メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

酵母の䞖界 No.43-1Vanrija humicola「鏡像」のアミノ酞を食べる酵母

    このシリヌズでは、パン・ビヌル・ワむン・発酵食品を支える酵母たちを、研究者の芖点から少しず぀玹介しおいたす。
    ★酵母の䞖界を巡るためのたずめペヌゞを䜜成しおたす↓


    前回は、油を分解する酵玠「リパヌれ」を぀くる Diutina rugosaディりティナ・ルゎサを玹介したした

    今回の䞻圹は、Vanrija humicolaノァンリダ・フミコラです

    この酵母には、少し倉わった「食べ物」がありたす。

    それは、私たちの䜓を぀くるアミノ酞ず、鏡に映したような圢をしたD型アミノ酞ず呌ばれるものです。

    䞭でも V. humicola のある株は、D-アスパラギン酞を栄逊ずしお利甚できたす

    生呜が普段䜿うアミノ酞ずは「向き」の違う分子を、この酵母はどうやっお食べおいるのでしょうか


    土壌に暮らす酵母

    V. humicola は、土壌から繰り返し分離されおきた酵母です。

    基準株も土壌由来で、叀い文献では Cryptococcus humicola クリプトコッカス・フミコラずいう名前で登堎したす。

    土壌には、怍物や埮生物の分解物など、さたざたな有機物が存圚したすが、その䞭から䜕を栄逊ずしお利甚できるかは、埮生物にずっお重芁な性質です。

    そしお、あるV. humicola で芋぀かったのが、D-アスパラギン酞を利甚する胜力でした


    「鏡写し」のアミノ酞を食べる

    アミノ酞には、右手ず巊手のように、圢はよく䌌おいおも重ね合わせるこずのできない2皮類がありたす。

    これをL型ずD型ず呌びたす。

    私たちを含む倚くの生物が、タンパク質を぀くるずきに䜿うのは䞻にL型のアミノ酞です。

    D型も自然界には存圚したすが、L型ず圢が異なるため、同じようには利甚できない堎合がありたす。

    ずころが、V. humicola UJ1株は、このD型アミノ酞の䞀぀であるD-アスパラギン酞を栄逊ずしお利甚できたす

    しかも、単に少し取り蟌めるずいう皋床ではありたせん。

    D-アスパラギン酞を、现胞を぀くるための窒玠源ずしおも、゚ネルギヌやほかの物質を぀くるための炭玠源ずしおも利甚しお生育できたす。

    ぀たりこの酵母は、倚くの生物が普段䜿うL型ずは「向き」の違うアミノ酞を、自分の代謝の䞭ぞ取り蟌み、きちんず栄逊ずしお䜿うこずができるのです。

    「鏡写しだから䜿えない」で終わらず、それを食べるための仕組みを持っおいる。

    ここが、V. humicola の面癜いずころです


    専甚の分解装眮を動かす

    では、V. humicola はD-アスパラギン酞を、どうやっお栄逊ずしお利甚しおいるのでしょうか。

    UJ1株は、呚囲にD-アスパラギン酞があるず、それを分解するための酵玠を぀くりたす。

    その酵玠が、D-アスパラギン酞オキシダヌれです

    名前は少し難しいですが、圹割はシンプルです。

    この酵玠はD-アスパラギン酞を分解し、炭玠の郚分を现胞の代謝に取り蟌める物質ぞ倉えるずずもに、窒玠も利甚できる圢で取り出したす。

    ぀たり、D-アスパラギン酞ずいう少し特殊なアミノ酞から、现胞が生きるために必芁な炭玠ず窒玠を取り出す入口になっおいるのです。

    実際、この酵玠を぀くれない株では、D-アスパラギン酞を䞻な栄逊源ずしお生育できなくなりたす。

    さらに面癜いのは、この酵玠を垞に倧量に぀くっおいるわけではないこずです。

    D-アスパラギン酞が呚囲に珟れるず、そのずきに必芁な分解の仕組みを動かす。

    V. humicola は、環境にある栄逊に合わせお、自分の代謝を切り替えおいるのです


    「食べる胜力」が「枬る技術」になる

    この特殊な分解胜力は、人間にずっおも利甚䟡倀がありたす。

    UJ1株が぀くるD-アスパラギン酞オキシダヌれは、D-アスパラギン酞を遞んで反応しやすいずいう特城を持っおいたす。

    ここで、その性質を逆に利甚したす

    詊料にこの酵玠を加え、D-アスパラギン酞に察しおどれだけ反応したかを調べれば、詊料の䞭にD-アスパラギン酞がどれくらい含たれおいるのかを掚定できたす。

    ぀たり、酵母がD-アスパラギン酞を芋分けお分解する胜力を、今床は人間が「D-アスパラギン酞を芋぀ける道具」ずしお䜿うのです

    実際に、この酵玠を利甚したD-アスパラギン酞の枬定法が開発されおいたす。

    さらに、倚数の乳酞菌の䞭から、D-アスパラギン酞を倚く぀くる菌株を探すスクリヌニングにも利甚されたした

    酵母にずっおは、特殊な栄逊を利甚するための仕組み。
    人間にずっおは、特殊な物質を芋぀けお枬るための道具。

    自然界で生きるための胜力が、そのたた分析技術ぞ぀ながっおいるのです


    おわりに

    Vanrija humicolaノァンリダ・フミコラ は、倚くの生物が普段䜿うL型ずは「向き」の違うD-アスパラギン酞を、栄逊ずしお利甚できたす。

    そのために、必芁なずきだけ専甚の分解系を動かしたす。

    そしお、その「D-アスパラギン酞を芋分けお利甚する力」は、人間にずっおは枬定技術にもなりたした。

    ここで面癜いのは、埮生物の違いは「䜕を぀くるか」だけでなく、「䜕を食べられるか」にも珟れるずいうこずです

    䞀芋するず小さな代謝の違いでも、そこには酵母が環境で生きるための工倫があり、ずきには人間が利甚できる新しい機胜も隠れおいるのです


    次回は、保存料が入った食品でも生き残る酵母を玹介したす。

    その名は、Zygosaccharomyces bailiiゞゎサッカロマむセス・バむリヌ

    この酵母は、酞性食品や保存料に匷く、枅涌飲料や゜ヌスなどの腐敗原因になるこずがありたす。

    なぜ保存料が効きにくいのか。その秘密を、探りたす


    ★酵母ずものづくりの関係に぀いお蚘事をたずめおたす。詳现はこちらから↓

    ★過去の様々なトピックの蚘事を党おたずめおたす。詳现はこちらから↓

    これらの蚘事が参考になったら「スキフォロヌ」をぜひお願いしたす


    参考文献

    Yamada R et al. Purification and properties of D-aspartate oxidase from Cryptococcus humicolus UJ1. Biochimica et Biophysica Acta. 1996;1294(2):153–158.

    Takahashi S et al. Physiological role of D-aspartate oxidase in the assimilation and detoxification of D-aspartate in the yeast Cryptococcus humicola. Yeast. 2005;22(15):1203–1212.

    Imanishi D et al. Draft Genome Sequence of the Yeast Vanrija humicola (Formerly Cryptococcus humicola) Strain UJ1, a Producer of D-Aspartate Oxidase. Genome Announcements. 2018;6(11).

    Kato S et al. Enzymatic Assay for D-Aspartic Acid Using D-Aspartate Oxidase and Oxaloacetate Decarboxylase. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. 2012;76(11):2150–2152.

    #酵母
    #孊び
    #発酵
    #ç§‘å­Š
    #生態系
    #野生酵母
    #産業

     
     
    アメリカ圚䜏の研究者 × 子育おパパ。 家族ず暮らす海倖生掻や、研究ず育児の葛藀などを発信䞭。 海倖で働く・家族を支えるあなたに、共感ずヒントを届けられたら嬉しいです。

    あなたぞのおすすめ