
短編小説 : 「未開封のダンボール」へ行こう | 拝啓文芸部
「『未開封のダンボール』へ行こう」
「行こう行こう」
僕たちは手を繋いで歩き出す。
この先の角を曲がると「未開封のダンボール」という変な名前のイタリアンレストランがあるんだよ。
僕が手を繋いでる彼女は夢魔だよ。
彼女にね、僕はこれから
精神も魂も吸い取られるんだ。
生きたままに死ぬんだよ。
ここは彼女の夢の中、もちろん、僕の夢の中でもある。あなたは、夢の第一の機能を知ってる?
夢の第一の機能
それはね
眠り続けること
眠りを延長すること
なんだよ。
二人が少し歩みを進めると、老夫婦が「それは開けてはいけないよ」と話していた。スーツ姿のサラリーマンは眠っている。OL風の二人には「開けられるものなら開けてみな」と挑発された。
開けられるはずがないじゃないか。
だってそれは「名前」なのだから、みんなの約束なのだから、シニフィアンなのだから。
どう開けろって言うんだよ。
「楽しみだね、noteのお題企画かなにかかな?」
外からそれを眺められたとしても、中に入ったら何もできない。僕はそんな諦念を笑いながら肩を少し濡らして、目的地へ到着した。半分だけ、雨が降っていたから。
レストラン「未開封のダンボール」に着いた。
重厚な木の扉を開けると、外の冷たい空気が背後へ流れ、雨の匂いが遠ざかる。凛々しい女性スタッフが気持ちのいい笑顔で迎えてくれた。
「トラットリア『未開封のダンボール』へようこそ! 本日のランチは、娼婦風です」
「それ、二つください」
これを食べたら、彼女とホテルに行くんだよ。親切な方が教えてくれたんだ。そこで彼女と身体を交じりあわせて、溶けるような快楽を味わうんだよ。夢のようだよね。お節介な方が教えてくれたんだ。
どうせ、抵抗できないなら
どうせ、醒めない夢なら
知りたくなかったなあ
恐怖かかえてセックスなんてさあ
没入できないじゃん?
そういう趣味なら良かったよ。
そういう趣味に俺を書き換えてくれない?
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