
酵母の世界|自然・農業・微生物どうしの関係から読む酵母の多様性
この記事は、自然界で暮らす酵母と、植物・昆虫・ほかの微生物との関係をまとめた「酵母の世界」の案内記事です。
酵母は、花や果実、土壌、植物の表面、昆虫の体内など、さまざまな環境で暮らしています。
このページでは、「植物と関わる」「微生物と競う」「昆虫や極限環境で暮らす」という視点から、自然界の酵母を紹介します!
植物と関わる酵母
植物のまわりには、多くの酵母が暮らしています。
根や葉の表面に定着するもの、植物が使える栄養を増やすもの、成長やストレス耐性に関わるものなど、その関係はさまざまです。
3-2:Torulaspora globosa
同じ Torulaspora 属でも、発酵だけが舞台ではありません!
土の中でリンを溶かし、植物の栄養利用を助ける可能性が注目される酵母です。
20-2: Rhodotorula graminis
植物のまわりには、成長をそっと支える酵母も暮らしています。
植物と共生しながら、根や葉の成長に関わる可能性が注目される赤い酵母です。
27-1: Papiloptrema laurentii
土の中には、植物の成長を助ける酵母がいます。
根や葉のまわりで植物と関わり、病害抑制や乾燥ストレスの軽減にも注目される酵母です。
微生物と競い、植物を守る酵母
自然界では、酵母だけが単独で暮らしているわけではありません。
同じ場所にはカビや細菌など、さまざまな微生物がいます。
限られた栄養や場所をめぐって競争し、ときには相手の生育を抑える物質をつくります。
5-1:Metschnikowia pulcherrima
花や果実に暮らす酵母は、赤い色素を使ってライバルと競います。
美しい色の裏にある、微生物どうしの生存競争です。
17-1:Wickerhamomyces anomalus
酵母は、発酵するだけの微生物なのでしょうか?
カビと競い、作物や食品を守る力を持つ酵母を紹介します。
23-4:Pichia membranifaciens
酵母は、ほかの酵母を攻撃することもあります。
Pichia membranifaciens は killer toxin を分泌し、ライバルとなる酵母の増殖を抑える、微生物どうしの競争を見せてくれる酵母です!
25-1:Aureobasidium pullulans
植物の表面には、病原菌と場所を奪い合いながら暮らす酵母がいます。
果実や葉にすばやく定着し、作物を守る微生物としても注目される酵母です。
26-1:Vishniacozyma victoriae
南極や氷河のような寒い環境にも、酵母は暮らしています。
低温に適応し、植物病原菌を抑える力から農業利用も期待される酵母です。
昆虫や特殊な環境で暮らす酵母
酵母の生活場所は、植物の表面や土壌だけではありません。
昆虫と密接に関わって暮らすものや、低温などの厳しい環境に適応したものもいます。
24-1:Ambrosiozyma monospora
木の中には、昆虫とともに暮らす酵母がいます。
アンブロシア甲虫との関係から、酵母が発酵食品だけでなく、生態系の一員でもあることを見せてくれる酵母です。
28-1: Spathaspora passalidarum
木を食べる昆虫の腸には、植物バイオマスを利用するヒントが隠れています。
木材由来の糖であるキシロースを使い、バイオものづくりへつながる酵母です!
29-1: Hortaea werneckii
なぜ、塩の多い場所でも生きられる酵母がいるのでしょうか?
水を奪われる環境に耐え、極限環境での生存戦略を見せてくれる黒色酵母です。
自然の中で酵母の役割が変わる
発酵食品の中では、酵母は人間に利用される微生物として見えます。
しかし自然界に目を向けると、植物と関わり、微生物と競い、昆虫とともに暮らす生態系の一員です。
そして、自然界で生きるために使われている能力が、植物の成長促進、病害抑制、バイオものづくりなど、人間にとって新しい価値につながることがあります。
酵母の産業利用を知る前に、その酵母が自然の中で何をしているのかを見る。
その視点を持つと、酵母の能力がどこから来たのかを、少し違った角度から考えられるようになります。
「酵母の世界」では、これからも自然界で暮らすさまざまな酵母を追加していきます!
酵母の世界では、パン・ビール・ワイン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の視点から少しずつ紹介しています。
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