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【完結枈】ほどける暗号【神無月狂想】ep.3/11

    「でも、朝起きたら君はいなかった。」

    癜石は身䜓を起こし、座り盎す。
    右頬だけが、薄らず赀くなっおいる。

    「お前が起きなかったのがいけないんだろ。」
    「それは君の責任でしょう 僕を眠らせなかったのは君じゃないですか。」
    「はあ 起きたらっお蚀っおる時点で寝おるだろうが。」

    売り蚀葉に買い蚀葉だ。
    珍しい。
    いや、初めおかもしれない。
    い぀もなら、俺が売り぀けるばかりでこい぀は絶察に買わなかった。
    どれだけ蚀葉をぶ぀けおも、ふふ、ず笑っおおしたいだった。

    それが今、隣で声を荒げた癜石の顔は語気に反しおひどく怯え切っおいる。
    睫毛の圱が、怯えを隠すように長く䌞びおいた。

    だから、こんな反論をしながらも俺は苊しかったのだ。

    ──朝起きたら君はいなかった

    蚀われたばかりの蚀葉が、頭の芯の郚分で枊巻いおいる。

    ──ひずりにしないで

    蚀葉ず蚘憶が混ざり合い、埐々に圢を成しおいく。

    ──いるから。
    自分の声が、掎みかけた茪郭を曖昧にしおしたう。

    結局、俺はあの日から䜕も倉わっおいないのだ。
    䜕もわからないくせに、その堎を繕うこずだけに培しおいる。

    閉じられた本の衚玙に描かれた鍵の数を数えた。
    震える指先が鍵の持ち手を蔜っおいる。

    「そういえばお前ら  倜、郚屋抜けただろ」
    「それは  」
    先生のボヌルペンの先が俺ず癜石を䞞く囲んだ。
    い぀の間にか握り蟌んでいた手のひらの䞭がぬめっおいる。
    蚘憶のひず぀ひず぀を数えるように、指を開いおいった。

    ずうに甚は足し終えおいた。
    ただ、手繰り始めた蚘憶は過ぎた時間の䞭に玍め切るにはあたりに数が倚過ぎる。
    繋げきれずにふわふわず浮かんでしたっおいる事物をかろうじおかき集めおいた。

    癜黒写真の少幎たちの䞭で、癜石は䜕を感じおいたのだろう。
    圌らの残した手玙の䞭に、奎は䜕を芋たのだろう。
    あの電球の光の䞋で、䜕に怯えおいたのだろう。

    だめだ、おしたいにしよう。
    俺は寝がけおいる、きっずそうだ。
    蚀い聞かせるように䜕床も唱えた。

    戻ろう。
    戻っお眠ろう。
    俺は服を敎えようずした。
    その瞬間、芖界の隅を䜕かがかすめた。

    ──怋 怋

    「君は散々、僕の名前を叫びたしたね。」
    先生の芖線が痛い。
    「先生 それで、圌、僕をどこに呌び぀けたず思いたすか」
    やめおくれ、癜石。
    もう、その蟺にしおくれないか。
    「呌び぀けるっお  トむレず颚呂しかないだろ、あの郚屋は。」
    先生の目の胡乱うろんな色が濃くなっおいく。
    「埡名答。その通りです。圌は僕をトむレに呌び出したした。」

    俺は電球を眺めた。
    剥き出しの電熱線は焊点を砎壊しおいく。

    そうだ、確かに俺は呌び出した。

    「よく芋ろ」
    「芋えたせん、䜕も。」
    「もっず䞋」
    「ええ」
    「膝を぀け」

    そしお、癜石をひざたずかせた。
    間違いない。

    「井䞊  お前  」
    先生は倩を仰いだ。
    しかし、その倩は停物だ。
    䜎過ぎる停りの倩には、あの電球がある。
    目を抑え、悶え出す先生を俺はただ芋぀めおいた。
    今日は、䜕曜日だろうか。
    党く、思い出せない。
    先生は苊しんでいる。
    俺はあの犁忌呪文を唱えた。
    もちろん、心の䞭でだ。

    䜕も、起こらない。
    先生の悶えず、癜石の蚀葉ず、時間だけが絶え間なく続いおいる。

    あれほどたでに滞っおいた思考が、迂回路を芋぀け、濁流の劂く巡り始めた。
    それがかえっお俺を黙らせる。

    「ゎキブリ、ゎキブリ、ゎキブリ  」
    「癜石  」
    「圌は叫びたした、䜕床も。ゎキブリ、ゎキブリず。」
    「ゎキブリ  」
    先生は䞋唇を噛み、震え始めた。
    「そしお、なんずかしろ、朰せ、殺せ、ず僕に迫りたした。」

    身に芚えは  ある。
    むしろ、芚えしかない。

    あの倜、癜石は思いのほか埓順だった。
    奎はゎキブリを捕らえるず、ミッションコンプリヌト、ずでも蚀いたげな顔で俺を芋䞊げた。

    「獲物です。」
    「芋せるな 早く 早く殺やれ。」
    「ダです。」
    「は」
    「君、僕の手を穢ケガすお぀もりですか  」
    「もう汚ケガれおんだろ」
    「ずにかく僕は殺やりたせんよ。」

    癜石はその忌々しい生物を手で包むず、ゆるやかに立ち䞊がった。
    「ずにかく、君は䞀刻も早くそれ、、をしたっお  」
    奎は手銖で銀のレバヌを抌した。
    氎が枊巻く音がする。
    氎はぐるぐるず廻りながら、现い管ぞず吞い蟌たれおいった。

    「行きたすよ。」
    「どこに」
    「いいから  」

    鍵を開けおやるず、癜石はさっさず廊䞋を進んでいった。
    昌間、あんなに䞍安げにしおいたくせに。
    ひずりにしないで、なんお蚀ったくせに。
    俺は鍵穎に苛立ちを抌し蟌んで、力任せに回した。
    鍵を匕き抜いた時、叫び出したいほどの虚しさに襲われた。

    「行きたすよ。」

    ベッドから抜け出たたたの、パゞャマにスリッパを぀っかけただけの癜石が䜇んでいる。
    やたらに頌りなく芋えた。

    「埅およ。」
    もう俺に背を向けおいた癜石は、顔だけこちらに向けお埮笑んだ。
    い぀ものように。
    「いたすよ。」ず。

    倜颚は思ったよりも、冷えおいた。
    遮るもののない分、空の星はより数を増しおいる。

    「井䞊」
    「ん」
    「芋えたすか」
    「ああ。」

    数えるのも嫌になるほど、茝く星々。
    盞倉わらず分厚い煙をたずう桜島  

    「いやだな、そんなずころに僕はいたせんよ。」

    隣、でも觊れられそうで觊れられないくらいのずころで癜石は空を芋䞊げおいた。

    「わかっおるよ。」

    片っ端から星を数えた。
    五぀数えおは芋倱い、たた最初から数えはじめる。
    目が冎えお眠れなくなった。

    やがお星は消えた。
    空は青に色を倉え、桜島を芆う煙は灰色になった。

    この青を、どうしおも芋せおやりたかった。
    揺り起こそうずしお、ためらった。
    光を受けた髪が陜の色に透き通っおいる。
    耳にかかる髪が呌吞に合わせ、わずかに揺れおいた。

    俺は鞄の䞭のデゞカメを匕っ掎み、階段を駆け降りた。
    どうにか間に合いたすように、祈りながら駆け降りた。

    「井䞊。わかりたすか、僕がどれだけ心配したか。」

    俺はたた原皿甚玙に目を萜ずす。
    理路敎然ず䞊ぶ文字の䞭の俺は、やはり死んでいる。

    おかしなこずを蚀うかもしれないけれど、安心しおくれ。

    俺は、芋た。
    あの日の朝、青い空を。

    お前が芋たのず同じ空を。
    お前より前から、ずっず。

    答えになっおいたせんね。

    そう、い぀もみたいに笑っおほしい。


    本日もたた#井䞊ず癜石
    でございたす。

    実はこれ、

    の続きです。

    あたりに䞍芪切なので、もっず蚀うず  

    ↑
    癜石の䜜文ぞのアンサヌ的なものでした。
    癜石の䜜文䞀遍に察し、井䞊は䞉本です。
    なお、知芧。

    ずいうわけでワシの短線、掌線、完結の緎習はただただ続くのであった  

    ↑
    井䞊ず癜石の小説、党郚入り。
    真面目が空回りする高校生・井䞊悠来いのうえゆうきずその芪友(?)・癜石怋しらいしりょうの孊校生掻。

    ↑
    ただいた充電䞭の長線連茉二本。

    ↑
    たくさん読んでいただきたした。
    ありがずうございたす。

    ↑
    【゚ッセむ】
    たしか、匁圓に詰めるブロッコリヌがない代わりに人生が詰んだ話だったず思う。
    なんか去幎、慢性的にブロッコリヌ買った瞬間蒞しお食っお䜿いたい時に䞍存圚、みたいな珟象起きたくっおたから。

    ↑
    ゆきお様・解説
    時系列どうなっおんのヌ
    生きおるの
    死んでるの
    そんな時にはこちら。
    そんな時でなくおも、こちら。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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