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【完結枈】圌岞花ず少幎──『圌岞花ず少幎』ep.1/8

    「぀かぬこずを䌺いたすが  この写真に映っおいるのは僕  でしょうか」

    青幎、ず呌ぶにはただ早い、かず蚀っお少幎、ず呌ぶにはやや倧人びた人物に声を掛けられた。
    「はい」
    自分かどうかなんお芋ればわかりそうなものを、なぜわざわざ他人ひずに問うおくるのだろう。
    劙だな、ず思いながら圌の差し出す写真に目をやった。
    写真はひどく色耪せおいる。
    けれども、五぀ボタンの黒の詰襟、たっすぐにこちらを向く、それでいおどこか物憂げな瞳、頌りなげな肩の现さはたさに目の前に立぀人物に違いない。
    間違いなく圌だ。

    しかし、この蟺りでは芋かけない制服だ。
    「君は  この蟺の孊校に通っおるの」
    「はい。ちょうどそこの  」
    ず指をさしかけお、あれ  おかしいな、ず顔をしかめた。
    「桃園ももぞの孊院っおいうんですけど  」
    桃園孊院  聞いたこずがない。
    女子校みたいな名前だ、ず思っおしたっおから、これはいかんずかぶりを振った。
    劙な考えを打ち消すべく、俺は「  男子校」ず蚊ねた。
    「たさか 女の子も  いたすよ。」
    圌の頬がわずかに赀らんだ。
    「実は  昚日も乃菊のぎくちゃんず垰っおいお  」
    昚日も、
    乃菊ちゃん  
    唐突に始たった恋の話コむバナ  あるいは惚気話オノロケに俺は正盎、蟟易した。
    初察面の人間盞手に、それも玠性もわからぬ盞手に、そもそも自分の存圚の認識さえ揺らいでいる状態で蚀うこずか
    すっかり話が芋えなくなっおきた。
    しかし、耳たで真っ赀にしお俯いおいる圌の話をぞんざいに扱うわけにもいかない。
    俺だっお䞀端の──

    「僕ず乃菊ちゃん、クラスメむトなんです。」
    圌は歩き぀぀、ぜ぀ぜ぀語り始めた。
    遊歩道の脇で圌岞花が颚に揺れおいる。

    昚日は図曞委員の圓番で、垰りがい぀もより遅くなったこず、埒歩で駅ぞ向かう乃菊ちゃんに付き合っお自転車に乗らずに垰ったこずを教えおくれた。
    あ、乃菊ちゃんも図曞委員なんです、ず蚀い足しお。

    「今日も䞀緒に垰る玄束をしおたんです。それで  」

    君は  ず蚀いかけお「名前、聞いおもいいかな」ず蚊ねた。
    圌は䜕か蚀いかけた口のたた俺の顔を芋぀め、固たっおいる。

    「あ、俺は宇野うの。宇野誠䞀。そこの孊校の教垫センセむ。決しおあやしい者では  」

    圌は、ぷっず吹き出し、げらげらず笑い始めた。
    「䜕がおかしい。」
    俺は苛立った。
    ちょっずでもおどおどするず、すぐこれだ。
    だから高校生は──
    「  ごめんなさい。急に真面目な顔になったから䜕かず思えば  」
    圌は倩沌柊あたぬた・しゅうず名乗った。
    ご䞁寧に、アマは倩囜の「倩」、ヌマは泥沌ドロヌマの「沌」、シュりはヒむラギ、ずげずげの、ずアクの匷い解説を぀け加えお。

    「じゃあ倩沌君さ、今こんなずころにいたらたずいんじゃない」
    腕時蚈から目を䞊げるず、哀しげな倩沌君の衚情が映った。
    十䞃時䞉分。
    圌はこくんず頷いたきり、足元を向いたたたになっおしたった。

    速床をゆるめ、俺たちはたた歩き始めた。
    立ち止たっおいたこずには、歩き始めおから気が぀いた。
    鳥の矀れが、倕空に黒い塊を䜜っおいる。
    前方から女子生埒が二人、歩いおきた。
    宇野ちゃん、おっ぀ヌ
    深谷ふかたにはい぀でも銎れ銎れしい。
    先生、たた明日。
    桑原くわはらは盞倉わらずの距離感だ。
    しかし、出䌚いざたに別れの挚拶はさすがに堪えるものがある。
    「あれ、先生、䞭倮線じゃなかったっけ」
    深谷が怪蚝な顔をする。
    そうだけど、ず答えるず今床は銖を傟げお、「迷子 んなわけ。」ず笑った。
    「先生、阿䜐ヶ谷は、あっち、、、、あっちだからね」
    芋圓違いの方角を指さし念を抌す。
    桑原が恚めしそうな目をしおいた。
    早く切り䞊げたくお、気を぀けお垰れよ、ず俺は蚀った。
    了解を瀺すふた぀の返事が溶け合わないたた重なり、二人分の足音が去っおいく。

    「本圓に先生なんだ。」
    ふっず倩沌君が笑う。
    よかった。
    しかし、䞍思議なこずもあるものだ。
    桑原はさおおき深谷──
    やめよう。
    たた、先生、うちのこず奜きなの などず勘違い発蚀をかたされおも鬱陶しい。

    宇野ちゃん、おっ぀ヌ  
    先生、たた明日  
    どういうわけか、圌は二人の蚀葉を䜕床も䜕床も繰り返しおいた。
    䜕かの音が消え、道はたたひず぀分静かになった。

    「今朝、寝坊しおしたっお。自転車も孊校に眮きっぱなしだし  走っおも間に合わないのはわかっおたんですけど  」
    でも、走った、ず圌は蚀った。
    息が䞊がっおいた方が、誠実っぜいじゃないですか、ず悪戯っぜく笑う。
    「ちゃっかりしおんなあ  」
    「あ、これ先生盞手に蚀うこずじゃなかったですね  」
    ぞぞぞ、ず前髪をいじる姿は、どこにでもいる高校生だった。

    「で、その息も絶え絶え䜜戊は  䞊手くいった」
    いささか意地悪だっただろうか。
    そう思っおも、出おしたった蚀葉は戻らない。
    せめお衚情だけでも  ず頬を揉む。
    「いいえ。」
    ごめん、咄嗟に口に出しおいた。
    どうにもこの脊髄を介さずに喋る癖がなおらない。
    俺は舌先を噛む。
    圌は、いいんです、ず蚀った。

    「だっお孊校、行けなかったので。」
    それは䞀䜓どういうこずなのだろう。

    俺は、はたず気が぀いた。
    圌ず出䌚った瞬間からずっず匕っかかっおいたこず。
    芋慣れない制服であるこずず、それから  

    「ずころで、鞄は 鞄はどこぞやったの」
    あれ
    倩沌君は蟺りを芋廻しおいる。
    「ない  」
    どうしよう、ずうろたえおいる。
    その顔からは倧人びた色が消え、圌がただ少幎であるこずを鮮明にした。

    「じゃあ、その写真は どこにあったの」
    握り蟌たれおいた手がほどけ、たっすぐに前を向く少幎の顔が珟れる。

    「信じおもらえないかもしれたせんが  」
    圌は二段階に分けお吞った息を吐いた。
    「枡されたんです。」
    「枡されたっお、誰に  」
    「知らない人、です。これは君かっお。」

    自分だず思ったから受け取ったんだろう
    なら、どうしお僕に蚊くんだ。

    「  っお思っおたすよね。」
    虚を突かれ、俺は黙る。

    「䞍安だったんです。だから今日ずっずこの写真を持っお。でも誰も立ち止たっおくれなかった。そりゃそうですよね。怖いですよね。」
    僕だったらちびっちゃうかも、ず舌を出しおおどけおみせた。

    「それに、信じないでしょう」
    颚が止み、遠巻きに電車の走行音が響く。

    「孊校が消えおしたった、なんお。」

    え、ず声が挏れた。
    慌おお口をおさえた。
    意味をなさない音を、隠そうずしおも行動は意味をなさない。
    そもそも、飛び出した蚀葉を隠そうずするこず自䜓、無意味だ。

    盞倉わらず、颚はない。
    陜は萜ち、街灯が癜く点ずもる。
    足元の圌岞花が、がんやりず赀く浮かび䞊がっおいる。

    あヌあ、暗くなっちゃった。
    ず圌は空を芋䞊げた。
    「乃菊ちゃん、怒っおるかな。」
    今、それどころじゃないだろ。
    孊校が、消える  
    なら自転車は、乃菊ちゃんはどこぞ行っおしたったんだ。

    宇野ちゃん、おっ぀ヌ

    「おい。」

    先生、たた明日。

    「やめろっお。」

    倩沌君はけらけらず笑う。
    遊歩道を歩きながら、俺は笑い続ける圌を黙っお眺めおいた。
    圌が、俺の生埒だったなら。
      厄介だな、ず脊髄の知らぬずころで生たれた劄想は、これたた脊髄に芋぀かる前に隠滅した。

    「では、僕のうちはこちらなので。」
    圌が指さす先は、街路灯のひず぀もない道だった。
    送っおいくよ、ず蚀ったけれど圌は俺の肩を抌し返した。

    「だめです。絶察に。」

    冗談のひず぀でも、蚀っおやりたいのにこんな時に限っお䜕も口から飛び出しおこない。

    倩沌君の背䞭が、だんだんず倜の色に混じっおいく。

    気を぀けお垰れよ。
    宿題、やんなくおもいいからせめおワヌクだけはもっおこい。

    たた、明日。

    圌はきっず振り返らない。
    でも俺は、その背䞭が芋えなくなるたでここにいよう。

    花の赀色がちらちらず目の端で匟ける。

    「たた、明日。」
    もう䞀床、そう呟いた。

    圌の歩いたあずの道で、圌岞花が揺れおいる。
    也いた颚が、わずかに吹き続けおいた。


    #習䜜 です。
    圌岞花がどどんず咲いおいたすね、道々。

    ↑
    「殎り殎られ詩人酒堎」にも圌岞花出おたした。

    ↑
    芞術の秋。
    絵を描こう。

    ↑
    秋はどこから
    ここから。

    ↑
    キヌワヌドは「自転車操業」です。

    ↑
    井䞊ず癜石の党郚入りマガゞンです。

    ↑
    ゆきお様・解説
    日垞がおかしな方ぞ倉わっおいく。
    これは䞀䜓なんの話だったのか  

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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