。
検証期間を10年に広げる。 それだけです。2020〜2024年で勝てたなら、2015〜2019年を足しても勝てるはずですよね。本物なら。
結果。
10年間のプロフィットファクター: 1.07
(10年版のヨレヨレの資産曲線)
PF1.07というのは「10年トレードして、ほぼトントン」という意味です。しかもバックテストにはスプレッド(実際の取引コスト)が十分に反映されないので、実運用なら確実にマイナスです。
+55%のEAが、消えました。検証ボタンを1回押しただけで。
犯人探し
最初は意味がわかりませんでした。同じEA、同じ通貨ペア、同じルール。なぜ期間を広げただけで死ぬのか。
年ごとの成績を並べて、ようやく犯人がわかりました。
8号機が優秀だったのではなく、2020〜2024年のドル円が、トレンドフォローにとって優しすぎただけでした。
この期間のドル円は、歴史的な円安で一方向に動き続けた相場です。トレンドに乗る戦略なら、正直、多少雑なルールでも勝てた。一方、2015〜2019年のドル円は行ったり来たりのレンジ相場。トレンドフォローは往復ビンタを食らい続け、稼いだ利益を全部吐き出していました。
つまり8号機の+55%の正体は、実力ではなく「地合い」でした。
これ、専門用語で「カーブフィッティング(過学習)」と呼ばれる現象の一種です。特定の期間にたまたまハマっただけのルールを、本物の優位性だと勘違いすること。EA開発における死因第1位です。
この話の怖いところ
怖いのはここからです。
もし僕が検証期間を広げていなかったら? ——「PF1.32の完成品」としてリアル口座で運用を始め、じわじわ負け続け、「最近調子が悪いだけ」と言い聞かせながら資金を溶かしていたはずです。
そしてもっと怖い話。EA販売サイトに並んでいる「右肩上がりの綺麗なグラフ」は、まさにこの+55%時点のスクショと同じものだということです。出品者が悪意でやっているとは限りません。本人も本気で「完成した」と思っているかもしれない。あの日の僕のように。
だからEAのグラフを見るときは、こう考えるクセをつけてください。
検証期間は何年か?(5年未満は判断材料にならない。10年欲しい)
その期間は、その戦略に有利な相場だけで構成されていないか?
「開発に使っていない期間」でのテスト結果はあるか?
この3つを聞くだけで、買ってはいけないEAの9割は弾けます。
8号機が残してくれたもの
8号機は死にましたが、僕に2つの財産を残しました。
「どんな好成績も、別期間で再検証するまで信じない」という鉄則。以降、僕の全EAはこの関門を通します(そして大半がここで死にます。それでいい)
「ロジックが悪いのか、戦う場所(通貨ペア・時間足)が悪いのか」という新しい問い。実は8号機のロジック自体は悪くなかった、という続きがあるのですが——これは別の回で書きます。生き残った2本のうち1本の誕生秘話につながるので。
今日のまとめ
バックテストの好成績は「実力」ではなく「地合い」かもしれない
確かめ方はシンプル: 検証期間を広げる/開発に使っていない期間で再テストする
それで崩れるなら、運用していたら崩れていたということ。検証段階で死んでくれるEAは良いEA
販売EAの綺麗なグラフにも、同じ目を向けること
次回の解剖は、これと真逆の死に方をしたEAの話か、8号機の「続き」のどちらかにします。リクエストがあればコメントで教えてください。
あわせて読みたい
フォローしてもらえると、続きが届きます。
(※この記事は特定の業者・商品の勧誘ではありません。自動売買を含む証拠金取引には損失リスクがあります)