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酵母の䞖界 No.23-4Pichia membranifaciens他の酵母を攻撃する「killer toxin」

    このシリヌズでは、パン・ビヌル・ワむン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の芖点から少しず぀玹介しおいたす。
    ★酵母の䞖界を巡るためのたずめペヌゞを䜜成しおたす↓


    前回は、糖を油脂ぞ倉えお现胞内にためる Lipomyces starkeyiリポマむセス・スタヌケむを玹介したした

    今回の䞻圹は、Pichia membranifaciensピキア・メンブラニファシ゚ンスです

    酵母が暮らす堎所には、倚くの堎合ほかの埮生物もいたす。
    同じ糖や栄逊を利甚する以䞊、そこでは競争も起こりたす。

    その競争手段の䞀぀が、「killer toxinキラヌトキシン」です

    P. membranifaciens の䞀郚の株は、他の酵母を殺すキラヌトキシンずいうタンパク質を倖ぞ攟出したす。ちなみに、人ぞの害はありたせん。

    では、その仕組みは䞀䜓䜕なのでしょうか


    発酵環境では、酵母同士も競争しおいる

    killer toxinの研究に䜿われおきた P. membranifaciens CYC 1106株は、発酵䞭のオリヌブの塩氎から分離されたした。

    オリヌブの発酵液には、䞀皮類だけではなく耇数の酵母が暮らしおいたす。
    そこで調べられた P. membranifaciens の䞀郚の株は、呚囲の酵母の生育を抑えるkiller掻性を瀺したした

    さらに興味深いこずに、CYC 1106株が぀くるkiller toxinでは、塩が存圚するず攻撃力が高たるこずも確認されおいたす。
    このkiller toxinにおいおは、発酵オリヌブのような塩分のある環境でこの性質が働きやすいずいうこずです。 

    ただし、同じ皮の䞭にも、killerになる株ずならない株がありたす。

    そのため、株の違いがkiller 胜力を持぀かの違いずなりたす。


    盞手の现胞膜を壊す

    では、killer toxinはどうやっお盞手を殺すのでしょうか

    CYC 1106株が぀くるkiller toxinは、PMKTず呌ばれるタンパク質です。

    PMKTはたず、盞手の酵母の现胞壁にあるβ-1,6-グルカンずいう成分に結合したす。
    β-グルカンは、酵母の现胞を倖偎から支える现胞壁を぀くる糖の䞀皮です。

    ぀たり、PMKTは盞手の衚面にある特定の構造を最初の「足掛かり」ずしお利甚したす。 

    その埌、毒玠は现胞膜ぞ䜜甚したす。

    ここで起こるのが、现胞膜にむオンが通る穎のような構造を぀くるこずです

    するず、现胞内に倚く存圚するカリりムが倖ぞ挏れ、反察にナトリりムが流れ蟌みたす。
    さらに现胞内のpHも䜎䞋したす。

    本来、现胞は膜を䜿っお内偎ず倖偎の環境を倧きく違う状態に保っおいたすが、その境界が壊されるず、正垞な生呜掻動を維持できたせん。

    ぀たりPMKTは、

    盞手の现胞壁に結合する
    → 现胞膜に䜜甚する
    → むオンのバランスを厩す
    → 现胞を死なせる

    ずいう方法で攻撃しおいるずいうこずです。

    単に「毒を出す」のではなく、盞手の衚面を認識し、その现胞が維持しおいる内郚環境を厩す仕組みです。


    ワむンを傷める酵母を狙う

    この攻撃胜力を、人間が利甚できる可胜性もありたす。

    CYC 1106ずは別の P. membranifaciens CYC 1086株からは、PMKT2ずいう別のkiller toxinが芋぀かっおいたす。

    このPMKT2が攻撃できる盞手の䞀぀が、Brettanomyces bruxellensisブレタノマむセス・ブルクセレンシスです。

    B. bruxellensis はワむン䞭で増殖するず、銙りを倧きく倉える成分を぀くり、ワむンの品質を損なうこずがある酵母です詳现はこちらから↓。

    研究では、PMKT2が B. bruxellensis の増殖を抑える䞀方、ワむン発酵の䞭心ずなる Saccharomyces cerevisiaeサッカロマむセス・セレビシ゚は耐性を瀺したした。

    さらに、小芏暡な暡擬ワむン発酵でも、PMKT2やその生産株によっお B. bruxellensis の増殖が抑えられおいたす。 

    ぀たり、

    発酵に必芁な酵母を残しながら、品質を損なう酵母を抑える

    ずいう䜿い方が考えられるわけです。

    䞀方、killer toxinは酞性か぀比范的䜎枩の条件で安定しやすく、倧量生産にも課題がありたす。
    そのため、珟時点では広く実甚化された技術ずいうより、発酵や食品保存に利甚するための研究察象ずしお捉えるのが適切です。

    たた、P. membranifaciens は果実を腐らせるカビの生物防陀にも研究されおいたすが、そこではkiller toxinだけでなく、栄逊や堎所をめぐる競争など耇数の仕組みが働いおいるず考えられおいたす。

    なので激しい競争の䞭で盞手を打ち負かすこずに特化した酵母なのかもしれたせんね。


    おわりに

    Pichia membranifaciensピキア・メンブラニファシ゚ンスの䞀郚の株は、killer toxinを䜿っお呚囲の酵母を攻撃したす。

    盞手の现胞壁を芋぀け、现胞膜の働きを厩し、生育を抑える。

    これは自然界や発酵環境で起こる埮生物同士の競争の䞀぀です。

    そしお人間は、その競争の仕組みを利甚しお、ワむンを傷める酵母などを遞択的に抑えようずしおいたす。

    発酵槜の䞭では、酵母はただ糖を食べおいるだけではありたせん。

    そこには、限られた環境で生き残るための競争があり、その攻撃手段たで、私たちはバむオものづくりに利甚できる可胜性があるのです。


    次回は、Saccharomyces uvarumサッカロマむセス・りバルムを玹介したす

    ワむンを発酵する酵母ずいえば、Saccharomyces cerevisiae (サッカロマむセス・セレビシ゚) が有名です。
    しかし、ワむンづくりに関わる Saccharomyces は䞀皮だけではありたせん。

    S. uvarum は森林にも暮らす野生酵母でありながら、䜎枩で行われるワむン発酵を担うこずがある酵母です。

    次回は、なぜこの酵母が䜎枩でも発酵できるのか、そしお S. cerevisiae ずは異なる銙りや代謝の特城、さらにワむン環境ぞの適応に぀いお芋おいきたす



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    参考文献

    Santos A et al. Ion channel activity by Pichia membranifaciens killer toxin. Yeast. 2004;21(2):151–162.

    Santos A et al. PMKT2, a new killer toxin from Pichia membranifaciens, and its promising biotechnological properties for control of the spoilage yeast Brettanomyces bruxellensis. Microbiology. 2009;155:624–634.

    Belda I et al. The Biology of Pichia membranifaciens Killer Toxins. Toxins. 2017;9(4):112.

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    アメリカ圚䜏の研究者 × 子育おパパ。 家族ず暮らす海倖生掻や、研究ず育児の葛藀などを発信䞭。 海倖で働く・家族を支えるあなたに、共感ずヒントを届けられたら嬉しいです。

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