
【ゲームの企画設計】「良いものを作れば届く」は祈りでしかない 。"認知の設計"を意図して作れ
昨日、自分で書いた記事が、ほとんど見られませんでした。
自分ではいい記事だと思っていました。
ちゃんと考えて、丁寧に書いた。でも、反応はほぼゼロ。
そして、こう思いそうになりました。「ああ、興味がない記事を書いたんだな」と。
でも、書いていて、気づきました。
私はこれまで、「良いものを作れば売れる時代は終わった」と、何度も書いてきました。ゲームの話として。
なのに、自分の記事に対しては、「良いものを書いたのに反応がない=興味がない」と、一発で結論を出そうとしている。
言っていることと、やっていることが、逆でした。
今日は、その反省も込めて、「認知の設計」とは具体的に何なのか、を整理しておきたいと思います。
「反応がない」を、一つの結論で片付けないこと
以前、「燃えている時こそ、焦らない」という記事で、トラブル対応の話を書きました。焦っている時は、判断力が落ちる。だから、一つの結論に飛びつかず、冷静に原因を切り分ける——そういう話でした。
これ、発信等で無風になった時に短絡的に結果を出すことともまったく症状だと思ったことです。
「反応がない」→「興味がないんだ」。この飛躍は、焦った結論です。落ち込んでいる時ほど、一番簡単で、一番自分を傷つける結論に、すっと飛びついてしまう。
でも本当は、原因はいくつにも分解できます。自分ではいいものだと思っていても、反応がないのなら、少なくともこれくらいの可能性があるはずです。
そもそも、そのテーマに興味が持たれていない(ニーズの問題)
興味を持たせる"入口"の訴求が弱い(タイトル、見せ方の問題)
発信の方法が悪い(届け方、チャネル、導線の問題)
単に、タイミングが悪かった(いつ、どこで出したかの問題)
昨日の私の記事は、たぶん「興味がない」ではありませんでした。あれは、もともと狭くて深いテーマでした。読む人は少ないけれど、その少数には濃く刺さる。つまり「ニーズが狭い」だけで、「価値がない」ではない。それに、そもそも届け方が弱かった可能性の方が高い。分解すれば、打ち手はまだ残っているのです。
分解できる軸は、そのまま"設計できる軸"
ここが、今日いちばん書きたいところです。
いま挙げた「反応がない原因の分解軸」——興味、訴求、発信方法、タイミング。これは、事後に反省するための軸であると同時に、事前に設計するための軸でもあります。
つまり、こういうことです。
認知の設計とは、「なぜ届かなかったか」を後から分解できるのと同じ解像度で、「どうすれば届くか」を、作る前に分解して設計しておくこと。
誰に、どんなニーズに向けて出すのか(興味)
何を"入口"にして、どう興味を持たせるのか(訴求)
どこで、どういう導線で届けるのか(発信方法)
いつ出すのが、一番いいのか(タイミング)
これを、作ってから考えるのではなく、作りながら——できれば作る前から——設計しておく。これが「認知の設計」だと、私は思っています。
逆に言えば、これを設計せずに出すというのは、「良いものを作れば、あとは勝手に届くだろう」と祈っているのと、同じです。そして——祈りは、設計ではありません。 昨日の私が、まさにそれをやっていました。
4つの軸を、もう少し具体的に考える
「興味・訴求・発信方法・タイミング」と書くと、なんとなく分かった気になりますが、実際に設計しようとすると途端に手が止まります。だから、それぞれについて、自分が実際に考えていることを書いておきます。
興味——「誰が、なぜ読むのか」を先に決める
これは、ターゲットを絞るという話ではありません。「この記事を読んで、何かが変わる人は誰か」を先に想像しておく、という話です。
「みんなに読んでほしい」は、設計ではありません。誰にでも刺さるものは、誰にも深く刺さらない。狭くていい。「この人が読んだら、何かが動く」という一人を、先に思い浮かべておく。それだけで、書く内容も、言葉の選び方も、変わります。
訴求——「入口」は、中身より先に設計する
どんなに中身が良くても、入口で止まれば読まれません。タイトル、冒頭の一文、サムネイル——これらは、中身の「要約」ではなく、「読む理由」を作るものです。
「何が書いてあるか」ではなく、「読むと何が変わるか」「読まないと何を損するか」を、入口で伝える。これは、煽りとは違います。中身に正直に、かつ読む動機を先に渡す、という設計の話です。
自分が書いた記事のタイトルを見て、「なぜ読むのか」を一文で言えるか。言えないなら、入口の設計がまだ甘いサインです。
発信方法——「どこで出すか」は、「何を出すか」と同じくらい重要
同じ内容でも、どのプラットフォームで、どういう形で出すかで、届く人が変わります。noteで長文を書いても、そこに来ない人には届かない。Xで短く切り出せば、別の層に届く可能性がある。
「どこで出すか」は、「誰に届けたいか」と表裏一体です。届けたい人がどこにいるかを先に考えれば、自然と発信場所が決まってきます。また、一つの記事を複数の場所に展開する導線を設計しておくことも、個人発信では特に有効です。
タイミング——「いつ出すか」は、運ではなく選択できる
タイミングは、完全にコントロールできるわけではありませんが、ある程度は選択できます。同じテーマでも、社会的な話題と重なる時期に出すのと、そうでない時期に出すのとでは、届き方が変わります。
また、自分の発信の文脈の中でのタイミングも重要です。前の記事と繋がっているか、読者が「次を読みたい」と思っている流れの中に出せているか。単発で出すより、文脈の中に置く方が、届きやすい。
昨日の記事を、自分で分解してみる
せっかくなので、昨日の記事を、この4軸で自分なりに分解してみます。
まず、興味(ニーズ)。ここは正直、最初から狭いと分かっていた部分です。その前に書いた企画記事自体のインプレッションも、決して高くはありませんでした。ゲーム企画というテーマ自体、読者層がそれほど広くない。その状態からさらに「仕様」という一段深い話に踏み込んだことで、パイがさらに小さくなりました。企画を知っている人の中で、さらに仕様の話に興味がある人——という絞り込みが、意図せず起きていたわけです。
そして、「仕様ってなんやねん」という話でもあります。ゲーム開発に慣れていない人にとって、「仕様」という言葉自体が入口になりません。初心者には、そもそも興味を持つ手前で止まってしまう。ニーズが狭すぎた、という反省です。
訴求(入口)は、正直、弱かったと思います。タイトルと冒頭が、「何が書いてあるか」の説明になっていて、「読むと何が変わるか」の提示になっていませんでした。中身は丁寧に書いたのに、入口で止まってしまった可能性が高い。
ただ、タイトルについては一点だけ補足しておきます。前回の記事タイトルに似せたのは、意図的でした。この一連の記事は、「ゲームを作るための最初の考え方」というドキュメントとして、流れで残しておきたかったからです。認知を取るためのタイトルとしては弱くなるのは分かっていた。でも、シリーズとしての文脈を優先した。これは設計上のトレードオフであって、失敗とは少し違う判断です。
発信方法(届け方)は、noteに投稿しただけで終わっていました。Xで切り口を変えて紹介する、前後の記事と繋げる導線を作る——そういった展開を、何もしていませんでした。書いて出して、あとは届くのを待っていた。ここが、本当の問題だったのだと思います。
タイミングは、特に意識していませんでした。前の記事との文脈の繋がりも、弱かったと思います。
こうして分解すると、「興味がない」という結論が、いかに早計だったかが分かります。ニーズが狭かったのは事実ですが、それは最初から分かっていたはずのこと。問題は、その前提に立った上での設計——届け方や入口の作り方——が、足りていなかったことです。打てる手は、まだ残っていました。
"運に見えるもの"は、だいたい設計されている
よく「あの作品は、運が良かっただけ」と言われます。でも、近くで見ると、運に見えるものの多くは、設計されています。
私は以前、別の記事で『めっちゃカメレオン』の発売前の動きを分解しました。あれは「たまたまバズった」のではなく、"設計された露出"だった、という話です。個人開発であれだけの認知を取ったのは、偶然ではない。届く経路が、先に設計されていました。
もちろん、設計すれば必ず当たる、という話ではありません。運の要素は、絶対にあります。でも、設計している人と、祈っている人とでは、当たる確率が違う。 そして、外した時に「なぜ外したのか」を分解できるのも、設計していた人だけです。祈っていた人には、分解する軸すら、ありません。
認知の設計とは、祈りを捨てること
まとめます。
認知の設計とは、難しいテクニックの話ではないのだと思います。まず、「良いものを作れば、届くはずだ」という祈りを、捨てること。 そこから始まります。
そして、「どうすれば届くか」を、興味・訴求・発信方法・タイミングといった軸で分解して、作る前から設計しておく。届かなかった時は、同じ軸で、冷静に原因を分解する。「興味がないんだ」と、一つの結論に飛びつかない。
昨日、私はいい記事が全然見られませんでした。
でも、それは「興味がなかったんだ」で切り捨てるのではなく、「設計が足りなかった」と振り返って問題を分解し、再度テストするだけです。
次に打てる手は、まだ残っています。
——「良いものを作れば届く」は、祈りでしかない。その祈りを捨てたところから、認知の設計は始まるのだと思います。
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この記事の続きとして、AIを使ってゲームを1本作り、売るところまでを連載で書いています。
何を作るかの決め方、面白さの作り方、作り切れる大きさの決め方、売り方の種類まで。
ゲームの現場で26年、実際に判断してきた順番のまま並べています。
連載の一覧(マガジン「AIを使ったゲーム制作と販売方法」)
https://note.com/ukyousan/m/m1a906d03033f
連載の有料回は、メンバーシップ「ゲーム × 仕事と人生の設計工房」(月980円)で、すべて読めます。
1本ずつ買う(1本1,980円)より安く、新しい回も追加料金なしで読めます。
https://note.com/ukyousan/membership
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運営型ゲームの構造の話も書きました。
・運営型モバイルゲームが生き残りづらい構造的理由と、その突破口
https://note.com/ukyousan/n/n68014445fb7f
・2026年、いまソシャゲを作るならどう考えるか? 捨てるものと残すもの
https://note.com/ukyousan/n/ncc26c85bc75a
・運営型モバイルゲーム開発の『壁』を越える思考法 ― 任天堂などから学ぶ現代開発の生存戦略
https://note.com/ukyousan/n/nae83082b2c08
・スマホゲーム事業者の倒産が過去最多ペース|〜私たちは開発者としてどう生きるのか?〜
https://note.com/ukyousan/n/n0e864280e0b4
売り方と、そのあとのキャリアの話も書きました。
・「ノープロモ」ではなく、"設計されたプロモーション"だった。『めっちゃカメレオン』発売前4週間の構造を読み解く
https://note.com/ukyousan/n/n9844cf225a7e
・ソシャゲ経験「しか」ない人の、次の一手 ─26年の現場と知人の話から、20代・30代・40代別に書く
https://note.com/ukyousan/n/nb1963c9f13e0