
「下剋上」が始まったのか。ミシュラングレープ MICHELIN Grapesが示した、ブルゴーニュの新しい評価軸
2026年7月7日、ミシュランガイドは、ブルゴーニュを対象とした初めてのワインガイド「MICHELIN Grapes」を発表した。
レストランの星、ホテルのキーに続く、新たな評価制度である。
初回の対象となったのはブルゴーニュのみ。
ブリュノ、おめでとう!
ミシュランの新しいワインガイド「ミシュラングレープ (MICHELIN Grapes)」の結果を見た瞬間、最初に思い浮かんだのは、その言葉だった。
ブルゴーニュで初めて発表されたこの評価で、メルキュレのドメーヌ ブリュノ・ロランゾン (Domaine Bruno Lorenzon)は「2 Grapes」を受賞した。
もちろん驚きはあった。
しかし、何度も畑を歩き、醸造所を訪れ、ブリュノ・ロランゾン氏の仕事を見てきた私にとって、この評価は決して不思議ではなかった。
「下剋上」が始まった
ブルゴーニュ全体を見渡すと、今回の結果は非常に興味深い。
歴史ある名門ドメーヌが名を連ねる一方で、ブルゴーニュでは比較的新しいドメーヌや、これまで必ずしも最高峰として語られてこなかった生産者も高く評価された。
一方、これまで世界最高峰と評価されてきた名門ドメーヌの中にも、最高評価の「3 Grapes」ではなく、「2 Grapes」や「1 Grape」に位置付けられた生産者が少なくない。
もちろん、それは名門ドメーヌの価値が下がったという意味ではない。今回高く評価された生産者の多くも、以前から専門家の間では実力派として知られてきた。
しかし、ミシュランという世界的な評価機関が、従来の知名度や歴史、市場での評価だけではなく、新たな視点からドメーヌを評価した意義は大きい。
少し大げさかもしれないが、「下剋上」が始まったと感じた人も少なくないだろう。
今回、ミシュランが掲げた評価基準は、「栽培」「醸造技術」「ドメーヌの個性」「ワインの調和」「ヴィンテージを超えた一貫性」の5項目である。
つまり、長い歴史やブランド力だけではなく、「今、どれだけ優れたワインを造り続けているか」を重視した評価へと、一歩踏み出したのである。
だからこそ、これまで世界最高峰とされてきたドメーヌと、近年実力を高く評価されてきた比較的新しいドメーヌが、同じ土俵で肩を並べる結果となった。
その意味で、今回の選考は、ブルゴーニュの評価の歴史に新たな一頁を加えたと言えるのではないだろうか。

コート・シャロネーズの存在感
今回、私がもう一つ注目したのは、コート・シャロネーズの存在感である。
長い間、ブルゴーニュといえば、コート・ド・ニュイやコート・ド・ボーヌが中心であり、コート・シャロネーズは「その南にある産地」として語られることが多かった。
しかし近年、その存在感は確実に増している。
メルキュレのドメーヌ ロランゾン (Domaine Lorenzon) だけではない。
今回、リュリー(Rully)のドメーヌ・デュルイユ・ジャンティアル(Domaine Dureuil-Janthial)も「2 Grapes」を受賞した。
どちらも以前から専門家の間では高く評価されてきたドメーヌである。しかし今回、ミシュランという世界的な評価機関がその実力を認めた意味は大きい。
この地域では、優れたヴィニュロンたちが、それぞれのテロワールと真摯に向き合い、品質を着実に高め続けている。
コート・シャロネーズは今、ブルゴーニュの中でも更に注目すべき産地の一つだ。
ミシュラングレープは、ここから始まる
もちろん、今回の評価が完成形というわけではない。
ブルゴーニュには、代々受け継がれてきた家族経営の小規模ドメーヌが約3,500存在する。彼らは自社畑のブドウを栽培し、自ら醸造・瓶詰めまでを手がける。一方で、ブドウや果汁、ワインを買い付けて独自のワインを仕立てる300を超えるネゴシアン、さらに複数の栽培農家がブドウを持ち寄り、共同で醸造・販売を行う協同組合も存在する。
いずれもブルゴーニュワインを支える重要な担い手である。しかし、このワインの聖地ブルゴーニュにおいて最も注目を集めるのは、何世代にもわたって畑を受け継ぎ、自らのテロワールを表現し続ける家族経営のドメーヌである。今回のミシュラングレープでも、その中心となったのは、こうしたドメーヌであった。
そして、レストランやホテルの評価とは比較にならないほど、多様で複雑な世界である。そのブルゴーニュを、ワイン評価の第一歩として選んだことからも、ミシュランの本気度がうかがえる。
そのすべてを数年で評価することは現実的ではない。
今回の選考は、これまで市場や専門家の間で築かれてきた評価を一つの出発点としている部分があるのは自然なことだろう。
しかし、本当の挑戦はここから始まる。
ミシュランは、「栽培」「醸造技術」「ドメーヌの個性」「ワインの調和」「ヴィンテージを超えた一貫性」という5つの基準を掲げた。今後、試飲と検証を積み重ねながら、対象はシャブリやマコネ地区へ、さらにはブルゴーニュ以外の産地へと広がっていくだろう。
その過程で、ミシュランならではのワイン評価がどのように築かれていくのか。
それを見届けることも、ブルゴーニュを知る楽しみの一つになるのではないだろうか。
一部の生産者の発表
3 Grapes:9ドメーヌ
Côte de Nuits
Domaine Cécile Tremblay
Domaine Dugat-Py
Domaine Roumier
Domaine de la Romanée-Conti
Domaine Leroy
Côte de Beaune
Domaine d’Auvenay
Domaine Coche-Dury
Jean-Marc & Thomas Bouley
Domaine Hubert Lamy
2 Grapes:20ドメーヌ
Côte de Nuits
Domaine Dujac
Domaine Denis Mortet
Domaine Georges Mugneret-Gibourg
Bruno Clair
Gérard Mugneret
Jacques-Frédéric Mugnier
Côte de Beaune
Jean-Claude Bachelet
Domaine Paul Pillot
Arnaud Ente
Benoît Ente
Benoît Moreau
Lamy-Caillat
Bonneau du Martray
Domaine des Comtes Lafon
Domaine des Croix
Domaine Leflaive
Étienne Sauzet
Domaine Jean-Marc Vincent
Côte Chalonnaise
Domaine Lorenzon
Domaine Dureuil-Janthial
1 Grape:33ドメーヌ
Armand Rousseau
Claude Dugat
Denis Bachelet
Duroché
Joseph Roty
Trapet
Comte Georges de Vogüé
Ghislaine Barthod
Hudelot-Noëllat
Louis Boillot
Clos de Tart
Domaine des Lambrays
Domaine Ponsot
Arnoux-Lachaux
Domaine Sylvain Cathiard
Méo-Camuzet
Château de la Tour
Faiveley
Bernard-Bonin
Henri Boillot
Henri Germain
Jean-Marc Roulot
Vincent Girardin
Domaine de Montille
Marquis d’Angerville
Michel Lafarge
Roblet-Monnot
Benjamin Leroux
Joseph Drouhin
Louis Jadot
Pierre-Yves Colin-Morey
Marc Colin
Henri & Gilles Buisson
Selected:32ドメーヌ
Sylvain Pataille
Camille Thiriet
Berthaut-Gerbet
Benoit Chevallier
Charles Audoin
Fourrier
Felettig
Hubert Lignier
Jobard-Morey
Anne Boisson
Ballot-Millot
Buisson-Charles
Camille & Guillaume Boillot
Pierre Boisson
Pierre Girardin
Pierre Morey
Alex Moreau
Ramonet
Vincent Dancer
Jacques Carillon
Thomas-Collardot
Albert Bichot
Bouchard Père & Fils
Bachelet-Monnot
Nicolas Perrault
Alain Gras
Joseph Colin
Lafouge
Pierre Guillemot
Rapet
Yvon Clerget
Maxime Cottenceau
*ブルゴーニュ選出の94の生産者がすべてが本文で紹介されているわけではない。