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【読切】僕の学校

     僕の通う小学校は、僕に似ている。

     僕の通う小学校は半分白くて半分黄色。
    下が白で、上が黄色。
    三階建てで、体育館は二階。
    校舎の北側の突き当たりの階段をのぼる。
    春なら向かいの公園のさくら、冬なら藻の深緑を眺めて。
    夏なら塩素のにおいをかいで、秋なら近所のたき火のけむり、吸い込んで。
    大きな「2」が左側に見えたら、銀色の引き戸を開ける。
    そうしたらそこが体育館。
    うわばきのまま、入る。
    でも僕は運動が得意じゃないから、すぐに出て行く。
    体育館を出て、八才の僕のあしで大股五歩。
    右を向く。

     そこが図書室。
    休み時間はたいていここにいる。
    授業で図書の時間はあるけれど、僕は図書の時間は好きじゃない。
    女の子たちが、魔法少女の力のとりあいをしてしまうから。
    男の子たちがウォーリーを現実世界で探し始めてしまうから。
    見たくないから僕は目を閉じる。
    聞きたくないから僕は耳をふさぐ。

     違う小学校の子に言われた。
    「変なの。」
    「なにが変?」
    僕は聞いてみた。
    「色。」
    黄色、変だよ。
    学校は、白じゃなきゃ。
    おかしいよ、変だよ。
    その子は笑っていた。

     そっか。
    僕の学校、変なんだ。
    それじゃあ、僕は僕の学校が好きだよ。
    おかしなものの方が好きだもの。
    みんなといっしょは、僕はいやだ。
    だれがだれか、すっかりわからなくなってしまうから。
    どれがどこのものかわからなくなってしまうから。

    「それに、コウカもコウショウもないんでしょ?」
    「コウカ? コウショウ?」
    「なんだよ、お前。そんなことも知らないの?」
    知らないな。
    辞書にのっているのかな。
    「学校の歌と学校のマークだよ。」
    そう言ってその子は、紙にさくらの絵を描いた。
    真ん中にちいさく「小」の字を書いた。
    そして、よくわからない歌を聴かせてくれた。

    「かわいそうだね。」
    「どうして?」
    「いちばんチビ。できたのだって、びりっけつ。」
    そうだ。
    僕の通う小学校は八番目にできた。
    そう、つまりいちばん、最後。

     それに一回、「いらない子」って言われたって。
    危うく壊されるところだったんだって。
    いらない子だったから、コウカとかコウショウ、もらえなかったのかな。
    でも、欲しいのかな。
    聞いたってこたえない。
    つめたい、灰色のかべ。
    バカって言われても黙ってる。
    蹴られたら、ちょっとだけやり返す。
    しずかな、かべ。

     僕は君が好きだけれども、まいにち君に会うのはつらい。
    君はなんにも言わない。
    でも、ほんとはきらいな子、いるだろう?
    顔も見たくない奴、ほんとは殴ってやりたい奴、いるだろう?

     僕はこうして君の頭の上に立って、君と話すのが好きだよ。
    風が気持ちのいい、朝だ。
    ほら、今日は南から給食のトラックがやってきた。
    揚げパンの日だけ食いしん坊設定になるあの子はさ、今日僕に感謝するはずだよ。
    だけど、海藻サラダはいーっぱい残るかな。
    そしたら先生、さみしい顔、するのかな。

     そうだ。
    今年も、キウイがたくさんなったね。
    職員室の前。
    窓の中からさ、先生たちが「そろそろ食べごろかな」ってうわさし合うんだよ。
    指さして。
    浮かない顔してた、校長先生がめずらしく笑ったんだ。
    疲れていたみたいだけど。
    キウイ食べたら、元気になるかな。

     ここにいると、「空に足をひたす」っていうおかしな言葉がおかしくなくなるんだよね。
    だって、みんな「空」を塗るのに「水色」の色鉛筆を使うでしょう?
    でも水はすくい上げると僕の手の色になる。
    それに冬のプールの水色、、は緑だ。

     空だって、灰色の日もある。
    夕方にはダイダイ色になる。
    朝は桃色だったりする。
    夜更かしをすると、まっ黒になる。

     空を黄色で塗るたびに言われる。
    「いけないんだよ、空は水色で塗らなきゃ。いけないんだよ。」

     みんな、平気でうそをつく。
    うそとも気づかず、うそをつく。

     水は水色じゃない。
    空も水色じゃない。

    ──変なの。

     僕は、変なの。
    君だって、変なの。

    3年1組13番 白石 椋
    「僕の学校」


    【習作】です。
    というか、 #井上と白石 は全部習作なのだが。

    ↑
    これは、ここに出てきた、誤差の範囲内の時計がくっついている小学校の話。

    ↑
    井上と白石シリーズ全部入り。

    若干の種明かしをするならば、今日のこれのベースはリアル小学三年生だった頃のワシが書いた作文がベース。

    ↑
    高校二年生になった白石が、修学旅行の感想文、、、を求められているのになぜか小説みたいなものを書いてしまう全八本の一本目がこちら。

    ↑
    対する井上の修学旅行編、一話目は悲惨な始まり方をする。

    ↑
    二十八歳、今泉律の図書館の話。

    ↑
    そろそろ、レゲボンのモデルに気づいちゃった方、いるのでは?

    ↑
    【エッセイ】
    去年、月がおもろかったらしい。

    ↑
    ゆきお様・解説
    「普通」とは?
    ならば「異質」はいけないこと?
    いいえ、そんなことありません。
    いかに平均を目指して行くか。
    それがいじめに遭わないための最適解ならば、そんなくだらないことって?
    読めばすっと頭が軽くなる。
    そんな解説です。

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    ラブラドールの匂いで肺を満たしたいアラウンドサーティ。 9歳児に親育てされている本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、しつこく文字を掻き集める滑稽な姿を東京の片隅からお送りしております。 ※連載小説も基本的には一話完結として読める構成を目指しているので、おじけづくことなかれ。

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