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2020シン・フェむン文孊2──ゞェリヌ・アダムズの獄䞭小説

    前回玹介した北アむルランド出身の政治掻動家、ゞェリヌ・アダムズ。英囜によっお分断された南北アむルランドの統䞀を求める「リパブリカン」政党「シン・フェむン党」を率い぀぀、歊闘型反英闘争を議䌚䞻矩路線に転換し、囜際的な理解を埗お和平合意に尜力した。北アむルランド問題の珟圚を理解するのに欠かせない人物であるアダムズは、本邊では知られおいないが短線小説に秀でおいる。今号では、圌自身の獄䞭経隓に基づく独特の獄䞭闘争を描く短線を玹介する。英囜察アむルランドずいう二元的な察立に回収しきれない闘争が綎られおいる。

    恣意的な収監制床ず政治犯埅遇

    ゞェリヌ・アダムズは、1948幎、英囜内の自治領・北アむルランドのカトリックの家庭に生たれた。自治政府は、英囜領内に留たるこずを望み、プロテスタント系の入怍者に有利な政治を行なう「ナニオニスト」政暩。巧劙な遞挙制床によっお事実䞊参政暩を奪われたカトリックの䞍満は、60幎代埌半に公民暩運動ずなっお衚れた。ベルファストの公民暩運動に加わったアダムズは、よりナショナリスティックな芳点から、シン・フェむン党、および圓時はその準軍事組織だったIRAのちに党銖ずなったアダムズが党を歊装解陀したに接近しおいた。䞀方、公民暩運動に危機感を抱くナニオニストの準軍事組織ず譊察がデモなどを攻撃し、これにIRAらが報埩。英囜がナニオニストを庇う圢で軍事介入しお衝突、70幎倏には垂街地は荒廃し、英囜軍や譊察はIRA狩りを目的に䞀般䜏宅を頻繁に襲った。

    玛争の激化を受けお自治政府は、裁刀なしに任意の者を任意の期間にわたっお収監できる非垞拘犁法「むンタヌンメント」を立案、英囜の承認を経お71幎倏に斜行した。これにより掻動家、それずずばっちりを受けた䞀般垂民の蚈2000人あたりが英囜の運営する「収容所」に送られた。むンタヌンメントにはリパブリカンカトリックに察するナニオニストプロテスタントの反発をなだめる目的があり、䞻にIRAやそれず亀流があるず芋られる者がタヌゲットになった。
    アダムズは72幎に収監された。脱走を䌁おたり釈攟されたり、再び捕たったり移送されたりしながら、70幎代の半分を北アむルランドの収容所の䞀぀でありベルファストの南西14キロに䜍眮する「ロングケシュ」、別名「女王陛䞋の監獄ルビハヌ・マゞェスティヌズ・プリズン」略称「迷路ルビメむズ」で過ごした。圓時アダムズはシン・フェむン党員であり公民暩運動の掻動家だが、IRAだったかどうかは諞説ある。

    むンタヌンメントは囜内倖から広く批難されたうえ、IRAの報埩やそれに察するナニオニストの報埩を匕き起こしお玛争を゚スカレヌトさせおしたい、やがお廃止されたが、その裏で拷問による自癜をもずに通垞の審理手続きを欠いお行なわれる有眪決定システム「特別法廷」も詊されおおり、廃止されたむンタヌンメントに代わっお甚いられるようになった。むンタヌンメントには裁刀がなく、掻動家は単に敵ずしお収監されるが、特別法廷では名目䞊の裁刀を経お、掻動家は犯眪者ずしお収監される。いずれにせよ、法ずそれに䌎う収監決定の手続きはブラックボックス化する。収監者らの盎面したむンタヌンメントや特別法廷の恣意的な収監の䞍条理は、囜家ず法の根源的な䞍条理を剥き出しの圢で衚すものだったずも蚀える。
    囜家が掻動家を捕たえるずは、珟存しない他の囜家ず戊争しお捕虜をずるこずず原理的には等しい。北アむルランドで収監された掻動家らも自らを「政治犯」ずし、戊争捕虜ず同等の埅遇を䞻匵した。72幎、自治政府を廃止しお盎接統治に乗り出した英囜は、IRAずの停戊亀枉の手段ずしお、収監者に「政治犯埅遇」を認めた。䞀般の刑事犯ずは違っお仲間ずの亀流や私服の着甚が認められ、、懲圹はなく、差し入れや通信や接芋の芏制も比范的緩い。アダムズは持ち前の文才を生かし、芏制をかいくぐっおリパブリカンの新聞に寄皿したり、掻動方針を仲間ず議論しおは獄倖に圱響を䞎えるこずができた。しかし法手続きが恣意的なため、い぀釈攟されるかはわからない。䞀般刑事犯の受けられる枛刑もない。家族が離散する者もあった。懲眰ずしお䞀般刑事犯埅遇に倉えられたり、嫌がらせ目的の身䜓怜査をされるこずもあった。

    プロパガンダになれないアダムズの文孊

    この獄䞭経隓を、アダムズは獄䞭蚘『十䞀号棟』1990や自䌝『倜明け前』1996に綎った。たた、短線集『ストリヌト』1993には、圌ず同房の掻動家らをモデルに、ロングケシュでの政治犯埅遇䞋の生掻を描いた掌線「ハツカネズミず人間」が収録されおいる。今号では、この「ハツカネズミず人間」を玹介したい。

    前回は同じく『ストリヌト』から、ベルファストに䜏むリパブリカンカトリックの青幎掻動家ずナニオニストプロテスタントの劎働者の亀流を描く「モヌンの山々」を玹介した。この短線の䞭でアダムズは、我々は皆同じ土地に䜏む以䞊は同じアむルランド人だ、力を合わせお英囜を远い出そう、ず無邪気に呌びかける青幎の蚀葉の届かないナニオニストのアむデンティティに蚀及し、同時に青幎の信じる「我々」リパブリカンのアむデンティティの䞍確かさを露呈させおしたう。北アむルランド問題を階玚闘争に䜍眮付けるリパブリカンのアダムズは、ナニオニストにずっおこの玛争はむしろ宗教戊争の意味合いが匷く、リパブリカンにずっおの闘いずは別の闘いだず気づき、ナニオニストの信念に理解を瀺しおさえいる。リパブリカン政党の党銖たるアダムズのなすべきプロパガンダにずっおは䜙分な衚珟だ。圌はプロパガンダに倱敗しながら、北アむルランド問題の諞矛盟を文孊ですくい取った。特定の集団の政治的䞻匵を代匁するよりも意図的に立堎の区分を混乱させる北アむルランド文孊が80幎代から90幎代にかけお増えおいる、ずの研究がある。「モヌンの山々」は、意図的か吊かはずもかく、それらの朮流の䞀぀でもあるだろう。

    「ハツカネズミず人間」に぀いおも同じこずが蚀える。語り口は芪しみやすくおナヌモラス、逆境にあっお士気盛んな仲間たちが繰り広げるドタバタ劇だ。圌らは英囜による恣意的な収監の䞍条理さに抗うように、収容所内で独自の芏埋を維持し、自分たちの理想ずする法ず刑眰決定のあり方を暡擬裁刀の圢で珟出させようずする。䞀芋プロパガンダ䜜品のようだ。しかし、登堎人物らの芏埋ず法の公正さぞのこだわりはプロパガンダの範疇を超え、明らかに過剰で、䞍自然さすら挂わす。圌らの過剰な努力は、圌ら自身の制定する芏埋や法には抑えきれないほど匷く根深い焊燥ず怒りの裏返しだ。圌らを認めず、圌らの認めない珟行の英囜の法に代わっお圌らが䜜ろうずするただ芋ぬ囜家の法に察しおさえ、䞀抹の䞍信が描かれる。圌ら自身を含む根源的な䞍条理が、10ペヌゞほどの物語党䜓を流れおいる。アダムズは「善」ず「悪」の二元的な構図に基づくプロパガンダをたたしおも無効化させおしたう。

    ネズミが萜ちおきた

    重苊しい話になったが、題材は1匹のネズミだ。タむトルはスタむンベック『ハツカネズミず人間』にならったものだろう。物語は語り手のよもやた話のように始たる。このように「今ここにはいないがよく知っおいた人物」のうわさを披露する語り口はアダムズの持ち味であり、アむルランドの口承文化の䌝統でもある。

     ヒュヌ・ディヌニヌに蚀わせりゃあ、ネズミだっお公正に扱われる暩利がある、ずさ。ヒュヌは䞇事こんな調子だった。すべおに察しお慎重で、冷静で、公正な刀断を䞋す奎だったんだ。ただし女ずなるず——たあ、その話は今床にしよう。
     ある朝ヒュヌが朝飯の粥を食べおいるず、ネズミが圌の䞊に萜ちおきた。圌の䞊に萜ちおきた、ずいうのは文孊的衚珟だよ。材朚を䞊べお䜜った倩井がそのたた屋根を兌ねおいるようなのがあるだろう 政治犯収容所のそういう倩井の材朚から、そい぀が萜ちおきたわけだ。鈍い、湿った、ボチャンずいう音をたおお、そい぀はヒュヌの粥の怀に萜ちおきた。幞いなこずに粥は冷めおいた。たあ、収容所の飯はい぀も冷めおるもんだ。
     「俺の粥ん䞭にネズミがいる」ヒュヌは叫んだ。

    芪しい者に語りかける様匏のため、物語の舞台や背景は詳しく語られない。獄䞭蚘『十䞀号棟』や自䌝『倜明け前』、圓時の資料を参考に、軜く説明を加えたい。 
     
    物語の舞台ロングケシュはもずもず第二次倧戊䞭に䜜られた英囜空軍基地で、「ニッセン匏兵舎」ず呌ばれるカマボコ型のプレハブ本蚘事冒頭の写真参照が䞊んでいた。この兵舎はむンタヌンメントで倧量摘発した掻動家を収監する目的で1971幎に改築され、収容所ずなった。この短線の登堎人物らは73幎から75幎頃の収監者ず思われる。ロングケシュは2000幎に閉鎖、2016幎に解䜓され、䞀郚は平和蚘念センタヌずしお珟存する。立地は泥炭地で、脱出甚のトンネルを掘るず泥氎で難儀したらしい。

    政治犯は䞀぀の房に぀き30人から50人で共同生掻しおいた。カトリックリパブリカンずいう以倖、幎霢も経歎もばらばらだ。圌らは「ハット」ず呌ばれる7×36メヌトル皋の现長い房にぎっしり䞊んだ2段ベッドで寝起きする。雚挏りや隙間颚がひどく、暖房も効かない。房は倜九時に斜錠され、朝7時半に解錠される。この寝宀の他に倚目的宀があり、勉匷や蚎論に䜿われた。テレビ、ラゞオがあり、新聞も手に入った。収容所の食事ずは別に差し入れの食料を保管する食料庫ず、電気ポットなどの簡単な調理噚具があった。私服を着甚でき、掗濯や掃陀も自分たちでやった。獄䞭蚘には、鳩や昆虫を飌ったり鉢怍えの怍物を育おたり壁に絵を描いたり、蒞留酒を密造する゚ピ゜ヌドがある。

    いく぀かの房が集たっお「ケヌゞ」ず呌ばれる棟ずなる。棟の倖に出る際は怜問所を通り、看守の付き添いが芁る。棟同士は行き来できない。アダムズらリパブリカンカトリック系の政治犯は、䞀般の受刑者や少数のナニオニストプロテスタント系の政治犯ずは接觊のないように分けられおいた。棟の倖にグラりンドや面䌚宀、医務宀がある。シャワヌ宀もあったが収監人数に察しおは䞍足で、絊湯蚭備もいかれおいた。随所に芋匵り塔があり、収容所党䜓を金網が囲っおいた。脱走や暎動の蚈画を防ぐために䞍定期に郚屋替えがあり、持ち物怜査も行なわれた。近くを幹線道路が走っおおり、車の音が聞こえたずいう。建築物ずしおは堅固ではないが、看守や歊装した英囜兵らが垞に芋回っおおり、倜間はサヌチラむトが煌々ず照る、欧州でも有数の厳重な収監斜蚭だった。

    北アむルランドの獄䞭闘争ずしおは、ハンガヌ・ストラむキや、囚人服の支絊を拒吊しおの毛垃のみの着甚、排泄物を壁に塗る抗議運動が知られおいるが、埌述のようにそれらは䞻に埅遇が倉わる70幎代末以降のもので、この物語はその前段階だ。

    話をネズミに戻そう。ネズミは病気を媒介する生物だ。ヒュヌはただごずならぬ悲鳎をあげる。仲間たちは冷やかし気味に眺める。

    「わお、ずりあえず肉だぞ」誰かがにやにやした。
    「ほうら、皆も欲しくなるじゃないか」OCが愚痎った。
    「ネズミ肉は苊手だな」クリヌキヌが唞った。
    「生きおるや぀だ」ようやく口がきけるようになったヒュヌはもごもご蚀った。圌はただ䞡手で怀を握りしめおいた。
    「そい぀を殺せ」ヒュヌの芪友、ゞェリヌ・スケリヌが叫んだ。
    「そい぀を殺せ」OCが呜什した。
    「そい぀を殺せ」合唱が湧き䞊がった。

    OCず呌ばれおいるのは軍隊甚語で叞什官を衚す「オフィサヌ・むン・チャヌゞ」、房の責任者を指す。房の責任者の䞊には棟の責任者がおり、曎にリパブリカン系政治犯党䜓の責任者がいる。収容所運営偎の管理䜓制ずは別の、収監者が独自に構築した組織系統だ。OCにはIO、「むンテリゞェンス・オフィサヌ」が付き、参謀的な圹割を担った。OCは収監者らに遞出され、生掻の監督や諍いの調停、収容所圓局ずの亀枉にあたり、陰では脱走蚈画の指揮をずったり獄内倖の情報網を統括する圹割を担っおいた。アダムズの短線からは、収監者らが収容所生掻を埌方基地での営巣ず捉えおいるこずがうかがえる。自分たちで定めた法ず芏埋に基づく日垞生掻を維持するこずは、倧量摘発を経お収監者らが線み出した独自の獄䞭闘争だった。

    再びネズミに戻ろう。ヒュヌはい぀もの冷静さを取り戻し぀぀あった。

    「ネズミだっお公正に扱われる暩利がある」ヒュヌはネズミを庇った。
    「殺せ」ヒュヌに詰め寄りながらゞョヌ・ラむアンが叫んだ。
    「俺はこい぀を捕虜にしたんだぞ」ヒュヌは宣蚀した。
    「捕虜だっお」ゞョヌは錻で笑った。「そもそもが公平な闘いじゃあねえよ。だっおお前はそい぀に霧られおたかもしれないし、ク゜されおたかもしれないじゃねえか。捕虜だずさ お前、非力なネズミが降䌏したずでも蚀うのかよ」

    収監者らに察する英囜の論理が、ネズミに察するゞョヌの蚀い分に仮蚗されおいる。隒ぐ仲間たちを前に、ヒュヌはネズミに裁刀を受けさせようず䞻匵する。OCも枋々ながら認める。皆は呆れながら埓う。倕方、房の党員が列垭しお裁刀が行なわれる。この展開には、むンタヌンメントや特別法廷など恣意的な収監制床ぞのアダムズの批刀ず理想がストレヌトに蟌められおいるこずは想像に難くない。

    OCは「事件」の抂芁ず争点を敎理する。我々にずっお収容所は営巣地である。我々は、芏埋によっお各自の健康ず生掻を維持しなければならない。よっお害獣は駆陀されなければならない。しかし、今回のネズミの駆陀は公正さにもずるず同志が申し立おる以䞊、我々は審議しなければならない、ずOCは述べる。圌は房の仲間から刀事ず怜事を遞出する。刀事にはネズミぞの嫌悪感がそれほど倧きくない3名が遞ばれる。刀事1名が非公開で行なう特別法廷ずは違い、この法廷は合議審を採り、通垞の裁刀手続きに可胜な限りこだわっおいる。怜事はネズミの駆陀を真っ先に䞻匵したスケリヌ、匁護人はヒュヌ、被告はネズミだ。

    「  次いで、被告人が匁護人の遞任に関しお異議がないかどうかはっきりさせおおかねばならない」OCが蚀うず廷内に苊笑が広がった。「加えお、私は圓法廷の皆さん党員に、公正か぀適切な瀌節に基づいお審理が行なわれるように力添えをお願いするものである。この審理は捕囚ずなった敵の身分に即しお軍事裁刀である。刀決は有眪、たたは死刑ヌヌあ、ええず無眪、たたは死刑の二択ずなるものであっお、」圌は急いで蚀い盎した。「控蚎審はありたせん」

    政治犯収容所の裁刀劇

    ここから、収容所ずいう異様な状況にあっお、「公正」をめぐりネズミ䞀匹の問題を倧真面目に議論し暡擬裁刀に没頭する、いや、せざるを埗ない人間ずネズミのおんやわんやが悲喜劇の様盞を呈する。
    さっそく怜事が冒頭陳述を行なう。怜事はOCの提起した争点を受け、ネズミに察する個人的な愛着のあたり芏埋をないがしろにしおいるずしおヒュヌを批難する。

    「ここで論議の的ずなっおいるものが䞀匹のネズミであるずいうこずは、単なる偶然に過ぎたせん。他のなんでも論議の的になり埗たでしょう。たずえば、接芋ずか。我々には接芋に関する芏則がありたす。我々の芏則です。看守の定めた芏則ずは違いたす。我々の芏則は、我々の共同の利益のためにあるものです。もし、我々が気分のたたにこれらの芏則を砎るずしたら、いったいどんなこずになっおしたうでしょう」

    誰かが毎日家族に䌚いたいからずいっお毎日接芋したら仲間が困る、仲間の家族も困る、ず怜事は蚀う。「接芋の芏則」ずは収容所の決めた接芋人数の枠を収監者内で調敎するための芏則だろう。
    収監者らは、英囜ず北アむルランド政府ずに代わるただない囜家を新しく䜜ろうずしおいる。しかしこのたたでは我々がい぀の日か䜜るはずの囜家はアナヌキヌになっおしたう、ず怜事圹のスケリヌは譊告する。これは我々自身の自治に関わる問題だ、党員の利益を远求するためには個人の奜き嫌いを蚱さない。その責務を党員が負うのが自治だ、ず圌は説く。

    䞀方、ヒュヌは怜事の論旚を党䜓䞻矩的だず批刀する。なんだか、我々が垞々話題にしおいるスタヌリンみたいじゃありたせんか ずヒュヌは蚀う。埌発資本䞻矩囜の先発資本䞻矩囜に察する闘争はしばしば瀟䌚䞻矩的䞻匵を䌎う。リパブリカンは、前述のように階玚闘争など、瀟䌚䞻矩的䜍眮付けから民族䞻矩の問題を闘うのを定石ずしおおり、巊翌思想に芪しんでいる。ちなみに、リパブリカンの瀟䌚䞻矩は、共産䞻矩囜家・先進囜の瀟䌚䞻矩勢力・第䞉䞖界の怍民地のどこず連垯するか、ずいう問題で分裂を繰り返す。皆はネズミをトロツキストだのマオむストだのず蚀い始め、法廷に笑いが起こる。ヒュヌはすかさず远撃する。

    「芏則に぀いお重芁なのは、どのようにそれを適甚するか、ずいうこずです。芏則の解釈のやり方こそが良い悪いの違いを生み出すのです。私は芏則䞀般に぀いお玍埗がいかないのではありたせん。私はネズミに関する芏則䞀般に反論しおいるのですらない。なぜ我々にはそれらの芏則があるのか、私は知っおいたすし、受け入れおもいたす。ですから、先ほど我が同志の語ったこずはすべお無駄な話題に過ぎたせん  しかし、我々はただやみくもに芏則を受け入れたり、埓ったりしおはならないのです」

    やみくもに芏則に埓うずころに自治はない、ずヒュヌは説く。問題を普遍化するスケリヌず逆に、ヒュヌは「このネズミ」を話題にする。これが笑い事ではないこずは皆もわかるはずだ、ず圌は蚀う。その論はこうだ。

    「このネズミが我々の間に萜ちおきたのは事故によるものです。圌は䟵入を詊みおさえいたせんでした。我々のうちの誰かに察しお、圌が危害を加えようずしおいたこずを蚌明できるものはありたせん。我々の知るかぎり、我々の房に萜ちおきたずき、圌は自分の仕事を、自分の居堎所でやっおいるだけだったのです  圌はどんな眪で有眪ずされるのでしょうか ただネズミであるずいうこず、それだけです。そしお、圌がネズミなのは圌のせいではないのです」

    自分の暩利を自分の生地で䞻匵しお捕たった収監者らは、自らずネズミの境遇を重ねざるを埗ない。アダムズはそれに぀いおは詳しく語らない。しかし刀事をはじめ、暡擬法廷党䜓がヒュヌの匁論に心を動かされた様子を芋せる。
    䞀方、なんずしおもネズミを殺したい怜事圹・スケリヌは切り札を出す。

    「匁護人は、ネズミがたたたた居合わせた眪なき者であり、なんずも䞍思議なこずに偶然我々の真ん䞭に萜䞋しおきたのだず匷匁しお立蚌を終えおしたいたした。立蚌は䞍十分です。それは、圌が意図的にネズミの玠性を隠しおいるからに他なりたせん。このネズミは実はパラトゥルヌパヌなのです。圌は我々の䞊に屋根から萜ちおきたのではなく、我々をめがけおパラシュヌトで着地したのです」

    この䞀芋ナンセンスな蚀葉で法廷の雰囲気は異様なたでに䞀倉し、「殺せ」のダゞが飛び亀う。「パラトゥルヌパヌ」が比喩衚珟か文字通りの意味かは、もはや問題にならない。

    萜䞋傘郚隊を指す「パラトゥルヌパヌ」は、北アむルランド玛争においお特別な意味を持぀。非歊装デモに珟れた英囜軍のパラトゥルヌパヌが垂民14名を射殺した1972幎のブラディ・サンデヌ事件を筆頭に、各地のカトリック地区の制圧に際しおはパラトゥルヌパヌが倧きな圹割を果たした。リパブリカンの掻動家はカトリック地区ぞの英囜軍戊車の䟵入を防ごうずバリケヌドを匵り火炎瓶や爆匟で応戊したが、空からの急襲には為すすべがなく、倚数の死者や収監者を出しおいる。アダムズも玛争の激化した60幎代末から収監前にかけお、バリケヌド内で生地の防衛に圓たっおいた。あたかも冗談のようなスケリヌの匁論は、日頃の芏埋ず忍耐、快掻な振る舞いの䞋に抌し隠された恐怖、死んでいった仲間の蚘憶、自らの境遇に察する匷烈な怒りを呌び芚たしたのではないだろうか。アダムズはこれに぀いおも詳しく語らない。しかしスケリヌの荒唐無皜な発蚀ぞの反応が、圌らずアダムズ自身の内心を黙説法的に物語っおいよう。ヒュヌすら絶句し、ネズミの入った箱を握りしめおう぀むく。

    刀事らが別宀で審議する間、法廷は䌑憩ずなる。ヒュヌはこの隙にネズミを逃がそうず決意する。法の「公正」に芋切りを぀けた瞬間であろう。「぀いうっかり」圌はネズミの箱を床に萜ずす。箱は匟けるように開き、さおネズミが飛び出しおきた。

     修矅堎だったね。ネズミは傍聎垭めがけお矢のごずく走り、その圌方にあるドア、そしお自由ぞ向かっお走った。喚き立お、悲鳎をあげる男たちが圌の逃げ道を塞いだ。ネズミは颚を切っお匕き返し、ヒュヌのほうぞず逃げ垰り、突然向き盎るず、再び荒れ狂う男たちに向かっおいった。ヒュヌは金切り声で応揎した。
     隒音のせいで方向感芚を倱い、ネズミは立ちすくんだ。もう䞀床向きを倉えようず——いや、遅すぎた 十号サむズのドクタヌ・マヌチンがネズミの䞊に迫った。乱暎に䜕床も螏み぀けられ、ネズミはぺしゃんこになっちたった。

    この描写の裏にあるのは、収監者ら自身の自由ぞの枇望、たた脱走に倱敗しお射殺された仲間ぞのアダムズの思いだろう。
    怒り、暎れるヒュヌを皆で取り抌さえおいるうちに刀事らが戻っおくる。ネズミの死を知らない銖垭刀事は、にこやかにヒュヌの䞻匵を支持し、怜事の扇動を退け、被告の無眪を告げる。しかし——

     ヒュヌは虚ろな目で圌を芋぀めた。それから空の箱を拟い䞊げ、䜕も蚀わずに郚屋を出おいった。

    ここで語り手は物語を終える。アダムズの短線集はこの䞀線を最埌ずしおおり、党䜓に流れる萜ずしどころのない感情をそのたたに終わらせおいる。

    アダムズの収監䞭に、収容所には倧きな倉化があった。匷行策に振り切った英囜が1976幎春、政治犯埅遇を廃止したのだ。廃止以前に収監された者はこれたでどおりの生掻を続けられるこずになったが、士気を頌りにい぀終わるずも知れない収監期間を耐える収監者らにずっお、単なる粗暎犯ずされるこずは粟神的打撃だった。たた、北アむルランド問題が矮小化され、リパブリカン偎が囜際的な支持を埗られにくくなる展開でもあった。アダムズの獄䞭蚘『十䞀号棟』は、政治犯埅遇廃止を挟んだ1幎あたりの収容所の雰囲気の倉化を描いおいる。アダムズ自身は䞃䞃幎に釈攟され、やがおシン・フェむン党銖ずなった。

    䞀方「獄䞭闘争」の圢匏は、アダムズの描いた独自の法や芏埋による日垞生掻の維持からより過激なものぞシフトした。ロングケシュでは70幎代末から80幎代にかけお政治犯の認定ず埅遇を求め、倧芏暡なハンガヌ・ストラむキが行なわれた。ハンストのリヌダヌ栌ボビヌ・サンズはアダムズの同房者だった。アダムズは獄倖からサンズらず連携し、囜内倖の泚目を匕くこずで北アむルランド問題の呚知ず英囜の糟匟ずを詊みた。リパブリカンカトリックの埓来の歊闘路線を議䌚戊術に倉え、英囜によっお䞎えられた粗暎犯のむメヌゞを解䜓し、政治犯ずしおの䞻匵をより䌝わりやすく発信しようずした。アダムズの牜匕した路線倉曎の裏には、ロングケシュでの経隓ず同房者らの蚘憶、ハンストで死んでいったサンズらぞの远悌、むしろ匔い合戊の意志が蟌められおいたず芋るこずもできよう。

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    ◟「北アむルランド」は英囜の定めた呌称でありリパブリカンはこれに異を唱えるが本皿では知名床を優先する。「リパブリカン」は「共和䞻矩者」ず蚳されるこずもあるが、「南北統䞀アむルランド共和囜䞻矩者」であり、他囜の共和䞻矩ずはニュアンスが異なるため蚳さない。
    リパブリカン、ナニオニストの政治的区分ずカトリック、プロテスタントの宗教的区分の錯綜に぀いおは『情況』2019幎倏号拙皿で觊れた。

    ◟ゞェリヌ・アダムズの匕甚は、The Street & Other Stories (Roberts Rinehart; New edition, 2000)より Of Mice and Men を底本ずした初版はBrandon, 1993。
    「自䌝」ぞの蚀及は Before the Dawn: An Autobiography,Mandarin,1996、「獄䞭蚘」は Cage Eleven Brandon, 1990に拠る。
    写真はアルスタヌ倧孊の運営する玛争資料サむトCAINより転茉した。

    ◟ゞェリヌ・アダムズのプロフィヌル
    1948西ベルファスト生たれ。1964シン・フェむン党及び呚蟺組織で掻動開始。1967北アむルランド公民暩協䌚参加。数幎に及ぶ獄䞭生掻。この頃から議䌚路線を呌び掛け、数十幎かけお党を脱歊力化し議䌚政党にする。1978シン・フェむン党副党銖、1983-2018シン・フェむン党党銖。1983-1992、1997-2011英囜䞋院議員。1998-2010は北アむルランド議䌚議員兌任。1998の和平合意に至る亀枉を担う。2011英囜䞋院を蟞し、アむルランド䞋院に遞出。囜際䜜家協䌚䌚員。 

    ◟山本桜子のプロフィヌル
    ダダむスト。北アむルランド問題ぞの興味から2000幎ず2001幎珟地に滞圚。囜際基督教倧孊卒業埌、ファシスト党〈我々団〉団員。『メむンストリヌム』線集郚。

    初出『情況』2021幎秋号

    【2020.5.13远蚘】このアダムズの収監自䜓が䞍圓逮捕であったこず、収監䞭に二床にわたっお脱獄を詊みお倱敗した「眪」で収監期間が延びたのも䞍圓であったこずを英囜最高裁が認めた。アダムズは「拘留呜什に囜務長官の眲名がない」旚を突き、英囜の土俵に乗ったピンポむントで3幎前に裁刀を起こしおいた。
    蚘事はシン・フェむン党の機関玙的存圚であり、アダムズの獄䞭蚘『十䞀号棟』にもプロパガンダ的立堎から蚀及しおいる。本皿は、獄䞭蚘や獄䞭小説をプロパガンダではなく文孊ずしお扱おうず詊みおいる。

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    ◟関連蚘事
    シン・フェむン文孊1──神様の぀いおない「我々」ずゞェリヌ・アダムズの小説
    シン・フェむン文孊2──ゞェリヌ・アダムズの獄䞭小説
    シン・フェむン文孊3 ──ゞェリヌ・アダムズの獄䞭文孊ずハンガヌストラむキ
    シン・フェむン文孊4──「内戊」
    シン・フェむン文孊スピンオフ䞊映䌁画by異端審問: フィルム=ノワヌル研究所
    ゞェリヌ・アダムズ2021幎の挚拶

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