
『星空に残された人類の記憶』 第7話 空が物語を書く
――空が決めること、人が決めること
地上の層から、空の層へ
第6話では、物語を書き留めた人たちの側を見た。
語り手の言葉と、後から添えられた括弧や注。
私たちが「伝承」として読んでいる文章には、何人もの手が入っている。
今回は、反対側を見る。
物語の材料のうち、人の手ではなく空そのものが用意しているものは、どれくらいあるのか。
この連載では最初から、似た物語が遠く離れた土地に現れる理由として、いくつかの仮説を立ててきた。
• 仮説A:共通の祖先の物語がある
• 仮説B:同じ空を見た人々が、それぞれ独立に似た物語を作った
• 仮説C:その両方が混ざっている
• 仮説D1:歴史の中で物語が伝わった
• 仮説D2:記録や翻訳の段階で似せられた
第6話はD2の回だった。今回はBの回だ。
もし空の見え方が物語の形をかなりの部分まで決めているのなら、似ていることは「同じ空を見ていた」というだけで説明できる。
逆に、空からはどうしても出てこない一致があるなら、そこにこそ別の説明が必要になる。
だから今回やりたいのは、物語の要素を一つずつ取り出して、「これは空が書いたのか、人が書いたのか」を仕分けることだ。
空が見せるもの
まず、すばるという星の集まりが、地上からどう見えるかを並べてみる。ここは神話ではなく、天文の話だ。
1. 小さく、固まって見える
すばるは、空の上で約2度の範囲にまとまっている。満月の直径(約0.5度)の4つ分ほどの狭い場所に、肉眼で六つ前後の星が集まって見える(数え方は第2話で扱った)。
ほかの明るい星座のように「線でつないで形を作る」必要がない。最初からひとかたまりの群れとして目に入る。
2. 世界のほとんどの場所から見える
すばるは天の赤道より少し北(赤緯+24度)にある。
このため、北半球の高緯度から南半球の中緯度まで、人が暮らす土地のほとんどで見ることができる。
北半球では冬の夜の星、南半球では夏の夜の星になる。
つまり、ギリシャでも、日本でも、北米の平原でも、オーストラリアの砂漠でも、人々は同じ星の群れを見上げていた。
3. 一年のうち、しばらく姿を消す
すばるは毎年5月20日前後、太陽とほぼ同じ方向に来る。その前後の時期は、太陽の光にまぎれて見えなくなる。そしてしばらくすると、明け方の東の空にふたたび現れる。
ヘシオドスは『仕事と日』で、このことを農事の目安として書いている。
アトラスの娘たち、プレイアデスが昇るころに刈り入れを始め、沈むころに耕せ。
四十の夜と昼、彼女たちは隠れ、年がめぐると、ふたたび姿を見せる。
(ヘシオドス『仕事と日』383–386行、Evelyn-White英訳からの重訳・筆者訳)
「消える」「隠れる」「戻ってくる」。
これは物語の作り手の想像ではなく、毎年くり返される空の出来事だ。
ただし「四十の夜と昼」という期間は、ヘシオドスが書いた古典資料の記述である。
実際に見えなくなる期間は、緯度や空の条件、観測する人の目によって変わる。この連載では、その長さを計算では確かめていない。
4. オリオン座が、後から昇ってくる
すばるの東隣には、オリオン座がある。
地球が回るにつれて星は東から昇り、西へ沈むので、多くの土地では、すばるが先に昇り、オリオン座がそれを追うように後から昇ってくる。
ただし、この「追う」見え方は、見る場所によって変わる。
筆者がJ2000座標(現在の星の位置)を使って計算した、おおよその値を示す。
オリオン座全体ではなく、ベルトの中央の星アルニラム一つを代表点にしている。
また、水平な地平線を仮定した幾何学的な出没の時刻差であり、人の目で実際に見え始める時刻や見えなくなる時刻とは異なる。
緯度
該当するおもな土地の例
昇る順
沈む順
北緯50度
北ヨーロッパ
すばるが先(約4時間)
オリオンが先(約0.4時間)
北緯35〜40度
ギリシャ、日本、北米の南部平原(オクラホマ付近)
すばるが先(約3時間)
すばるが先(0.3〜0.5時間)
赤道
熱帯の地域
すばるが先(約2時間)
すばるが先(約2時間)
南緯25度
オーストラリア中央部の砂漠
すばるが先(約1時間)
すばるが先(約2.7時間)
南緯45度
ニュージーランド南部
ほぼ同時
すばるが先(約3.7時間)
ここから分かるのは、次のことだ。
• 人が暮らす土地の多くでは、すばるが先に昇り、オリオン座が後から来る。
• ただし南へ行くほど、昇るときの差は小さくなり、南緯45度あたりではほぼ同時になる。
• 沈むときは逆に、南半球ほど「すばるが先に沈み、オリオン座が後を追う」形がはっきりする。
※この表は、地形や大気による減光、薄明の影響を含まない概算である。
昔の空でも、同じ順番だったか
ここで一つ、区別しておきたいことがある。
星どうしの並び――すばるの東にオリオン座がある、という配置――は、数千年ではほとんど変わらない。
星そのものの動き(固有運動)は、この時間の幅では小さいからだ。
一方、地球の自転軸はゆっくりと首を振っている(歳差)。
星どうしの並びは変わらなくても、天の北極の位置や、それぞれの星が天の赤道からどれだけ離れて見えるかは、数千年で大きく変わる。
昇る順や時間差はこの位置関係で決まるので、ある緯度での見え方は、時代によって変わりうる。
そこで、長期間に使える歳差の計算式(Vondrák ほか、2011年)を使って、紀元前700年ごろ(ヘシオドスの時代)と紀元前3000年ごろの空でも、同じ計算をしてみた。固有運動は無視している。
緯度
現在(昇る/沈む)
紀元前700年ごろ
紀元前3000年ごろ
北緯50度
+4.1/−0.4
+3.7/+0.5
+3.6/+0.8
北緯38度(ギリシャ)
+3.3/+0.4
+3.1/+1.1
+3.1/+1.3
北緯35度
+3.1/+0.5
+3.0/+1.2
+3.0/+1.4
赤道
+1.8/+1.8
+2.1/+2.1
+2.2/+2.2
南緯25度
+1.0/+2.7
+1.5/+2.7
+1.7/+2.8
南緯45度
±0.0/+3.7
+0.8/+3.4
+1.0/+3.4
(単位は時間。正の値は「すばるが先」、負の値は「アルニラムが先」)
計算した二つの時代では、表のどの緯度でも、すばるが先に昇り、先に沈む。
現在の空で見られた例外(北緯50度で沈む順が逆になる、南緯45度で昇る時刻がほぼ並ぶ)は、これらの時代には起きていない。
ヘシオドスの時代のギリシャでは、すばるが沈んでからオリオン座のベルトが沈むまでの差は約1時間で、現在より大きかった。
※数万年前(第5話で扱った仮説の時間の幅)については計算していない。
そこまでさかのぼると、星そのものの動きも無視できるかどうか分からず、この方法では扱えない。
追う者は、空にいるか
空には「追う」形が用意されている。
では、物語は実際にそれを使っているのか。これまでの回で確かめた伝承を、「追う者」に注目して並べ直す。
ギリシャ:追う者はオリオン
ヘシオドスは、航海の季節が終わるころをこう書いている。
プレイアデスが、オリオンの荒々しい力を逃れて、霧のかかる海へと沈むとき
(『仕事と日』619–620行、Evelyn-White英訳からの重訳・筆者訳)
すばるが沈む姿を、オリオンから逃げる姿として語っている。第3話で見た『天文詩』(ヒュギーヌスの名で伝わる天文書、De astronomia 2.21)も、今もオリオンは西へ逃げていく彼女たちを追っているように見える、と記していた。追う者は、空の上で実際に後から来る星だ。
西部砂漠:追う者はニル
第3話で見たように、伝承者たちが公開した資料では、七人姉妹を追う男ニルはオリオン座と結びつけられている。
南緯25度前後の砂漠では、すばるが先に昇り、先に沈む。
ここでも、追う者は空の上で後から来る星だ。
ギリシャと西部砂漠は、地理的に遠く離れている。
それでも「追う者=オリオン座」が一致する。この一致は、両者が同じ星の配置を見ていたという条件から、独立に生まれた可能性で説明できる。ただし、それが実際に独立して成立したことを証明するものではない。ここは筆者の解釈である。
カイオワ:追う者は地上に残る
第4話のカイオワの物語でも、少女たちは追われる。
ただし追うのは熊であり、熊は星にはならない。
物語の舞台は、地上のデビルズタワーである。
追われる物語ではあるが、追う者は空にはいない。
この物語が説明しているのは、空の並びよりも、地上の岩の形だ。
チェロキーとイロコイ:追う者がいない
第4話で見たチェロキーの物語では、踊りつづけた少年たちが空へ昇る。
イロコイの諸版でも、踊る子どもたちが空へ昇っていく。
どちらも、追いかけてくる者は登場しない。
さらに、ヨーロッパの民間伝承には、すばるを「ひよこを連れためんどり」と見る型があることが、民俗学の研究で報告されている。そこにも追う者はいない。
並べて分かること
伝承
追われるか
追う者
追う者は星か
ギリシャ(ヘシオドス、『天文詩』)
追われる
オリオン
星(オリオン座)
西部砂漠
追われる
ニル
星(オリオン座)
カイオワ(1897年版)
追われる
熊
星ではない
チェロキー
追われない
―
―
イロコイ
追われない
―
―
「めんどりとひよこ」型
追われない
―
―
空は「後から来る星」を用意している。
しかし、それを「追う者」として読むかどうかは、物語ごとに違う。
そして、この連載で確かめた範囲では、追う者が星として空にいるとき、それはオリオン座だった。
空は「追う」を命じてはいない。
ただ、追う物語を作るなら、追う者の役をどの星に振るかは、かなり絞り込んでいる。
三つの層で分ける
この連載では企画の段階から、物語の要素を三つの層に分けて考えることにしていた。
• 層1:空の条件――空を見れば誰にでも見えること
• 層2:認知的に起こりやすい要素――空の条件を見た人間が、思いつきやすいこと
• 層3:恣意的な要素――空からも人間の傾向からも出てこない、個別の選択
なお、層2の「思いつきやすい」は、認知心理学の実験などで出現する頻度が確かめられたものではない。
筆者が分析のために設けた分類であり、どの要素を層2に入れるかも筆者の推論である。
そのうえで、ここまでの材料で、すばるの物語の要素を仕分けてみる。
要素
層
理由
ひとかたまりの群れに見える
層1
約2度の範囲に星が集まって見える
六つ前後の星が数えられる
層1
第2話で確かめた肉眼での見え方
一年のうち、しばらく姿を消して戻る
層1
太陽との位置関係で毎年起こる
後からオリオン座が昇ってくる
層1(緯度・時代による)
現在の南緯45度付近ではほぼ同時だが、計算した古代の時点ではすばるが先に昇る
群れを「人の集団」や「動物の親子」に見る
層2
群れは、群れとして何かに見立てやすい
消えることを「どこかへ行った」「隠れた」と語る
層2
見えなくなったものに理由を与える
後から来る星を「追う者」と見る
層2
並び方は「追う」と読める。ただし、読まない物語も多い
「七つのはずが一つ足りない」と語る
層2の候補
見える数の揺らぎ(第2話)と、伝わる数とのずれから生まれうる
集団が女性であること、姉妹であること
未判定
少年、子ども、ひよこなどの例があり、空からは決まらない
追う者が熊であること
層3
熊は星にならない。土地の岩と動物の物語
松の木、踊り、岩が伸びること
層3
それぞれの土地の物語の選択
欠けた一人の理由(悲嘆、恥、地上へ降りた、など)
層3
伝承ごとに理由がまったく違う
こうして並べると、「空が書いた」と言えるのは、思っていたより少ない。
群れであること、数がはっきりしないこと、消えて戻ること、後から来る星があること。この四つだ。
それを人間が読むと、層2の要素が生まれやすくなる。
群れは集団になり、消えることには理由がつき、後から来る星は追う者になる。
ここまでは、仮説B(同じ空からの独立した再生産)でも説明が可能だ。遠く離れた土地で同じ空を見た人々が、似た読み方をしても不思議ではない。
ただし、説明が可能であることと、実際にそうやって成立したことが示されたことは、別のことだ。
空が書かないもの
では、空からは出てこないものは何か。
「女性の集団」であること
空は群れを見せるが、それが誰の群れかは決めない。
実際、チェロキーでは少年たち、イロコイでは子どもたち、ヨーロッパの一部ではひよこを連れためんどりだ。
それでも、ギリシャと西部砂漠とカイオワの1897年版では、群れは女性たちだ。この一致は、空だけでは説明できない。
ただし、第6話の教訓もここで必要になる。
英語の「sisters」や「girls」が、元の言葉のどのような関係を指しているのか。この連載では、そこまでは確認できていない。
「七つ」という数
第1話と第2話で見たように、空が用意しているのは「六つ前後」だ。
オウィディウスが「七つと言われるが、たいてい六つ」と書いたように、「七」は見える数というより、伝えられる数だった。
だから「七つの一致」は、空からそのままは出てこない。七という数がなぜ選ばれたのかは、まだ答えられていない。
どうやって空へ行ったか
岩が伸びる。踊りながら昇る。神に姿を変えられる。空へ行く方法は、物語ごとにまったく違う。空は「そこにいる」ことだけを見せて、「どうやって来たか」は見せていない。
欠けた一人の理由
一人足りないことは、見え方から説明できるかもしれない。しかし、「なぜ欠けたのか」の理由は、伝承ごとにまったく違う。ギリシャの中だけでも、複数の説明が並んでいた。
一致の「残り」
ここまでで、ギリシャと西部砂漠の一致を分解すると、こうなる。
• 追う者がオリオン座である:空の並びで説明できる(層1〜2)
• 追われるのが女性の集団で、追うのが男である:空だけでは説明できない(未判定)
この「残り」をどう読むかが、次の問題になる。
筆者の解釈を書いておくと、この残りをすぐに共通の祖先(仮説A)の証拠と見るのは早いと考えている。
女性の集団という見立てがどのくらい珍しいのかは、まだ分からない。群れは人の集団だけでなく、動物や道具などにも見立てられている。
この一致の重さを測るには、世界の伝承でどんな見立てがどのくらいの割合で現れるのかを調べる必要がある。ここは、まだどちらとも言えない。
宇宙OSで言えば:同じ入力、別のプログラム
ここからは比喩だ。証拠ではなく、仮説の違いを整理するための見立てとして読んでほしい。
第6話では、語り手の言葉を「コード」、書き手の注を「コメント」にたとえた。今回は、空を「入力データ」にたとえてみる。
世界中の人々は、同じ入力を受け取っていた。
[INPUT] cluster: compact, ~6 visible
[INPUT] annual: hidden near the Sun for weeks, returns at dawn
[INPUT] sequence: Orion rises after (latitude-dependent)
この入力を、それぞれの土地の「プログラム」が処理して、物語という出力を出した。
ここで、仮説Aと仮説Bの違いがはっきりする。
• 仮説A:出力が似ているのは、もともと同じプログラムをコピーして使っていたからだ
• 仮説B:出力が似ているのは、プログラムは別々でも同じ入力を受け取っていたからだ
同じ入力からそのまま出てくる部分(層1)や、どのプログラムでも出しやすい部分(層2)が一致しても、プログラムが同じだという証拠にはならない。
プログラムが同じかどうかを確かめるには、入力からは導けない、ちょっと変わった出力(層3)が一致しているかを見る必要がある。そして今回の表では、層3の要素は、伝承ごとに大きく違っていた。
※この見立ては、仮説AとBの区別を分かりやすくするための比喩である。実際の物語の伝わり方や人間の認知が、プログラムのように動いていると主張するものではない。
この回で確認できたこと・できなかったこと
確認できたこと
• すばるは約2度の範囲にまとまって見える星団で、赤緯は約+24度。オリオン座のベルトはその東側(赤経で約2時間東)にある。
• 水平な地平線を仮定して計算すると、現在の空では、北緯50度から南緯40度まではすばるがアルニラムより先に昇り、南緯45度あたりではほぼ同時になる。紀元前700年ごろと紀元前3000年ごろの空では、計算したどの緯度でもすばるが先に昇り、先に沈む。
• ヘシオドス『仕事と日』は、すばるの出入りを農事の目安とし、「四十の夜と昼」隠れると書いている。また、すばるが「オリオンの力を逃れて」海へ沈むと書いている。
• ヨーロッパには、すばるを「ひよこを連れためんどり」と見る型があることが、民俗学の論文で報告されている。
確認できなかったこと
• 数万年前の空での昇る順(星そのものの動きを含めた計算はしていない)。
• すばるが見えない期間の正確な長さ(緯度や空の条件で変わる。ヘシオドスの「四十日」を検証する計算はしていない)。
• 「めんどりとひよこ」型の分布と、個々の言語での呼び名。
• 英語の「sisters」「girls」が、元の言葉でどのような関係を指しているか。
• すばるを「女性の集団」とする伝承と、そうでない伝承の、世界全体での割合。
筆者の解釈
• 空が書いたと言えるのは、「群れ」「はっきりしない数」「消えて戻る」「後から来る星」の四つほどだ。
• 追う者が星として空にいる伝承では、確かめた範囲ではオリオン座だった。この一致は仮説Bでも説明できるが、独立に成立したことの証明ではない。
• 「女性の集団が男に追われる」という組み合わせは、空だけでは説明できない。ただし、女性集団という見立てがどれほど珍しいかは、伝承の分布を調べないと判断できない。そのため、これだけで仮説Aの証拠とは言えない。
次回予告
七回かけて、すばるの物語を分解してきた。
数、見え方、砂漠の歌、北米の岩、数万年という仮説、書き留めた手、そして空そのもの。
次回は、これまでの材料を一つの表に集めて、要素ごとに「どの仮説でどこまで説明できるか」を判定してみる。
もちろん、それは最終的な答えではない。いま手元にある資料で言える、暫定の判定だ。
第8話「暫定判定」(仮題)
参考資料
• Hesiod, Works and Days, tr. Hugh G. Evelyn-White(Perseids)383–386行付近 https://cts.perseids.org/read/greekLit/tlg0020/tlg002/perseus-eng2/350-420
• 同 619–620行付近 https://cts.perseids.org/read/greekLit/tlg0020/tlg002/perseus-eng2/615-625
• Hyginus, De astronomia 2.21(英訳、ToposText) https://topostext.org/work/207
• "Pleiades", Wikipedia(星団中心の座標 J2000:赤経 03h46m38s、赤緯 +24°10′41″、見かけの広がり約2°) https://en.wikipedia.org/wiki/Pleiades 。星団の「中心」の定義は資料によってわずかに異なるが、中心の赤緯を0.1度ずらしても、時間差の変化は0.01時間程度である(筆者計算)
• SIMBAD Astronomical Database, "Alnilam"(座標:赤経 05h36m12.813s、赤緯 −01°12′06.91″) https://simbad.u-strasbg.fr/simbad/sim-basic?Ident=Alnilam
• J. Vondrák, N. Capitaine, P. Wallace, "New precession expressions, valid for long time intervals", Astronomy & Astrophysics 534, A22 (2011) https://doi.org/10.1051/0004-6361/201117274
• Tsimafei Avilin, "The Pleiades in the Belarusian Tradition: Folklore Texts and Linguistic Areal Studies", Folklore: Electronic Journal of Folklore 72 (2018) https://www.folklore.ee/folklore/vol72/avilin.pdf
• National Museum of Australia, "Songlines: Tracking the Seven Sisters" https://nma.gov.au/exhibitions/songlines/about
• National Park Service, Devils Tower National Monument, "First Stories" https://www.nps.gov/deto/learn/historyculture/first-stories.htm
• James Mooney, Myths of the Cherokee (1900), sacred-texts.com https://sacred-texts.com/nam/cher/motc/index.htm
※英語資料からの引用・要約は筆者による訳です。
付記:昇る順・沈む順の計算条件
• 座標:上記のJ2000座標。すばるは星団中心、オリオン座はアルニラム一つで代表させた。
• 出没の定義:水平な地平線を仮定し、星の中心が高度−0.57度(標準的な大気差の補正値)にある時刻。減光・薄明・地形は考慮していない。
• 過去の時代:紀元前700年ごろはユリウス年紀元−0700.0(ユリウス日 1465370.0)、紀元前3000年ごろは−3000.0(ユリウス日 625295.0)で代表させた。
• 座標変換:J2000の平均赤道座標から各時代の平均赤道座標へ、歳差行列をかけて変換した(ERFAの関数 ltp、Vondrákほか2011年の式)。章動・固有運動・座標の微小な基準の差は無視した。
• 検算:別の歳差モデル(IAU 2006、ERFAの関数 pmat06)と、筆者が別に実装したIAU 1976式(Lieskeの式)でも計算し、表の値との差が0.01時間以内であることを確かめた。また、紀元前3000年ごろのすばるが春分点の近くに来ることは、紀元前2330年ごろにすばるが春分点を示していたという記述(Wikipedia "Pleiades")と矛盾しない。