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1_ゲーム企画書の書き方|企画を通すために、最初に決めるべき目的と相手

    本記事は、ゲームの企画を第三者に提示し、開発の継続、協力、予算、販売、掲載といった何らかの判断をしてもらう人に向けて書いています。

    今回の記事は、具体的にどう考えて設計すべきか?のところに焦点を当てています。個別具体的な深掘りは他の記事もありますので、参照記事を添付しています。

    本シリーズは全3回でお届けしています
    1_ゲーム企画書の書き方|企画を通すために、最初に決めるべき目的と相手
    https://note.com/ukyousan/n/n498bcbcd5b2f
    ・個人、法人向け

    2_ゲーム開発の予算の決め方|許容損失から考える予算設計
    https://note.com/ukyousan/n/n4a9caa2d8645
    ・主に法人向け

    3_ゲームの値段の決め方|市場価格はいくらで、その中でどう決めるか
    https://note.com/ukyousan/n/n443e5d37808d
    ・個人、法人向け

    個人向けの記事は他にもございます。

    ゲーム企画書の作り方。製作の参考例。考え方
    https://note.com/ukyousan/n/nfbf1ff732884
    ゲーム企画書、仕様書の書き方、フォーマットをご紹介
    https://note.com/ukyousan/n/neea2e631702b

    はじめに|対外的な企画書は、通らなかったあとに直しても遅い

    「面白いですね」と言われた。けれど、開発のGOは出ない。協力者も予算も手に入らない。

    企画書は読まれたはずです。それなのに、なぜ何も決まらなかったのか。

    多くの場合、ゲームの魅力や熱意が足りないからではありません。相手が「この企画に乗って大丈夫か」「いま判断する理由があるか」を判断できるだけの情報が、資料に揃っていないことが多いからです。

    下手をすれば、ペラペラっとめくられて終わりということすらも多々あります。

    企画書に世界観、キャラクター、画面イメージ、こだわりを積み上げても、相手の不安が残れば企画は動きません。このずれは、企画書を書き始める前の一行で直せます。

    「この企画書は、誰に、何を判断してもらうための資料なのか。」

    まず、言葉を分けておきます。本記事でいう企画書は、ゲームの狙い、対象プレイヤー、面白さ、開発条件を関係者に伝え、方針や実施を判断してもらうための資料です。仕様書は、その判断の後に、プランナー、プログラマー、アーティストなどが実装・制作するために参照する詳細な設計資料です。役目が違うので、書く目的も、最初に置く情報も違います。

    私はゲームの企画書を20年以上書いてきました。通ったものもあれば、跡形もなく消えたものもあります。ここで書くのは唯一の正解ではありません。ゲーム開発の現場で、企画を通すために私が使ってきた考え方の一例です。


    I|目的が変われば、企画書は別の資料になる

    企画書を書こうとすると、多くの人はいきなり「何を書くか」を考えます。テンプレートを探す。参考資料を集める。スライドを開く。

    しかし順番は逆です。先に決めるべきなのは、何のために書くのかです。目的が空欄のままフォーマットを埋め始めると、必要のない項目を増やすか、本当に必要な項目を落とすかのどちらかになります。

    同じゲームを扱っていても、最初に書く資料には大きく2種類あります。

    I. 自分の判断を残す、企画概要

    個人開発や企画初期には、まず企画概要、あるいは企画メモと呼べる短い文書を残しておくことをおすすめします。これは誰かを説得するための資料ではありません。ゲームの核を見失わず、試作の結果に合わせて判断を戻すための資料です。

    最初の1枚に必要なのは、たとえば次の程度です。

    • プレイヤーは誰で、何を繰り返して遊ぶゲームなのか。

    • 最初のプロトタイプで、何を確かめたいのか。

    • 今回の開発範囲に入れないものは何か。

    プロトタイプとは、完成版を作る前に、ゲームの核となる遊びが成立するかを確かめる試作です。画面を完成させたり、全ステージを揃えたりする段階ではありません。まず実機で動かす。触る。面白さの手応えを確かめる。そのため、初期の企画概要に多くの画面イメージは要りません。

    ただし、コンセプト、コアとなる遊び、対象プレイヤー、開発範囲まで見失うと、試作のたびに別のゲームになっていきます。細部は変えていい。ただ、何を作るのか、誰に届けるのか、どこまで作るのかだけは、いつでも引き出せる場所に残します。

    II. 第三者に判断してもらう、対外用の企画書

    その資料を第三者に見せる瞬間、目的が変わります。開発チームに参加してもらう。外部協力会社へ発注する。プロデューサーやパブリッシャーに開発・販売を提案する。プラットフォームに掲載を相談する。どの場合も、相手には判断が必要です。

    対外用の企画書は、自分の考えを整理するメモではありません。相手が、協力するか、予算を出すか、社内に持ち帰るかを判断するための資料です。

    ここで初めて、相手の不安を扱う必要が出てきます。相手は「面白いか」だけを見ているわけではありません。「作れるか」「終わるか」「自分の側にどんな価値があるか」「想定外のことが起きたときにどうするか」も同時に見ています。

    熱意では動かない、相手の判断

    起業家が投資家に事業計画を提示する場面を調べた研究があります。発表者の熱意と準備の度合いのどちらが資金提供の判断に効くのかを、実験と実地調査で確かめたものです。結果として、資金提供の判断に正の影響を与えたのは準備の度合いで、熱意ではありませんでした。

    もちろん、投資家向けの研究結果を、ゲーム企画書のすべてにそのまま当てはめることはできません。それでも、ゲーム開発の現場で見てきた感覚とはよく合います。企画書を出す人は、たいていそのゲームが好きです。熱意は前提であり、差がつくのは、相手が判断に必要な情報へ答えられているかどうかです。


    II|宛先が変われば、1枚目が変わる

    目的を決めたら、次に考えるのは資料の組み立てです。対外用の企画書なら、最初に「誰に、何を判断してもらうのか」を決めます。

    ここでいう1枚目とは、提案資料の冒頭に置く要約ページです。相手が最初に見るこのページで、ゲームの狙いと、自分に関係する判断材料が分からなければ、その後のページも読み方が定まりません。

    作り始める前に、手元のメモへ次の2行を書いてください。

    • この企画書は、誰に何を判断してもらうための資料か。

    • その相手は、何をリスクだと感じるか。

    ゲーム開発で企画書を出す相手は、たとえば次のように分かれます。

    I. 開発チーム・プロデューサー

    社内の企画会議や開発チームに出す資料です。ここで見られるのは、ゲームの面白さに加えて、技術的に成立するか、必要な人数と期間で完成できるか、既存の技術・アセットを使えるかです。冒頭にはコンセプト、コアゲームループ、開発範囲、開発体制を置きます。

    II. パブリッシャー・出資者

    パブリッシャーとは、開発資金、販売、マーケティング、流通などを担う会社です。この相手は、ゲームが作れるかだけでなく、誰が遊ぶのか、どう売るのか、どの程度の投資が必要で、何を成果とするのかを見ます。冒頭には対象プレイヤー、競合との差、販売計画、開発予算と期間を置きます。

    III. 外部協力会社・外注先

    アート、サウンド、プログラム、QAなどを依頼する相手です。相手が困るのは、作業範囲が曖昧なこと、途中で仕様が膨らむこと、判断者が不在なことです。依頼内容、成果物、必要な仕様、締切、報酬、未確定事項を先に示します。

    IV. プラットフォーム・販売先

    配信プラットフォーム、ストア、イベント、展示先に見せる資料です。ここでは、どのプレイヤーにどう届くゲームなのか、その場の利用者やラインアップとどう合うのか、いつどの状態で出せるのかが重要になります。

    V. 決裁者

    企画書を最初に受け取る人が、最終承認者ではないことは珍しくありません。持ち帰って共有されるなら、あなたがいない場所でも意味が通る資料が必要です。ここでいう決裁者は、最終的に開発・予算・契約の可否を決める人のことです。その人へ転送されても判断できるように、1枚目だけは単独で意味が通る形にします。

    同じゲームでも、パブリッシャーに出す資料と、外部協力会社へ出す資料の1枚目は別物です。共通する情報を本体に置くことはできます。それでも、相手が最初に判断したいことに合わせて、1枚目の順番と厚みは変えるべきです。


    III|対外用の企画書を支える、5つの中身

    相手によって順番は変わりますが、対外用の企画書に必要な中身には共通項があります。これは固定の目次ではありません。相手が判断するために、最終的に答えを持っておくべき5つの質問です。

    I. コンセプト|このゲームは何か

    コンセプトは、ゲームの狙いを短く言い切る言葉です。ゲームジャンルだけでなく、プレイヤーが何をして、何を面白いと感じるのかまで入れます。

    「優しくて少し切ない世界観のRPG」では、何を遊ぶゲームなのかが分かりません。「引っ越し当日の街を探索し、残された思い出を集める短編アドベンチャー」なら、プレイヤーの行動とゲームの核が見えます。

    II. 対象プレイヤー|誰のためのゲームか

    「幅広い人に遊んでほしい」は、企画書では情報になりません。対象プレイヤーは、年齢だけでなく、どんなゲーム経験があり、どんな場面で遊び、何を求める人なのかまで具体化します。

    対象を狭めることは、遊べる人を減らすことではありません。誰に届けるかを決めることで、操作、難易度、価格、ストアページ、プロモーションまで判断できるようになります。

    III. コアゲームループ|何を繰り返すのか

    コアゲームループとは、プレイヤーが繰り返す基本行動の流れです。たとえば「探索する → 敵と戦う → 素材を得る → 装備を強くする → さらに難しい場所へ行く」という流れです。

    このループが説明できると、ゲームの面白さが1回きりの思いつきではなく、遊び続けられる仕組みとして伝わります。継続運営型のゲームでは、毎日・毎週戻る理由まで説明する必要があります。買い切り型のゲームでも、1プレイのなかでプレイヤーが何を繰り返し、何を達成するのかは必要です。

    IV. 開発範囲と開発計画|どこまで作るのか

    開発範囲は、現場ではスコープとも呼ばれます。ゲームに含める機能、ステージ数、キャラクター数、対応プラットフォーム、必要な人員と工数の範囲です。ここが曖昧だと、面白そうなアイデアが増えるほど、完成が遠のきます。

    見積もりでは、分からないことを分からないまま書く勇気が要ります。人は作業時間を楽観的に見積もりやすい傾向があり、計画錯誤と呼ばれます。

    ただし、開発の遅れをすべて楽観のせいにするのも正確ではありません。制作では、試作や実装を進めて初めて分かる技術的な課題も多いからです。

    だから私は、決まっていることは明記し、未確定のことは未確定だと書きます。相手が怖いのは、期間が長いことそのものより、後から説明なく前提が変わることです。

    V. 成功条件|何が起きたら成功か

    企画が終わったとき、何が起きていたら成功なのかを決めます。販売本数、ウィッシュリスト登録数、テストプレイの継続率、次の開発資金につながる商談数など、企画の目的に合う数字を置きます。

    「たくさんの人に遊んでもらう」は意欲であって、成功条件ではありません。数字を置くのは、強気に見せるためではなく、企画の後に同じ基準で振り返るためです。


    IV|ゲームループは、遊びの核を説明する

    ゲーム開発では、ゲームループを早い段階で整理します。ゲームループとは、プレイヤーが何を行い、どんな報酬や変化を得て、次に何をしたくなるのかという循環です。

    これは継続運営型のゲームだけの話ではありません。パズル、アクション、RPG、シミュレーションでも、プレイヤーが繰り返す行動と、その結果得られる手応えが説明できなければ、ゲームの核は伝わりません。

    ただし、すべてのゲームに「2回目の購入」や「毎日のログイン」を無理に入れる必要はありません。買い切り型の短編ゲームなら、プレイヤーが最初の30分で何を体験し、最後まで進みたくなる理由は何かを示せばよい。ライブサービス型のゲームなら、日次・週次の目標、成長、イベントなど、継続して戻る理由まで示す必要があります。

    対外用の企画書でゲームループを説明する意味は、ゲームの面白さと、開発・運営の前提を同時に伝えられることです。プレイヤーが何をするゲームなのか。必要なコンテンツ量はどの程度か。どこで成長や課金が発生するのか。こうした話が、ループを起点に整理できます。

    ゲームループが実際の企画書でどう描かれているかは、以下の記事で確認できます。

    ・ゲーム企画書の作り方【ファンタジーRPG編】勝負は表紙で決まる。冒頭2ページの設計
    https://note.com/ukyousan/n/nc4c9c2c4dcdd

    ・ゲーム企画書の実例。サバイバルホラー「あけておねがい」の企画書10枚と、そこに至るまでの考え方
    https://note.com/ukyousan/n/nfbf1ff732884


     
     
    職場で詰んだと感じている人のための仕事設計術|評価・キャリア・報酬の構造を自分で動かす方法を発信||ゲーム業界26年・100タイトルの現場から。ゲームプロデューサー兼マーケッター|

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