
AIとゲームを作る時の注意点(AIゲーム開発 Vol.4)
これまでの回は、こちらです。
AIを使ったゲームの作り方(予告編)
https://note.com/ukyousan/n/n8856d2f1d7f8AIを使ったゲームの作り方 Vol.2 7つの手段と最初の1本
https://note.com/ukyousan/n/n0315cf4e9931AIを使ったゲームの作り方 Vol.3 目的で変わるAIの使い方
https://note.com/ukyousan/n/n98c135274207番外編|AIで作ったゲームを調整するための「狙い・型・つまみ」の作り方
https://note.com/ukyousan/n/nc7294c97d599
前回は、何のために作るのか、つまり出口を決める話を書きました。就活のための作品なのか、収益化をイメージした制作なのか。出口が決まると、AIの使い方も決まってくる、という話でしたね。今回は、いよいよ何を作るかを決める回、企画の話です。
前提として、この記事における「企画」はゲームを作るためのアイディアをまとめる、というぐらいにしておきます。
この記事のターゲット
・初心者だけど個人でゲームを作ってみたい人
・就活のため、経験を積む目的でゲームを作ろうとしている人
・いずれ収益化することをイメージしながら、個人制作の経験を積みたい人
この連載で書くこと
・AIを使いながら、1本のゲームを完成させて世に出すまでの段取り
・工程ごとの、AIに任せていいことと、任せてはいけないこと
この連載で約束しないこと
・読めば儲かる、という話ではありません
・組織向けではありません
今回(vol.4)で持ち帰ってほしいこと
・AIでアイデアを出して、1つに絞るまでの手順
「あれ、vol.2では、いきなりコンセプトを考え込んだり、資料を作り込んだりするなと言っていなかったっけ」と思った方もいるかもしれません。安心してください、矛盾はしません。ここで言う企画は、何ページもある資料を作ることではなく、何を作るかを決めて、ほかを捨てることだからです。そしてこれは、AIを使うと昔よりずっと速くできるようになりました。ただ、使い方を間違えると、どこかで見たようなゲームしか作れなくなってしまいます。今回は、その使い方の話をしていきます。
Ⅰ|企画とは、何を作るかを決めて、ほかを捨てること
企画というと、面白いアイデアをひねり出すことだと思われがちです。もちろんそれも企画の一部ですが、実際の企画でもっと大事なのは、何を作らないかを決めることのほうなんですね。
作りたいものを思い浮かべていると、たいていどんどん増えていきます。敵の種類を増やしたい、ステージを10個作りたい、キャラクターを育てる要素も入れたい、お店もあったほうがいい。
皆さんにも覚えがあるのではないでしょうか。冷蔵庫に残っている材料を全部入れて鍋を作ると、何の味なのか分からなくなりますよね。企画も同じで、思いついたものを全部入れたゲームは、何が面白いのか分からなくなりますし、そもそもほとんど完成しません。個人で作るなら、なおさらです。
だから、初心者の企画は、1枚どころか一行で十分です。
「上から落ちてくる石をよけながら、宝石を集めるゲーム。3分で終わる」「部屋が1つだけの脱出ゲーム。アイテムは3つ」。このくらいで構いません。何を作るのかを一行で言えれば、作っている途中で迷ったときに、その一行に戻ってこられます。そして、その一行に入らないものは、今回は作らないと決めるわけです。
出し切ってまとめたり捨てる。ここが初心者向けの企画のスタートです。
Ⅱ|AIにアイデアを出させると、平均に寄る
では、そのアイデアをどう出すか。今は、AIに頼めば一瞬で出てきます。
ただ、ここは先にはっきり書いておきますね。AIに企画を出させると、平均的なものになりやすくないます。というか、インプットが甘いからそうなるということです。
当たり前ですが、AIを使っている皆さんならばよくわかると思いますが、面白いゲームの企画を作ってというと、すごく漠然とした平均的に売れているような情報からデータをとってきます。
それもそのはず。具体的にどのジャンルでとか、どういうプラットフォームでとかいう話すら出てきてないないので、すごく当たり障りのない情報の中から平均値をアウトプットしやすくなっているだけの話です。
試しに、AIに「面白いゲームのアイデアを10個出して」と頼んでみてください。時間を操るパズル、カードを集めて戦うゲーム、遊ぶたびにマップが変わる冒険、農場を育てるゲーム。おそらく、どこかで見たことがある形がずらりと並ぶはずです。
これは、AIが悪いわけではありません。AIは、世の中にたくさんある情報から、よくある組み合わせを出すのが得意な道具です。だから、何も条件を付けずに頼めば、いちばんよくある形、つまり平均的な答えが返ってくるのは、当たり前のことなんです。
それでも、AIにアイデアを出させる価値は大きいと私は思っています。自分一人なら1時間かかる数のアイデアを、数秒で出してくれるからです。平均的なものがずらりと並ぶと、「これはよくある形だな」「でも、ここだけは面白いかも」と、自分の中の判断が不思議とはっきりしてきます。AIの案は、そうやって自分の判断を引き出すための材料だと考えてもらえればいいと思います。
Ⅲ|AIの案は、突っ込んで直すか、膨らませる
では、AIから出てきた案を、どう扱えばいいのか。私が実際にやっているのは、大きく分けて2つです。
1. 想定とずれていたら、そこを突っ込んで直す
自分の中に、なんとなく作りたいイメージがあるとします。AIの案を見て、そのイメージとずれているところがあったら、どこがずれているのかを言葉にして、そこを突っ込みます。 たとえば、こんな具合です。
この案は、操作が多すぎます。
ボタン1つだけで遊べる形に直してください。
1回の遊びが長すぎます。3分で1回が終わるように直してください。
敵を倒す爽快感より、ギリギリでよける緊張感を中心にしたいです。その方向で組み直してください。
ここで大事なのは、ずれを自分で言葉にできるかどうかです。「なんか違う」とだけ伝えても、AIもどう直していいのか分かりません。何が違うのかを言えるようになることが、実は企画の力そのものなんですね。
そしてゲームの企画となる場合、AIに入れる情報はプラットフォームと対象年齢ぐらいは添えておくといいかと思います。
多分作りたいものが頭の中に漠然とあるのだったら、とりあえず参考にしている作品なども入力するといいかもしれません。欲を言えば、そのゲームのどこのどういう部分が好きなのか?などをより具体的な情報とセットで入れられると理想です。
そうすることで初めて精度が定まっていくからです。
2. 想像になかったけど面白そうなら、それを基準に膨らませる
逆に、自分の想像になかったものが出てくることもあります。そのとき「なんか面白そうだな」と思ったら、捨てずに、出てきたものを基準にして企画を膨らませます。
この案の中の「落とした物が、次のステージで足場になる」という部分だけを残して、3分で遊べるゲームに広げてください。
この仕組みを中心にするとしたら、どんな遊び方がありえますか。5つ出してください。
突っ込んで直すにしても、膨らませるにしても、AIの案はそれ自体が完成品ではなく、あくまでたたき台です。そして、どちらを選ぶのか、どこを残すのかを決めているのは自分です。vol.3で「AIで作ることは制作のサポートであって、考えることを手放してはいけない」と書きましたが、企画の場面では、それがこういう形になるわけです。
Ⅳ|量を出させて、自分で捨てる
ここからは、具体的な手順です。まず、AIにアイデアをたくさん出してもらいます。このとき、条件を付けて頼むと、少しだけ平均から離れた案が出やすくなります。
次の条件で、ゲームのアイデアを30個出してください。
・ブラウザで遊べる2Dのゲーム
・1回3分で終わる
・操作はマウスのクリックだけ
・よくあるジャンルに、ひねりを1つだけ加える
それぞれ、一行で説明してください。
30個出てきたら、ここからが本番です。捨てていきます。私が企画を捨てるときの基準は、大きく3つあります。
1つ目は、作るのが相当ハードになりそうだと思った企画です。これは、作った経験がないとなかなか分かりにくい基準ではあります。面白そうでも、作るのに何か月もかかりそうなもの、今の自分の腕では作れそうにないものは、思い切って捨てます。初心者のうちは「画面は1枚で済むか」「3分で終わるか」を目安にして、これに収まらないものは今回は見送る、くらいでちょうどいいと思います。
2つ目は、どうしようもない企画です。読んでも面白さが想像できないもの、どこかで見たものそのままのもの。30個あれば、半分以上はここで消えるはずです。それで大丈夫です。
そして3つ目が、ある程度進めていても、面白くするには複雑にするしかないと感じた企画です。これが一番厄介なので、次の節でくわしく書きます。
こうして捨てていって、残った3つくらいを、それぞれ一行にしてください。そこから1つを選ぶ基準は、とてもシンプルです。3つの中で、自分がいちばん作ってみたいと思えるものを選んでください。作りたい気持ちがないものは、どんなに良さそうに見えても、途中で手が止まってしまいますから。

Ⅴ|「俺、天才じゃん」と思ったルールほど疑う
3つ目の捨てる基準について、もう少しくわしく書きます。ゲームを面白くしようとすると、いろいろなルールや仕様を付け足したくなるものです。とくに、自分で独自のルールを思いついたときですね。「この仕組み、誰もやっていないぞ」「俺、天才じゃん」と思う瞬間が、ゲームを作っていると本当によくあります。正直に言うと、私にもあります。
でも、ここで一度立ち止まってほしいんです。誰も知らないルールを、多くの人が楽しめるようにするには、相当な工夫がいります。 どう見せるのか。触ったときに、何が起きたのかを直感で分かるのか。その手ごたえが、音や動きでちゃんと返ってくるのか。演出で分かりやすくなっているのか。そして、その結果どうなったのかを、プレイヤーが把握できるのか。これらが全部セットで伝わって、ようやく新しいルールは面白さになるわけです。
説明書がやたらと分厚いボードゲームを買って、箱を開けたまま結局遊ばなかった、という経験はないでしょうか。ゲームも同じで、1つ1つをいちいち説明しないと理解できない仕様や企画は、あまりいいものではないことが多いんです。説明を読まないと遊べないゲームは、説明を読む前にやめられてしまいます。だから、1つの面白さを作りたいのに、そこにたどり着くまでの過程が複雑すぎる、分かりにくいと判断したら、どれだけ気に入っていても捨てます。
そして、ここはAIと企画を考えるときに、特に気をつけてほしいところでもあります。AIは、複雑なルールでもそれらしく整えて説明してくれるので、文章で読むとすごく面白そうに見えるんですね。ところが、実際に作って遊んでみると、何をすればいいのか分からない。そういうことが本当によく起きます。
vol.2で、最初の1本は「すでに完成されたゲームのルールを再現する」のがおすすめだと書いたのを覚えているでしょうか。定番のルールは、何十年も遊ばれてくる中で、説明しなくても分かる形に磨かれています。新しいルールを考えるときは、定番のルールに、ひねりを1つだけ加えるくらいから始めるのが、一番安全だと思います。
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