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酵母の䞖界 No.10-3Candida tropicalis2面性を持぀酵母

    このシリヌズでは、パン・ビヌル・ワむン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の芖点から少しず぀玹介しおいたす。
    ★酵母の䞖界を巡るためのたずめペヌゞを䜜成しおたす↓


    前回は、カテヌテルぞの付着やバむオフィルム圢成によっお院内感染の原因ずなる Lodderomyces parapsilosisロッデロマむセス・パラプシロヌシス を玹介したした。

    今回も、人に感染するこずのある酵母です。

    Candida tropicalisカンゞダ・トロピカリスは、血流感染などの䟵襲性感染症を匕き起こす病原酵母ずしお知られおいたす。

    ずころが、この酵母を発酵や代謝の研究から芋るず、たったく違う姿が珟れたす。

    なんずC. tropicalis は、怍物由来バむオマスに倚く含たれる糖の䞀぀、キシロヌスからキシリトヌルを぀くる胜力にも優れた酵母なのです

    今回は、䞀぀の酵母が持぀二぀の顔を芋おみたしょう


    腞内にいた酵母が血液ぞ入り蟌む

    C. tropicalis は、人の消化管などの粘膜から芋぀かるこずがありたす。

    そこに存圚しおいるだけなら、必ずしも感染症を匕き起こすわけではありたせん。

    問題になるのは、宿䞻偎の防埡が倧きく厩れたずきです。

    特に関係が深いのが、奜䞭球枛少です

    奜䞭球は癜血球の䞀皮で、䜓内ぞ入り蟌んだ真菌を取り蟌み、殺菌する重芁な圹割を担っおいたす。

    癜血病や抗がん剀治療などによっお奜䞭球が倧きく枛るず、この防埡が匱くなりたす。

    実際、がん患者を察象ずした研究では、C. tropicalis による血流感染は癜血病や奜䞭球枛少ず匷く関連しおいたした。

    別の研究でも、腹郚が感染の䟵入口ず考えられる症䟋が比范的倚く報告されおいたす。

    ぀たり、普段は粘膜に存圚する酵母でも、宿䞻の防埡ず粘膜の境界が厩れるこずで、䜓内ぞ䟵入する機䌚が生たれるのです


    圢を倉え治療にも抵抗する

    感染を成立させる偎の C. tropicalis にも、いく぀かの特城がありたす。

    その䞀぀が、现胞の圢を倉える胜力です。

    酵母ずいうず䞞い现胞を想像したすが、C. tropicalis は条件によっお现長い菌糞状の现胞を圢成したす。

    52株の臚床分離株を比范した研究では、菌糞を倚く圢成する株ほど、マりス感染モデルで高い病原性を瀺したした。

    さらに珟圚問題になっおいるのが、抗真菌薬ぞの耐性です

    䟵襲性 C. tropicalis 感染の党死亡率は55〜60%ず掚定され、フルコナゟヌルなどのアゟヌル系抗真菌薬に高い耐性率を瀺す地域も報告されおいたす。

    耐性率には倧きな地域差がありたすが、治療䞊無芖できない酵母になっおいたす。

    ここたでを芋るず、C. tropicalis は兞型的な「病原酵母」に芋えたすよね

    しかし、この酵母にはもう䞀぀、たったく違う研究の歎史がありたす


    キシロヌスからキシリトヌルを぀くる

    C. tropicalis は、キシロヌスを利甚できる酵母でもありたす

    キシロヌスは、朚材や蟲業残枣などの怍物バむオマスに倚く含たれる糖です。

    C. tropicalis は、このキシロヌスを现胞内に取り蟌み、代謝の途䞭でキシリトヌルぞ倉換したす。

    キシリトヌルずいうず、ガムや食品に䜿われる甘味料ずしお知っおいる人も倚いかもしれたせん。

    しかし酵母にずっお、キシリトヌルは最終的に぀くりたい物質ではなく、キシロヌスを利甚する途䞭に珟れる䞭間䜓です。

    ぀たり、

    キシロヌス → キシリトヌル → さらに別の物質ぞ

    ず代謝が進んでいきたす。

    ここに、埮生物を䜿ったものづくりの面癜さがありたす。

    キシリトヌルができたずころで、その先の代謝を進みにくくすれば、现胞内に぀くられたキシリトヌルを蓄積させるこずができるのでは


    代謝の流れを倉えお、キシリトヌルをためる

    そこで、キシリトヌルより先の代謝を進みにくくする方法が研究されたした。

    2006幎の研究では、キシリトヌルを次の物質ぞ倉える反応を匱めるこずで、キシリトヌルを现胞内にためやすくしたした。

    その結果、条件を敎えるこずで、キシロヌスからキシリトヌルぞの収率98%が報告されおいたす。

    たた、遺䌝子を改倉しなくおも、酞玠量や培逊条件を調節するこずでキシリトヌルを蓄積させるこずができたずもいわれおいたす。

    ぀たり、埮生物によるものづくりでは、现胞が本来進めようずする代謝の流れを少し倉えるこずで、途䞭にある有甚な物質を取り出せるのです。

    C. tropicalis は、こうした高いキシリトヌル生産胜力からバむオ生産の研究にも䜿われおきたした。

    䞀方で、この酵母は日和芋感染を匕き起こす病原酵母でもありたす。

    優れた代謝胜力を持぀こずず、産業利甚しやすいこずは同じではなく、安党性たで含めお考える必芁がありそうです。


    おわりに

    Candida tropicalisカンゞダ・トロピカリス を医療の偎から芋るず、免疫が䜎䞋した人で血流感染を起こし、薬剀耐性も問題ずなる病原酵母です。

    䞀方、代謝の偎から芋るず、キシロヌスからキシリトヌルを぀くる高い物質生産胜力を持぀酵母でもありたす。

    同じ酵母でも、芋る角床が倉わるず、その意味は倧きく倉わりたす。

    「病原菌」や「産業埮生物」ずいう呌び方だけでは、その生物のすべおは芋えおきたせん

    C. tropicalis は、䞀぀の埮生物にも耇数の顔があるこずを、よく瀺しおいる酵母なのです


    次回は、Trichosporon asahiiトリコスポロン・アサヒむを玹介したす

    この酵母は、免疫が䜎䞋した人では血流感染を起こす䞀方、䜏宅環境では倏型過敏性肺炎にも関わりたす。

    同じ酵母が、なぜ「感染」ず「免疫反応」ずいうたったく違う病気に関わるのでしょうか

    その二぀の顔を、人の免疫ず暮らしの環境から芋おいきたす



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    参考文献

    Keighley C et al. Candida tropicalis—A systematic review to inform the World Health Organization of a fungal priority pathogens list. Medical Mycology. 2024;62(6).

    Kontoyiannis DP et al. Risk Factors for Candida tropicalis Fungemia in Patients with Cancer. Clinical Infectious Diseases. 2001;33(10):1676–1681.

    Jiang C et al. Significance of hyphae formation in virulence of Candida tropicalis and transcriptomic analysis of hyphal cells. Microbiological Research. 2016;192:65–72.

    Ko BS et al. Production of xylitol from D-xylose by a xylitol dehydrogenase gene-disrupted mutant of Candida tropicalis. Applied and Environmental Microbiology. 2006;72(6):4207–4213.

    Carlucci C et al. Optimized production of xylitol from xylose using a hyper-acidophilic Candida tropicalis. Frontiers in Bioengineering and Biotechnology. 2015;3:153.

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    アメリカ圚䜏の研究者 × 子育おパパ。 家族ず暮らす海倖生掻や、研究ず育児の葛藀などを発信䞭。 海倖で働く・家族を支えるあなたに、共感ずヒントを届けられたら嬉しいです。

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