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【ゲームの企画】企画と仕様、最初はどこまで考えておくか?

    前回、「ゲーム企画の考え方・現代版」という記事で、現代における企画を考えるときの留意点について話を書きました。今回はもう一段細かく、最初に考えておきたい企画と仕様の線引きの話です。

    ▼Vol.1はこちら

    いや、正確には、最初から考えておかなくてもいいのですが、特に初めて企画を考える時とか、初めてゲームを作る時とかで、企画書を考えるときにどこまで、どのレベルの深さまで考えておくべきかなということを書いてみます。

    この記事も、個人開発から中規模プロダクトを手がける方を想定しています。そして、あくまで個人的なやり方です。

    まず、言葉を定義しておきます

    企画と仕様。どちらもよく使う言葉ですが、境界が曖昧なまま話が進むことが多いので、今回の記事の文脈として私なりの定義を置いておきます。

    • 企画:「こういうものを作ろうかな」と考えること。特に重要なものはコンセプト、遊びの基礎、デザインイメージ。

    • 仕様の作り込み:考えた企画を「どう再現するか、面白くするか」の設計図。遊びを再現するための細かいドキュメント。

    ざっくり言えば、企画は"何を作るか"、仕様は"どう再現するかの設計図"です。厳密な定義論をするつもりはありません。ただ、この2つを分けて考えないと、「どこまで考えておけばいいのか」という問いに答えられないのです。

    通念は、たぶん逆です

    世間の感覚は、こうではないでしょうか。

    「企画はざっくり、仕様はきっちり」。

    企画はふわっとしたアイデアで構わない。そこから仕様で細かく詰めていく——。なんとなく、そういうイメージがあると思います。

    でも、私の実感は、むしろ逆に近いです。

    企画こそ、決めきる(特にコンセプト)。仕様は、触ってから書く。

    順に説明します。

    企画で、決めきっておくこと

    コンセプトの徹底

    企画で一番決めきるべきは、コンセプトです。「これができる」という核を、一点まで絞り込む。ここがぶれると、その後の全部が崩れます。

    分かりやすい例が『めっちゃカメレオン』だと思っています。

    あのゲームのルーツは、Call of Duty や Garry's Mod で知られる「プロップハント」というモードです。プレイヤーが箱や椅子などのオブジェクトに変身して隠れる、あの遊びですね。骨格としては、昔からある「かくれんぼ」です。

    では、何を変えたのか。たった一点です。

    従来のプロップハントは、既製のプロップに"変身"します。めっちゃカメレオンは、自分のキャラクターのまま、真っ白な身体に自分で絵を描いて擬態する。変えたのは、ここだけです。

    でも、この一点が全部を生みました。隠れ場所やポーズだけでなく、「画力」が生存の鍵になる。これは、他のどのプロップハントにもない体験です。しかも個人開発です。

    既存の型を借りて、変えたのはたった一点。その一点が、独自の面白さを丸ごと生んだ。これが、コンセプトの徹底という話だと思っています。あれもこれもと足したのではなく、一点に超特化していて、その遊びを最大限楽しむ仕掛けがゲーム内とゲーム外に緻密に設計されてクオリティ高く再現されたもの。

    なぜ面白いのか——二つの層で考える

    コンセプトと同じくらい、企画で決めておきたいのが「なぜ面白いのか」です。ただ、ここは二つの層で考えた方がいいと思っています。

    一つは、自分が考えるゲームの面白さ。 自分が本気で「これは面白い」と信じているものは何か。

    もう一つは、プレイヤーは何を面白いと思ってくれるのか。 これは、自分の面白さとは別物です。作り手が面白いと思うポイントと、遊ぶ人が盛り上がるポイントは、しばしばズレます。

    この二つを、企画の段階で両方想定しておく。片方だけだと、独りよがりになるか、逆に自分の熱が抜けたものになるか、どちらかに転びやすいと感じています。ただ、プレイヤーがどう思うのかは5割想定通りにならないので、あくまで理想論としての想定です。

    一言で言えるか

    これは独立した項目というより、コンセプトの検証装置です。

    「一言で言うと何のゲーム?」に、面白く即答できるか。できないなら、コンセプトがまだ絞りきれていないサインだと思っています。逆に言えば、一言で言えるようになった時点で、企画の核は固まっている。

    先ほどのカメレオンなら、「体に絵を描いて隠れるかくれんぼ」。これで伝わります。逆に色々と要素があって、なんだっけ?と言えないものはやっぱり伝達力が圧倒的に弱くなります。

    ただ、一言では言い表せない場合でも面白さが伝わらないことも多いです。でも、それぐらい「コレはこれ!」って言える方が今は強いです。

    認知の設計は、想定はするが、決めきらない

    いきなりここも同時に考えろというのはちょっと難しいですが、ここは少し頭の片隅に置いておくといいです。

    「どこで認知を取るのか」は、企画の段階で想定はしておいた方がいいです。前回の記事でも書いた通り、認知は作った後に考えるのでは間に合いません。

    ただし、決めきらなくていいと思っています。ここを決めきろうとすると、企画がマーケティング主導に引っ張られてしまう。想定はする。でも、確定はしない。この距離感がちょうどいいと感じています。

    デザインイメージも、出すけれど決めきらない

    デザインのイメージ——というより、ラフですね。これは企画の時点で決めます。どんな見た目にするのか、方向性は最初に出しておく。

    ただ、これも決めきるのは、まだ後でいいと思っています。

    理由は、認知を取りにいく設計を、同時に追求していくからです。「どこで、どうやって認知を取るのか」を考えていくと、見せ方が変わります。逆に、ビジュアルが変われば、認知の取り方も変わる。この二つは、互いに影響し合っています。だから、片方だけを先に固めても、あまり意味がないのです。

    また、作っていくうちにやっぱりこれはデザインこうした方がいいんじゃないか?ってことが私はめっちゃおきます。だから、常に変えられるように考えておきながら、最初からデザインを決め切らないようにしています。

    とはいえ、企画書をどこかに提出するとか、チームで作るときにはもちろんある程度確定したものを作りきります。これが、個人制作や中小規模で作る上での、基本スタンスだと思っています。

    そして、これができるのは、個人や小規模だからこそでもあります。作る側と売る側を、同じ人間が握っている。だからデザインと認知を、行ったり来たりしながら詰められる。大きな組織で分業していたら、こうはいきません。ここは、規模が小さいことの数少ない優位点だと思っています。

    仕様には、順番があります

    さて、ここからが本題かもしれません。

    仕様について「どこまで書くか」と聞かれると、答えに困ります。なぜなら、フェーズによって変わるからです。線が引かれているのではなく、順番があるのです。

    まず、触って固める

    最初は、大枠だけ書いて、あとはほぼ触りながら決めていきます。

    ここで言うコアループとは、「プレイヤーが繰り返す基本的な行動の流れ」のことです。たとえば「敵を倒す→経験値を得る→レベルアップする→また敵を倒す」という一連のサイクルがそれにあたります。コアメカニクスは、そのループを成立させる中心的なゲームの仕組みそのもの——ジャンプ、射撃、パズルのルールなど、ゲームの根幹となる操作や仕掛けです。

    この2つは、机の上でいくら考えても、実際に動かして触ってみるまで正解が分かりません。「たぶんこうすれば面白い」は、だいたい外れます。触ってみて、初めて「あ、これ違うな」「こっちの方が気持ちいいな」が分かる。

    だから、この段階で分厚い仕様書を書いてはいけないと思っています。書いても、どうせ変わるからです。

    固まったら、書き込む

    コアループが固まったら、そこからがっつり仕様に落としていきます。

    ここで初めて、ルールの詳細、各メカニクスの挙動、画面遷移とUI設計、パラメータとバランス設計、演出・SE・エフェクトの仕様、デザインの作り込みといった内容を、きちんとドキュメントに落としていきます。核が固まっているので、書いたものが無駄になりにくい。逆に言えば、核が固まっていない段階でこれを書こうとすると、触るたびに全部書き直すことになります。 真面目な人ほど、ここで消耗しがちです。

    この順番が、けっこう大事だと思っています。 逆にすると、悲惨なことになります。

    そして、"気持ちよさ"は最後まで残る

    もう一つ。仕様として設計はするけれど、最後まで調整が続くものがあります。

    気持ちよさを再現するための、操作フィール、演出、SE、エフェクト設計。

    ここは、設計自体はします。でも、実際に触ってみないと、気持ちいいかどうかは分かりません。数値も、バランスも、同じです。以前、AIの記事でも書きましたが、最後の手触りは、自分の感覚でしかチューニングできない。

    ゲームをプレイして「楽しい!」と感じるのは、理屈ではなく感情です。そして感情を揺さぶるチューニングは、たぶん、自分の中の引き出しからしか出てきません。だから、ここは仕様書に書いて終わり、にはならないのです。

    だから、仕様書は"直せる形"で書く

    ここまで書いてきて、一つ、繋がる話があります。

    以前、AI活用の記事で「暫定でいいから、フォルダ構成やデータの置き場所、命名ルールを最初に決めて、後で一括変更できるようにしておこう」と書きました。

    なぜそうするのか。理由は、まさにこれです。仕様は、必ず変わるからです。

    コアループも、コアメカニクスも、作りながらチューニングする。気持ちよさは触らないと分からない。つまり、仕様書は「確定した設計図」ではなく、「チューニングの出発点」なんです。

    変わる前提のものを書くのだから、直しやすい形で書いておくしかありません。一つのことは一つの場所にだけ書く。検索できるようにする。命名にルールを持たせて、後でまとめて変更できるようにしておく。

    整理の作法は、几帳面さの話ではありません。「仕様は決めきれない」という前提から、必然的に出てくる帰結なのだと思っています。

    そして一つ、実用的な提案を。企画の核が固まったタイミングで、仕様書の初稿整理にAIを使うことをお勧めします。 頭の中にある断片的なアイデアや、メモ書きレベルの箇条書きをAIに投げると、抜け漏れの指摘、項目の整理、構成の提案をかなりの精度でやってくれます。「書く」作業そのものより、「何を書くべきか」を整理する段階にAIを使うイメージです。仕様は変わる前提なので、最初から完璧に書こうとしなくていい。AIで8割の骨格を作って、触りながら書き直していく。この流れが、個人開発や小規模チームにはかなり合っていると感じています。

    一番よくある事故は、順番を間違えること

    まとめる前に、失敗のパターンを二つだけ。
    失敗パターンは私のnoteに色々と書いていますが、大きな失敗事例は下記の2点。

    一つ、企画で決めきるべきことを決めないまま、仕様や各種アセットを作り込みに入ってしまうこと。
    コンセプトの核がないまま作り始めると、仕様が「機能の寄せ集め」になります。芯がないので、足し算しかできなくなる。あれも入れよう、これも入れよう、となって、結局「一言で言えないゲーム」が出来上がります。

    二つ、コアループが固まっていないのに、分厚い仕様書を書いてしまう。
    これは、書いた労力がまるごと無駄になります。触ったら全部変わるからです。真面目な人ほど、やりがちだと思っています。


    どちらも、順番の問題というよりも、一番は作り直しの手間がかか流ときに、工数が超無駄にならないようにすることが大事です。見切り発車で大量に人を使ってやっぱだめ、とかめちゃくちゃありますので要注意です。

    でもまずは経験のために何も考えずコアループの最小限を作ってから、企画を固めたりすることもあります。これは人によりけりだとは思います。

    まとめ:どこまで考えておくのか

    最後に整理します。

    企画では、コンセプトを優先的に決めきる。
    一点まで絞る。なぜ面白いのかを、自分の面白さとプレイヤーの面白さ、両方の層で想定する。一言で言えるかどうかで、検証する。

    ただし、認知とデザインイメージは、出すけれど決めきらない。
    この二つは互いに影響し合うので、往復しながら詰めていく。

    仕様では、まず触って固める。
    コアループとコアメカニクスは、大枠だけ書いて、動かしながら決めていく。

    固まってから、詳細を書き込む。仕様を作り込む。
    そして、変わる前提で、直せる形にしておく。

    気持ちよさは、最後まで自分の手で調整し続ける。

    「どこまで考えておくか」という問いに、固定の線はないのだと思います。あるのは、順番だけです。企画は決めきる。仕様は、触ってから書く。 今のところ、私はそう考えています。

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